搭載システムは蘭タレス社のAPARと米ロッキード・マーチン社のイージス・システムが最後まで性能試験で争われたが、韓国海軍は2002年にイージス・システムを選択した。核となるイージス・システム関係のソフト開発やインテグレーションは米Lockheed Martin Naval Electronics and Surveillancce社に$267,447,827で発注されている。使用されるイージス・システムはベースライン7・フェーズI。スタンダードSM-2 BlockⅣ対空ミサイルも一緒に供給される。そのほかAN/UPX-29(v)航空機識別追跡システム、J-TIDS(米四軍統合戦術情報分配システム/Link-16)、艦載グリッドロック・システム、航法センサーシステム・インターフェイス等も一緒に供給される。また2006年7月5日、英ロールス・ロイス社はKDX-III型用のAG9140RFガスタービン発電機の初号機を韓国に納入した。今後は韓サムスン・テックウィン社がロールス・ロイス社のから部品の供給を受けて6基(3隻分)を組み立てるほか、現代重工がライセンス生産を行う計画も進んでいる。
イージス兵器システムMk7(AWS:Aegeis Weapon System)はAN/SPY-1多機能フェーズドアレイ・レーダーを中心に、Mk8火器管制システムやMk2意志決定システムなどで構成される総合戦闘システムで、レーダーが探知した目標を自動的に脅威度の高い順に選別し、最も効率的な攻撃方法を迅速に選択する事ができる。KDX-IIIが導入するイージス・システムのベースライン7は、弾道ミサイル対処能力を強化しCOTS(Commercial Off-The-Shelf:開発済み市販製品)の導入によりコストを抑えた最新型。AN/SPY-1は500km以内の360度全周を走査することができ、200以上の目標を同時に探知・追跡する事が可能。また従来型のレーダーに比べてシー・クラッターの影響が少なく、電子妨害にも強いといわれている。KDX-IIIに装備されるAN/SPY-1D(v)は米海軍アーレイバーク級イージス駆逐艦DDG-91「ピンクニィ」以降に装備されている最新型で、天頂方向の探知距離が増大してミサイルや航空機への対処能力が向上しているほか独立信号処理して高速目標捜索が可能になっている。光学捜索システムのVAMPIR-MBは仏SAGEM社製でLPX(独島級揚陸艦)やフランスの空母シャルル・ド・ゴール(Charles de Gaulle)にも搭載されている。3~5mmの中波赤外線センサーと8~12mm遠波赤外線センサーを搭載しており、昼夜に関わらず超音速ミサイルは27km、戦闘機なら18kmの距離で探知・追跡可能。パッシブ・センサーなのでECM(Electronic Counter Measures:電子妨害手段)下でも妨害される事なく捜索できる。
なおイージス・システムに組み込まれているAN/SQQ-89(v)対潜戦システムはKDX-IIIには装備されず、KDX-III用にロッキード・マーチン社が新たに開発しているASWCS-K(Anti Submarine Weapon Control System-Korea)を搭載する予定。ソナーも廉価なDSQS-21 BZ-Mを搭載する。これは韓国海軍が活動する海域は浅海が多く、AN/SQQ-89は浅海域には不向きなためだという。DSQS-21Bは独アトラス・エレクトロニック社製で、ブランデンブルグ級(123型)に装備されている中周波ソナーである。探知距離は約45kmで同時に32目標を追尾可能(対潜システムにもよる)といわれており、KDX-IIIに装備されるDSQS-21 BZ-Mはその改良型なので更に性能が向上していると思われる。ASWCS-KのベースになっているというMSI 2005F対潜システムはノルウェーのフリチョフ・ナンセン(Fritjof Nansen)級フリゲートに搭載されている。KDX-IIIが装備する曳航ソナーはまだ不明だが、ナンセン級と同じものを装備するならCAPTAS(Combined Active Passive Towed Array Soner)Mk2になるだろう。CAPTAS Mk2は低周波アクティブ/パッシブ兼用曳航ソナーで、対潜戦・魚雷警戒・機雷探知に使用される最新型(但しアーレイ・バーク級フライトIIAでは曳航ソナーは廃止されている)
【2009.05.09追記】
韓国海軍は鎮海(チンヘ)の海軍訓練司令部にイージスシステム要員を養成するための訓練施設、AOMTC(Aegis Operation Management Training Center)を開設した。米海軍の同種施設、ATRC(Aegis Training and Readiness Center)に次いで世界で二番目だとの事。自国でイージス整備を行なえるようにして経費を削減する。
(DefenseNews/Kojii.net)
【参考資料】
軍事研究(株ジャパン・ミリタリー・レビュー)
世界の艦船(海人社)
Powercorea
Kojii.net
Jane's Defence Weekly
Global Security
世界日報「2隻目のイージス艦「栗谷李珥」進水式」(2008年11月14日)
NavWeaps「United States of America 5"/62 (12.7 cm) Mark 45 Mod 4 」(2008年4月7日)
朝鮮日報「韓国軍:イージス艦「栗谷李珥」が就役」(2010年9月1日)