大掃除
「なぁ、神田。この雑誌捨ててもいいのか?」
と、奥の和室の畳をせっせと拭いている神田の所へ、栗原が数冊の週刊誌を持ってやって来た。週刊誌と言ってもまんが雑誌や週間文春とかではなくて、水着グラビア+官能小説+ヌード写真がセットになった、いかにも独身男性が好んで買いそうな雑誌だ。
栗原はそれを神田の目の前にどさっと下ろす。
「あー、探してたんだよ、これ。どこにあったのさ?」
「・・・便所の棚の上。こんなモンそんなトコに置くな、そもそも。」
「いやー、すんげぇ前から探してたの、俺コレ。」
雑誌の日付を見るともう随分前になっていて、栗原がここに住み始める前の日付だ。つまり、そのくらいからマトモに掃除なんてしてなかったって事になる。
「まぁ、いいか。神田、畳拭き終わったんなら、休憩するぞ。」
そう言って栗原は、お茶をいれに台所へと向かった。
そして、湯気のたった湯呑みを載せたお盆を手に栗原がそこに戻ってくると、神田は拭き終えたばかりの畳の上にゴロンと横になって、その発見された雑誌をペラペラとめくっていた。
「ゴロゴロしてんじゃないよ、まったく。」
「だってさっきからずっと床拭きばっかだぜ?疲れたのなんのって。」
「ほほぅ。台所、便所、風呂場と水周りばっかりやってる俺は疲れてないとでも?」
「いやー、んなコトは言ってないが、お、コレコレ。このショットが好きなんだよな。どーだ、かわいかろう?」
言いながら、神田が指差したのは水着を着た女の子のグラビアだった。
幼い顔立ちと体つきのアンバランスさが絶妙な写真だ。
「ふーん・・・。」
「ふーんって。じゃあ、栗はどんなのがいいのさ?」
とそう言って神田は手近にあった雑誌を数冊を栗原の方に差し出した。どれも似たような雑誌だ。
「う~ん・・・、じゃあコレ。」
乗り気がしないながらも仕方なく神田に付き合って雑誌をペラペラとめくっていた栗原が、一枚の写真を指差した。
「どれどれ?」
神田が覗き込むと、そこに写っていたのは三つ編の高校生くらいの女の子が割と地味目な水着で学校のプールらしきところをバックに写っている写真だった。
「・・・栗ってロリコンなわけ・・・?」
予想だにしなかった栗原の選択に神田は驚きを隠ししれない。
「あほぅ、誰がロリコンだ、誰がっ。」
「いや・・・だってさ。これってどう見ても・・・。」
「よく見ろ、顔と水着の柄の合わせ方がこの子が一番自然だろ?それに光の当て方と被写体を捕らえる角度、それに風景の溶け込ませ方がなかなか良く出来てる。写真としてはピカイチだ。」
栗原のその答えに、神田は深いため息をついた。
「栗ぃ・・・、そういう所を見る雑誌じゃないだろう・・・。」
と、奥の和室の畳をせっせと拭いている神田の所へ、栗原が数冊の週刊誌を持ってやって来た。週刊誌と言ってもまんが雑誌や週間文春とかではなくて、水着グラビア+官能小説+ヌード写真がセットになった、いかにも独身男性が好んで買いそうな雑誌だ。
栗原はそれを神田の目の前にどさっと下ろす。
「あー、探してたんだよ、これ。どこにあったのさ?」
「・・・便所の棚の上。こんなモンそんなトコに置くな、そもそも。」
「いやー、すんげぇ前から探してたの、俺コレ。」
雑誌の日付を見るともう随分前になっていて、栗原がここに住み始める前の日付だ。つまり、そのくらいからマトモに掃除なんてしてなかったって事になる。
「まぁ、いいか。神田、畳拭き終わったんなら、休憩するぞ。」
そう言って栗原は、お茶をいれに台所へと向かった。
そして、湯気のたった湯呑みを載せたお盆を手に栗原がそこに戻ってくると、神田は拭き終えたばかりの畳の上にゴロンと横になって、その発見された雑誌をペラペラとめくっていた。
「ゴロゴロしてんじゃないよ、まったく。」
「だってさっきからずっと床拭きばっかだぜ?疲れたのなんのって。」
「ほほぅ。台所、便所、風呂場と水周りばっかりやってる俺は疲れてないとでも?」
「いやー、んなコトは言ってないが、お、コレコレ。このショットが好きなんだよな。どーだ、かわいかろう?」
言いながら、神田が指差したのは水着を着た女の子のグラビアだった。
幼い顔立ちと体つきのアンバランスさが絶妙な写真だ。
「ふーん・・・。」
「ふーんって。じゃあ、栗はどんなのがいいのさ?」
とそう言って神田は手近にあった雑誌を数冊を栗原の方に差し出した。どれも似たような雑誌だ。
「う~ん・・・、じゃあコレ。」
乗り気がしないながらも仕方なく神田に付き合って雑誌をペラペラとめくっていた栗原が、一枚の写真を指差した。
