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政策 『日本の底力』 -活力と安心への挑戦-

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麻生太郎オフィシャルサイト:総裁選
こちらの総裁選参加に向けての政策 「日本の底力」(印刷用)をテキスト化したものです。

目次

1 日本の未来
(1)豊かさと安心を実感できる国―目指す社会
(2)先駆者的国家―挑戦する姿
2 基本政策
(1)経済政策
(2)教育改革
(3)外交政策
3 政治改革―政策を実行するために
(1)簡素で温かい政府
(2)国会改革
(3)地方分権
(4)自民党改革
(6)政治主導


はじめに―私の目指す日本


(目指すのは豊かさと安心を実感できる国・先駆者的国家
  日本は、明治以来の国是としてきた「欧米先進国に追いつき追い越すこと」を約100年で達成し、1960年代の終わりには世界第2位の経済大国となりました。それから40年が経ち、各種の行政サービスも世界最高の水準で日本中に行き渡り、社会資本も見違えるほど整備されました。
  しかし、多くの国民は、その豊かさを実感していません。先行きに不安すら感じています。これからの日本は、豊かさを伸ばすとともに、国民が豊かさを実感できる社会・安心できる社会にしなければなりません。
  また、世界一の長寿国にもなりました。これから日本は、世界が経験したことのない長寿社会を迎えます。長寿社会を、活力ある明るいものにしなければなりません。先駆者的国家として、世界が経験したことのない課題解決に率先して取り組むのです。

(改革は破壊から創造へ
  日本は、経済的に、発展途上国から成熟国家へ成長しました。それに伴い、社会のあり方も、追いつき型から先駆者型に転換しなければなりません。
  日本は、バブル崩壊、失われた10年という暗い時代を過ごしました。そして、今ようやく方向転換をしつつあります。小泉改革は、自民党に限らず、既存の政治行政システムの既得権益を、破壊したと言えるでしょう。しかし、新しい国家を創るまでには至っていません。
  今必要なのは、新しい国のかたちを国民に提示し、それを創る新しい政治です。改革は、破壊から創造へ進めなければなりません。創造は、不信や独断からは生まれません。国民の信頼の上に、進めなければなりません。

主要政策
  「新しい国のかたち」を創るため、基本となる政策は次のようなものです。
  まず、日本が発展を続けるためには、経済成長が必要です。日本経済は、まだ楽観できるような力強さはありません。しかし、我が国が持つ潜在力を活かした機動的な経済政策を行うことで、持続的かつ安定した成長が可能です。
  次に、新しい日本を支える人たちを創るための、教育が重要です。国民の多くは、今の学校教育に満足していません。大胆な教育改革が必要です。
  さらに、外交の転換が必要です。日米同盟を基軸としつつ、アジアの安定と発展がなければ、日本の繁栄もありません。

(政策を実現するための政治改革
  社会保障改革・分権改革・規制改革などなど、次々と生まれてくる新しい課題に取り組むためには、日本の政治のあり方を変えなければなりません。
  必要なのは、大胆な改革を迅速に行う政府、国民の期待に応える簡素で温かい政府、小さくても強い政府です。それは官僚でなく、我々政治家が責任を持つ政治主導でなくてはできません。そして、自民党は責任政党として自らを改革し、その重責を担わなければなりません。

日本の底力
  戦後日本は、国民の努力によって、焼け野原から経済大国になりました。バブル崩壊後のどん底からも、立ち直りつつあります。日本には底力があるのです。
  「失われた10年」を必要以上に暗くしたのは、悲観論ではなかったのでしょうか。民間企業はその間に、血の出るような努力をして、再び力強い成長に向かっています。
  日本を暗くするもの、それは国民の意識です。日本を輝く国にするもの、それは国民の努力です。明日に向かって挑戦すること。これが明るい未来をつくります。挑戦なくして豊かさと安心は得られません。
  一緒にやってみませんか。

1 日本の未来


  私が描く日本の未来を述べましょう。私が目指す社会は、国民が豊かさを実感できる国・安心できる社会です。そして、それを実現するために、何事にも挑戦する先駆者的国家です。

