んー、敗北のプリン!おいちい!

512 名前:いつかのA(その1) :04/06/21 07:46 ID:???
Aというプレイヤーがいた。
彼はTRPGを始めた当初、どこに出しても恥ずかしくない立派な厨ゲーマーで、
身内のゲームを崩壊させることもしばしばだった。しかし、寛容な周囲と
ある程度の経験の積み重ねのおかげで、しばらくするとややマンチではあるものの
それなりに楽しいゲームを遊ぶことが出来るようになっていた。

その後、Aとその仲間達はあるサークルに入りゲームをするようになった。
基本的に身内プレイしかした事がなかったAは、そこで今までとは比べ物にならない
様々なゲームを様々な人と遊び、そのうちまったくといって良いほど厨なプレイは
しないようになった。そして、「彼」が来た。

「彼」は、サークルのある人に誘われてやってきた。当時のAよりだいぶ年長で、
「3度の飯よりTRPGが大好き」という、殆ど中毒患者のような人だった。
プレイヤーはキャラクターになりきり、架空の人生を事実のように悩み、考えて
歩むのが最高だと言っていた。

「彼」はオリジナルシステムで卓を立て、こう紹介した。
「これは非常に自由度の高いシステムです。また、システムでフォローしていない
事でも、プレイヤーの希望は最大限かなえます。」
Aはとても惹かれた。同様に興味をもった人間が数人集まった。
登場人物はGM(「彼」)、
A(「かつての」A)、
B(「かつての」B)、
そしてC(「かつての」GM)とD。幕は上がった。


513 名前:いつかのA(その2) :04/06/21 07:49 ID:???
キャラクターシートを配り、PCを作るにあたってマスターはPL達にこう言った。
「まず、どんなキャラをやりたいか言ってくれ。それに合わせ、個別に
キャラメイクをするから」
場に提示されたのは、魔法や武器のデータのみ。技能制との事だが、
それも「どんな技能が欲しいか」を聞き、要望に対してそのつど作る、との事だった。

各人が要望を出す中、AはGMに「強いキャラがやりたい」と申し出た。
そうすると、GMは少し嬉しそうにあれこれと支持を出し、「これはこの世界でも
トップクラスの実力者だよ」と言ってくれた。他のPCのキャラシと見比べると、
Aのキャラは3倍近いレベルだった。

そうしてキャンペーンは開始された。ルールが不明瞭、というか、
基本判定システム以外はほぼGMの頭の中だけ、という状況のせいでやや1セッションの
時間は長めだったが、そのおかげで考えた事がキチンと返ってくるので、
最初の数回は皆思い思いに(ちなみにパーティは組んでいない)楽しんで遊んでいた。

皆が慣れてきた数回目を過ぎた頃に、最初の嵐が来た。PC達は一つの国を軸に
緩やかな協力関係を築いていたのだが、そこにとてつもない強敵を次々にGMが出してきたのだ。
PC達の陣営を上回る軍隊、聞いた事も無い技能で襲い来る暗殺者、強力な魔法使い。
PC達は毎回のようにボコボコにされ、あげくBのキャラ(美少女)はNPCに拉致された。
GM曰く「そろそろ本気で行こうかと。やりようによっては何とかなるんだよ。
出した敵は皆レベル的には低いし」との事。
Bのキャラ(美少女)はどうなったのか聞くと、「敵の王族に見初められ、
三日三晩子作り」だそうだ。
Aの心の堤防に小さな亀裂が走った。そしてBとC、Dは一足早く行動を決意した。


514 名前:いつかのA(その3) :04/06/21 07:52 ID:???
事実上キャラロストのBと同時に、CとDもPCのリメイクを申し出た。
曰く、「現状のキャラではこれからの展開に対応できそうもない」からだ。
Aは元々戦闘能力重視で作っていたし、これまでの展開でだいぶ愛着を
持っていた事もあり、特になにも言わなかった。

出来上がった新キャラは、Bが高レベルの隠密、Cが何か怪しい裏設定を持った
魔法使い(長いことGMと話をしていたが、詳しい事は聞けなかった)、
そしてDは「発明」という特殊能力を持つキャラだった。

