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<88title/no.39>体温

 ぼんやりと明けている空を感じながら、目を開けるのが嫌でまぶしさを避けるようにして布団の影に潜り込む。
モソモソと頭を埋めるとじんわりとした温みを感じてその温さに身体を摺り寄せていった。
「ぷっ。」
ぷ?
頭の上で発せられた自分ではない声を知覚して、その擦り寄って行った場所が小刻みに揺れている事を自覚してやっとその場所がいつもの自分の寝床でないことに気付いた神田だった。
「おはよう、神田二尉。」
「・・・え?へ・・・?」
バカの様な声が口から出たまま、しばし呆然とその状態のまま神田は固まっていた。
目の前にはパジャマの胸、肘を付いて頭を支えた形でサングラスを外した栗原が俺の顔を見たまま笑っていた。
瞬時に忘れていたハズの夕べの記憶が一気に戻って来て青くなる。
確か1件目は着任祝いだからと嫌がる栗原を無理矢理連れ出し、メシ喰いながら酒飲んでるうちになんか物凄く楽しくなってきて、大丈夫かと言っているこの男を連れたまま2件目、3件目と店を換え、酒を重ねた。
「あ・・・、スマン・・・昨夜は世話になった。」
笑っていて、揺れていた栗原の身体が止まる。
「神田って記憶があるタイプなんだな。」
感心したように告げられてますます居心地が悪くなる。
「最後の方は実は・・・無い。でも、布団の上で寝てるって事は栗原さんが何とかしてくれたんだろ?」
「・・・まぁ・・・な。」
やはり、クスクスと笑われて何があったのかと神田の身が竦む。
「え~~~と~~~~~俺・・・なんかした?」
その夜の栗原の記憶と言えば3件目の店で裸踊りをしようとした神田を取り押さえて流石に店から逃げ出し。
謝りと支払いをしに3件目の店に戻って置きざりにしていた側道のベンチに神田を連れに戻ったら、いなくなっていて・・・すわや迷子かと焦ってみたら。
何と何故かベンチ脇、植え込みの影になるに部分に座り込み通りかかった野良猫の腕を右に左に動かしながら自由に飛べて嬉しいと語りまくっていた神田を見つけたことだった。
なんとなく声を掛けることも躊躇われ。
そのまま臆面も無く垂れ流される、嫌味で、意地悪で、失神しない奴と言う失礼極まりない台詞を、とろけそうに嬉しそうな声で散々告げられるのをベンチに座って聞いていた。
そして、お仕舞いには野良猫の腹に顔を埋めるようにして眠ろうとしたのだ・・・この男は。
なんとか無理矢理揺り起こして、肩に腕を回させるように立たした所で気付いた事と言えばこの男の住処など全く知らないという事実だった。
何とか膝に力を入れて、そのままタクシーに神田を詰め込み自分のアパートまで帰って来たのだった。
「いいや?別に。」
わざわざ言ってやる気も無いので、取り敢えずは笑いを引っ込めて真面目な顔を作ってやる栗原の顔をいぶかしむ様に見上げてくる神田。
「ホント?」
「ホント、ホント。
 ああ、そう言えば裸踊りしようとしたぞお前。」
「ああ~~~~~~~っっ!!」
言われた台詞に神田は頭を抱え込んだ。
「いつもあんなのなのか?お前って?」
「いや・・・人が言うには、物凄くテンションが高い時にやっちまうらしい・・・。」
妙に納得している栗原の顔を見ながら、ふと腕に入ったままの腕時計に目が留まった。
「何時なんだ?」
「ん?もう10時前だな・・・起きるか?」
今日は一日休みだから別に時間は気にしなくて良い。
それに合わせて飲みに出るのが常識だからだ。
「・・・あ・・・そう言えばココ、栗原んち?」
「他、何処へ連れてけって言うんだよ。お前の住んでる所なんて俺は知らんぞ。」
起き上がるとそのまま伸びをしながら、洗面所の在るであろう辺りに消えた。そのままザーと水音が聞こえてきたので、多分間違いは無いだろう。
キョロキョロと周りを見回すと昨日着ていたスーツ上下とネクタイ、それに靴下が一揃え重ねて置いてあった。
神田が自分の姿を見てみると、申し訳程度に引っ掛かったシャツとトランクスの姿で・・・あまりの情けない格好に、温もりが残った布団を抱え込む。
「神田、米とパンとどっちにする?」
「ん?なんでもOKってか、栗原さん・・・メシ作んの?」
「神田・・・幾らやもめの一人暮らしったって朝飯ぐらい食うだろう。」
