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<88title/no.23>告白の二乗

 この場所を見つけた事は偶然だった。
春の春とは思えない程の暑さに怯みつつ、照り返しも厳しい昼下がり書類を届けに行った帰りに飛び込んだ日陰。
どこからやってくる風かなのか、頬を撫でられて人心地付く。
そのまま誘われるように歩いていると、ぽっかりと空いた空間に出た。
それが貯水タンクの影になる場所だと気付いたのは、ずいぶん経ってから。

 そしてそこが秘密の告白スポットだと知ったのは、更に数週経ってから・・・。
めっきりその場所を自分の昼下がりの特等席と、勝手に決めてからだった。
やって来る人影に慌てて、タンクと併設されている建物に付いている足掛かりを登ってその屋根に張り付いていたら・・・更に人影がやってきて動けなくなり。
「付き合って欲しい。」
そう下にいる人物が喋った時には何を聞いたのか分からなくて、しばらく考えた程。
・・・自分の頭の中には存在しない台詞だった。
「お門違いだな。」
そう相手が答えた頃になって、やっと炎天下の太陽を避ける為、1段高くなったタンクの影に潜り込む事を思い付いた。
「用件はそれだけか?じゃあ、帰らして貰う。」
そう言って、帰ろうとした男を告白した方の男が諦めきれず引き留めようとしたみたいだったけれど、次に聞こえてきたのは
「ぐあっ。」
と言う声と何かが倒される音と、さっさとその場を立ち去る人物の足音だった。
さすがにその場所から即出る事もかなわず、ひたすら倒された人物が去っていく事を望んでいたのは最初の一回目だけだった。
何たって刺激の少ない「隊」生活。
その状況に慣れてしまうのにも、そう時間は掛からなかった。
これがまた見事なくらい頻繁に起こるのだ。
告白だけじゃなく、相談やら何やら様々に。
これだけ人間が一箇所に集まって居るんだから、正面切って相談しにくい事も多々あるだろうと、自分では想像も付かなかった世界をしみじみ考えるぐらいには。
その中でも面白いのは不謹慎だけど、やっぱり告白系の類で。
たま~に本当に稀に見事カップルになって去る奴らもいたが、初めて聞いた時は嘘かと思ったが・・・。
ほとんどは告白しても玉砕と言うことが多く。
ある意味安心して聞いていられたと言うか、振られる様こそが娯楽となり得ていたんだけれど。
実際の所、俺の居る位置からでは下に人が居る事は分かっても、顔は見えない。従って誰が誰をと言う事が分からない分、リアルさが無い。
その事で余計に完全なる傍観者になって、他人事として楽しんでいられたのだ。
それでも呼び出される人物は大体決まっているらしく、回を重ねてくると声も聞き慣れてきて、前にも来た事が有る無しぐらいは分かってくる。
「だから~俺にどうしろって言うんだ。
 お前の気持ちには答えられんって前から言ってるだろうがっっ。」
どうも、この人物は呼び出した奴が諦められないらしく、これまでにも何度も呼び出しては、その度に尽く見事に振られているらしい。
でも、結構この人物は人気らしく、俺が気付いた頃からでも五度は色々な男から呼び出されている。
マメに呼び出しに答える相手も凄いよなとも思うけど。
「今度からは呼び出されても来ないからな。
 他人の名前使って呼び出すのも止めておけ。」
そう思った途端に、下にいる人物もそう言って行ってしまった。
ああそうか、他人の名前を使って呼び出すのも有りか・・・等と考えていたら。
置いて行かれた男が、ぽつりと相手の名を呼んだ。
「・・・ら・・ん・・・。」
それは本当に小さい声で。
これが、聞き覚えのない名前なら気付かなかったかも知れないが、もの凄く馴染んだ名前だった為にきっちり聞き取れて、理解して・・・後悔した。
そこで初めて俺は行ってしまった相手が誰であるかが分かったのだけれど、ショックで口が開いたまま・・・脳味噌が一時停止していたかも知れない。
そう、聞こえてきた名前こそ俺の元教官様・・・栗原二尉だった。
「栗原さん」と口に出したのだ、この下の男は!!
一瞬頭に来て、下に降りてって掴み掛かろうかとも思ったけれど・・・相手は栗原二尉だし。
自分が出しゃばってもしょうがない事と、この場所でずーっと色々聞いていた事実を下にいる男に気付かれてもどちらにとっても良い事とは思えなくて諦めた。
ただひたすらにへこたれている男がさっさと退却してくれる事を待って、一気にみんなが集まっている場所へと足を速めた。