(1)豊かさと安心を実感できる国-目指す社会

① 実感できる豊かさへ

(質の充実へ)
  日本は、世界二位の経済大国です。GDPは約500兆円。この半世紀の間に、一人あたり約100倍になりました。これは、世界に誇れるすばらしい成果です。しかし、多くの人々は豊かさを実感していません。例えば、狭い家や通勤地獄、長時間労働、自然破壊、さらに老後の心配、子育ての不安など不満と不安はいっぱいです。生活の質(Quality of Life)は中流を脱していません。
  日本も、成熟した国に脱皮する時期です。真の豊かさを目指す必要があるのです。「量の拡大から質の充足へ」の転換です。
(人口減少下での成長)
  日本は、人口減少時代に突入しました。これを悲観する人が多いですが、私はそうは考えません。人口減少こそ、豊かさを上昇させる可能性があるのです。
  産業革命がもたらした豊かさは、技術革新によって生産が増大したこととともに、人口が増加しなかったことにあります。産業革命に比肩するICT(Information & Communication Technology、情報通信技術)革命により、生産される情報の量が驚くほど増大するだけでなく、加工や利用も革命的に便利になりました。これが生産性を上げるだけでなく、社会を豊かに便利にします。このような中で人口が増えないのであれば、一人当たりの豊かさは高まるはずです。問題は、この豊かさを、どうやって実生活に生かすかです。

② 豊かさ実感倍増計画

  豊かさと安心の実感」。成熟国家日本が掲げる成長の目標は、国民一人一人の実感です。安心安全で、真に豊かさを実感できる社会を目指し、私は、「豊かさ実感倍増計画」を提唱します。具体的には、次の7つの実感を倍増させます。
a 生産性倍増(活力にみちた国)
  技術革新により生産性を倍増させることで、「活力にみちた国」をつくることができます。人口が減少しても生産性が上昇すれば、一人当たり所得や労働時間の面で豊かさを実感できます。
b 生活空間倍増(住みたくなる国)
  ゆとりある住みやすい空間を倍増させることで、「住みたくなる国」をつくります。公共投資を、都市部なら、開かずの踏切対策や電柱埋設など暮らしに直結したものに集中し、ゆとりのある公共空間をつくります。また、税制などで、ゆとりある住宅を造り三世代同居を進め、子育てを支援します。生活の隅々で豊かさを実感できます。
c 現役選手倍増(働きがいのある国)
  老若男女すべてが元気に社会参加し、社会の支え手となる現役選手を倍増させることで、「働きがいのある国」をつくります。女性や高齢者、ニートを含めたより多くの人が雇用の場や社会参加の場を得て、生き甲斐を通じて豊かさを実感できます。
d 学ぶ喜び倍増(品性あふれる国)
  豊かな社会は、人づくりから始まります。幼児期からの基礎教育と、学ぶ喜びを倍増させることで、「品性あふれる国」をつくります。世界最高の教育水準と独創性を取り戻し、知識や教養の修得による豊かさを実感できます。
e 安心安全倍増(安らぎのある国)
  安全は日本の誇りです。しかし、近年ほころびが出ています。国民の安心安全を倍増させることで「安らぎのある国」をつくります。あらゆるリスクを想定して、安全網や社会保障を強化します。災害、犯罪、食品、建造物、医療、失業、老後の様々な不安が和らぎ、誰でも安心して暮らせる豊かさを実感できます。
f 地域参加倍増(親しみやすい郷)
  豊かさは、地域で実感できます。地方分権を進め、個性に富んだ地域を再生させることで、住民の地域参加を倍増させ、「親しみやすい郷」をつくります。自分たちで支え合う地域社会が再生し、故郷の存在がもたらす心の豊かさを実感できます。
g 外交力倍増(尊敬される国)
  グローバル化がさらに進みます。立派な日本人が、立派な国際人といわれるのです。日本の国際感覚を倍増させることで「尊敬される国」をつくります。アジア外交の再構築や、文化・芸術・スポーツを振興します。国際社会における日本の魅力や存在感が高まり、国への誇りを通じた豊かさを実感できます。

(2)先駆者的国家-挑戦する姿

① 挑戦なくして豊かさなし

  豊かさの実感を倍増させて、明るく元気で安心できる高齢化社会を実現します。しかしそれは、じっとしていては実現しません。もう日本には、お手本となる前例はありません。これまでに経験したことのない社会に挑むということは、世界でもフロントランナーとなって、新しいモデルを世界に提示することです。
  挑戦なくして豊かさは得られません。改革には、しばしば痛みが伴います。その痛みをためらっていては、いけません。問題の先送りも、じり貧を招くだけです。しかし、改革に際して、痛みを小さくすることはできます。