・・・ええ、全くそんなもん作った事無くって、朝飯なんて近所の喫茶で食ってます。はい。と言う言葉は言わなかったんだけど、正確に読み取られたらしい。
「・・・仮にも自立した大人の男な訳だからな・・・深くは問わん!!
 取り敢えず、今日はどっちにするんだ?」
「白いご飯食いたい、ご飯!!」
「へーへー。」
そのまま、台所に立った栗原を見ながらぼんやりしてたら、朝飯はすぐに出来上がり。
栗原は布団を抱えたままの俺に顔をしかめると即刻洗面所で顔洗って席に着け!と小さなコタツ机の前に座布団を差し出された。
素直に座ってみると、白いご飯のほかにも味噌汁と納豆と卵焼き、その上白菜の漬物まで付いていて・・・思わず、目をキラキラさせてしまった。
「神田、お前寒くないわけ?」
いかにも嫌そうと言う顔をしながら、栗原が問い掛けてきた。
「慣れた。上にシャツ着たままだから結構平気だぞ。」
実際、休みの日にスーツの下なんか着る気にもならないシロモノで、見目はどうでもいい気分なので寝ていたそのままの姿で机の前に座り込んでいたのだ。
「・・・。」
栗原が指で頭押さえて、溜息をついたけれどそんな事は気にしないで置く。
「それよりも食っていいんだろ?」
「ああ・・・どうぞ、召し上がれ。」
「いただきま~~~す。」
ぶふっと向かいから漏れた笑い声の欠片も気にしない。目の前には飯があるんだから。
腹も満足すると今度は眠くなるのが、人の常って事で・・・そのまま元居た布団に潜り込もうとしたら、シャツの首根っこを掴まれた。
「神田!!何する気だ!!」
「いや・・・腹もいっぱいになったし、ちょっと寒いし・・・元居た布団に帰ろうかと・・・。」
「ココは誰の部屋だ?神田二尉。」
「栗原さんち。」
素直に答えるとシャツを持っていた手が溜息と共に離された。その隙に布団に潜り込む。
「ヤドカリかお前は・・・。」
「そう言う栗原だって、パジャマのままじゃんか布団の中は温いぞ~~~~。酒も残ってんだろ~~~。」
一応奴はちゃんとジャケットと羽織っていたが、そう布団から顔を出してこいこいと手招きをしたら
、割合簡単に近寄って来た。
ぴらっと布団をめくってやったら、そこでいったん流石に止まったが。
「なんでぇ、寒いじゃん、早く、早くっ!!」
その言葉に諦めるように、隣りに滑り込んできた。
「なんか、物凄く不本意なんだがな神田。」
「気にしない、気にしない。あ~~~あったけ。」
布団に入り込んできた栗原の身体にぺたりと張り付くとさすがに眉間に皺が寄った。
「子供か・・・。」
「失礼な、..歳の立派な大人だぞ。」
「何だ!?年下じゃねぇか。神田は止めて、神ちゃんにするか?」
語るに落ちるとはこの事だと思ったけれど、その途端栗原の態度が甘やかすようなノリになったので黙っておく事にした。
「幾らなんでも夜には帰れよ。神ちゃんに合うシャツなんてウチにはねーぞ。」
「は~~~い。」
わざと間延びした返事をしてやった。
夜まではいて良いんだなとかの即、叩き出されるような台詞には蓋をして。

 うつらうつらするような温かい布団の中で神田は考える。
戦闘機が好きで戦闘機乗りになった。
子供の頃はコレに乗れれば満足だと思っていた。
そんな希望も叶ってしまえば、次の望みを見てしまう。
もっと早く、もっと自由に。
けれど時間を重ねれば、重ねるほど自由に飛ばせない苛立たしさに自分自身腹が立っていた。「ナビ潰し」なんて呼ばれる事も本当は本意じゃない。
悪ぶって、嘯いて、自分を誤魔化してきた。
そんな煮詰まりもピークに達した時に、この男が現れた。
初めて自分より無茶をする男を見たと思った。面白いと思った。俺の要求にあっさりと応えて来て、無理難題を逆に押し付けてくる。
何かが告げる。
転機の時だと。
何が待っているかは分からない・・・これからどうなるかは分からないけれど、何かが頬を緩ませる。これから来る流れに素直に乗ってみようと思う。
きっと楽しい筈だ。
そう思う気持ちのまま、隣りに寝た男に擦り寄って行った。

この近くにある体温が、この後どうしようもなく近くなる事なんて気付きもせずに。

2004.11.30 かずえ




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