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Winding Road


 「栗原・・・、お前今何キロで走ってるかわかってっか?」
 と、助手席の伊達が尋ねる。
 「プラス24キロぴったり。」
 「俺が急いでるって知ってるよな?」
 「無理言いなさんな。俺は公務員なわけよ。罰金と反則金のギリギリラインで走ってんだ、これ以上は無理よ。」
 「この道でこの時間に取り締まりやってっか?」
 「やってたらどうするんだ。年末だぞ?」
 「やってねーだろう。」
 そんな会話がかわされているのは国道355号線、丁度霞ヶ浦を千葉方面に回り込む道路だ。運転席は栗原、助手席に伊達、めずらしい組み合わせで乗用車は一路成田空港を目指していた。
 神田の姿は後席にあって、うつぶせにリアシートに体を投げ出したまま動かない。かなりぐったりしているようだ。
 車は中途半端なスピードで千葉方面に向かっている。
 明け方のまだ薄暗い時間。海の方向だけが少し明るくなり始めている。
 伊達は急いでいた。成田空港への出勤時間が迫っているのだ。そしてかなり焦ってもいた。しかし肝心のドライバーは比較的ゆっくりと車を走らせている。
 道が込んでいるわけでもなく、道路状況が悪いわけでもない。
 しかし運転手は法定速度を24キロオーバーした状態を続けていた。丁度検挙されても反則金で済むギリギリの速度だ。これなら処罰の対象にもならない。
 「遅れたらどうしてくれるっ??」
 「るせぇ、俺のせいじゃないぞ!お前らがこんな明け方まで・・・。」
 「好きで居たわけじゃねーよ。だいたい、神田だぞ?俺をこんな時間まで付き合わせたのは。お前一体どういう教育してるんだっ。」
 「仕事があるのを忘れているほうが悪い。それに俺には神田を教育する義務はない。」
 「何言ってんだ、栗原。お前ちゃんとコイツを尻にしいてないと、後で痛い目みるぞ、きっと。」




 その電話がかかってきたのは明け方のことだった。
 それは5時半くらいのことで、ギリギリ首都圏のサラリーマンであれば、そろそろ始発の電車に乗ろうと家を出ていてもおかしくはない時間帯。
 電話をとったのは栗原で、いつもより少し早く起こされて多少機嫌が悪い。
 「・・・なんだって?」
 電話が誰からで、何の用件かもわかっている。
 呼集だという可能性も捨てきるわけではなかったので、一応丁寧な物言いで電話に出た栗原であったが・・・。
 電話をかけてきた主は当然のことながら、神田であった。
 今から向かえに来てくれという。
 しかも、ベロンベロンだ。どこに行けばいいのか聞いても、一向に明瞭な答えが返ってこない。しかも送って行った店とは場所が変わっているようだ。
 昨日の夕方のことだった。
 航空学生の同期会があるから土浦でちょっと飲んで来る、と言った神田を一軒目の店まで送っていったのは栗原だった。
 「終わったら電話してこいよ、迎えに来るから。」
 と官舎妻さながらにそんな気遣いを見せたのも栗原だった。
 けれど、その日は神田からの連絡はなかった。
 どうせ神田のことだ。飲み会でかなり盛り上がってしまえば二次会、三次会へとハシゴしてしまうことなど目に見えている。それで栗原への連絡を忘れてしまうこともいたしかたのないことで。
 それでオロオロと心配するような性格の栗原でもなかったのだが。
 さすがにゆっくりとは眠れなかった。
 だから多少の寝不足はある。
 電話の声に安堵したのも束の間、要領を得ない神田との会話に多少の怒りがこみ上げてくる。
 「お前、どこにいるのよ?場所わからんと、迎えにもいけんでしょうが!」
 「えー・・・えーっと、こーこーわぁ・・・・・。」
 と、そんな時
 「もしもし、栗原か?」
 神田の声に変わって、どこかで聞いたような懐かしい声が栗原の持つ受話器から聞こえてきた。
 「・・・?伊達っ?なんでそこにいるワケ??」
 「さっき店で会った。」
 「そこ、どこだ?神田に聞いてもさっぱりわからん。」
 「あぁ・・・土浦のインターを右に出て・・・」
 と店の場所は伊達が説明してくれた。なんでそこに伊達がいたかはともかくとして、これほどありがたい事はない。
 「おっけ。神田は大丈夫か?すぐ行くから見ててやってくれるか?」
 「あん?俺が神田をか?寒いんだけど。」
 「頼む。どうせそのまま放っておいたら、そいつ、どこで何するかわからんだろ?」 「・・・高いぜ?」
 最後の言葉は聞き流したのか、通話はそこで切れた。
 土浦までは混んでいても40分くらい。
 「あー、もぅっ。一人にしとくとロクなことせんのだからっ。」
 神田の分のコートを掴んで、車に乗り込む。そしてそのまま国道355線を土浦方向へとぶっとばす栗原だった。
 「で・・・?」
 ようやく、店についた栗原を待っていたのは、まだいくぶんグロッキーな状態の神田と、それを支えるように腕と肩をかしている伊達の姿。
 「俺じゃないからな?」
 と言ったのは伊達だった。神田がここまでベロベロなのは自分のせいではないと言いたいらしい。
「わかってる。とにかくそのアホを車に乗せてくれ。」
 大の男がぐったりしているのだ、かなり重い。二人がかりでようやく後席のドアを開けて、神田を放り込むと、そのまま崩れるようにしてリアシートに神田は横になる。そのまま寝てしまったらしい。
 「いい気なもんだな。」
 と伊達が言う。
 「お前、どうするんだ?良けりゃ送っていくけど?」
 「千葉だぜ?おりゃ嬉しいけど、神田が持つか?」
 「こっからじゃ1時間もかからんだろ?いいさ、明日は休みだし。神田の事は放っておこう。」
 「お、いい事言うね栗ちゃん。んじゃ、よろしくね。」
 と、そんな栗原の申し出を伊達は快く受け入れた。
 だが、車が走り始めたその直後、車内に伊達の声が響き渡ったのだった。
 「あ~~っ、忘れてた~~っ!俺今日休日出勤だったよ~~~。」




