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   …ジャンル替:Idd.(三国志大戦)

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Love the Island...


 「神さ~ん、百里降りれないってよ。どうするよ?」
 眼下に見えるのは巨大な台風の目だ。しかも首都圏を中心に三陸沖、日本海側まですっぽり覆い隠してしまう程の巨大な台風。台風の中を飛ぶ事はなんとかできるにしても、滑走路付近の風速が50ノットを超えていては、着陸はとても不可能だ。
 「あん?オルタネートはどこよ?」
 「最初のフライトプランのは全滅よ。三沢、松島、小松全部ダメ。成田ももちろん。」
 アラートで上がったはいいものの、ペアで上がった320号機を先に帰してエスコートを引き受けたのがますかった。いつものウラジオストック発のベトナム行き定期便だ。調子に乗って帰る燃料ギリギリ、東シナ海付近まで送っていったのも災いした。
 「神さんが調子に乗るから。」
 「んな事言ってないで、オルタネート探してくれよ、栗。このままじゃ墜落しちまう・・・。」
 「・・・お、ありましたぜ。降りられそうな所が。」
 「どこだよ。」
 「北と南とどっちがお好み?」
 んな悠長な事を聞いてる場合じゃないだろうが、と神田は思う。けれど、どちらを選ぶにせよ残燃料やコースについては栗原はもう算出済みなのだろう。
 「えーっと、じゃあ南だ!」
 「OK! Turn light headding zero-niner-zero」
 「Rojer!」
 台風の上空から離れ、680号機はそのまま南東へと進路をとる。
 「で、どこへ行くのよ、栗?」
 「さーてね。着いてからのお楽しみよ。」
 「楽しい所か?」
 「・・・・・・。」
 「おい、黙るな!ちゃんと誘導しろ!!」
 「選んだのは神さんだかんね。ちなみに北だと千歳だったんだが。」
 「な~~に~~~。あ~~~、すすき野で遊びそこねた~~~~っ!!」
 「まぁまぁ、お、見えてきましたぜ。どう、見覚えある地形でしょうが?」
 「あ?ってここって・・・。」




 「そう、硫黄島でーす。」
 「でーす、って、てめぇ、なんて所に降ろそうとしてるんだ!!」
 「だって、南がいいって神さんが言ったんだもーん。ここしか滑走路あいてなかったんだもーん。それにもう本土に向かう燃料ないもーん。」
 「く・・・くそ、とにかく降りりゃいいんだろうが!!さっさとタワーと交信しろ!!」
 「Rojar!」
 「Tower, Aster six-eight-zero!」
 『Aster six-eight-zero goahead.』
 「Aster six-eight-zero 10miles west of IOUJIMA, request to approach clearance!」
 『OK! for vector to final approach. reduce speed due to traffic.』
 「OK!」
 「神さん、スピード落としてってさ。込み合ってるみたいですぜ、ここも。」
 「あん~、もう燃料ねぇだろうが。どこの馬鹿野郎どもだ、こんな島に降りようってのは。」
 「って、あー、米軍さんだ。トムキャットがウヨウヨいますな。」
 「あっちも空母に戻れんってわけか。」
 『Aster six-eight-zero cleared for runway approach!』
 「お、着陸許可が出たみたい。さくっと降りますか。」
 「おうよ。」




 「・・・ほんと、なーんにもないのね、ここ。」
 「突然押しかけて、メシと宿提供してくれるってんだから、文句言わないの。」
 硫黄島にあるのは自衛隊の基地だけ。滑走路と数棟の隊舎がある他はひたすら生い茂った雑草のジャングルが続く。その合間を無理やりに作った道路が基地を一周するように引かれていて、そこは前の大戦の際に作られた数多くの壕やトーチカをめぐるようになっている。
 当然ネオン街もなければ、隊員クラブさえも営業していない。
 酒を飲むにしても月に何度か海上の輸送船で補充されるPXの販売物を手に入れるしかないのだ。
 「散歩いこうぜ、栗。」
 あまりの退屈さに耐えかねて神田は栗原を外に誘う。
 硫黄島基地隊の外来隊舎は米軍のNLP訓練ように思いやり予算で立てられた米軍使用の立派なものだ。
 部屋はそれなりの調度がしつられられたツインがバスルームを挟んで二つつながったコネクティングルームになっている。
 「外に出たって何もないですぜ?」
 「中にいたって何もないだろーがよ。テレビだって映んねーんだぞ?ここ。娯楽室は米軍の野郎共に占領されちまってるしよ。」
 「いいけど、ベッドメーキングくらいしてったら?」
 外来隊舎といえどもホテルではないので、ベッドの上にシーツを敷いて、枕にカバーをかける作業は自分でするしかない。言いながら、栗原はテキパキとベッドを作りあげていく。
 「えー、めんどくせぇ。一緒に寝ればいーじゃん。」
 米軍仕様のベッドはたしかにかなり広い。
 その言葉に明らかな下心を感じて、栗原の口調が変わる。
 「神田・・・、ここがどこだかわかってるのか?」
 「・・・・・・いや、その・・・。」
 時にサングラスの奥の瞳は蛇のように鋭くなる。神田にはそれがおっかなくってしょうがない。
 「さっさとやれ。そしたら散歩に付き合ってやる。」
 「はーい・・・。」




