FIRST CONTACT
相棒と喧嘩した。
相棒といっても、ついこないだフライトコースを出てきたばかりの新人で、俺と一緒にこの千歳基地でファントムに乗っている奴だ。
初めて会った時から生意気というか横柄な奴で、事あるごとに誰彼構わず突っかかっていくような奴だった。
それでいてフライト中は酷く冷静だ。
頭もいいし、操縦センスも悪くない。
けど、性格が災いしてか、色んな奴が持て余した挙句、俺みたいな奴が教育係を仰せつかったというわけだ。
喧嘩の理由は何だったっけ。
確か俺の反応速度が鈍いとかヌカしやがったから俺がカチンときたんだった。
どうやら俺の後ろのナビゲーターはパイロットが自分の計算通りの速度で動かないと機嫌が悪くないらしい。
俺の旋回タイミングが遅れたせいで、敵を撃墜するまでの時間が奴の計算よりもコンマ何秒か狂ったのが気に入らなかったんだと。
そんな事知るか。
そんな完璧に動けるパイロットが居たらお目にかかってみたいわ。
それで掴み合い、殴り合いの大喧嘩。
俺も大人げないね。
それがまた女みたいな顔して強いのなんのって。
思わず俺も本気で応戦しかけて、
でも思いとどまった。さすがに本気で殴っちゃヤバイよな。
そしたら、ストマックに思いっきりストレートをくらって思わず地面に膝をついたその隙に、
「ばーか。」
と思いっきりかわいくない捨て台詞を残して奴は飛び出していったんだっけ。
相棒といっても、ついこないだフライトコースを出てきたばかりの新人で、俺と一緒にこの千歳基地でファントムに乗っている奴だ。
初めて会った時から生意気というか横柄な奴で、事あるごとに誰彼構わず突っかかっていくような奴だった。
それでいてフライト中は酷く冷静だ。
頭もいいし、操縦センスも悪くない。
けど、性格が災いしてか、色んな奴が持て余した挙句、俺みたいな奴が教育係を仰せつかったというわけだ。
喧嘩の理由は何だったっけ。
確か俺の反応速度が鈍いとかヌカしやがったから俺がカチンときたんだった。
どうやら俺の後ろのナビゲーターはパイロットが自分の計算通りの速度で動かないと機嫌が悪くないらしい。
俺の旋回タイミングが遅れたせいで、敵を撃墜するまでの時間が奴の計算よりもコンマ何秒か狂ったのが気に入らなかったんだと。
そんな事知るか。
そんな完璧に動けるパイロットが居たらお目にかかってみたいわ。
それで掴み合い、殴り合いの大喧嘩。
俺も大人げないね。
それがまた女みたいな顔して強いのなんのって。
思わず俺も本気で応戦しかけて、
でも思いとどまった。さすがに本気で殴っちゃヤバイよな。
そしたら、ストマックに思いっきりストレートをくらって思わず地面に膝をついたその隙に、
「ばーか。」
と思いっきりかわいくない捨て台詞を残して奴は飛び出していったんだっけ。
ん?
と思ったら奴が戻ってきた。
さっきあれだけとっくみあって、髪型も服もさんざん乱してやったと思ったのに、もうきっちりそれを元に戻して涼しい顔して戻ってくる所がまたかわいくない。
まだ何か文句あんのか?
