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「イニシアティブの居場所2」(2012/10/15 (月) 20:39:41) の最新版変更点
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***イニシアティブの居場所 2
それはある日の夕刻の事。
「あー、やっと家に帰れたぜーっ。」
二人の住んでいるアパートのドアが勢い良く開けられて、そして揃って帰宅した神田、栗原がその敷居を跨いだ。
先に玄関から部屋に上がった神田は、よほど疲れているのか、そのまま畳みの上にへたり込んで動かなくなってしまう。
「神さん、靴くらい揃えてから部屋に入れって、いつもいってるでしょうが。」
と、神田の行儀の悪さをいつも見咎める栗原も、今日は相当疲れているのか、それ以上小言を言うのも煩わしいとばかり、自ら神田の分も靴をそろえて、投げ出されている制帽を拾い上げて玄関の所定の場所に置いてから、神田に続いて部屋に上がった。
「おや、相当お疲れのようで。何か飲む?」
「ビ・・・ビール・・・。」
「はいはい、一昨日のうちに冷蔵庫に入れておいて良かったね。」
その前日の朝は訓練非常呼集で朝早くから呼び出され、そのまま日中の課業を終えて更にアラートについた後、またそのまま通常の勤務についていて、ようやく開放された二人は、職場でこそさして疲れている素振りを見せていなかったが、内心は非常に疲れ果てていた。
普段なら帰宅してすぐに、制服を着換えないままへたりこんでビールを要求することなど、栗原が許すはずもなかったのだが、さすがに今日くらいは仕方がない、と栗原はそれを大目に見る。
「グラス、冷やしてないんだけど、缶のままでいいか?」
すぐに冷蔵庫からよく冷えた缶ビール2本を手に現れた栗原が、その片方を神田に差し出した。
西日の入るボロアパートは帰ってきた直後が一番熱気でムッとしている。その温室のような部屋の中で、冷えた缶が手の平から体温を奪っていく感触は非常に心地よくて、そして開封した直後の最初の一口目は、本当に命の水のように感じられる。
「うめぇ。」
「そりゃ良かった。」
喉を鳴らしてそれを流し込んだ神田の顔が、幸せそうに綻んでいくのを見て、栗原もクスっと笑顔を見せた。
「今日だけだぞ。」
そして、そう言って神田の隣に腰を下ろした。
しばらくの間、二人並んで缶をあおっていたが、
「・・・で、この後どうする?メシ先にするか?」 先に1本目のビールを飲み干した神田が、それを畳の上に置いたのを見て、栗原はその後の行動についてそう尋ねた。
それに対して神田は、
「うーん・・・。」
となかなか煮え切らない。
食事を先にするか風呂に入るのを先にするかを神田が悩むのは日常茶飯事で、それはその日の天候や気温、食事のメニューに大きく左右される。
栗原としてはそうやって神田の返事がすぐに返って来ないことは想定の範囲内だったので、その返事をせっつく事もなく、飲みかけの缶を神田の方に押し付けて立ち上がる。 「残りやるよ。とりあえず風呂の準備だけしてくるから、その間にどうするか決めて置けよ。」
仕方ないな、というように神田を見て笑いながらそう言う栗原は、西日を横顔に受けて、もともと色素の薄い髪と瞳が金色にキラキラとしていて、とてもキレイだった。
それにドキリとさせられた神田は、思わずそんな栗原を引きとめようと手を伸ばしたが、途中でそれを思い直して慌ててその方向を少し替えて、栗原の手からビールの缶を受け取る。
ビールはまだ半分近く残されていて、立ち上がって風呂場の方へ消えていく栗原を見送って神田はそれに口を付ける。
つい先刻まで栗原が直に唇を付けていたその飲み口は、そのまま栗原の味が残っているようで、ほろ苦い筈のその中身でさえも酷く甘く感じられて神田は、気温の為だけではなく身体が熱くなっていくのを感じていた。
季節はもう真夏に近くて、制服は当然夏制服になっていて、それを着ている栗原はひどく艶っぽいのだ。
涼しさを念頭に作られている服だから、襟元も袖口もゆったりとした造りになっている。そこから覗く胸元も二の腕も非常に肌理の細かい色白の肌をしていて、それを思い出した神田はますます自分の身体が熱く火照っていくのを感じていた。
それはもう、栗原が風呂場から再び姿を現した時にはピークに達していて、
「決まった?風呂?メシ?どっち?」
と、神田の前に立ちふさがった栗原に、神田は手を伸ばし、栗原のそのほっそりとした手首を掴んで自分の方へと引き寄せたのだった。
「わっ・・・。」 立っている状態から突然に引き降ろされ、栗原は突然の事にバランスを崩して、神田の腕の中に崩れ落ちる形になる。
「何す・・・、こらっ。」
そのまま動きを奪うように抱きしめられた栗原は、身体をよじって抵抗しようとするが、それから続く神田の発言に更に驚かされる。
「・・・とりあえず、じゃあ栗が欲しいな・・・。」
「なっ・・・。」
