K30 30mm自走機関砲「飛虎」



性能緒元
重量 25.0t
全長 6.97m
全幅 3.17m
全高 4.43m
エンジン MAN D2848MT 液冷ディーゼル 520hp
最高速度 60km/h
航続距離 500km
武装 エリコン 90口径30mm機関砲×2(500発)
装甲  
捜索レーダー NEX1 MPS-1(X-band)
目標追跡システム レイセオン EOTS
乗員 3名(車長、操縦手、砲手)

K30「飛虎(ビホ)」は韓国国産の自走対空機関砲。機械化部隊に追随できる機動性を有し、低高度で侵入してくる敵航空機やヘリコプターを撃破する近接防空兵器として大宇重工で開発された。開発計画は1983年からスタートし、途中予算や技術的問題に悩まされて開発は難航したが、試作テストでは満足すべき結果を得られ無事完成した。投じられた開発費用は数10億ウォンといわれる。K30の生産は2001年9月から開始され、韓国陸軍最精鋭である第7軍団の第20機械化歩兵師団や第9軍団の第26機甲師団などにK263A1 20mm自走バルカン砲「天弓」の後継として配備が進められている。一両あたりの単価は48億4600万ウォンといわれる[6]。2007年までに54輌を生産、2008年から第2期分として120輌を追加生産し、最終的には2016年までに396輌を配備する計画であった。その後、「国防改革2020」による見直しが行われ2006年には調達数は167輌に削減された[5]。

K30機間砲は装軌式車体に30mm機関砲2門と捜索レーダー、光学センサーを持つ砲塔を載せている。車体はKSAM自走対空ミサイル「天馬」にも使用されている大宇重工社製の汎用装軌式車輌で、車体前方左側が操縦席、右側が機関室になっている。その後方は戦闘室で、車体後部には大型の乗降用ハッチが設けられている。エンジンはドイツのMAN社製液冷ターボチャージド・ディーゼルで、60km/hの最大速度を発揮できる。また車内は自動消化装置、NBC防護システムが完備されている。浮航能力があるかどうかは不明。砲塔に2門装備している30mm機関砲はスイスのエリコン・コントラヴェス社製で、有効射程約5,000m、発射速度は最大毎分650発(2門で1,300発)。通常は10~20発のバースト射撃が行われる。砲の俯仰角度は-10~+70度。砲身命数は3,000発だが、配備直前の2004年には2,800発以降で命中精度の低下が起こることが判明してリコールが行われている[6]。弾薬は韓国の豊山社がライセンス生産しているK155 HEI(high explosive incendiary:高性能焼夷弾)などを使用する。砲塔後部両側面には5連装の発煙弾発射機がそれぞれ1基ずつ装備されている。

砲塔後部の捜索レーダーは韓国NEX1社製のMPS-1で、ビーム幅がシャープで距離分解能の高いXバンドを周波数として使用している。捜索範囲は約20kmでレーダーはIFF(Identification Friend or Feo:敵味方識別装置)と連動しており、高いECCM(Electric Counter Counter Measure:対電子妨害手段)性能を有しているとNEX1社は主張している。また砲塔前部には米レイセオン社製のEOTS(Electro Optical Tracking System:電子光学追跡システム)を装備している。これは倍率2.4~8.0倍のテレビ・カメラ、FLIR(Forward Looking Infra-Red:前方監視赤外線)システム、LRF(Laser Range Finder:レーザー測距器)などを組み合わせた全天候型の目標追跡システムで、敵の電子妨害下や悪天候時でも射撃に必要なデータを得る事が出来る。EOTSの最大追跡範囲は約7km。捜索用レーダーと追尾用EOTSが別になっているので、K30は目標を追尾射撃しつつ別の脅威目標を監視する事ができる。レーダーやEOTS、環境センサー(砲塔上面右に装備)から得られたデータは即座に射撃指揮システムに送られ、リアルタイムで射撃緒元を計算する。即応性も高くシステムに火を入れてから最短6秒で射撃を開始する事が可能。また砲塔上には車長用の独立パノラマ・サイトも装備されている(K1戦車が装備しているKCPSと同じものか?)。SPAAGにこのような車長用の独立ペリスコープが備えられているのは珍しいが、どういった意図で装備されたのかは不明である。

2006年10月に報道された内容によると韓国軍は装輪型の飛虎を開発し、2013年から5兆ウォンを投じて約750輌を生産する計画だという。また同じ報道によれば飛虎のレーザー測距器は非常に故障が多く、夜間には使用出来ないとハンナラ党議員が指摘しているという。この議員は、2006年5月に行われた飛虎の射撃訓練で1,000m離れた目標に200発中6発しか命中させる事が出来なかったと主張している。

2013年6月、防衛事業庁はK30「飛虎」の戦力化が完了したことを明らかにした[7]。防衛事業庁では飛虎の配備完了により、装甲/機械化部隊や首都圏の経空脅威に対する防御能力がさらに向上したと評価。

防衛事業庁では今後も飛虎の継続的な能力向上を行うとしており、2013年度中の実用化を目標にKPSAM携帯対空ミサイル「神弓」の連装発射機2基を飛虎の30mm機関砲上部に搭載した改良型の開発を進めている[7][8]。この改良では、連装発射機に加えてミサイル関連の装置を作動させる駆動装置、電源などが追加装備され、既存の射撃統制システムに神弓ミサイルの制御機能が追加された[8]。神弓の射程は7,000mであり、30mm機関砲の射程外の航空機に対する迎撃が可能となり、自走対空車輌としての能力をさらに向上させる事になる[7]。

▼首都防衛師団(機械化)の防空大隊に配備されたK30「飛虎」
▼射撃訓練を行うK30

▼K30の後部
▼K30の砲塔アップ。砲身の間にあるのが光学目標追跡システム。
▼上部ハッチから覗いた砲塔内部。左が車長席、右が射手席。

【参考資料】
[1]軍事研究(株ジャパン・ミリタリー・レビュー)
[2]PowerCorea
[3]R.O.K Joint Chiefs of Staff
[4]Grobal Security
[5]連合ニュース
[6]비겐의 무기사진 전문 이글루입니다「이빨 빠진 호랑이’ 자주대공포 ‘비호’대공포-자주」(2012年12月11日)
[7]뉴스zum「영공 방어 핵심전력, 대공포 '비호' 전력화 완료」(2013年6月25日)
[8]공감언론 뉴시스통신사「영공방어 책임질 '비호+신궁' 新개념 복합대공화기 연내 전력화」(2013年5月28日)

【関連項目】
KSAM自走対空ミサイル「天馬」


2013-06-28 05:34:03 (Fri)

最終更新:2013年06月28日 05:34