② 活力ある高齢社会への挑戦

  高齢化というと、暗く貧しい社会を想像しがちですが、それは間違いです。高齢者を元気のない人という見方は、失礼です。高齢者のパワーを活かし、高齢社会を活力あるものにしていくのです。
  すべての世代の人たちが力を発揮できる社会にするために、高齢者が社会に参加できる仕組み、若年層が勤労意欲をもてるような環境、安心して子供を産み育てることができる環境を実現します。

③ 地方の挑戦

  地方が元気にならないと、日本は元気になりません。
  これまでは、国の指示により各地域が同じように発展してきました。しかしこれからは、各地域はそれぞれの特色を生かした発展に、挑戦しなければなりません。
  もちろん、国として責任を持たなければならない分野、福祉や教育の水準、安心安全の確保は国が支援します。しかし、それぞれの地域の未来は、それぞれの地域で考えなければなりません。産業やまちづくりは、各地域で知恵を出してください。そのための権限と財源を国から地方へ移譲し、国は地域の挑戦を応援します。

④ 産業の挑戦

(技術革新)
  技術革新は、生産性向上の最も主要な源泉です。日本が得意とするユビキタス技術や環境・エネルギー技術、ナノテク・バイオ等のイノベーション促進に資源を重点投入することにより、世界をリードする付加価値分野を生み出します。
  特にICT(情報通信技術)は、新たなマーケットやビジネスモデルを創りだすことができますし、様々な世代や障害を持った人が起業を行うための道具としても有効です。
(規制改革)
  規制改革により、民間活力を活発にすることも必要です。人、物、金、情報の流れを阻害している規制を緩和撤廃し、それらの流れを促進するのです。
  特に、国際競争にさらされにくいサービス業やエネルギー・運輸・金融・医療等の第三次産業は、日本では生産性が低く、規制を大幅に緩和して、生産性を向上させていく必要があります。
(農業の挑戦)
  農業の挑戦も重要です。これまで日本は、農業を守るべき対象として考えてきました。それでは、豊かさは得られません。
  日本だけでなくアジアを消費地として、もうかる農業製品を作る。農業も「業」として、輸出を含めて攻めるべきです。
(グローバル戦略)
  日本企業にグローバル戦略を促すことも重要です。日本の消費者は品質に厳しいため性能の高い製品設計にこだわり、その分値段が高くなって、途上国などの海外市場では競争力を失いがちです。発想を転換して、海外で売れる商品を作るなど、世界市場を睨んだ経営戦略も必要です。
  日本の企業がグローバルな市場で活躍するためには、近隣諸国とあらゆるレベルで交流ができ、安心して投資できる環境が必要です。そのような環境作りに、政治の責任で取り組まなければなりません。
(日本文化の普及)
  日本の伝統的な文化はもちろん、ポップカルチャーやアニメーションなどサブカルチャーを含めた現代日本文化を海外に広めることは、日本という国のブランドイメージを引き上げます。海外での日本文化の普及に取り組むとともに、日本語や海外向けテレビ番組の普及にも力を入れ、各国が日本という国を身近に感じられるようにします。

⑤ 先駆者的国家

(世界を先導する国)
  少子高齢化、地球環境問題、エネルギー問題、ICTの発達によるボーダレス化など、国境を越えた課題が広がっています。これらの課題解決のために率先して取り組み、世界を先導する国づくりを目指します。これは、従来の欧米型から脱却して、日本的な価値観を加味した新たな人類普遍の価値観を、世界に提示していくことにつながります。
(アジアのソートリーダー)
  日本は、アジア諸国にとって、「実践的先駆者(ソート・リーダー)」を目指します。
  アジア各国が直面している課題を解決するために、日本の経験を提供するのです。日本は、所得格差、地域格差や環境問題、エネルギー問題に悩み、それを解決し成長してきました。日本がどう苦しみ、どう解決したかを示し、各国に教訓として使ってもらうのです。成功も失敗も教訓として他国に供する。それが「実践的先駆者」です。
  私がここで用いる「実践的先駆者(ソート・リーダー)」とは、他人より先に難問に取り組まざるを得ない星回りにある者のことです。難問であるから、なかなか解くことができません。けれども解決しようとしてもがく、その姿それ自体が、ほかの人たちにとって教材となるような人。そういう人を「ソート・リーダー」といいます。

