F-5E? > F戦闘機「タイガーII」(KF-5E? > F)


▼F-5E

F-5E性能緒元
重量 自重4,430kg/総重量7,120kg
全長 14.69m
全幅 8.13m
全高 4.16m
エンジン J85-GE-21(A/B 2,260kg)×2
最大速度 M1.6
巡航速度 693km/h
戦闘行動半径 700km
上昇限度 15,590m
武装 M39A2 20mm機関砲×2(各280発)
  AIM-9サイドワインダー空対空ミサイル
  各種爆弾/ロケット弾等3,180kg
乗員 1名

F-5E/FタイガーIIはF-5A/Bフリーダムファイターの発展改良型だ。F-5Aは簡素なジェット戦闘機として多くの国で採用され好評を博していたが、東側の戦闘機がMiG-17やMiG-19からMiG-21へと能力が高まっていく中で、F-5Aにもその能力向上が求められるようになった。アメリカ空軍はIFA(国際戦闘航空機)計画で新型供与用戦闘機の開発をメーカーに求め、1970年11月にノースロップF-5-12が採用されてF-5EタイガーIIの制式名称が与えられた。

F-5Eは機首とコックピット周りはF-5Aのものを基本とし、それ以外の胴体は構造を一新した。エンジンにはパワーアップ版のJ85-GE-21を装備し、より大きな空気流入量を確保するため胴体側面のインテイクを拡大している。また後部胴体側面にルーバー式のインレットも増設した。F-5Eは当然重量が増加したが翼面荷重をF-5Aと同等に維持するために、主翼は中央翼部で43.3cm拡げて翼面積を増加した。また主翼付け根前縁長(LEX)部も拡大した。主翼端増槽は廃止され、AIM-9の専用搭載ステーションとなった。F-5Eの最も大きな変化はレーダーFCS(Fire Control System:火器管制装置)の装備である。とはいっても機体の大きさや価格を考えると高級なレーダーは装備できない。そこで採用されたのがエマーソンAN/APQ-153であった。このレーダーはシステム重量僅か50kgという極めて小型のもので、Iバンドを使う空対空戦用のレーダーである。従って地形回避やグラウンド・マッピング機能は持たないが、F-4サイズの目標ならば26km、F-5サイズの小型目標でも13km程度で探知できる。ルック・ダウン能力は有していない。

韓国は南ベトナムへの駆け込み供与で提供したF/RF-5Aの見返りとして、1974年に南ベトナムから脱出してきたF-5E 19機を受領し、その後F-5E 126機とF-5F 20機の新造機の供与を受けた。1981年からは大韓航空の航空宇宙部門でF-5E 48機とF-5F 20機のライセンス生産が行われ、引き渡しは1986年に完了した。F-5のエアフレームとエンジンのライセンス生産は韓国の航空産業の礎となり、この経験を基に三星航空宇宙工業が1995年からF-16の部分ライセンス生産を始めた。F-5E/Fは現在でも韓国空軍で使用されているが、老朽化が激しく近年事故がしばしば発生している。能力向上としてGEC製HUD(Head-Up Display:ヘッドアップディスプレイ)、ハニウェルH423レーザー・ジャイロINS(Inertial Navigation System:慣性航法装置)を搭載し、ノースロップ・グラマンと共同でLRF(Laser Range Finder:レーザー測距器)とデータ送信システムを開発して装備するなど近代化が行われたが、今後はF/A-50により徐々に代替されていくだろう。韓国空軍のF-5E/Fは戦術データリンク・システムを搭載していないため、迎撃はもっぱら地上管制官の音声指示に従って行われる。

なお韓国空軍はF-5A/Bを100機以上供与され使用していたが、現在では全て退役している。

2005年7月13日、F-5F(第10戦闘航空団所属)1機が西海上空で、海軍との合同訓練中に墜落した。
2004年3月11日、F-5E(第10戦闘航空団所属)2機が西海上空で、訓練中に空中衝突し墜落した。
2003年9月19日、F-5E(第8戦闘航空団所属)2機が慶尚南道陜川上空で、訓練中に墜落した。
2003年5月13日、F-5E(第16戦闘航空団所属)1機が慶尚で、離陸直後に墜落した。
2008年11月4日、F-5E(第8戦闘航空団所属)2機が京畿道抱川でCAS訓練中に空中衝突し、1機が墜落した。
2010年3月2日、F-5E 1機とKF-5F 1機(いずれも第18戦闘飛行団所属)が江原道江陵市西で訓練中に墜落した。
2010年6月18日、F-5F(第18戦闘航空団所属)1機が空対地射撃訓練後、帰還途中に江陵基地から約1.8kmほど離れた洋上で墜落。

【2010年8月1日追記】
韓国空軍では2010年6月18日に発生したF-5Fの墜落事故を受けて、既存のF-5E/F 150機の射出座席をより能力の高いタイプに換装することを決定した。事業費用は500億ウォンで2011年度から13年度までに換装作業を実施する予定。

従来のF-5E/Fの射出座席では高度660m以下での脱出は困難であり、事故発生時の生存率を低下させていた。換装されるマーチンベイカー社製の新型射出座席は、T-38練習機向けに開発されたものだが、F-5E/Fでも問題なく換装可能[1]。高度ゼロ・速度ゼロの状態での脱出が可能となっており、アメリカのT-38練習機でも2005年に同社の射出座席への換装を実施している。

▼KF-5E
▼KF-5F

▼高速道路からの離発着訓練を行うKF-5F
▼旧ソ連のTu-16爆撃機をインターセプトする韓国空軍のF-5F
▼旧ソ連のIl-20電子情報収集機をインターセプトする韓国空軍のF-5E

▼機首部のパネルを開いてM39A2 20mm機関砲を展示するF-5E

【参考資料】
世界の傑作機No.95 T-38タロン、F-5A/Bフリーダムファイター(文林堂)
世界の傑作機No.96 F-5E/FタイガーII、F-20タイガーシャーク(文林堂)
J-Wings 2007年8月号(イカロス出版)
月刊航空ファン(文林堂)
Jウィングス特別編集 戦闘機年鑑2005-2006(青木謙知/イカロス出版)
別冊航空情報 世界航空機年鑑2005(酣燈社)
朝鮮日報
中央日報
PowerCorea
中央日報「F-5戦闘機2機が同時墜落 」「F-5戦闘機2機、どうして墜落したか 」
聨合ニュース「F-5F戦闘機が東海で墜落、操縦士2人行方不明」(2010年6月18日)
聨合ニュース「F-5F戦闘機墜落の原因は『海霧』」(2010年7月29日)
M&M「空軍、500億をかけて’F-5’の射出座席を交換」(2010年7月30日)[1]


2010-08-01 04:13:16 (Sun)

最終更新:2010年08月01日 04:13