 で、車は現在も茨城県から千葉県の境にさしかかる辺りをノロノロと疾走してるのだった。
 「栗原~・・・、これじゃ間に合わん。」
 「・・・処分くらったらどうしてくれんだ。司令の小言くらいならともかく、減給くらいたくねーだろうよ。」
 「・・・栗原、お前、金の心配しかしねぇのか?」
 「外に何かあるか?今だって十分に薄給なんだぞ?これ以上減ったらどうしてくれる!!」
 そんな栗原の言葉に伊達はしばらく黙ってから・・・、
 「じゃあ、減給分俺が補填してやる!!何なら神田の分も補填してやる!!だから急いでくれ!あと30分以内に成田に着かなきゃならんのだ!!」
 とそう言った。
 その「補填」の言葉を聞いた瞬間・・・。
 栗原はアクセルを踏み込んでいた。
 「伊達ってば太っ腹!んじゃあ、いくぜ。」
 とそのままスピードを上げていく。80キロ、90キロ・・・。
 そしてとうとう、
 「く・・・栗原、今何キロで走ってるかわかってっか??」
 と伊達が訊ねるのに、
 「・・・まだ100を超えた所だな。大丈夫、この車なら140までは十分持ちこたえられる筈・・・ん?」
 栗原が横目でちらりと助手席の伊達の方を見ると、伊達はシートベルトを確かめるような仕草をして、そして体をぴたりとシートにおしつけてすっかり逃げの体勢だ。
 「何逃げ腰になってんのよ、伊達。俺の計算じゃ後30分で成田に着くにゃ、このくらいのスピードださなきゃ間に合わんさ。」
 「れ・・・冷静沈着に怖い事言うな・・・。」
 「伊達も、ダメだねぇ。神さんなら隣でヘラヘラ笑ってると思うよ?」




 そんな会話があって・・・。
 「わかった・・・、やっぱいいコンビだお前ら。」
 と神田と栗原の事を指して伊達はそう言った。
 「でなきゃ、一緒に戦闘機なんか飛ばしてられんよ。」
 と栗原はそう言う。伊達の口調に多少の揶揄があった事は聞き流すようにして。
 信じられないスピードで国道を飛ばしていた車は51号線から成田に向かう幹線道路に降りた所だった。
 そしてターミナルの隅にある職員用の駐車場へと車はすべりこんでいく。
 「いいコンビっていうか、よく出来た夫婦っていうか。相性もなかなか良さそうみたいで、うらやましいぜ。」
 降りる間際になって伊達からそんな言葉が出る。それを聞き逃す栗原でもなかった。
 「何だって・・・?」
 「んー、言った通りだ。色々聞いたけど、お似合いでなりより、ってこったな。」
 伊達の言葉はあきらかに何か含みを持っていて、けれどそれは栗原にはすぐに伝わる類のものだった。そして当然それは栗原には不快だ。
 「ば・・・ばかやろうっ。お似合いってなんだ、お似合いって!!俺と神田はそんなんじゃ・・・。」
 「ムダ、ムダ。全部聞いたよ。」
 「何をっ?」
 「ん?だから全部。」
 そんな言い合いを続けながら、車は駐車位置についた。
 時間は伊達の出勤時間の2分手前。ほんとにギリギリだ。
 「じゃ、ありがとな、栗原。旦那にもよろしく!・・・っと。そうだ。」
 「ん?」
 「神田にゃ、ちゃんと口止めしといた方がいいぞ。お前との事、洗いざらい俺に愚痴ってたからな。いや、あれはノロケってのかな。」
 と降りがけにそれだけを告げて、伊達は逃げるように助手席の扉をパタンと閉めた。
 そして、
 「信じられん・・・。」
 と、激しい敗北感と虚脱感に栗原が苛まれていたその時・・・。
 「・・・栗ぃ・・好きだ・・・。」
 と背後から寝ぼけた声が聞こえてくる。
 もちろんその声のトーンは寝言にちがいなく、だがそうであればこそ、それは栗原の怒りを心頭させた。
 「起きろっバカ野郎っ!!」
 とリアシートを振り返って寝ている神田の頬をぺちっと叩く。
 近頃では良く見られる風景で、栗原は神田に対して、譲れない部分は決して譲らない事に決めていた。それが同居を上手くやっていくコツだと世間一般的に言われているからだ。
 だが神田は起きず、狭いシートの上でまた体勢を変えて、栗原の方に背を向けるようにして寝てしまう。
 無防備なのは構わないが、口が軽いのはどうしたものか。伊達に知られるくらいなら、伊達もあの性格なので再三からかわれるくらいで済むかもしれないが、同期に知れれれば即オールジャパンだ。
 家に帰り着いたら必ず問い詰めてやる、とそう心に決めて栗原は今来た道を引き返していった。その運転は後ろで寝てる人間にとって決して優しいものではなかったが・・・。




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