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春の酔い

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豊楽亭游春
    欧陽修

緑樹交加山鳥啼
晴風蕩漾落花飛
鳥歌花舞太守酔
明日酒醒春已帰
    七言絶句

豊楽亭游春

緑樹交加して 山鳥啼き
晴風蕩漾として 落花飛ぶ
鳥は歌い 花は舞い 太守は酔う
明日 酒醒むれば 春 已に帰らん

ほうらくていゆうしゅん

りょくじゅこうかして さんちょうなき
せいふうとうようとして らっかとぶ
とりはうたい はなはまい たいしゅはよう
みょうにちさけさむれば はるすでにかえらん

 交加というのは、ふたつの事物が同時に来るという意味です。
 緑と樹が同時に来るという、強いイメージが前に出て、広がります。そこに、後から、鳥の声が聞こえて来ます。
 その光景を晴れやかな風がかきまわし、花が舞い飛びます。
 その光景の中に入り、太守は酔います。
 酔っている中身は明日酔いが醒めた時に、この春はすでに帰ってしまった後だろうなと分かっている。そんな醒めた酔いです。それがわかっているからこそ、今、酔うのです。
 一行目で、強く生命の横溢を歌い、二行目でそこに花を添え、三行目で風景をまとめながら、人を配し、四行目ですべてを去らせています。
 見事だと思います。
 帰るという言葉は、一行目の交加を受けています。交加にやって来るというニュアンスがあるようです。
 一行目で来て、四行目で帰るのです。大きな生命の流れから、春が私たちのところに来て、帰って行く。豊かな春を楽しみ、遊ぶ私たちの人生は、明日には醒める酔いかもしれません。



2006.4.28


















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