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His Phantom


 「ったく、なんて世話のやけるガキんちょなんだ。」
 一方的に切れた電話の受話器を手に、伊達は公衆電話コーナーの隅でそう呟いた。 「しゃあねぇ、会って話してくっか。」
 そこは羽田空港の出発ロビー前だ。伊達はそのまま、羽田空港内の紅空のカウンターに向かった。そこで社員証を見せて言う。
 「なぁ、千歳まで行きたいんだけど、クルー席どっか空いてねぇか?」
 受付の女の子に軽くウィンクしてそう尋ねると、
 「・・・社用で移動されるのでしょうか?客席をご用意できますが?」
 「まぁ、社用っちゃ社用だな。」
 と、適当な事を言う伊達だったが、受付係はそれを疑うこともなく、淡々と業務を進めている。冬の平日、しかも雪祭りでも何でもない時期の千歳便だ、それ程込み合っているわけでもなく、座席はすんなりととれそうだった。
 予約表と座席表を見比べていた受付係は、ようやく業務に支障のない席を見つけた様で、座席表から顔を上げると伊達に方ににっこり笑いながら、
 「2階席、通路側でよろしいですか?」
 と言うのに、伊達は、
 「いや、クルー席でいいんよ。んで、可愛い娘の隣な?あ、君もすんげぇ可愛いけどね。」
 とそんな言葉を返す。
 これが成田空港なら、紅空の搭乗クルーはもとより、受付カウンターまで伊達の性格は知れ渡っていて、軽く受け流して貰えるのだろうが、如何せんそこは普段の伊達を知らない羽田のカウンターだ。受付の女の子も、
 「じゃあ、社員証用のネーム札、お渡ししますのでご勝手にどうぞ。発券しませんから、搭乗はクルーと同時にお願いしますねっ。」
 と言葉遣いはさすがに礼儀正しいものの、明らかにあきれ果てている口調で、社員証を入れて首からつるすホルダーを伊達に手渡してつっけんどんにそう言い返した。
 そして、伊達のすぐ後ろに別の客を見つけたのか、もうそっちに注意をうつしてしまい、伊達は蚊帳の外だ。
 「・・・あー、年々もてなくなってくるのね、俺も・・・。」




 と、そんな風にして伊達が千歳に向かっている事は露知らず、神田はあてがわれた千歳基地のBOQの一室で寝入っている所だった。
 伊達からの電話を一方的に切った後、栗原の幻に幻惑され、白日夢すら見そうになって、みずから本当の夢の中へと逃れた。
 けれどもその夢の中も、今の神田にとって決して居心地のよい世界ではなかったようで、苦悶の表情のまま額に汗を浮かべて、時折うなされるようにうめき声がもれる。
 「く・・・りはらっ、よせっ、やめろっ。」
 うわ言のようにそう言って、そして神田は深い眠りにまた誘われる。浅い眠りと深い眠りとが交互におとずれ、その度に、安らかな表情と苦悶の表情とが入れ替わる。
 そんな眠りが何時間続いていただろう。
 「おい、起きろ。」
 不意に、そんな声が聞こえて、身体ごと揺さぶられて、神田は現実の世界へと引き戻された。
 「な・・・んだ?伊達・・・?」
 「うなされてたぞ、お前。」
 「ヤな夢だ・・・。伊達まで出てきやがる。」
 一度は起き上がったものの、そんな言葉をつぶやいてまたパタンと後ろに倒れて寝る姿勢になった神田を、伊達は今度は軽く小突いた。
 「あほぅ。誰が夢だ。そうそうお前なんかの夢に出演させられてたまるかよ。起きろ、バカ。それじゃ、話もできんだろうが。」
 「なんで伊達がここに居るんだよ。」
 「お前と話をしに来たのさ。」
 「・・・百里で栗でも口説いてればいいだろ、俺居ないんだからさ。」
 「だーかーらー、それが誤解だって言ってんだろうが。」
 「・・・・・・。」
 そこで黙りこむ神田に、伊達は近づいていって、そのベッドの脇に腰を降ろす。
 「黙るなよ。どうした?尋問したっていいぞ。栗原との関係なら洗いざらい答えてやっからよ。」
 「・・・栗も同じこと言うんだ。夢の中でさ。」
 「夢ぇ?」
 「伊達とは何もない、何もしてないからって、妖しい顔して俺に言うんだ。ここに、千歳に居た時の写真の中の顔そのまんまで。」
 その神田の言葉に、伊達は胸ポケットから一枚の写真を取り出した。
 「お前が言ってるのって、こんな顔の奴か?」
 すっと、神田の方に差し出されたのは、間違いなく栗原の写真だった。飛行服姿で、エプロン地区で風が強いのか少し伸び始めた前髪がふわっと横に流れている。物憂げに空を見つめている横顔の栗原。今にも振り返って妖しい微笑みを見せそうな、それとも壊してやりたくなるような、不確かで無表情な貌を見せるだろうか。
 「あぁ・・・。この貌で、言うんだ、俺に。・・・そんなの信じられるかよ。で、信じられるかって夢の中で叫んだら、じゃあ確かめてみろって言って襲ってくるんだぜ?ずっとそんな夢の繰り返して、もうボロボロだ、俺。」
 「お前が見た写真って、どんなのだ?」
 「・・・飛行隊の集合写真かな、クラブに貼ってあった。」
 そこまで聞いて、伊達はふっと笑う。
 「お前、すごい想像力だな。いや、洞察力というか野生のカンか?よく写真一枚で今の栗原からそれを想像できたな。」
 「栗はさ、昔の事とかあんまり喋ってくんねぇし、写真とかも見せてくれねぇし。昔の事はどうでも栗は栗だし、構わないつもりでいたけど・・・。でも今は嫉妬してるんだ、きっと。伊達がそれを知ってる人間だから。」
 そう答える神田を、伊達は純粋な男だと思った。栗原が心まで預ける気になったのもわからなくはない気がする。
 「全部、話してやるよ、そんなら。」
 俯いてしまった神田に、その額をまた軽く小突いて伊達は言った。
 「俺は栗原が好きだったさ。どんな意味にとって貰ってもいいけど、ま、好きで愛しすぎたから、俺はあいつに何もしなかった。あの貌で無意識に誘われてかなりキワどかった事もあったけどな。」
 「・・・。」
 神田は何も答えなくなって、けれども伊達は続けた。
 「何もしねぇっていうと嘘になるけどな。キスくらいしたし、腕に抱いて寝るくらいの事もしたけどな。けど、他の奴らみたいに・・・。」
 だが、そう言いかけて伊達ははっとして言葉を切る。
 「・・・続けろよ。全部話してくれるんだろ?」
 俯いたまま、神田はそう促した。だが、耐えるようにそれを聞こうとしている神田に、伊達は、
 「昔の話だ・・・、責めてやるなよ。」
 そう諭してからその話の続きを始めた。