2 基本政策


  次に、当面の重要課題について、私の政策を示します。それは、経済政策、教育改革、外交政策です。

(1)経済政策

  経済政策として私が重要と考えるのは、経済を支える財政、税制改革、成長力強化の3点です。

① 経済を支える財政

  国と地方を合わせた日本の借金は膨大な額に上り、先進諸国にも例のないものとなっています。早急に、財政再建への道筋をつけなければなりません。しかし、私は財政再建原理主義はとりません。財政は、それ自体が目的ではありません。財政は、政策実現のための手段です。
  今の日本に必要なのは、持続的かつ安定した経済成長です。そのためには、我が国の潜在力を活かした、機動的な経済政策が重要です。赤字解消は急がなくてはなりませんが、原理主義に陥って、景気を中折れさせてはなりません。これは、平成9年に苦い経験をしたばかりです。

② 税制改革

(政策減税)
  私が主張したいのは、政策税制の活用です。政策税制を最大限活用し、活力ある日本を実現します。産業界が新しい技術に挑戦し、成長分野にどんどん進出できるように、大胆な政策減税を行います。
  政策減税で社会の活力が上がり、行政経費が削減されたり、税収が増えれば、トータルではプラスです。
(増税)
  まずは徹底的な歳出削減を優先し、その後に、必要な増税を国民の皆さんにお願いします。
  日本は、社会保障制度も、ヨーロッパ先進諸国並みになりました。高齢化率は、それらの国より高くなっています。行政サービスが先進諸国並みになっているにもかかわらず、国民負担がそれらの国より遙かに低いという構図は、成り立ちません。現在は、その分を赤字国債で子や孫にツケを回しています。
  このような不公平は、いつまでも続けてはなりません。必要な増税は国民にお願いする。それが政治の義務です。

③ 成長力強化

  財政健全化には、持続的かつ安定した経済成長が必要です。人口減少を克服しながら成長力を発揮するには、生産性向上やグローバル戦略等の政策が不可欠です。
  我が国の潜在力を活かした成長政策も必要です。例えば、1,500兆円もの国民資産がありながら、それが十分に活かされていません。未だに銀行が土地や資産を担保にして資金を貸しているから、新しい企業や外国での投資にお金が回らないのです。担保を取る金融から、リスクをとる金融、人と事業へ投資する金融への転換が必要です。

(2)教育改革

  日本の将来は、人材育成にかかっています。私たちは優先課題として、教育改革に取り組まなければなりません。これまで政治家は、教育を批判しつつも、改革を避けてきました。もはや先送りは、許されません。

① 基礎教育

  私は、幼児期の教育が人格の形成を左右し、大変重要であると考えています。その際、義務教育の低年齢化は有力な選択枝です。現在の満六歳からの就学を一年ないし二年前倒しし、その期間にしつけや道徳教育といった情操教育を行い、読み書き計算の基礎教育を徹底します。人格形成と学力の基本を、早い段階でしっかりと身につけさせるのです。
  義務教育期間修了後は、学力だけの進学という単線的な進路でなく、職人、芸術、スポーツ等多様な受け皿を用意する必要があります。社会人として生きていく基礎力をつけてもらうのです。

② 高等教育

  21世紀の国際社会で活躍できる、資質と能力を持った人材を育成する環境を整えます。そのため、大学の再編成や得意とする専門分野への特化を進め、日本の知的資源を集中するとともに、それぞれの大学が特色をもって競争するようにし、高等教育の質を高めます。
  また、各国の留学生を受け入れる体制を整え、アジアにおける教育のハブを目指します。

③ 地域の教育力

(地域の教育力)
  かつては学校以外に、地域の中で社会性が身につく機会が多くありました。しかし、今や環境は大きく変化し、家庭や学校だけでは教育を背負いきれない状況です。地域の教育力の復活が必要です。学校活動の中に、より本格的に地域の大人たちに参加してもらい、多様な人間関係の中で社会性を育みます。
(学校改革)
  教育の仕組みも、地域が中心となって考えられるよう改めるべきです。すなわち、教育の現場を重視した仕組みです。
  基本的な教育水準は国が確保するとして、子供にどう教えるかという手法は、もっと教育の現場に任せましょう。教職員についても、一律横並びでなく、意欲と能力の高い教職員を評価し、処遇する仕組みが必要です。
  教育委員会という仕組み自体が硬直化して、縦割りの弊害を生んでいます。地域の教育力を高めるためには、住民に選ばれた知事や市長が責任を持つようにしなければなりません。

