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Pinup Girlのアヤマチ


 「行かないと言ったら行かない!何度言わせるんだ、」
 それはある日曜の事だった。昼メシを街に出て食べよう、と主張する神田に、栗原は断固として反対の構えだ。
 「えー、いいじゃんかよぅ。たまには外食くらいしたって。給料も出た事だしさー。」
 「行きたきゃ一人で行けばいいだろ。」
 「栗と行きたいんだよぅ。」
 「…神田、俺が外に出たくねぇ理由を忘れたとは言わさねぇぞ?」
 「あ。あはははは…。」
 「笑ってごまかすんじゃねぇっ!!」
 そう、この日栗原には街に出かけられない大変な事情があったのだった。 
 それは半年程前の出来事だった。




 「お、なんでぇ、盗撮航空隊じゃねぇか。」
 昼食から戻ってきた神田は、ショップの中に不審な人物が居る事に気が付いた。
 と言っても、内輪の人間には違いないのだが、神田の所属する飛行隊の人間ではなくて、お隣の偵察航空隊の若いパイロットだった。
 神田とは航学で同期だった人間で、お互い気心が知れている。
 「…偵察だ、て・い・さ・つ!人聞きの悪い事言わんでくれ。」
 「で、どうしたんでぇ、今日は大っぴらにカメラなんか構えて。」
 学生の頃から写真が趣味だった彼は、趣味が高じたのかRF乗りになった。もっとも今彼が手にしているのは自前の一眼レフで、素人目にもプロ仕様の高価そうなものだったのだが。
 「あぁ、これね。いやー、モデルを探しててさー。」
 「モデル?何の?」
 「あれだ、自衛隊芸術祭ってのがあるだろ?あれの写真部門にだそうと思ってさ。優勝賞金が50万。テーマは働く女性自衛官。どだ?」
 「んなもん、てめぇの所で調達しろよ。わざわざうちに出張ってくんな。」
 「まぁ、そー言わずにさ。ほら、うちのWAFちゃん達じゃ、どーもねぇ。誰かカワイイ子知らねぇ?」
 カワイイ子、と言われて一通り飛行隊にいるWAFの顔を思い浮かべて、けれど最後に神田の脳裏に浮かんできたのは相棒の栗原の顔だった。
 「あぁ、居るぜ。すんげぇのが。」
 「おお!紹介しろ。是非にも!すぐにも!」
 「ただし男だけどな。」
 「あとこーっ??」
 「見た目女だったら問題ねぇんだろ?」




 「10、と言いたい所だが5で手を打とうじゃないか。」
 「5!? せめて3くらいで何とか。」
 「何ならやめてもいいんだぜ?」
 「わかった。その代わり5カット撮らせてもらう。」
 「1カットに付き1ねぇ。悪くねぇな。」
 と、当初は写真を撮るために女装しろ、というとんでもない依頼に血液が沸騰しかけた栗原だったが、モデル料の事で折り合いがついたらしく、話はとんとん拍子に進みつつあった。
 撮影に付き合えば半日は拘束されるだろうが、それでも破格のバイト料だ。それに写真展に出されるとは言え、おそろしくマイナーな展示会なので、ほとんど人目に付くこともなく、何よりフルメイクで仕上げた自分の顔に、誰もそれが自分だと気付く事はないだろう、と栗原は踏んでいた。
 そして撮影の日になって。
 「…うわ、何その顔。」
 「何って、エロカッコイイ風だな、これは。」
 丁寧に化粧をして作り上げられた栗原の顔を見て、神田は思わず驚きの声を漏らす。それを物憂げに見上げて、栗原は妖艶に微笑んだ。
 「何だ、その何とか風ってのは。」
 「ん?5パターン撮るのさ。後はお嬢様風とか、ギャル風とか、クールで知的風とか、素敵なお姉さま風とか。」
 「…栗、楽しんでねぇか?もしかして」
 「キレイだろ?」
 「うん、エロい。」
 「…こら、何しようとしてんだ、このバカ。」
 と、どさくさに紛れてスカートの中に入れようとしてきた神田の手を栗原はピシャリと叩いた。
 「いてぇ…。」
 「終わるまでおとなしくしてろ。」
 「…終わるまでね。」
 「…もとい。帰るまで、だ。」
 「だって、エロいんだも…あいてっ。殴んなくてもいいだろー。」
 と、そんな事もありつつ撮影は無事に終了して、それからしばらくして、神田と栗原の元には大きな封筒が届けられた。中には現像したての大きな印画紙が入っていて、もちろんそれを見た神田は大喜びだ。
 残念ながら出品された写真の方は入賞を逃してしまったのだが、それはそれで展示が終わればもうこの先一生人目に触れる事はないだろう、と栗原も安心していた。
 「まぁ、七五三みたいなもんだな。」
 と、栗原が言うように記念写真の一つとしてそのうち思い出になる……筈だったのだが。
 事件はその後、栗原も神田も、そして写真を撮った神田の同期も知らない所で起こっていたのだった。




