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今も昔も・・・


 「あー、ちくしょうっ切りやがった。」
 ツーツーと無機的な非通信音を出す受話器を憮然とした様子で伊達は見つめていた。
 そこは紅空の待機パイロット用の控え室で、時間は夜の10時を少し回った所だ。
 待機は明朝の6時までで、その時間なれば代わりのクルーがそこに入る。
 伊達がそこに居るということは、当然相棒の副操縦士もそこに居る訳で、
 「・・・機長、いい加減にしないと本気で嫌われますよ?」
 伊達の電話の相手が女房子供でない事は、高田もとっくに気がついていた。
 「ヒマなんだよ。」
 不服そうな表情を浮かべながら、伊達は高田が座っているテレビの前のソファの端に腰掛けた。
 「だからって、他人の時間を犠牲にさせるいいものかと・・・。」
 「高田ちゃんも遊んでくんねぇし。」
 伊達がヒマを持て余しているのには高田にも原因がある。つい今の今まで延長になったナイター中継に見入っていて、伊達が話しかけるのに生返事しか返って来なかった。
 「そりゃ、悪うございました。いい齢してスネんで下さいよ。」
 「大体よぉ、あのガキャ甘やかしてっと付け上がりやがって。日に日に俺に対する扱いが酷くなってねぇか?」
 電話の相手がどこの誰かまで高田は気がついていた。それ程注意して聞き耳を立てていたわけではないが、伊達の言葉の端々と会話の内容から大体の察しはつくのだ。
 その内容を概ね思い返していた高田から深いため息が漏れる。
 「そりゃ、あれだけセクハラしてれば誰だってイヤになるんじゃないかと・・・。」
 「つっても、お前、俺はアイツの先輩だぞ?先輩が後輩にセクハラして何が悪いってんだ。」
 「見事に体育会系の考えですな。」
 「そもそも、千歳でフライトコース出立てのアイツに戦闘機乗りの何たるかをだな。スピンに入った時の体勢の立て直しとかよ、失速状態からのリブートのコツとかよ、脱柵の方法からすすき野でボラれねぇ風俗店の見分け方とかをよ、教えてやったのはこの俺なんだぞ、この俺。」
 「別に最後のは要らないんじゃないかと・・・。」
 「それをあの野郎、いつの間にか一人で一人前になったような顔しやがって。生意気にも程がある。ガキんちょのクセして。」
 「ハァ・・・。」
 「何だよ。」
 「いえ、何でも。」
 どうやら伊達が昔居た世界では、後輩という生き物に人権なんてものは存在しないらしい。そんなパイロットの道を選ばずに順当に民航を志願しておいて正解だったと高田は思うのだった。
 「寝る。」
 不意にそう宣言して伊達はソファから立ち上がった。
 「もうですか?」
 「する事ねぇし、ムシャクシャするし、こんな時は不貞寝に限る。別に付き合わなくていいぞ。」
 仮眠を取るための部屋はテレビのある部屋とは別になっている。そこを隔てる扉へと伊達は向かう。
 「いや、私ももう寝ます。夜更かしはお肌に良くないですからね。」




 仮眠室の扉をあけると、そこは二段ベッドが縦に二つ繋がったものが部屋の両サイドに並べられていて、最高で8名の人間が同時に仮眠を取れるようになっている。
 その日はたまたま二人だけしかいなくて、8つのベッドのうち好きな場所が選び放題だった。
 当然二人共扉から遠い方のベッドの一段目を選ぶ。
 「ん?」
 と、そこに潜り込もうとして、伊達は何かに気づいてしまったかのようにその動きを止めた。
 「どうしました?」
 「これ、シーツ替えてねぇじゃん。」
 紅空の仮眠室は、通常クリーニングの専門業者が入っていて、シャワー室も含めた部屋の掃除と、寝具の入れ替えをしてくれる事になっていたが、何か手違いがあったのだろう。伊達が寝ようとしているベッドのシーツには明らかに過去に誰かが寝ていた痕跡があった。
 「あー、こっちもですな。」
 そう言われてみて高田も自分が寝ようとしていたベッドを検めると、そこにも誰かが使った後のような痕跡があった。
 それから他のベッドをいくつか検分して、
 「機長、上の二段か扉側だったら新品みたいですよ。気になるならそっち使っては?私は気にしないんでこのまま寝ますがね。」
 「・・・この場所がいいんだよ、俺は。」
 ぼそっと言うと、伊達は何を思ったのかテキパキとそのベッドからシーツとか枕カバーだとかを引き剥いでいく。そして、それをざっと畳んで扉側のベッドに投げると、そこに敷いてあった未使用のシーツ一式を取り払って自分が寝ようとしているベッドをそれで設え始める。
 「なーに、やってんすか、もう・・・。」
 舞い上がる埃に高田も迷惑そうな顔を隠さない。
 「何って、他人が寝た後のシーツなんて気持ち悪くて使えるかよ。空自ん時だってアラート待機交代する度にシーツぐらいは新しいの貰えるってのによ。」
 「へー、毎回変えてたんすか?昔から意外に几帳面なんすね、機長も。」
 「そりゃ、アラート下番する奴がご丁寧に使ったシーツ片付けていくんだからよ。新しいの敷かなきゃ、仮眠もできねぇとくりゃ・・・。もちろん、んな事は後輩にやらせるもんだけどよ、普通はな。」
 そう言って、伊達はまた何かを思い出したのか、ニヤリとイヤらしい笑いを浮かべ、そして話を続ける。
 「そう言や、アイツもベッドのシーツだけはちゃんとやってくれたぜ。毎回毎回文句のつけようのねぇくらいピッチリとな。」
 「へぇ、何でですかね。」
 余程ベッドメーキングが好きなんだろうか、とか外れた事を考えている高田に、伊達はその口元の笑いを浮かべたまま答えを出した。
 「いや、最初の時にさ、自分のベッドだけ作ってさっさと寝ようとしやがったから、無理矢理そこに添い寝してやったのさ。俺の分作っとかねぇと、これから毎回隣で寝てやるぞってな。」
 「そうですか・・・、先寝ます。おやすみです。」
 それ以上付き合っていると、また長い思い出話につき合わされそうで、高田はやれやれ、とばかりにそれだけ言って伊達の方に背中を向ける。
 そして思うのだった。何でこんな横暴でセクハラ魔で自分勝手ばかりしてる男に、何ゆえそれ程人望があるのだろうかと。自分がその相手だったら、多分もう二度と口さえきかなくなるんじゃないだろうかと。
 「あ、おい高田っ、勝手に先に寝るんじゃねぇっ。寂しいだろうがよっ。」
 でも、どこか憎めない所は確かにあるのだと、そんな事を考えながら。
 せっかくシーツを敷き直したベッドに入ろうとはせずに、再びごそごそと上着を着込んで、そして仮眠室の扉を開けて伊達が出て行こうとしているのを、高田は背中越しにその気配を感じていたのだった。




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