B、C、Dの逆襲と暴走が始まった。
彼らはこれまでの国には留まらず、設定されていた隣国に潜り込んだ。
そこであらゆる手を使い、GMを説き伏せ、とうとう完全に乗っ取ってしまったのだ。
CとDはGMからもぎ取った「発明」の能力と理屈を駆使し、次々と本来その世界には
ありえないものを作り出していった。誰にでも扱える動力や銃、
強力な新魔法や自力で作り出した魔法の装備など。

暴走は続き、GMの制御能力はとうの昔に底を見せていた。
彼らの国は膨れ上がり、GMはただ彼らへの生贄を捧げるのみ。
いつからか毎回のセッションが終わる毎にプリンを取り出し、微妙な笑みを浮かべて
「んー、敗北のプリン!おいちい!」とのたまわるのが通例になっていた。
そんな彼らを見るAの心の堤防は、亀裂を日々深めていった。

516 名前:いつかのA(その4) :04/06/21 07:55 ID:???
そしてとうとうAの堤防が決壊する時がきた。
Aが一人残っていた国が敵とB、C、Dの国の板ばさみで崩壊してしまったのだ。
殺されていく部下のNPC、追いやられる王族のNPC。全てに思い入れがあった。
だが、今や少しばかり強力な個人でしかないAのキャラには、どうする事もできなかった。

Aは壊れた。
「どうせ皆好き放題やっているんだ」「GMさえ言いくるめれば何でもアリじゃないか」。
かつての設定厨が戻ってきた。それも以前よりも強力な屁理屈と被害者意識を持って。

彼はまず、地道な下準備から始めた。一見問題が無さそうな技能をGMに
認めさせ、それを積み重ねた。
そして、必要な材料がそろった頃に、「コレとコレが出来るならこんな事も当然できるはず」
という論法で、次々にありえない厨能力を認めさせていった。
やれ「他人に絶対察知されない技能」、やれ「まず回避不可能な攻撃技能」、
しまいには「何でも切れる技能」を身につけ、

A「何でも切れるって事は(厨屁理屈)だから核爆発も起こせるよな」
GM「...え?」
A「だから、(厨屁理屈)だからだよ!」
GM「...そうか」

等と無理やり認めさせ、一人で万の軍隊を殲滅して悦に浸っていた。
その様にはB、C、Dも引きはじめ、Aを除いてだれた空気が広がりはじめていた。


517 名前:いつかのA(ラスト) :04/06/21 07:58 ID:???
そしてGMの用意した最終決戦。敵は異様にHPの多い悪魔(のようなもの)だった。
うやむやの内に協力状態になったPC達は、過剰な戦闘能力を獲得したAに合わせて
設定されたそれに手も足も出ない。一人喜んで戦いに臨んだAは、また突飛な
事をGMに申請し、おもむろに計算機を取り出した。

A「えーと、これとこれとこれを組み合わせて使うと(厨屁理屈)でこうなって、
基本ダメージがこうだから...。GM、ダメージの桁が計算機の限界を超えました」
GM「...好きにして」

こうして、年単位で続いたキャンペーンの最終決戦は、1ラウンドで幕を閉じた。

Aは一人浮かれていた。
B、C、Dは最早何か言う気力も無かった。
不毛な歴史は繰り返されたのだ。

そんな中、GMはどこか達観した表情でコンビニの袋をあさっていた。
何時からか始まった、いつもの儀式の為に。

「んー、敗北のプリン!おいちい!」

どこかなげやりな、満面の笑みだった。


527 名前:いつかのAのその後 :04/06/21 08:39 ID:???
Aはその後、あらゆるゲームでそのPCのレッテルを貼られ、非常に後悔する事になる。

GMは大変懲りたようで、以後やばそうな提案は却下し、キチンとシステム作成に取り組んだ。
シナリオも若干穏当になった。

Bはその後もひたすら美少女キャラ道をまい進。後にネカマとなり、某MMORPGで告られたり
人生相談のったりしてた。

CとDはときどき悪乗りしたりまともだったり。

で、いまだに当時のメンツで同じゲームをやったりするw


533 名前:A :04/06/21 08:58 ID:???
 >531
多分、まとも…だと思うw
最近はむしろ人の止め役にもなるしなぁ。
なんせ前科があるから、そうそうはっちゃけられんw

スレ21

スレ16の魔界都市 東方クッキー店主で、見事なオチを披露されております。
最終更新:2008年03月03日 05:00