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Misty Night


 「よーし、ボーナスも出たことだし、どっか繰り出すか!」
 「いいねぇ、土浦あたりまで出るか。」
 「あー、俺いい店知ってるっすよ。」
 と、すっかり休日モードの隊員が口々に話し合っている。
 神田と栗原は、そんな飛行隊オフィスの隅で今日のフライトの反省会をしていた。地道な努力が明日の実を結ぶ、意外に真面目なのだ。
 と、そんな二人に。
 「神田2尉、栗原2尉、どうですか?一緒に。」
 飲み会の算段をしていた隊員が二人に声をかける。
 「どうする?神さん。」
 「どうするって、誘われたら行くっきゃないだろ?」
 「・・・んー、俺はパスだな。昨日から風邪っぽくてさ。神さんひとりで行ってきなよ。」
 「んー・・・。」
 「何悩んでんだ。たまにゃ、俺の居ないところで羽伸ばしてこい。」
 「じゃあ、そうさせて貰うかな・・・。」
 そして神田一人がその飲み会に参加表明をした。
 あとから聞いてみれば、行き先はかなりいかがわしいクラブだった。
 それこそ金さえつめばなんでもさせてくれそうな。最近では土浦あたりで随分と羽振りをきかせていて、かなり大きな店になっている。
 「他にいないかー、予約いれちまうぞー。」
 と、その呼びかけに妻帯者までもがその誘いに乗りかけている。
 愛娘が生まれたばかりの西川も例外ではない。
 「お、来んのか?幸せ者のクセして。」
 「女房が怖くて、ボーナスが使えるかってね。」
 「おー、お前いい事いうねぇ。」
 もともと過激なノリの飛行隊だ。こんな時のノリの良さは日本中探したって、滅多にはないだろう。
 結局、行く人間は随分な人数になって、神田も含めて店の送迎バスを呼んでそのまま乗って行ってしまったから、栗原は一人で帰途についた。




 神田と栗原が一緒に生活を始めてから、もう数ヶ月が過ぎていた。同じファントムの前席と後席についていて、そして意気投合して一緒に暮らし始めたから、周囲には再三「夫婦」だ、「新婚さん」だと冷やかされたりもした。
 事実、お互いそんな関係になってしまうとは予想だにしていなかったのだが。
 体を重ねるようになってからでも、もう随分になる。
 不思議なくらいに相性がよくて、欲求はちゃんと満たされていた。
 それでも、いつでもお互いに罪悪感を伴うのは、どこかで遠慮している部分があるからなのだろう。自分よりも自然な関係で居られる相手はきっとどこかに居る筈だ、と。
 だから二人で居ても、可愛い女の子の前では一歩も譲らない。神田の女好きは昔から疑い様のない事実で、栗原も可愛い女の子は好きだ。
 それが、動物的本能が求めるものなのか、それとも理性がその方向を示唆しているのかを判断できずにいたのだが・・・。
 お互いに張り合いながら、けれどお互いの幸せを願っている。
 けれど、そうでありながらお互い離れられなくて、狂おしいくらいに互いの体を求める日が続いたりもする。
 一人、布団に包まりながら、栗原は一人でそうやって眠るのが久しぶりだということに気がついた。
 どんなに疲れていても、栗原が拒否したとしても、神田は必ずその体温が触れる位置で眠ろうとするからだった。だからその体温を、肌の感触を感じずに眠りつくのはかなり久しぶりのことだ。
 今頃はきっと、神田も店の女の子と上手くやっているだろう、と。もしくは二次会、三次会と流れていった席で楽しく騒いでいるの違いないと。
 そんな事を思いながら眠ろうとしたとき、玄関のほうで鍵の開く音が響いた。
 そして、
 「ただいまー。」
 と、ひたすら能天気な神田の声が響いた。
 多少は酔っているのか陽気だ。
 「栗ー、居ないのかー?」
 確かに酔ってはいるらしく、その声が夜中だというのに随分大きい。
 「ここにいるぜ。なんだ、もう帰ってきたのかい?」
 奥の部屋の布団の中から栗原が声をかえると、神田はためらうことなくそこにスタスタと近寄ってきた。
 「栗~。」
 酔っ払い特有のテンションの高さでそう呼んで、神田はその布団に潜り込んで来た。
 「酒くせぇよ、神さん・・・。」
 「ん~、やっぱココが一番落ち着く・・・。」
 「こら、苦しいってば。」
 神田は栗原を抱きしめていた。当然、栗原の意見とかそんなのは無視だ。
 「・・・お前、何で帰ってきたんだ?」
 必死でその腕を振りほどこうとしながら栗原は問う。
 「何で・・・って。女房が恋しくなったからさ・・・。」
 「・・・女房って言うなや、ったく。なんだ?店の女の子に冷たくされたのか?」
 「栗ぃ・・・好きだ・・・。」
 神田の言葉は返事になっていない。甘えるように栗原に擦り寄って、その返事を待っている。子供のようだ。
 「も~、離れなさいよ。」
 「ん~、いい抱き心地・・・。」
 栗原を抱きしめながら、神田はそう言う。
 「抱き心地って・・・、女の子のがよっぽどいいだろうに・・・。」
 「女の子っていいけど、細くて薄くて、なんか壊しそうで怖い。」
 「・・・お前ね。」
 「ここならフワフワしてなくて、安心できる。お前が一番いい。」
 「俺なんかを一番にしてどうするよ・・・。」
 「でも、ここがいい・・・。」




 結局言いたい事だけを言って、神田は眠りについたようで、後には困り果てた栗原が残された。
 せっかく一人ゆっくりと眠れると思っていたのに、狭い布団の侵入者を許したくはなかったが、この寒い夜に放り出すわけにもいかなかった。
 それに、神田の体は甘えるようにしがみついていて、とれそうにもない。
 仕方がなく、栗原はそのまま目を閉じる。
 そして、いつもは考えまいとしている疑問が不意に襲ってくるのだった。
 こうやってお互いが互いを必要とし続ける期間はあとどれくらいなのかと。
 神田はこうやって本能のままに栗原に甘えてくるけれども、栗原の方も何一つ神田を必要としていないかと言えば、それは嘘になる。
 別れを切り出すのは、多分神田であって自分ではないだろう、と栗原は思う。
 神田がパイロットとしてもう少し成熟すれば何も複座機に乗り続ける理由もない。単座に転向して常に第一線で飛び続けて欲しいとも思う。
 その時には笑って見送ってやりたいが・・・。
 その日がそれ程遠い未来でもないこともとっくに気がついていたから。
 「もう少し、傍に居させろ・・・。」
 寝息を立てている神田に聞こえないように、栗原は小さい声でそう呟いた。




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