④ 負担の軽減と多様な選択

  子どもを産まない理由に、高い教育費負担が上げられます。日本の将来を考えれば、教育費の負担軽減が必要です。
  教育を「与えられる仕組み」から「自分で選ぶ仕組み」に転換していきます。例えば、教育バウチャー(教育利用券)を支給し、教育の場を各家庭が選択できる仕組みが考えられます。

(3)外交政策

① 日米同盟とアジアの安定

  戦後の日本外交は、「経済の繁栄と民主主義を通して、平和と幸福をもたらす」という基本路線でやってきました。戦後60余年、日本は、自由と民主主義、そして市場経済の揺るぎない信奉者として、国際社会の中で努力してきました。結果として、アジアの多くの国々が、今では民主化と経済発展を享受しています。日本が果たしてきた役割を、日本はもっと誇りとすべきです。
  今後とも、日米同盟を基軸としつつ、アジアの安定を求めていくべきです。特に良好な日中関係は、二国間の問題のみならず、アジア地域の安定のために欠かせません。

  外交の現状については、国民の間に多くの不満があります。私は外務大臣として、日本外交の姿勢を国民に分かりやすく示し、外交をパワーアップすることを進めてきました。その指針として、私は、「誇りをもった外交」「日本人の安全と安心をもたらす外交」「日本に活力をもたらす外交」を掲げます。

② 誇りをもった外交

  国家・国民として、誇りをもった外交を展開することは、極めて重要です。誇りを持つためには、筋の通った主張を、広い視野の下に、礼儀正しく行うことがまず必要です。また、真の誇りは、他者からの尊敬をうけて初めて輝くものです。先に述べた、世界の実践的先駆者(ソートリーダー)を目指すことは、その重要な要素です。
(共通の利益)
  近隣諸国とは、領有権や排他的経済水域、歴史認識、通商上の問題など、具体的紛争がたくさんあります。これらの交渉において、共通する大事な点は、未来にむけ、バランスのとれた共通の利益を探求することです。あくまで外交的、平和的に、日本として譲れない点は筋を通して主張を行いつつも、関係国の共通利益を目指す外交をおこなっていきます。
(日本人の心を届ける)
  世界では、貧困、災害、疾病などによって、苦しみの中に生きている人々がいます。これらの人々を助け、ゆくゆくは自助努力でより豊かな生活ができる基盤を築く努力は尊いものです。支援を通じ、物質的な豊かさだけではなく、「労働は善」といった日本人の勤労観や人生観など、日本人の心を届けることが大切です。

③ 安全と安心をもたらす外交

  国際社会には、引続き様々な不安定要因があります。これをいかにして、日本にとって最小化するかが重要です。
(アジアの海を平和の海に)
  日本は、これまでも「アジアの安定勢力」の役割を果たしてきました。経済面では、経済危機の際の支援や政府開発援助を行い、安全保障面では、日米安全保障体制に基づき地域の安全と秩序を提供し、大規模災害発生時に大規模支援を提供するなどです。1997年のアジア通貨危機に際し、デフォルト(金融破綻)から救ったのは日本でした。
  政治、軍事、経済面で台頭する中国としっかり向き合うこと、アジア最大の民主国家のインドと戦略的関係を深めること、朝鮮半島の将来を見据えた外交戦略を立てていくことなどが重要です。これらを念頭に置いた上で、今後とも日米同盟関係と日本の経済力を基盤として、アジアの海を平和の海にする戦略を堅持します。
(原則に基づく粘り強い対応)
  外交では、原則に基づく筋の通った主張を、ねばり強く行うことが肝要です。日本は、この点により意を用いるべきです。7月の北朝鮮によるミサイル発射に対しては、国連安全保障理事会で、国際ルールと正義に照らし、日本はあくまでも原則に基づく主張を行い、全会一致の制裁決議を数々の困難を乗り越え採択しました。
(日本人と日本企業の安全)
  国民の安全の確保を第一に考えることは、国内でも海外でも変わりありません。被害の予防、事件発生時の効果的な対応のため、政治主導で取り組みます。
  北朝鮮による拉致事件は、我が国の主権のあからさまな侵害です。被害者の方々のことを第一に考え、更には国家の根幹である主権を守るために、毅然とした態度で解決に最大限の力を注ぎます。

