KSS-III(韓国次期潜水艦計画)



2006年1月5日の報道によれば、韓国海軍は2020年頃に3,500トン級の次期潜水艦KSS-III型を配備する計画だという。KSS-III型はチャン・ボゴ級潜水艦(KSS-I/209型)の後継として開発され、ソン・ウォンイル級潜水艦(KSS-II/214型)と共に韓国海軍潜水艦18隻態勢の片翼を担うことになる。KSS-III型はこれまで韓国海軍が整備してきた209型や214型のような近海用潜水艦と違い、遠洋での作戦行動を主任務とする。

2005年の朝鮮日報の報道ではKSS-III型は国産され(チャン・ボゴ級、ソン・ウォンイル級ともドイツ製)、ロシアやフランスからの技術支援で原子力潜水艦として建造される可能性もある、とされていた。しかしこのスクープ報道のため、秘密裏に組織されていた原子力潜水艦計画推進委員会が解散に追い込まれ、計画は頓挫したと言われている。

【2006.10.01追記】
韓国軍のDAPA(Defense Acquisition Program Agency:防衛事業庁)の関係者は2006年9月27日、3,000トン級の潜水艦3隻(KSS-III)を2018年から建造すると発言した。開発、建造は全て韓国国内で行われる予定で、この事業の総予算は2兆5,000億ウォンにのぼると見込まれている。韓国国防省は2007年度予算にKSS-III型の基礎研究費として62億ウォンを計上している(結局100億ウォンの研究開発費が認められた)。当局は3年程度で基礎研究を終え、2010年代半ばから事業社を指定し建造の本格準備に入るつもりのようだ。以前からKSS-III型は攻撃原潜として計画されているという噂が存在しており、今回通常動力という発言が流れたのは周辺諸国の反発を考慮したものと思われる。新聞の報道によればKSS-III型の潜行時間はソン・ウォンイル級を上回る連続50日間を予定しているという。3,000トン級の通常動力潜水艦を建造する技術を保有している国は世界でも数少なく、いくら韓国がチャン・ボゴ級やソン・ウォンイル級の生産で潜水艦建造技術を手にしたとは言え、大型潜水艦を自主開発する事は至難といえるだろう。

【2006.12.09追記】
現在韓国ではKSS-III型開発計画について様々な発言や憶測が報道されており、国防省が対応に追われている。2006年12月6日、韓国国防省関係者の「3,000トン級潜水艦の開発は難しいため一時延期し、替わりに214型を6隻追加建造する」という発言が報道された。理由はADD(Agency for Defense Development:国防科学研究所)の基礎研究が当初定められた期間内に終わらないと判断されたためで、KSS-III型開発の遅延を穴埋めするために2兆5,000億ウォンで214型6隻を2010年までに追加建造する予定だという。しかしこの報道のすぐ後に国防省は「KSS-III型開発計画は予定通り推進する」と発表し、前出の報道を否定した。KSS-III型は当初2012年から建造を始める計画だったが、大型潜水艦の国産設計技術が未熟なため2018年まで延ばされた経緯がある。報道では独HDW社が技術移転を渋っているために、潜水艦の国内開発が遅れる事態になったのではないかという推測もされており、ドイツに開発遅延の責任を被せる動きもみられるようだ。

【2006.02.21追記】
DAPA(Defense Acquisition Program Agency:防衛事業庁)は2007年度からKSS-III型潜水艦の開発事業をADD(Agency for Defense Development:国防科学研究所)を中心に進め、2017年度に開発を終えて2018年度から建造に着手する予定だと発表した。設計開発には潜水艦建造のノウハウを積んだ現代重工の特殊船事業部が携わり、フランスやドイツなど国外の企業も関連する可能性がある。KSS-III型は3,000トン級の潜水艦になる予定で、機関は以前噂されていた原子力ではなくディーゼルとAIP(Air Independent Propulsion:大気非依存型推進)によると思われる。

【2007.03.18追記】
韓国を訪れている仏ミシェル国防相は会見で、韓国に対し輸出用ヘリコプターと潜水艦の共同開発を提案したと発表した。この発表によれば、まず最初の段階でフランス側が韓国に対し必要な技術を提供し、次に両国が共同でこれを研究・開発し、最後に第三国に対して製品を輸出する計画だという。但し同国防相は輸出を行うには別途協定を結ぶ必要があると断りを付けた。フランス側は潜水艦について、まずレーダーと通信システムの開発を行いたい意向。現在韓国の潜水艦は全てドイツ製で、KSS-III型もドイツの技術を応用して開発されると思われるが、今回のフランスの提案を韓国が受け入れた場合、フランスの技術が使われる可能性もある。フランスは原子力潜水艦の建造能力を持つが、上記の共同開発が輸出を前提にしている以上、それらの技術提供が行われる可能性は無いだろう。

【2007.05.17追記】
韓国国防省は3,000トン級の国産潜水艦(KSS-III)を2018年までに開発し、2021年までに9隻調達すると発表した。これは最近噂されていたKSS-III開発事業の中止を否定するために、急遽国防省が行なった会見による。5月16日に行なわれた第16次防衛事業推進委員会では、今年(2007年)から先行研究を開始する事が決定された。KSS-III型は潜水艦発射型の巡航ミサイルを搭載し、ソン・ウォンイル級潜水艦建造の際に独HDW社から技術供与を受けたAIP(Air Independent Propulsion:大気非依存型推進)機関を韓国で再設計して搭載する。魚雷発射管の開閉技術も、当初渋っていたHDW社から強引に技術移転を取り付けたという。KSS-III型の開発建造費(9隻)は約2兆5,000億ウォンになると見込まれている。

【2007.05.20追記】
韓国国防省関係者は、KSS-III開発事業は現代重工業と大宇造船海洋が共同で行なうと発言した。

【2007.12.22追記】
ロシアは韓国に対する借款の償還として、軍事技術を提供するという了解覚書を2007年末に締結した。提供される技術の中には潜水艦用の燃料電池に関するものが含まれるという。

【2008.05.10追記】
政府消息筋が伝えたところによると、国防部は海軍の3,000トン級次期潜水艦(KSS-III)の開発事業を1~2年遅らせる方向に「国防改革基本計画」を修正したとの事。盧武鉉政権時代に立てられた同計画の兵器導入事業のうち、事業規模が巨大なKSS-III、グローバルホーク無人偵察機、空中給油機の3事業について順延する方向で修正が行なわれた。2018年までに開発を終える予定だった1番艦の戦力化は2020年になり、2番艦は2022年、3番艦は2023年になる見通しだという。韓国国内企業で設計・建造されるKSS-IIIの費用は、1隻あたり約1兆ウォンにもなる。2007年から基本設計が始まっており、2009年度国防予算には事業費用として250億ウォンが計上されている。
(連合ニュース)

▼韓国NEX1社と三星テックウィン社が共同開発中のKSS-III用戦闘システムのコンソール

【参考資料】
朝鮮日報
連合ニュース
Kojii.net
Defense-Aerospace
PowerCorea


2009-07-04 23:00:23 (Sat)

最終更新:2009年07月04日 23:00
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