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朝が来るまで


 「なぁ、そろそろ起きねぇか?」
 傍らで寝ている男にそう声をかける。
飛行隊での飲み会の帰り、酔い潰れて前後不覚なのを見かねて仕方なく半ば担ぎこむようにして自分の部屋へと引っ張りこんだ。
 それももう2時間近く前の話だ。
 ちょっと寝させてくれ、とヒトの布団に倒れ込んで、そしてこの男は、神田鉄雄は目を覚ます気配もない。
 そのまま朝まで、どうせ帰る手段もない田舎のことだ、別にいて貰うのは構わないが、朝までそのままってわけにはいかないだろう。
 制服だって脱がせてしまわないとシワになってしまうし、それに布団だって一組しかないのだ。
 そんなに中央に大の字になって寝られてしまっては、俺の眠る余地がないじゃないか。
 「おい、起きろ。」
 耳元で、声を荒げてみる。
 「ん・・・。」
 すると、眉間がピクリとほんのわずかだけ動いたものの、相変わらず起きる気配はなかった。
 無防備な寝顔だ。
 そうやって神田の傍らに膝をついて顔を寄せていると、鼻がその体臭をかぎつける。酒臭い中に嗅ぎ慣れた煙草の匂い。それが多少の汗臭さと入り混じって、それは確かに俺が知っている「神田」の匂いだ。訓練が終わった後、狭い喫煙所で体をくっつけ合うようにして談笑してたりとか、そんな時と同じ。
 それは俺を魅了してやまない神田そのものでもあった。
 「まいったな…。」
 思わずそうつぶやいた。
 忘れようとしていた「思い」が頭をよぎる。
 人恋しさも募っていた。
 神田は…、この男は気づくことがあるのだろうか。俺の「思い」に。
 触れたいと、感じたいと、ずっと思っていた…そんな願い。
 このままそれを遂げることができるのなら。


 「ったく、ヒトの気も知らねぇで…。」
 俺は何をしようとしてるんだ?
 どう考えたって、冷静な判断じゃない。
 この男に出会ってから、ずっと調子を狂わされっぱなしだ。
 今もそう、鼻腔をくすぐる男の体臭に、こみ上げる衝動を抑えることができないでいる。
 眠っている神田の体に、這い上がるようにして自分の体を上に重ねる。その口元に顔を寄せると、さっきよりもハッキリとその息遣いを感じる。重なった体からは、鼓動が明確に伝わってきていた。
 それは体臭と同じで、俺が普段からよく知っているものだ。
 狭いコックピットの中で、無線を通していつも感じている物。
 ターゲットを見つけたときの興奮、回避を終えたときの安堵、板ごしの前席にいる神田の精神状態を知るために、俺が最も注意をはらっているモノ。
 けれどその鼓動を、繋がり合ってもっと深いトコロで感じたいと思う。もっと激しい息遣いで、俺だけに語りかけて欲しい、と。
 だからきっと、そんな俺はどこかオカシイんだろう。
 自分の性癖に気づいたのは、ずいぶん昔のことだけれど。
 つれない相手を目の前にして、こんな風に受動的に相手を欲しいと思ったときはどうすればいいんだ?
 そのケがある奴が相手なら何の問題もなかったってのに、畜生。
 そんな事を考えていたら、神田の腕が動いて、不意に抱きしめられた。
 「神田?」
 問いかけるけれど、応えはない。なら、じゃあ無意識の行為なんだろう。
 そうであって欲しい。「思い」なんてそうそう簡単に伝わるもんじゃないから。
 伝えなければ、伝わらない。何よりも大事なモノであって欲しい。


 …俺にそんな勇気が生まれるのは、いつの日になるんだろう。
 傍に居られるんだから、それでいいじゃないかと妥協してしまっている現状。
 俺はこんな臆病な人間だっただろうか?
 拒絶されることが怖くて、何も言えずに、できずにいる。
 さっきだって、神田が目を覚まさざるを得ない状況にまで、追い込むことは簡単だったのに。
 そのまましばらくしても神田の腕が緩むことはなくて、おかげで起き上がることができなくなってしまった。
 神田の腕の中は温かくて、この思いのすべてを受け取って貰える気がした。


 もしも、明日の朝になって、俺を抱きしめるこの腕の強さがこのままだったら。
 そうしたらこの思いを伝えてしまおう。
 けれど、ここは居心地が良すぎるから…。
 …このまま夜明けが来なくてもいいかもしれない…。




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