Memorix core
十数える
最終更新:
匿名ユーザー
-
view
心せく旅にしあれど幾度か
思はず花に駒留めにけり
こころせく
たびにしあれど
いくたびか
おもわずはなに
こまとめにけり
たびにしあれど
いくたびか
おもわずはなに
こまとめにけり
乃木希典が任地に赴く途中に詠んだ歌です。軍務で馬を駆る若き日の乃木が、道々、花に目をやっています。
乃木は、心せくのに、駒を止め、路傍の花を見愛でる人であった。
乃木は、心せくのに、駒を止め、路傍の花を見愛でる人であった。
はれてさへをぐらきものを夏木立
賤が伏屋の五月雨の空
はれてさえ
おぐらきものを
なつこだち
しづがふせやの
さみだれのそら
おぐらきものを
なつこだち
しづがふせやの
さみだれのそら
昼間なのに真っ暗になってしまうほどの激しい雨のせいで、伏屋に雨宿りしています。こういう光景を詠う乃木の作品はいいです。何でもない事が驚きとなり、しみじみと染みこんでくる感覚があります。
咲くことをなどいそぎけむ今更に
ちるををしとも思ふ今日かな
ちるををしとも思ふ今日かな
さくことを
などいそぎけん
いまさらに
ちるをおしとも
おもうきょうかな
などいそぎけん
いまさらに
ちるをおしとも
おもうきょうかな
長男勝典、次男保典を追悼し「悼両典」と題して詠まれた歌です。
日露戦争です。名将乃木は両典を亡くしています。この歌の乃木の思いを思う、さらりとした歌なのだけれど、惜しいと言っているのです。
日露戦争です。名将乃木は両典を亡くしています。この歌の乃木の思いを思う、さらりとした歌なのだけれど、惜しいと言っているのです。
乃木希典辞世 二首
神あがりあがりましぬる大君の
みあとはるかにをろがみまつる
神あがりあがりましぬる大君の
みあとはるかにをろがみまつる
かみあがり
あがりましぬる
おおきみの
みあとはるかに
おろがみまつる
あがりましぬる
おおきみの
みあとはるかに
おろがみまつる
うつし世を神さりましゝ大君の
あとをしたひて我はゆくなり
あとをしたひて我はゆくなり
うつしよを
かみさりましし
おおきみの
あとをしたいて
われはゆくなり
かみさりましし
おおきみの
あとをしたいて
われはゆくなり
乃木の辞世の二首。いい歌です。屈折なく、まっすぐに「我はゆくなり」というところに身を置いています。見事な歌です。
静子夫人の辞世も紹介しましょう。
静子夫人の辞世も紹介しましょう。
静子夫人辞世
いでましてかへります日のなしときく
けふのみゆきにあふぞかなしき
いでましてかへります日のなしときく
けふのみゆきにあふぞかなしき
いでまして
かえりますひの
なしときく
きょうのみゆきに
あうぞかなしき
かえりますひの
なしときく
きょうのみゆきに
あうぞかなしき
これも実に見事な歌です。引き締まった調べです。
十数えるのに、
「のぎさんはえらいひと」
と数えるようになるのは、大正時代のことだったでしょう。
十数えるのに、
「のぎさんはえらいひと」
と数えるようになるのは、大正時代のことだったでしょう。
2006.5.13
-