④ 活力をもたらす外交

  日本にとって、国際社会における存在感を高め、さらには力をより発揮していくことが重要です。日本が国際的に活力を発揮する「場」、国際的環境を創り出す外交が求められます。
(アジア太平洋地域の繁栄)
  海洋国家である日本の活力を伸ばすためには、アジア太平洋地域の安定と繁栄が、絶対的に求められます。この地域で、ヒト、モノ、サービス、情報の流れの自由で、安定した場を保証する外交を展開し、主導的役割を果たします。また、政治的価値観の共有のための対話、国々の間での問題解決のためのシステム造りにも、主導的役割を果たします。
  APEC、東アジアサミット、安全保障面での「ASEAN地域フォーラム」などを進化させ、東アジア共同体を日本主導で実現することを目指します。
(発信力と受容力の強化)
  日本から見た世界観を発信し、世界の人々が受け取れるようにします。日本の伝統的な文化のみならず、J-Popなどの新しい文化も日本の魅力を世界に伝える手段です。国際テレビ放送やインターネットなどで発信力を向上し、世界の眼を我が国により向けることができれば、日本の活力もアップします。
  併せて、日本を訪れ、さらに経済社会の一員として働き居住する外国人が、抵抗感なく活躍できる受容力のある社会を築くことも重要です。アジアから留学生や技術者を受け入れ、日本の企業や研究機関への就職を増やすことも、日本の活力と国際競争力を高めます。

3 政治改革ー政策を実行するために


  日本は今、明治維新以来の大きな改革、また戦後改革以来の改革の時期を迎えています。日本社会が未知の時代に入るとともに、世界が経験したことのない社会に入ったのです。それに対応するために、日本の政治のあり方を変えなければなりません。

(1)簡素で温かい政府

  官から民へ、国から地方へという改革を引き続き進めるため、行政改革を強力に推進し、大胆な歳出の削減を実現します。
  しかし、政府を小さくすることは手段であって、政治の目的ではありません。困難な課題に積極的かつ機動的に取り組み、国民の期待に応える「強い政府」が必要となります。目指す政府は、簡素で温かい政府、小さくても強い政府です。
  これは、政治主導でなくてはできません。行政改革を役所に任せていては、絶対に進みません。彼らは、予算や権限を手放そうとしないからです。総理主導でやらなくてはなりません。

① 司令塔機能の強化

   変化の激しい内外情勢に迅速かつ的確に対応していくためには、政府の司令塔機能を強化する必要があります。このため、現在の内閣官房、内閣府、総務省などを再編して、国家の総合戦略を担う組織を作ります。この司令塔は、政治主導により運営し、与党の政策責任者を始め、産官学の有能な人材を集めます。

② 生産者振興から消費者保護へ

  これまでの行政は、生産者や業界を振興することが主でした。これからは、生産者を保護するのではなく、消費者・生活者を保護することが行政の仕事になるべきです。かつては大蔵省が、銀行や証券会社を保護育成していました。今や、利用者の保護のために、ルール違反をした銀行や会社に営業停止をかけるのが、金融庁の仕事です。手法も、事前調整型からルール設定と事後チェック型行政へ変更します。
  あわせて、国民の安全安心の確保、国際化、情報化社会への対応など、新しい時代の基本政策に沿って各省庁の仕事を見直し、省庁再編と公務員制度改革を行います。

(2)国会改革

  国会の現状は、与野党が政策論争をするのではなく、政府に対して質問をし、あるいは政府の弱点を攻撃することに終始しています。国会を国政の最高機関とするために、次のような改革が必要です。

① 国家政策の議論

  国会を、与党と野党の政策論争の場としなければなりません。そのために、お互いに政策をぶつけ合い議論する場である党首討論は重要です。また予算委員会は、「予算」といいつつ、国政一般を審議しています。もはや予算が国政の中心ではありません。予算委員会を廃止し、国家の基本問題を議論する委員会に改組します。

