MGM-140地対地ミサイル「ATACMS」(韓国)


▼アメリカ軍のATACMS

MGM-140/M39 ATACMS(Army Tactical Missile System:陸軍戦術ミサイルシステム)は大型の長距離地対地ミサイルで、アメリカ陸軍の要求により1986年から開発が始まり1991年から生産を開始した。湾岸戦争では部隊配備開始から間もないATACMSが投入され、イラク軍に「鉄の雨」と恐れられるほど猛威を振るった。

ATACMSはM270装甲ロケットランチャーの発射ポッドに2発搭載できる。INS(Inertial Navigation System:慣性航法装置)を内蔵しており、弾道修正が可能。最大射程は約165km。M74対人・対物弾薬を950個内蔵しておりATACMS 1発で200×200mの範囲に被害を与える。改良型のBlock1AはM74の内蔵量を300個に減らし、射程を300kmまで延ばしたタイプ。INSに加えてGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)も装備しており、命中精度が向上している。ATACMSは長距離対地ミサイルだが、300発のM74ボムレットを収容した長距離クラスター爆弾のような広域制圧用のミサイルで、大量破壊兵器ではない。

韓国軍は1998年まで「米韓ミサイル開発覚書」により最大射程180km以内のミサイル・ロケットしか保有できなかったが、1999年1月の米韓安全保障協議で射程300kmまでのミサイル・ロケットの保有を認められた。これを受けて韓国陸軍はM270装甲ロケットランチャー(韓国名:黒龍)とそれに搭載するATACMS Block1A 111発をFMS経由で導入する(約81億ドル)決定をし、2004年までに配備を終えた。M270とATACMSの配備により、韓国軍は強力な長距離制圧火力を手に入れた。MLRSは各軍団直轄の砲兵部隊に配備されていたが、2006年9月28日に新設されたミサイル司令部へ管轄が移された。

【参考資料】
月刊航空ファン(文林堂)
戦車名鑑-現用編-(後藤仁、伊吹竜太郎、真出好一/株式会社コーエー)
戦車研究室
朝鮮日報
Military Analysis Network(Federation of American Sientists)

【関連項目】
M270装甲ロケットランチャー「黒龍」(MLRS)
M985弾薬運搬車


2007-07-15 14:05:59 (Sun)

最終更新:2007年07月15日 14:05
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