 なんとか、室内に戻ってから栗原さんを目で捜してみると案外あっさりと見つかり、そして・・・呼び出した男が誰なのかも気付いた。
どうして気付いたかって、簡単だ。諦めきれずにチラチラと栗原さんを盗み見ていたから。それも栗原さんが気付くと逸らされる・・・。そう言うことを繰り返していたら、幾ら俺だって気付くだろう。
それは一時的に『百里』に研修に来ている男だった。
そう考えれば納得もいく。
確かにあの人は優男で、よく見てみれば女顔で、確かに女装も上手いが、あんな性格の苛烈な男を恋人にしたいのか!?と思ってから、まだ、この男は本当の栗原さんの性格を知らないのだ。
そう思ったら納得がいった。

 今まで気付く事もなかったけれど、そう言う風な目で周りを見回してみれば、栗原さんを親しむという感情以上の目で見ているだろう奴らが何人かいる事にも気付いた。
そう言う奴は、どうしても一時的に「研修」に来てる奴らが多かったのだけれど、「研修」の奴らは性格が判明した辺りで、気を削がれたり、きっぱりと振られて玉砕したりしていた。
たまに百里常勤の奴もいたが、それはあくまで傍観で俺の特等席までやって来る程の強者はいなかった。
それとも既に振られ済みだったのだろうか?
そして、その都度呼び出しを喰らい、けれど悉く振り続け、恋うる視線を一切知らぬフリで切って捨てて、日常業務をこなす栗原さん。
やっぱりウチの教官様は凄いかも知れない。
何て感心もし、納得もしていたら、その爆弾は自分の計り知れない所からいきなりやってきた。

 いつもの如く昼下がりの特等席で、秋色になって来た木々を眺めながら、もう少ししたらこの場所も次の夏までお預けだなー。
何てぼんやり考えていた所へ足音が近づいてきて来たので、慌てていつもの屋根へと登り上がった。
やって来たのは二人らしく、珍しい事もある物だ・・・と思いつつ「告白」系の話じゃないのかもなと辺りを付けて、下の人間の視界に入る訳が無いけれど、建物の最奥にタンクを背にして一息ついた頃だった。
「・・・こんな所まで・・・がって申しけあ・・・でした。」
奇妙に丁寧に喋る声に惹かれて、注意を向けてみる気になった。
「・・・・・。」
相手も喋っているらしいが低くくぐもった声なので、聞き取れない。
「ええ、・・・が俺の・・・でして・・・。」
どちらも冷静に声を押さえ気味に喋っているの為か、聞き取りにくかった。
「・・・手がいる・・・こを、追い・・・程・・・ぼじゃ・・・しょう、・・・たも。」
よく聞いてみるとどうも二人対一人で対峙しているらしいし、喋っている口調が相手に対して、妙に丁寧な事で相手がある程度の地位の人物である事も分かった。
もっとよく聞こうと座った位置から俯せになる。
「貴方に呼び出された場合、断れませんし。
 かと言ってネチネチと遠回しに触れてこられるのも金輪際ゴメンなんですよ。」
くっきりと伝わっていた言葉と声は、喋っている人間こそが栗原さんである事を伝えてきた。
じゃあ、もう一人ってのは多分神田さんだろうと考えを巡らしていた所に、
「始末書が多い事も、備品を壊す事が多いのも俺たちの不注意だから謝罪はしますが、個人で呼び出されるのは、これから一切無しにして頂きたい。」
この台詞が届いて、吹き出しそうになる所を抑えるのに苦労した。
「いや、そんな風に感じていたのならこちらこそ謝罪しよう。
多分、君の勘違いだとは思うがそんな風に受け取られていたのなら申し訳なかった。」
そう、聞こえてきたのはたまに百里に視察だか何だかでやって来るお偉いさんの一人の声だった。
でも、そんな事が嘘だなんて、俺だって分かる。それぐらい性格と根性が曲がった奴なのだ。
この上、こいつがホモだとて、きっと誰も同情し無いどころか全国の隊にいる数少ない可愛い系か綺麗系の隊員は一気にこいつの周囲から逃げるだろう。
「ええ、きっとそう言うと思ってましたよ。
 でも現実、私の所にね、結構来てるんですよ。そう言う苦情と言うか訴えが。」
「ですから、そう言う行いはこの『百里』では一切止めて頂きたい。」
「いや、そう言われてもねぇ・・・。」
曖昧に誤魔化そうとしていた男の言葉が突然途切れた。
「君っっ、彼を止めたまえっ。」
「元々、気が短いタイプでしてね。
 ちょっと貴方にされた事を言ってしまったら、付いてくるって聞きませんで。」
「こんなことをして、良いと思っているのかっ。
 バレて困るのは自分達だろうっ。」
「言ってみれば、どうですか?」
余裕たっぷりの栗原さんの言い回しに、何を?と言う疑問符が浮かぶのを止められない。
「お前が俺ら二人をホモだって言って回ろうが、全然平気な訳よ。この『百里』の中で誰が信じるのか、試しにやってみればどうだ?」
何をしているか分からないモノの初めて口を開いた神田さんの台詞は目が点になる程、インパクトはあった。
「この『百里』に勤務してからの数年、言っちゃ悪いが俺は出会ってからの方が、任務に支障をきたしてないんだよ!」
なるほど、その相手をやり込める為の設定なんだなと、一人勝手に納得していたらもの凄い台詞が飛び込んできた。
「その上、貴方には奥様もお子さんもいる身でしょう。
住所調べて、家乗り込んでいって在る事無い事言いまくって、メチャメチャにして差し上げましょうか?」
ドスの効いた栗原さんは、地上に降りてもやっぱり充分恐ろしかった。
どさっと物が落ちる音が響いたかと思うと、その音に畳みかけるように二人が喋る。
「たまにやって来るあんたの信頼度とここで生活している俺らの信頼度。」
「どっちが上か試してみますか?」
多分、二人して見た人がビビリきるようなこっわい笑みを浮かべているんだろうけど、今回の場合は同情の余地もない。
ジリジリと何かが擦れる音がしたと思ったら、一気に人の走り去る音がした。
「あ、他の奴らにも手ー出したら『バルカン』打ち込むとでも言っとけばよかったか?」
「あんだけ脅したら、しないだろ。
 あの姑息な性格だから今頃、書類の束の中からお前の経歴引っ張り出して真っ青になってるだろうよ。」
「俺ってそんな人?」
「ま、かなりそんな人。」
「お前もな。」
「俺は転属が多いだけだろ。」
「トラブルがない奴は、そうそう転属喰らわないだろ。」
くすくすと笑っているような、和やかな空気が流れていた。
けれどそこから去る足音がする訳でなく。
何も音がしなくなったので、好奇心に負けてそーっと屋根の縁が切れる辺りから覗き込んだ所で、見たのは・・・二人のキスシーンだった。
余りの衝撃にガマの油を絞られているガマのように脂汗を浮かべたまま、その場に固まっていたら・・・。
ふと、下の神田さんが視線だけでこちらを向いて、俺に視線をきっちり合わせてきた。
何故見つかったか分からないまま背中にどっと冷や汗をかいたら。
腕を動かして指を指している場所が在るので、何気なくそちらに視線を向けてみれば・・・。
そこには日差しの関係で、屋根の上からポッコリと自分の存在を表す影がキスシーン中の二人に足下にくっきりと浮かび上がっていた。