唇を重ねられながら厚い昂りを押し当てられて、栗原は神田が本気だということを悟った。抵抗しようにも、いや抵抗しようとすればする程、神田の腕はさらに強く栗原の身体を絞めつけてくる。
仕方がなく、ふっと抵抗をやめ、栗原が身体の力を緩めると、ようやく安心したように神田は奪い続けていた栗原の唇を解放した。
「・・・我慢できねぇのか?」
「うん、だって栗見てると、ついつい・・・。」
「ったく、ヤりたい盛りのガキじゃねぇんだから、ちったぁ自重できんのかね。」
「もう勃っちゃったし・・・お願い、栗・・・。」
「しょうがねぇボウヤだな・・・。」
言いながら栗原は、その手を神田の股間に伸ばす。
制服のズボンの上からでも、ハッキリと見てとれる程に存在を誇張しているそれを、そのまま柔らかく握りこんで、そして神田の耳元で囁いた。
「んじゃ、今からお兄さんが優しくヌいてやっからさ・・・、力抜けよ神田・・・。」
「・・・って・・・、わっ、何すんだよ、栗っ。」
栗原の動きは素早く、言いながら神田のズボンのベルトを外しファスナーを下げると、そのまま下着ごとズボンを脱がせにかかる。
押し退けようと、神田は空いた手で栗原の腕を掴むが、昂った塊を直にその冷たい掌に握りこまれて、敏感な先端を指の腹で擦られ、そこには力は入らなかった。
「ん・・・っ・・・。あ・・・もう・・・。」
栗原の手の動きは予想外に激しくて、そして巧みに快感を引き出していた。
「堪え性のねぇ身体だな・・・、俺を楽しませてるつもりでもっと堪えて見せろよ。」
そしてさらに言葉で弄ることも忘れていなかった。
怜悧な貌を非情に歪ませて、栗原は神田の快楽に溺れていく表情を見つめてクスっと笑う。堪えきれないことをわかっていながら、更に巧みに神田自身を翻弄していくと、余程溜まっていたのか、そのシチュエーションに知らず知らず興奮させられたのか、神田はすぐに上り詰めて栗原の掌にその欲望を放った。
掌に受け止めきれなかったソレは、制服の上衣を開かせて露になった引き締まった下腹にまで飛び散っていて、そこを白濁に汚している。
「元気なもんだ。夜まで我慢してくれりゃ良かったのに。」
と、神田の耳にも聞こえるようにそう言って、栗原は神田の上から身体を起こす。
自分の手についた汚れをずり降ろした神田の下着で拭って、
「神田、いつまでもボケっとしてないで風呂行って洗ってこい。メシ作っとくからさ。・・・おい、聞いてんのか?」
反応のない神田のその頬を軽く手で打つと、
「・・・・・・も、このまま寝たい・・・。」
「ふざけんな、てめぇ。俺が何の為にこんな事したと思ってんだっ。」
「だって・・・気持ち良すぎるんだもん・・・。」
「ふぅん、起きる気はねぇのか?」
「・・・体、動かねぇもんよ・・・。」
自分の体内リズムと関係なく無理矢理にイかされた後の気だるさは、栗原にもよくわかる事だったが、動けないって事はないだろう、と栗原は思う。それなら神田が普段自分に強いている事のほうが余程酷い事だろうに、と。
それよりも何よりも、通常の夜の営みよりもこんな戯れ事の手慰みの方が良いと言われることが気に入らなかった。
「・・・へぇ、じゃあ余程好評だったと・・・。んじゃ次からも手だけでいいって事か?」
「・・・え?」
その言葉に神田はようやく、ハっと体を起こす。
「・・・え、ちょ・・・それはイヤだ・・・。」
けれども、その神田の抗議をそれ以上聞こうとする事もなく、立ち上がって台所の方へと消えていく栗原に、神田はそれ以上逆らえるわけもなく。
言われるがまま、風呂場に向かい、そして少しでも残された邪な思いを晴らそうと、十分に時間をかけて入浴を終えてから食卓に向かうのだった。
主導権を握ったり、握られたり。相手に対して優位に立とうとすればする程その足元をすくわれたりで。
「なぁ、栗ぃ・・・。」
食事の合間にそうやって話かけると、
「・・・ん?どした?」
と、さっきまでの非情な表情はどこへやら、の屈託のない笑みを見せてくれる。それが演技だとはとても思えなくて、神田はそれを幸せに感じるのだった。
「・・・、なんでもない。今日のメシ、すげぇ旨いな。」
そうして、なんとなくごまかすようにそう答えて、箸でかき込む時の手にした茶碗に顔を隠しながら栗原の方を盗みみた。
その栗原の表情が少し嬉しそうで、神田は少し安心する。
「あ、神さん。俺、風呂に入ってくるからさ。洗い物頼める?」
そう言って栗原は自分の分の食器を指した。最近では、アイロンがけ、洗濯についで食器を洗うのも完璧にこなしつつある。
「・・・よしっ、やるか。」
神田はめずらしくそこで一念発起した。
通常ならそうやって神田が洗い物をしていても、ダラダラをかけてやってしまい、途中で栗原は風呂から出てきてしまうのだ。
けれど、今日はそうはさせないと心に誓う。必ず自分の方が先に洗い物を済ませてしまうのだ、と。
そして風呂上りの栗原を強引に抱きしめて、主導権を奪ってしまうつもりだった。
主導権を栗原から移譲して貰うのはいつだって至難のワザで、これもそんな日常のひとコマである。
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