 隊舎を出ると夜だというのに熱気がたちこめている。それでも昼間の暑苦しさとは全然別もので、ほんの時折吹く風も涼しさを運んでいる。
 「あんまり遠くへ行かないで下さい。特に戦跡には行かんほうが身のためです。」
 隊舎地区から外に出ようとしている二人に、基地隊の隊員がそう声をかけた。
 「あと、サソリやムカデも出るのでお気をつけて。」
 ニヤリと笑ってそう付け加える。そうやって外来者をおどかすのもこの島にいる隊員の楽しみの一つらしい。
 「蛇は出んらしいな。」
 そこからしばらく歩いていったところで意地悪く栗原はそう言った。
 「るせー、出たって平気だ。」
 「はいはい。でどこへ?」
 行こうとはいっても宛てはない。ただどこまでも背丈を超えるほどの高い草が生い茂り、その合間の道を行くだけだ。
 「とりあえず歩いてりゃどっかに着くだろう。」
 話らしい話をするわけでもなく、二人一緒にてくてくと丘に続いているらしい上り坂を登っていく。着替えも持ってきていないので、飛行服のまま、照明もない割りに明るく照らされている道で、緑の草叢にオレンジ色が映えていた。
 「あぁ、なんだ明るいと思ったら・・・、星がすげぇ。」
 空を見上げて神田が言う。
 「ほんとだな。」
 栗原も純粋にそれに賛同した。何もない離れ小島の空だ。夜空には降り注ぐ程の星が光っていた。一等星の明るささえも本土で見る倍に見える。
 そんな事を言いながら、二人は丘の頂上にたどり着く。そこは見晴らしをよくするためか、人為的に草が刈り取られていてちょっとした休憩所のようだ。
 「すげぇな。」
 星座を探そうと、神田は草の上に寝転がった。
 地熱のせいかそこは冷やりとした感触を与えない。
 「星座なんか知ってるのか?」
 からかうように栗原は言う。
 「俺だって天測くらいできるわい。」
 そんな神田の答えに栗原は笑いながら、同じように横になった。
 降るような星空は上空だけでなく、水平線にまでつながっている。擂鉢山を除けば、島で一番高いであろうこの場所で見るそんな星空は天然のプラネタリウムだった。
 二人しばらくそうしていた。地熱の暖かさが夜の空気の中では心地よくて。
 そして、神田の手がつと伸びて、栗原のサングラスを奪う。
 「そんなのしてたら、よく見えんだろうが。」
 せっかくの星空なのだ。レイバンがいかに光の屈折率に順応するとは言ってもプラネタリウムの魅力は半減するだろう。
 「忘れてた、でも取るとまぶしいな・・・。」
 すっかり体の一部になっているそのレイバンを栗原は昼夜問わず外す事は滅多にない。外しているときがあるとすれば寝ている時か風呂に入っているとき、家にいてくつろいでいる時くらいだ。仕事中はフライトしているときも外す事はほとんどない。飛行隊の中でも栗原の素顔を見る機会がある人間は極めて少ないのだ。
 けれど、相棒であり、一緒に暮らしている神田がその稀少ケースのうちの一人であることも間違いないわけで。
 サングラスを外した栗原の顔は驚くくらい秀麗だ。
 周囲の闇と星空から降る光とが作るシルエットがその様相を引き立てている。
 そんな栗原の貌を、神田は他の誰にも見せたくないと思う。
 そして、唯一自分だけに見せてくれる、甘えるような表情ももちろん。
 「栗・・・。」
 この島のこんな場所で、他に誰がそれを見ているというだろう。
 ふいに独占していたい気持ちにかられて、神田は隣で寝ている栗原に覆いかぶさった。そして、抗う隙を与えずに押さえ込みながら唇を奪う。
 「・・・・・っ・・・ん・・・。」
 包むように塞いだ唇の隙間からくぐもった声が漏れた。
 迷う事なく、飛行服のジッパーに手をかける。
 もともと体躯をしめつけないように設計されている飛行服は上下のジッパーだけで楽に着脱ができるようになっている。胸元までそれを下げられて広げられ、栗原は必死で神田の体を押し返した。
 「ば・・・馬鹿野郎っ、誰か見てたらどうすんだ!」
 日が暮れてから出歩く酔狂な人間は自分達くらいだという自覚はあるものの、誰も見ていないという保証はどこにもないのだ。
 「ここじゃイヤか?」
 「当たり前だっ。」
 「じゃあ、部屋帰ろうぜ・・・。俺、もうダメだ・・・。」