 焦って引っ込むと、栗原さんの文句が聞こえてくる。
「神田・・・、お前しつこい!!」
「良いじゃん、追っ払ったご褒美って事で。滅多に基地内でなんか手ー出させてくん無いんだから。」
「・・・・今だけだぞ。」
「そう、今だけ。」
「疑惑は更に深まった方が効果があるか・・・。」
そう言った栗原さんの声は、悪魔のように甘く。
嫌な男を追っ払う手段だけでは無く、二人こそがカップルだったという事実に驚く暇もなく、どうしてもその声の主を見たい欲望で、影にならない方向を計算して覗き込んだ先には。
栗原さんを日常「女房」と言って憚らない神田さんが建物を背に栗原さんを抱え込んでいて。
ズリズリと壁伝いに覗き込んだ俺の姿に気付くと人差し指を立てて、「しっ」と内緒の手振りをして見せ、悪いと拝まれ、更に男から見ても十分魅力的な笑顔でニヤリと笑われた。

 それから、自分が出来る事と言えば、おとなしく屋根の上で二人が立ち去るのを待つしかない訳なんだけど。
好奇心に駆られて見た物はどうしようもなく「目の毒」だった。
そのまま屋根へと戻ったモノの。
きっちり脳裏に刻まれた栗原さんは、邪魔なサングラスを外して、目を閉じたまま「くふん」と鼻を鳴らして、神田さんに額を擦り付けるようして甘えていた。
いつもファントムの周りで見かける人とも、基地内でふざけている姿とも、全く一体誰っ!?と聞きたくなる程、別人で。
そう思ったら、視界がぼやけてきて・・・涙ぐんでいる自分自身に驚いた。
自分が抱いていた感情が、「憧れ」か「恋」かの判断を自分で下さない内に軽く失恋を喰った気分だった。
“告白の事情”は様々あれど、俺のような奴も珍しい。
こんな事ならさっさと「恋」だと気付いて、振られておけば良かったと思っても、それは正しく後の祭りで・・・。

 もう既に誰もいなくなった場所に降りて来て、今この下の場所に誰か連れてきて、泣き言を聞いて貰いたいのはこの俺だ!と思っても、肝心のぶちまける相手は思い浮かばず。
せめて、思い付いた報復手段と言えば、思いっきり見せつけてくれた神田さんに対して、今のところ何にも気付いていないであろう栗原さんに後輩として可愛がられているのを良い事に。
時々二人っきりでいる所を見つけては、憂さ晴らしに邪魔してやろうと決めた瞬間だった。

2003.10.10 かずえ




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