 「ガキだな・・・、俺。」
 伊達の話を聞き終えて、神田はそう呟く。
 「そりゃ・・・、俺から見りゃ栗原だってガキなんだ。お前なんかガキ以外の何者でもねぇよ。」
 「そうだな。しょーがねぇよな・・・。」
 そう言って、神田は顔を上げた。幾分すっきりと、何かがふっきれたようにも見える。
 「スッキリしたか?」
 「まぁ、だいぶ。」
 そう言われて神田は笑って答える。
 「んじゃ、ちょっと早ぇけど、夜遊びにでもいくか?」
 「夜遊びぃ?」
 「ばーか、ここまで来て置いて夜遊びしねぇって事はねぇだろ。繁華街行くぞ、すすき野だ。いい店教えてやっからよ。」
 伊達はそう言って立ち上がる。
 「いや、でもさ・・・。」
 自分ひとりおとなしく遊びに行くのならともかく、百戦錬磨で土地勘もある伊達に連れ歩かれるとなると、どんな場所に連れて行かれるか知れたものではない。それが神田を躊躇させていた。栗原にバレたら、しかも伊達と一緒になって遊んでいたなんて知れたら、どんな仕打ちを受けるか知れたものではない。
 「遊ばねぇとガキのまんまだぜ、お前。いい男になるには遊びが重要なんだよ。」
 「そうかなぁ・・・。」
 乗り気でない神田だったが、次の伊達の言葉に奮起させられるのだった。
 「言っとくが、俺は別に栗原をあきらめたわけじゃねぇんだ。お前がガキのまんまで栗原に飽きられでもしたら、いつだって掻っ攫ってやるから、そのつもりでいろよ。」
 「あ、ちくしょう。ぜってぇ、負けねぇ、伊達にはっ。」
 とそう煽られて神田もベッドから起き上がった。
 「んじゃ、行くか。」
 「おぅ。」



 と、その頃・・・。
 「栗原2尉、ちょっといいか?」
 とそう飛行班長に呼ばれて栗原は振り返った。
 「何でしょう?」
 「急で申し訳ないんだが、デリバリーを頼まれてくれるか?千歳のF-4なんだが。」
 「あぁ、あのずっと調子悪くてうちからメーカー整備に出した奴ですね。いいですよ、今から?」
 「向こうの機が整備スケジュールの関係でアウトが多すぎてアラート待機分もままならないらしい。動きそうならなるべく早く返して欲しいって言われてな。」
 もう夕刻近い時間で、おそらくそのまま百里からの離陸と千歳での着陸には支障のない時間だが、その日のうちには向こうから帰ってはこられない。だからそれを見越して、飛行班長は独身のパイロットを中心にその依頼をしてまわっていた。
 「いや、栗原が行ってくれるんなら助かる。フライトプランは出来てるから、用意出来次第飛んでくれるか?帰りは明日の定期便をおさえるから。一人だが・・・、飛ぶくらいなら大丈夫だろう。」
 「わかりました。じゃあ、明日の訓練の引継ぎだけして・・・、チェックが終了し次第出ます。」
 「頼む。」
 栗原はここ数日、新人の研修を受け持っている。神田が丁度居ないから、と3日間詰めに詰めていたのを外すのに奔走する。それからロッカー室に行って、一日分の着替えを用意した。そこで何かを思い出して、神田のロッカーを合鍵であけて、その中からごそごそと奥の方に突っ込まれていた何かを取り出すと、自分の荷物と一緒に一まとめにしてトラベルポッドの入りやすく折りたたむ。
 どうせ千歳まで飛んで終わる機体だ。念の為にセンターの610ガロンのタンクは増槽して出るが、左右翼下は燃料タンクではなく、私物やお土産をいれる為の空のポッドに換装している。
 案の定、栗原がチェックを含めた色々な準備をしていると、飛行隊や整備小隊をはじめ、色んな部署から、かつて千歳飛行隊となんらかの繋がりがあったのであろう人々がお土産を手に、これをどこそこへ持って行って欲しい、といった注文が殺到した。 できる限りその希望をきいていたが、さすがにポッドが閉まらなくなりそうで、栗原は最後のほうはそれを断って、そして、前席に一人乗り込んで発進すると、フライトプラン通りに千歳を目指した。




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