サンオ型小型潜水艦


▼1996年9月、韓国江陵市の海岸で座礁したサンオ型

性能緒元
水中排水量 277t
全長 35.5m
全幅 3.8m
全高 3.7m
主機 ディーゼル 1基 1軸(300馬力)
水上速力 7kts
水中速力 8kts
最大行動日数 約20日
乗員 20名(+工作員5~10名)

【兵装】*魚雷は戦闘型のみ
魚雷 533mm魚雷 / 魚雷発射管 2~4門
機雷   16発

【電子兵装】
捜索レーダー 機種不明 1基
パッシブ・ソナー 機種不明 1基

北朝鮮で国内建造された小型潜水艦。サンオ(Sang-O:鮫の意)という名前はアメリカ軍が付けたコードネームであり、北朝鮮国内でどのように呼ばれているかは不明である。北朝鮮が旧ユーゴスラビアから購入した商業用潜水艇を、リバース・エンジニアリングする事によって得た技術で建造された。サンオ型がいつから建造され始めたのかは資料によってまちまちだが、1990年前後からと推測されている。1997年以降は建造されていないようだ。現在北朝鮮は20~40隻のサンオ型を保有しており、多くが海軍ではなく総参謀部直属の軍事諜報機関である偵察局に所属している。北朝鮮が韓国との大規模な戦闘を再開した場合、サンオ型は自国港湾の防衛や韓国主要軍港の封鎖、航路への機雷敷設、特殊部隊の浸透作戦に投入されるだろう。

戦闘タイプのサンオ型は艦前部に533mm魚雷発射管を2~4門装備しているが、再装填装置は備えておらず搭載魚雷はあらかじめ発射管に装填してあるものだけである。機雷を搭載する事も可能で、船体側舷のラックに装備する。工作員の投入に使われる浸透タイプは魚雷発射管を撤去し、そのスペースに工作員用の武器庫と兵員室、水中用ハッチ(艦首底面)を設けている。司令塔には潜望鏡のほか、小型の捜索レーダーと通信用アンテナ、電波傍受用アンテナを装備している。艦内にはトイレも用意されており、この事実に韓国海軍関係者は強い衝撃を受けた。

1996年9月18日、韓国東海岸の江陵市で座礁しているサンオ型が発見された。韓国軍は市民の通報を受けるまで、侵入したサンオ型の探知も工作員潜入の察知もできなかった。警察が内部を調べた時には既に乗員全員が武器を持って逃走していたため、陸軍6万人を動員して捜索する大騒ぎとなった。サンオ型から上陸したのは26人で、うち11人が自殺し13人が韓国軍に射殺され、1人が逮捕された(1人行方不明のまま)。工作員との銃撃戦により、韓国軍兵士も16人が死亡した。逮捕された李光洙上尉によると、同艦は在韓米空軍基地の偵察を目的に工作員を上陸させたあと座礁したという。北朝鮮政府は同艦について訓練中に機関故障で漂流して座礁したと発表し、艦と乗員の即時返還を求めたが韓国は応じなかった。

この事件で逮捕された李光洙上尉は、サンオ型での訓練航海で日本海中央部の大和堆(能登半島北北西約300km)付近に何度も進出しており、さらに南下して日本の領海線近くまで行く事もあったと述べている。日本近海の海底情報は、偵察局所属の工作船や朝鮮大進船舶の貨客船「万景峰(マンギョンボン)92号」などが装備するソナーから得たデータを元に作製されており、サンオ型をはじめとする北朝鮮の潜水艦・潜水艇はその情報を使用して日本付近まで潜入しているものと思われる。

サンオ型は2004年10月にも韓国領海への侵入を行なっている。この時は2隻がほぼ同時に領海に侵入し、うち1隻は数日で北朝鮮に帰還したが、もう1隻は約10日間に渡り調査活動を繰り返した。

▼捕獲され、江陵(カンヌン)に展示されているサンオ型。側舷に機雷搭載用金具が、艦首底部に工作員用水中ハッチが見える。
▼サンオ型後部。座礁した際に無理にエンジンの回転数を上げたため、捕獲された時にはシャフトとスクリューが著しく損傷していたという。
▼サンオ型の内部。
▼サンオ型の機関室。

【参考資料】
世界の艦船 2003年3月号(海人社)
軍事研究 2002年3月号(株ジャパン・ミリタリー・レビュー)
北朝鮮軍の全貌(清水惇/光人社)
Grobal Security


2007-11-23 19:37:52 (Fri)

最終更新:2007年11月23日 19:37