とそんな感じで睨んでやろうと思ったら、奴は手に持ってた小さい四角い箱を俺に投げて寄こした。
マルボロだ。
なんだ、仲直りしたいってわけね。かわいーとこもあるじゃん。
「一服すっか?」
扉の所で腕を組んでエラそうに突っ立ったままの奴にそう尋ねてみる。
「勝手にすれば?」
と、またかわいくない事を言う。
しょうがないから近づいていって、その頭をこぶしで軽く叩いてやった。
「ガキめ。いつまでもムクれてないで、来い。」
そう言ってやると、また怒るかと思いきや、俺の後をついてくる。
変わった奴だ。
「普通は俺がお前の操縦にケチをつける立場だと思うんだがな。」
隊舎の端の喫煙場所、今いるのは俺達だけだ。
よく考えてみると、プライベートで話をするのはこれが初めてのような気がする。
「確かにあんたの操縦は悪くない。ただ、判断力と動体視力がちょっと落ちるんだ。」
俺が銜えたタバコに火を点けてくれながら、奴はそんな事を言った。
その言葉を聞いた時に俺は、こいつは幸せにはなれない人間だ、と直感した。
理想が高すぎて、完璧主義者なんだ。
俺の腕でもこの言われ様だ、そんなに完璧なパイロットしか認めないんだとしたら、こいつは戦闘機乗りとしては大成できない。
まして、そんな目でしか人を見ないんだとしたら、一生誰も愛さずに終わってしまうだろう。
よそう。
他人事だ。俺の心配することじゃないしな。
それに、ズケズケと俺の欠点を言いやがって、ハラが立つ。
そんな事を考えながらずっと黙っていたら、いつの間にか奴の視線が俺の方を向いていた。ちらっと視線を合わせると、
「悪い、言い過ぎた。ごめん。」
とめずらしく素直に謝ってくるから、俺も思わず笑っちまう。
「いいさ、気にすんな。」
言いながら、くしゃくしゃっと頭を撫でてやる。
すると、
「何すんだ、触るなっ。」
と俺の手から逃げようとするから、俺はそれを追っかける。
「逃げるなよ。ほれほれ。」
「来るな、馬鹿っ。」
どうやら俺の相棒は、こんな風に人に触れられるのが苦手らしい。
ものすごく照れて困っているのがまた面白くて、俺も調子にのってついついちょっかいを掛け続ける。
けど、猫をからかいつづけると引っ掻かれるのと同様、やっぱり俺も調子に乗りすぎたみたいで、
最後にまた、げしっと腰を蹴られて逃げられてしまった。
でも、相棒の扱い方を覚えたような気がする。今日の収穫だ。
まぁ、俺と組んでる間に、少しは人間らしくしてやれるかな。
と思ったら奴が戻ってきた。
さっきあれだけとっくみあって、髪型も服もさんざん乱してやったと思ったのに、もうきっちりそれを元に戻して涼しい顔して戻ってくる所がまたかわいくない。
まだ何か文句あんのか?
とそんな感じで睨んでやろうと思ったら、奴は手に持ってた小さい四角い箱を俺に投げて寄こした。
マルボロだ。
なんだ、仲直りしたいってわけね。かわいーとこもあるじゃん。
「一服すっか?」
扉の所で腕を組んでエラそうに突っ立ったままの奴にそう尋ねてみる。
「勝手にすれば?」
と、またかわいくない事を言う。
しょうがないから近づいていって、その頭をこぶしで軽く叩いてやった。
「ガキめ。いつまでもムクれてないで、来い。」
そう言ってやると、また怒るかと思いきや、俺の後をついてくる。
変わった奴だ。
「普通は俺がお前の操縦にケチをつける立場だと思うんだがな。」
隊舎の端の喫煙場所、今いるのは俺達だけだ。
よく考えてみると、プライベートで話をするのはこれが初めてのような気がする。
「確かにあんたの操縦は悪くない。ただ、判断力と動体視力がちょっと落ちるんだ。」
俺が銜えたタバコに火を点けてくれながら、奴はそんな事を言った。
その言葉を聞いた時に俺は、こいつは幸せにはなれない人間だ、と直感した。
理想が高すぎて、完璧主義者なんだ。
俺の腕でもこの言われ様だ、そんなに完璧なパイロットしか認めないんだとしたら、こいつは戦闘機乗りとしては大成できない。
まして、そんな目でしか人を見ないんだとしたら、一生誰も愛さずに終わってしまうだろう。
よそう。
他人事だ。俺の心配することじゃないしな。
それに、ズケズケと俺の欠点を言いやがって、ハラが立つ。
そんな事を考えながらずっと黙っていたら、いつの間にか奴の視線が俺の方を向いていた。ちらっと視線を合わせると、
「悪い、言い過ぎた。ごめん。」
とめずらしく素直に謝ってくるから、俺も思わず笑っちまう。
「いいさ、気にすんな。」
言いながら、くしゃくしゃっと頭を撫でてやる。
すると、
「何すんだ、触るなっ。」
と俺の手から逃げようとするから、俺はそれを追っかける。
「逃げるなよ。ほれほれ。」
「来るな、馬鹿っ。」
どうやら俺の相棒は、こんな風に人に触れられるのが苦手らしい。
ものすごく照れて困っているのがまた面白くて、俺も調子にのってついついちょっかいを掛け続ける。
けど、猫をからかいつづけると引っ掻かれるのと同様、やっぱり俺も調子に乗りすぎたみたいで、
最後にまた、げしっと腰を蹴られて逃げられてしまった。
でも、相棒の扱い方を覚えたような気がする。今日の収穫だ。
まぁ、俺と組んでる間に、少しは人間らしくしてやれるかな。