② 委員会審議の効率化

  提出法案が増え、審議するテーマも増えています。しかし、所管委員会のほとんど全ての審議に大臣の出席を求めるため、それぞれの審議に十分な時間がとれていません。一方、大臣の方も、国会開会中は、国際会議への出席だけでなく政策の検討に十分な時間をとれません。
  政策と法案の委員会審議を、大臣が出席するものと副大臣以下が出席するものとに審議を二分します。大臣が出席するものは、所信を始め主要政策の質疑と重要法案に絞ります。その他のものは、副大臣が責任者として審議に臨むようにします。

(3)地方分権

① 分権改革

  中央集権システムは、補助金や法令によって、国が考えたことを地方に実行させます。この仕組みは、追いつき型政治行政において、有効に機能しました。しかしながら、一方で日本中を画一化し、個性と活力のない地方を創ってしまいました。成熟国家になった今、求められているのは、それぞれの地域が責任を持つ分権です。
  三位一体改革により、国庫補助金を4兆円廃止し、3兆円の税源移譲を行いましたが、十分とは言えません。政治主導によって、税源移譲と地方分権を進めます。

② 地方の意見反映

  三位一体改革を進めるに当たって、私が導入したのは、地方に考えてもらうという手法です。国庫補助金廃止に当たって、官僚は案を出すどころか抵抗します。これを乗り越えるために、地方に案を考えてもらったのです。そして、「国と地方の協議の場」を作りました。これを制度化し、経済財政諮問会議と同様の総理主宰の会議とします。地方のやる気と信頼がなければ、改革は進みません。

③ 道州制

  その先の分権として、道州制を導入します。
  東京で何でも決めるという中央集権が、東京一極集中を生んでいます。これを打破するには、東京の政治行政機能を、各ブロックに分散させることが必要です。外交防衛や国家として統一を取らなければならない事項を除いて、行政権限を道州に分割します。
  具体的には、霞ヶ関のうち内政関係を、10程度の州都に分割するのです。

(4)自民党改革

  自民党もまた、変身の途上にあります。これまでは、幅広く国民・地域・企業の要求に応え、補助金・公共事業・減税・規制などによって利益を守り、また利益を還元することに成功しました。しかしこれからは、社会の繁栄と持続のため、「負担もお願いする党」にならざるを得ません。

① 政調会への統合

  党員による自由な討議は、続けなければなりません。政治が多岐にわたる分野に責任を持つためには、分野ごとテーマごとに、部会や調査会で議論することは必要です。しかしながら、それらを党として統合するためには、政調会長が全般に責任を持たなければなりません。すべての政策組織を、政調会長の下に置きます。縦割りである各省官僚組織に引きずられないよう、党において政策を統合します。

② 内閣との一体化

  内閣と党との二元体制の問題点が、指摘されています。政策決定が2つの経路を通り、時間がかかりムダを生じているからです。
  本来、内閣は与党が組織したものですので、内閣と与党は機能的に一体のものでなければなりません。政策決定については、一元的に迅速に決定すべきです。そのために、まず、各部会の幹部は内閣の副大臣・政務官が兼ねるようにします。また、場合によっては、政調会長が政策とりまとめ担当大臣として入閣するようにします。

③ 地方組織との連携

  自民党はこれまでも、いろんなルートから、国民各層の意見を吸い上げてきました。しかしながら、官僚に多くを依存していたことも事実です。今後、より幅広い国民の声を政策に反映させるため、地方の党組織と党本部の連携を強めます。

(5)政治主導

  これらを実行するには、強力な政治主導が必要です。国民は、自民党と総理に、抵抗を乗り越えて進む政治力を望んでいます。
  小泉改革は、政治行政システムの既得権益を破壊しました。しかし、国民は先の見えない改革に不安を感じています。私たちが目指すべきは、実感できる豊かさと安心です。アジアでの友好も望んでいます。改革は、破壊から創造へ進めなければなりません。そして国民の信頼の上に、進めなければなりません。
  日本には、底力があるのです。悲観することはありません。明日に向かって挑戦すること。これが明るい未来をつくります。
  私は企業の経営者を経験し、経済と経営を学んできました。経済企画庁長官や党政調会長も務めました。総務大臣として、官僚の抵抗を押しのけ三位一体改革を進めました。e-Japanという世界最先端のICT国家作りを主導しました。外務大臣として、日米関係の強化とアジアの安定に献身しました。
  もちろん、私一人のできることは限られています。しかし、広く国民の意見に耳を傾け、衆知を集め、的確な判断をすることで、必ずや輝く未来をつくって見せます。



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