「どれどれ?」
神田が覗き込むと、そこに写っていたのは三つ編の高校生くらいの女の子が割と地味目な水着で学校のプールらしきところをバックに写っている写真だった。
「・・・栗ってロリコンなわけ・・・?」
予想だにしなかった栗原の選択に神田は驚きを隠ししれない。
「あほぅ、誰がロリコンだ、誰がっ。」
「いや・・・だってさ。これってどう見ても・・・。」
「よく見ろ、顔と水着の柄の合わせ方がこの子が一番自然だろ?それに光の当て方と被写体を捕らえる角度、それに風景の溶け込ませ方がなかなか良く出来てる。写真としてはピカイチだ。」
栗原のその答えに、神田は深いため息をついた。
「栗ぃ・・・、そういう所を見る雑誌じゃないだろう・・・。」
結局神田はその雑誌に夢中になっていて、休憩を長引かせてしまった。付き合いきれないとばかりに栗原は立って作業の続きを始めたのだが、そうやってサボっている神田の分を肩代わりするような性格でもなかったので、神田はその日夜遅くまで自分の分担をやり続けるハメになっていた。
そして、神田がようやく最後の玄関掃除を終えて、部屋に戻ってきた時、もうそこにはきっちりと布団が2枚敷かれていた。
「お疲れさん。」
神田の方に声をかけた栗原は、もう既にパジャマ姿で布団の中だった。そして、神田が寝る方の布団の枕元には、例の雑誌がきっちりと積み重ねられて置かれていた。どうやら栗原がそうしたものらしい。
「栗・・・何もここに置かなくてもさ。」
「どうして?トイレの中よりは布団の中だろ?その手の雑誌は。」
栗原にそう言われて、雑誌に手を伸ばしかけていた神田は激しくむせ返った。
「ぐっ、げほっ。わ・・・わかってんじゃねーかよ・・・。」
そんな神田に対して、
「ティッシュいるか?」
と栗原が事も無げにそう聞いてくるから、、
「ごほっ・・・ぐっ・・・なんてコト言うんだお前っ。」
答えながら神田は赤面するしかない。
けれど、そんな神田を横目に見て栗原は面白そうに、
「俺はお前がむせてるから要るかなって思っただけだよ。何に使う気だったんだ?」 と意地悪い返答を返す。
「・・・栗なんか、大っ嫌いだ・・・。」
こうなると栗原の方が一枚も二枚も上手で、
「はいはい、嫌いで結構。じゃあ俺は寝るから後はご自由に。」
と頭まで掛け布団を引き上げると、神田に背を向けて眠る態勢に入ったので、神田は結局その空気の中で取り残されてしまったのだった。
そして、神田がようやく最後の玄関掃除を終えて、部屋に戻ってきた時、もうそこにはきっちりと布団が2枚敷かれていた。
「お疲れさん。」
神田の方に声をかけた栗原は、もう既にパジャマ姿で布団の中だった。そして、神田が寝る方の布団の枕元には、例の雑誌がきっちりと積み重ねられて置かれていた。どうやら栗原がそうしたものらしい。
「栗・・・何もここに置かなくてもさ。」
「どうして?トイレの中よりは布団の中だろ?その手の雑誌は。」
栗原にそう言われて、雑誌に手を伸ばしかけていた神田は激しくむせ返った。
「ぐっ、げほっ。わ・・・わかってんじゃねーかよ・・・。」
そんな神田に対して、
「ティッシュいるか?」
と栗原が事も無げにそう聞いてくるから、、
「ごほっ・・・ぐっ・・・なんてコト言うんだお前っ。」
答えながら神田は赤面するしかない。
けれど、そんな神田を横目に見て栗原は面白そうに、
「俺はお前がむせてるから要るかなって思っただけだよ。何に使う気だったんだ?」 と意地悪い返答を返す。
「・・・栗なんか、大っ嫌いだ・・・。」
こうなると栗原の方が一枚も二枚も上手で、
「はいはい、嫌いで結構。じゃあ俺は寝るから後はご自由に。」
と頭まで掛け布団を引き上げると、神田に背を向けて眠る態勢に入ったので、神田は結局その空気の中で取り残されてしまったのだった。
そして次の朝、気持ちよく目覚めた栗原は、部屋の中がいつもより明るい事に気がついた。天井を見上げると、蛍光灯が煌々と点されたままで、そして神田はと言えば、雑誌の見開きのグラビアページを枕代わりに、そこにヨダレの染みを作って爆睡中のどうしようもない状態だった。
「やれやれ・・・、コイツを真人間に戻すのが俺の当面の仕事かねぇ・・・。」
と、何の憂いもない寝顔の神田とは対照的に、苦悩まじりに早くも来年一年の抱負を口にする栗原がそこにいたのだったが・・・。
「やれやれ・・・、コイツを真人間に戻すのが俺の当面の仕事かねぇ・・・。」
と、何の憂いもない寝顔の神田とは対照的に、苦悩まじりに早くも来年一年の抱負を口にする栗原がそこにいたのだったが・・・。