 朝が来て、流され過ぎたかな、と栗原は自嘲していた。
 起床ラッパに起こされることなく、窓から差し込む光の強さに目を覚まして、そして結局使われる事のなかったもう一つのベッドの片付けを始める。
 とりあえず、シーツも枕カバーもまっさらな状態でさえなければ誰も不振には思わないだろう。
 ふと、さっきまで自分が寝ていたベッドを見れば、神田がだらしのない寝顔を見せていた。当分起きそうにない表情だ。
 ベッドを片付けてしまってから、昨日と同じ飛行服を着込むと、栗原はこの島の習わし通りにドアの外に置いた水の入ったコップを片付けようと扉をあけた。
 廊下の向こうのほうにザワザワと人に話す声が聞こえる。それは英語で、そこが間違いなく米軍の宿舎であることが理解できた。
 「やれやれ、向こうさんは早起きなこって。」
 そうこうしているうちに起床ラッパが部屋に響きわたった。通常はこれで目が覚めるものだ。しかし、神田は目を覚まさない。
 「神さん?朝だよ?」
 仕方なく栗原は神田は揺り動かして起こそうとする。
 それでも。
 「・・・今何時だ?」
 寝ぼけた声がそう訊ねる。
 「朝6時だよ。メシ行こうぜ。朝イチで百里に帰りたいだろ?」
 「・・・もうちょっと寝かせて・・・。」
 それだけを言って、神田は米軍仕様のカラフルなタオルケットを頭の上にたくし上げた。
 仕方がない、と思いつつも栗原は一人隊員食堂へと向かった。どのみち今神田が起きたところで飛行場勤務を行っている隊が動き出すまでここから離陸することはできないのだ。
 そんな栗原が食堂で一人食事をとっていると、
 「ヘーイ!」
 と、あからさまに明るいイングリッシュが栗原の耳に聞こえた。
 今となってみれば地方訛の聞きなれた声だ。
 「ジョーイか?」
 「当たりデース。いやー、こんな所で会えるとは。」
 「久しぶりだな。なんだ、そっちもここに飛ばされた口かい?」
 「神田はどーしました?」
 「一緒だよ、まだ部屋で寝てるけどね。」
 「uh-oh....」
 栗原のその言葉にジョーイはニヤリと笑う。
 「昨夜はお楽しみだったみたいデスね・・・。」
 「なっ・・・。」
 ジョーイの言葉に一瞬、栗原のポーカーフェイスが崩れる。
 「いや、昨夜は私もイイモノを見させて貰いまシタよー。じゃあ、またどこかでお会いしまショー。」
 「ちょっと待て!何を見たんだ、どこまで見たんだ!?」
 「・・・・・・じょ・・・・冗談デース。」
 謎の言葉を残して謎のアメリカ人はその場を去っていった。もちろん、栗原からの追求を逃れるためだ。そして、その直後、朝一番のトムキャットが硫黄島を飛び立って行ったのは言うまでもない・・・。
 そして・・・。




 「よし、燃料も満タンにして貰ったし。百里に帰るぞ、栗!」
 フライトの時間までぐっすり眠ったせいか神田は上機嫌だ。もちろん、睡眠のおかげだけでもないのだが。
 だが栗原はそれに反して非常に不機嫌だった。
 「・・・いや、百里は後だ。」
 「後ぉ???どこに行くってんだよ、栗ぃ。」
 「目標・・・、米海軍空母、キティホーク!」
 「な・・・なんだってぇ??」
 「うるさい・・・、ごちゃごちゃ言ってないで離陸しろ!」
 無線越しに神田に聞こえてくる栗原の声は冷ややかだった。これに逆らえる人間など世界広しと言えどいるわけがない。
 「・・・ら・・・らじゃー。」
 二人を乗せた680号機が飛び立った後・・・、太平洋を航海中の米軍空母、キティホークが、統計データ上説明のつかない理由で本土に向けて引き返していった事が記録として残されてたのだった・・・。




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