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桜の花の咲く頃に・・・


 春の日差しが心地よい休日の朝、千歳航空隊のエースパイロットを自認する伊達五郎は人肌の温もりの中で目を覚ました。
 「んー、いい朝だ。っと・・・。」
 だが辺りを見渡すと見慣れたような見慣れない部屋の風景で、絶対に普通ではありえないラクダ色の毛布にくるまっていた。
 どこだ?基地の中だ。営内の一室には間違いない。伊達はとっさに考える。
 だが、昨夜の記憶があいまいだ。千歳は桜の咲くのが遅い。散り際の最後の桜を楽しもうと、飛行隊をあげての花見でさんざん飲んだくれたあげく、飲み足りないからと言って残った酒を手に幹部隊舎に住んでいるパイロットの部屋に押しかけ、あがりこんで、ほんとはやっちゃいけない部屋内の酒盛りをはじめた・・・ところまでは記憶があった。
 こうやってベッドに寝ているということは、誰かが気を利かせてあいてるベッドに自分を運んでくれたんだろう、と。そう言えば飛行服のままだ。
 だが、起き上がろうとして、伊達は隣に人が居ることに気がついた。
 隣のベッドじゃなく、同じベッドの隣の空間に。
 「うあっ。」
 一気に伊達の顔から血の気が引く。
 そこにいたのが自分の相棒だったからだ。
 よくよく周囲を見渡すと、よく整頓されて物が少ない部屋だったが、それでも私物がないわけではなくて、使われてない部屋ではない事が見て取れる。
 そこが栗原の部屋らしい、と気がつくまでに約1秒。
 そして、どうやら自分は栗原のベッドに入り込んで寝てしまったらしい、と気がつくまでに約2秒。
 そして・・・、夜の間の記憶がないことを再認識するまでに約2秒。
 計5秒。状況判断にかかる時間としては、パイロットとして失格だ。
 それくらい動揺していたらしい。唯一の救いと言えば、お互い服を着ているってことくらいだ。
 それでも酔っ払って記憶がないって事は、相棒の前でかなりの醜態を晒したかもしれないってコトに間違いはなくて、伊達五郎、一生の不覚である。
 今度こそ何をイヤミ言われるかわからない。
 せめて栗原が目を覚ます前に部屋から出て行こうと、そっと毛布を持ち上げる。
 だが、その瞬間だった。
 「・・・起きたのか?伊達・・・。」
 眠そうな声が隣から聞こえる。
 声があきらかに不機嫌だった。
 「・・・あー、えーっと・・・。」
 朝の挨拶をするのも何か変な感じがして、伊達は軽くごまかそうとする。
 記憶がないのが辛い。
 これで相手が女なら、記憶があろうがなかろうがプレイボーイの伊達にとっては関係のない事だったが、如何せん相手は男だ。そして相棒だ。
 「伊達・・・、昨夜の事覚えてないだろ?」
 そうこうしていると、栗原が直球勝負に核心をついてくる。
 「いや、その・・・。すまん、記憶がない。」
 栗原相手にごまかしきれるわけもなくて、伊達は正直にそれを認める。
 「ふぅん・・・、俺にあんな事しておいて、何も覚えてないんだ。冷たい男だな・・・。」
 その言葉に、伊達はさっきの倍の早さで血の気が引くのを感じていた。
 何をやっちまったんだ?その疑問だけが頭の中をかけめぐる。
 「お・・・俺、何かしたか・・・?」
 「何かしたかって・・・。一晩中人にまとわりつきやがって。それも14人も違う女の名前呼んでたぞ、お前。普段どういう生活してるんだ。」
 どうやら、付き合った女や気に入ってる女の名前を呼びながら栗原に抱きついていたらしい。酔っ払いはいい気分でもやられる方はたまったもんじゃないだろう。
 しかも相手は酒臭いオヤジなのだ。
 「すまん・・・。」
 伊達は素直に謝った。どう考えたって自分が悪いよな・・・と。
 「それから、誰彼構わずキスするのもやめろ。シラフになったらお互いいい気持ちしないんだから。」
 これも返す言葉もなかった。昔からのクセだ。言いながら栗原が物凄く嫌そうな顔をしてるのは、間違いなくその被害にあったんだろう。
 だが、その困ったような嫌そうな顔が、なんとなく可愛く思えてきて、ちょっとした反撃をしたくなる。
 「んな嫌そうな顔しながら言うなよ。キスにゃ自信あんだよ、俺。ちょっと気持ちよかったろ?」
 ニヤっと笑って言うと、栗原のポーカーフェイスが崩れて頬が赤くなるのがわかった。
 けれどそれは一瞬の事で、その一瞬の後にはいつもの如く無言のまま栗原の右手が炸裂して、伊達は毛布の下からミゾオチに軽い一撃を食らう事になった。
 「ぐげっ・・・、じょ・・・冗談だ。怒るなって。」
 「出て行けっ。」
 ベッドから追い出されそうになって、けれど伊達はそれに抵抗した。
 「えー、もうちょっと寝てていいだろうがよ。」
 「そんなに寝たきゃ、隣のベッドが空いてるんだから、あっちに行け。」
 だが、栗原の答えは冷たい。よくよく考えたら、シラフの男二人が営内のベッドに並んで寝ているのもおかしな光景だ。
 「ここがいい。」
 半分、意地のように伊達がそこに居座ろうとすると、栗原は毛布をまくって起き上がった。
 「じゃあ、俺があっちに行く。伊達はずっとそこで寝てろ!」
 そう言って、スタスタと隣のベッドに移る栗原だった。
 相変わらず愛情も同情のかけらもない栗原に、後に取り残された伊達だったが、それでも出て行く時に伊達が寒くならないようにときっちりと捲くった毛布を戻して行ってくれた事に、ほんのささやかな愛情を感じていた。
 出会った頃から比べれば格段の進歩だ。
 桜の花の咲く頃に出会った。
 それからまだ少ししか時間は過ぎていないが、二人は確実に少しずつ近づき始めていた。
 同じ戦闘機に乗る者同士としての信頼が培われはじめた証拠だろう。
 このまま何事もなく時が過ぎて、相棒とももう少し近寄れるようになって、そして来年も同じようにここで桜を見られたらいい、と伊達は願って、そしてまたいつの間にか深い眠りに落ちていた。




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