MiG-29戦闘機(ファルクラム)(北朝鮮)

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▼2003年3月、米RC-135に接近する北朝鮮のMiG-29

MiG-29SE性能緒元
重量 10,900kg
全長 17.32m
全幅 11.36m
全高 4.73m
エンジン クリモフRD-33 A/B8,300kg 2基
最大速度 マッハ2.3
航続距離 2,100km
上昇限度 18,000m
武装 Gsh-30 30mm機関砲×1
  R-27Rセミアクティブ・レーダー誘導空対空ミサイル(AA-10 Alamo)
  R-60赤外線誘導空対空ミサイル(AA-8 Aphid)
  爆弾等4,000kg
乗員 1名

MiG-29(NATOコード:Fulcrum/ファルクラム)はMiG-21/23の後継機となる前線戦闘機として旧ソ連で開発された。1972年に出された運用要求は、視程外射程(BVR)戦闘能力を有するとともに格闘戦でも高い能力を有し、アメリカの新世代戦闘機であるF-15やF-16を圧倒する性能が求められた。ミコヤン設計局のベリャーコフ主任設計者はこれに基き「プロダクト9」という試作機を製作し、1977年10月にラメンスコイェ航空試験センターで初飛行に成功。その後幾つかの小改修が行われ、MiG-29として1982年からモスクワのズナーミャ・トルーダ工場で量産が開始された。部隊への配備が始まったのは1983年になってからである。

MiG-29は双発の中型戦闘機で、全天候下で制空戦闘能力を発揮する事ができる。統一後のドイツで行われたMiG-29とF-16のDACT(異機種間空戦訓練:Dissimilar Air Combat Training)では、F-16を圧倒する場面もあり西側パイロットを警戒させた言われている。近接空戦能力を重視して設計された本機の旋回半径は速度800km/hで350m、同408km/hで225mである。エンジンはクリモフRD-33の双発。前線で使用する局地戦闘機という事で搭載燃料は少なめになっている。機首にはファザトロンN-019(RP-29)コヒーレント型パルス・ドップラー・レーダーを装備している。このレーダーは捜索距離100km、追跡距離70kmで、ルック・ダウン/シュート・ダウン能力を持っている。また10目標を同時に追跡可能。このレーダーを装備する事でMiG-29は中射程空対空ミサイルの運用能力を持ち、R-27セミアクティブ・レーダー誘導空対空ミサイル(NATOコード:AA-10 Alamo/アラモ)やR-77アクティブ・レーダー誘導空対空ミサイル(AA-12 Adder/アッダー)を搭載する事ができる。格闘戦闘用にはR-60(NATOコード:AA-8 Aphid/エイフィッド)かR-73(NATOコード:AA-11Archer/アーチャー)といった赤外線誘導空対空ミサイルを搭載する。兵装搭載ステーションは主翼下のみで、片側3箇所。最内側にR-77を1発ずつ、外側にR-73を2発ずつ、合計空対空ミサイル6発を搭載するのがMiG-29の通常装備だ。また爆弾、ロケット弾ポッドなどの対地攻撃兵装も搭載可能。胴体下にもハード・ポイントがあるが、ここはコンフォーマル型燃料タンクの専用ステーションで、兵装類は搭載できない。コックピットの風防前にはIRST(Infra-Red Search and Track:赤外線捜索追跡)システムとOEPS-29レーザー測距装置の入った収容部がある。IRSTの探知距離は約15kmで、この光学センサーはヘルメット装着照準システムとも連動するようになっている。自己防御システムとしてはSO-69「シレナ3」とSRO-15の2種類のレーダー警戒装置と、BVP30-26Mチャフ/フレア・ディスペンサーが装備されている。

北朝鮮は1980年代末までにロシアから購入したMiG-29(完成品)を約22機保有していた。また北朝鮮は1990年代初期にロシアとの合弁で平安北道郭山・泰川にMiG-29組立工場を建設し、1990~93年の間に29機分のノックダウン用パーツを受け取って組み立てたという(1989年に工場で働くロシア人技術者500人が渡朝した)。北朝鮮で組み立てられた最初のMiG-29 2機は1993年4月15日の金日成誕生日に合わせて初飛行を行った。しかしこの組立工場は1993年以降、ロシアからのパーツ供給が無いために稼動しなかったようだ。これはロシアが経済難によりMiG-29のノックダウン用パーツの現金即決を求めて来た為や、韓国・ソ連の国交樹立が成った為と言われている。韓国とアメリカの情報筋は1990年代末に北朝鮮がロシアから10数機分のパーツを輸入し、組立てたと推測している。また北朝鮮はロシア以外のMiG-29保有国からパーツを入手する道を模索し、ミサイルを供与する見返りにイラクとシリアから得たパーツを使って1993年以降も毎年2~3機のMiG-29を組み立て、計15機を完成させたとロシア関係筋は語っている。北朝鮮は2000年のプーチン露大統領の訪朝以降、ロシア側にMiG-29用部品とミサイルの無償支援を要請しているが、ロシアはドルでの決済を要求しているため交渉は難航しているようだ。2006年現在、北朝鮮空軍は40機程度(1個戦闘機連隊)のMiG-29を保有しており、首都平壌の防空のため順川基地に配備している。

2003年3月、アメリカのRC-135偵察機に対し北朝鮮はMiG-29とMiG-23を中朝国境に近い漁朗(オラン)基地からスクランブル発進させ、15~20メートルの距離まで接近し威嚇した。MiG-29は主翼下に増槽とR-60赤外線誘導空対空ミサイルを装備しており、後の通信解析によりパイロットは何度もRC-135の撃墜許可を求めていたという(結局撃墜許可は下りず、パイロットが手信号で警告するに留まった)。亡命北朝鮮パイロットの情報により、北朝鮮空軍は慢性的燃料不足でパイロットの訓練不足が著しいとされていたため、アメリカ軍は北朝鮮がMiG-29を含む複数機をインターセプトに上げてきた事に衝撃を受けたという。この時に撮影された画像から北朝鮮が保有しているMiG-29は性能向上型である9.13タイプである事が判明した。恐らく9.13タイプをベースに更に性能向上が図られたMiG-29Sの輸出型であるMiG-29SE「ファルクラムC」だろう。MiG-29SEはL-203BEアクティブ電子妨害装置を装備し、コクピット後部の胴体を盛り上げて機内燃料を75リットル増加搭載、最大装備搭載量も3,200kgまで増加している。レーダーは改良型のN-019Mで、10目標を同時追跡しながら2目標を捕捉攻撃する事が可能になっている。なおMig-29SEはR-73やR-77のような高性能AAMを装備可能だが、北朝鮮には供与されていないと思われる。また恐らくKh-29のような空対地ミサイルも保有していないだろう。北朝鮮から発進したMiG-29の行動半径は日本列島の半分に及ぶ。

▼RC-135偵察機の後方から接近する北朝鮮のMiG-29。主翼下にR-60赤外線誘導空対空ミサイル(NATOコード:AA-8 Aphid/エイフィッド)が見える。
▼4機編隊で飛行する北朝鮮のMiG-29
▼北朝鮮空軍のMiG-29とパイロット

▼北朝鮮の順川基地(第1戦闘機師団)に駐機するMiG-29と思われる機体

【参考資料】
月刊航空ファン(文林堂)
Jウイング特別編集 戦闘機年鑑2005-2006(青木謙知/イカロス出版)
別冊航空情報 世界航空機年鑑2005(酣燈社)
北朝鮮軍の全貌(清水惇/光人社)
Grobal Security
North Korea Today


2009-04-05 01:38:11 (Sun)