 「何だってぇ~??」
 「いや、俺もまさかこんな事になるとは…。」
 「冗談じゃないっ、冗談じゃないぞっ。」
 余りの急激な展開に、普段の冷静はどこへやら。栗原もかなり動揺している。
 写真を撮った男は、彼の責任ではないのだが、それでも心底申し訳ない、というように平伏状態だ。
 事件は自衛隊芸術祭の展示会の最終日に起こっていた。
 広報の一環としてそこを訪れていた、どこかの地連部長が栗原の写真をいたく気に入ったらしく、それが選外になったとわかった瞬間、
 「是非、募集ポスターに使わせてくれ。」
 と言い出したのだ。そして、そのままそれをお持ち帰り、といった次第。
 普通では考えられないとんでもない話だが、そこはそれ。狭い組織でしかもモデルも撮影者も内輪の人間、とくれば組織がそれをどう使おうが、下っ端に人権なんてものは存在しないとでも言うのだろうか。
 「爽やかで知的で素敵なWAF」の写真は、そのまま航空自衛隊の顔になろうとしていた。
 そして、それから更に数ヶ月が過ぎた今、そのポスターは基地周辺の繁華街のいたる所に貼られまくっているのだった。
 もちろん、その事は基地内でも話題を呼んでいて、あれは、どこの基地のなんていうWAFなんだろうという憶測が乱れ飛んでいた。
 それが栗原だと見抜けた人間は同じ飛行隊にも居なかったのだが。いや、西川と水沢だけが何か言いたそうな顔をする時があったが、賢明な彼らはそれを決して口には出さなかった。
 そして二人の間では外出をめぐる口論が続いているのだが…。
 「大丈夫だって栗、まだバレてねぇんだから。」
 「当たり前だ。バレてたまるかよ。そもそも神さんがあんな話を持ってこなけりゃこんな事には…。」
 「栗、楽しそうだったじゃんかよ。」
 「うるさい、うるさい!とにかく、ポスターが次のバージョンになるまでは絶対出歩かないからな。」
 「なんでよー。」
 「…あんな自分の顔に囲まれてメシが食えるか!落ち着いて買い物が出来るか!自分の身になって考えてみろ!」
 「うん、確かにそれはキモいな。」
 「…もう、一人にしてくれ……。」
 と、そう言うと栗原は一人奥の部屋に行き、その窓から干していた布団をとってそれを畳に広げると、そのままふて寝をするようにそこに横になる。
 もうこうなると、ポスターがどうのではなく、小金に目がくらんで悪乗りして、それで手痛い目にあってしまった自分の愚かさが許せないのだろう。そしてそこに何の対策も打てないのも彼をイライラさせる原因だった。
 「あーーーっ、俺のバカーーーっ。」
 布団に突っ伏して、栗原はそう叫んでいた。
 神田はと言えば、さすがにそれ以上は諦めたのか、おとなしく一人で出かけたようだった。
 アパートの駐車場から車のエンジン音が聞こえて、そしてそれはすぐに発進していく。けれど、ものの数十分程で、またそのエンジン音が駐車場に戻ってきた。
 それから外階段をドタドタと駆け上がってくる音がしたと思ったら、扉が開いて神田が部屋に駆け込んでくる。
 「栗っ、大丈夫だっ。もうポスターなんざ一枚もねぇから。」
 「え?」
 布団の上でウトウトとしていた栗原は神田の言いたい事を一度には理解できずにもう一度聞き返す。
 「だからー。もう街中どこにも栗の写ったポスターはないよって。」
 「ほんとか?」
 「そうそう、んで別のポスターになってた。普通にオッサンが写ってる奴。」
 「よ、良かった…。」
 と栗原は安堵の表情を浮かべる。そうなれば現金なもので、
 「買い物にでも行くか。晩メシ用の買出しもしなきゃなんねぇしな。神さん、何食いたい?」
 と表情さえも一際晴れやかになって重たかった腰をあげた。
 「やったー、栗がいつもの栗に戻ったよー。」
 と、神田は嬉しそうにそう叫んでようやくこちらも一安心。
 けれど、彼らにはまだ気付いていない事があった。短期間のうちにポスターが入れ替わってしまった理由を二人は深く考えなかったのだが、それにはちゃんとわけがあったのだ。
 栗原の募集ポスターは絶大な人気で、それはその役目を殆ど果たす事がないままに、色んな人たちの手によって持ち去られてしまっていたのである。そして後に地連の間で最大の失敗作と言われるようになってしまったそれは、決して再版される事はなく闇に葬られたのだった。
 と聞けば万々歳なのだが…、もちろん持ち去られたポスターがどのように利用されているかなど、知る由もなく。
 そして、二人がそれに気付くのは、飲み会の後でとある隊員の下宿に押しかけた時に、そこに大事そうに飾られているそれを発見してしまう時で、それはまだ随分先の出来事なのだが……。




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