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ISOSCELES TRIANGLE


 その次の日の朝。
 伊達が目を覚ました時には、もう栗原の姿はなくて、もう官用機のターミナルにでも向かったのかと部屋の中を見渡していると、視界の隅に栗原らしきかみの毛が一定のリズムで揺れているのが見えた。
 よくよく見ると、ベッドの脇の空スペースで腕立て伏せをしている。
 起床時間近くになって、また暖房が効き始めてきたのか、部屋の中での運動は暑いらしく、Tシャツ姿だ。
 「何やってんの、お前?」
 と、伊達が声をかけると、
 「ん、筋トレ。」
 と突然声をかけられた事に驚いた風でもなく、事も無げに栗原がそう返してくる。おそらく、シーツのこすれ合う音で伊達が起き上がった事に気づいていたのだろう。
 「馬鹿、そりゃ見ればわかるさ。何だってこんな朝っぱらから。」
 「何でって・・・、昨日やってなかったからさ。」
 喋りながら栗原は頭を上げて顔だけ伊達の方に向けていたが、やがてもう話しかけるな、とばかりに顔を正面に復して筋トレを続行し始めた。
 確かに、腕立てを続けながら長話もないだろう、と伊達も特に気にした様子はなくて、もう一度ベッドに今度は体を横向きにして寝転んで、その様子を眺めている。
 やがて、腕立てを終えた栗原が床に座ってストレッチを始めたところで伊達はもう一度声をかけた。
 「なぁ、そんなの毎日やってんのか、お前。」
 「うん、まぁ・・・。筋力つけねぇと神田相手じゃ体がもたねぇからさ。」
 そんな栗原の発言に伊達が、
 「今、何気にすげぇ事言ったな、お前。」
 と、突っ込もうとしたところへ、
 「何が?訓練の話だよ。」
 と軽く受け流されて、栗原相手についつい思考が邪になってしまっている事を伊達は自覚する。
 「何だと思ったのさ?」
 更に、逆にそう突っ込まれて、
 「あー、いや、何でもない。」
 としどろもどろになる始末だ。
 けれど、そんな栗原の肢体を見て伊達は思う。相変わらず細っこい体だと。華奢とまでは言わないが、もともと筋繊維そのものが増えにくい体質なのだろう。かと言って脂肪があるわけでもないので、どうしてもスラっとしていて少年のような体格だ。
 「あんまり効果が上がってるようにゃ見えねぇけどな。」
 思わず漏れたそんな伊達の言葉に栗原はムっとして、
 「そんな事ないよ。これでも脱ぐとすげぇぜ?俺。」
 と言うので、
 「んじゃ、見せてみろよ。」
 と笑いながら言う。けれど、売り言葉に買い言葉にはならなかったようで、
 「ヤだね。」
 とその挑発は冷静な栗原によってやんわりと否定されてしまう。
 そしてストレッチを続けている栗原の体動きを目を細めて見ていると、それでも確かに千歳に居た頃に比べると随分とそれなりの体格になってきているように伊達は感じた。
 昔の様に、か弱げで儚げな風情はほとんどなくなってしまっているが、その筋肉が作る身体の線が艶かしくて以前よりも魅力的で官能的だ。
 運動後のせいで体温もあがっているのだろう。血色の良くなった肌は艶やかで、呼吸を整える為に半開きにされた唇もまた、紅く色づいて時折深い吐息が漏れて、なかなか見応えのある情景だった。
 けれど、それをニヤニヤしながら伊達が見ていると、
 「伊達もさぁ、やった方がいいよ、筋トレ。最近腹出てきたんじゃないの?」
 と、栗原はそんな伊達の視線には気づかない風で、視線を伊達の下腹部あたりに向けている。
 確かに最近はかなり緩み気味だ。
 まだベルトの上にせり上がって来てはいないが、このまま行くと体型が崩れてくるのは時間の問題のようだ。
 「ぐっ・・・、痛いとこ突いてくるね、お前。」
 「昔はいい身体してたのにねぇ。」
 と、揶揄するようにそう言って、栗原は立ち上がって、手近に置いていたタオルでざっと身体の汗をぬぐった。そしてロッカーをあけて鞄を取り出して、手早く制服に着替えると、
 「さて、と。じゃあ定期便の時間だから。」
 と、短時間でキレイに纏め上げた荷物を持ち上げた。
 「何だ、結局定期便で帰るのかよ、お前。」
 「百里に荷物降ろす便があるって言うからさ。そうだ、伊達さ、そこで寝たんだからベッドかたしといてくれるよな。」
 「へぇへぇ。何だつまんねぇの。もうちょっと居りゃいいのによ。」
 「お前と違ってヒマじゃないんだよ、俺は。あ、それと・・・。」
 と言い掛けて栗原は言葉を切った。
 「ん?それと?」
 と伊達が促すと。
 「俺はさぁ、今の状態を壊す気もなけりゃ、壊されるつもりもねぇんだ、今の所さ。だから、神田に余り変な事吹き込んだりしないでくれる?」
 と、とても言いにくそうにそう告げる。普段あまり本音というものを晒さないだけに、こういった頼み事を口にするのが憚られるのだろう。
 伊達は、栗原がめったにそんな言葉を口にしないということを重々承知していたので、なるべく真面目な顔をしながら、
 「わかってるよ。言ったろ?お前の嫌がる事はしねぇってな。」
 とそう答える。
 それを聞いた栗原は、まだ何かを言いたそうにしていたが、やがてフっと笑うと鞄を手に扉の向こうへと立ち去って行ったのだった。




 そして一人残された伊達は・・・、
 いや、一人ではなかった。先刻から徐々に自己主張を始めるように衝立の向こう側のベッドから大イビキが聞こえてきていた。
 先刻までの栗原と伊達の微妙なやりとりを、知る由もなく神田はまだ夢の中だ。
 衝立の向こうに回りこむと、スチームで部屋が暑くなったのを受けて、すっかり布団も毛布も蹴り上げてしまって、おまけにだらしなくシャツから腹を出した状態で神田は大イビキを掻いて眠っている。
 その寝顔が余りにも幸せそうで、伊達は思わずベッドが蹴り落としてやりたい衝動に駆られた。
 (こんな男のどこがいいんだ?)
 とそんな頭の中には疑問符だ。
 どう考えたって自分の方がいい男だろう、と。顔も体格も知力も人格も自分の方が優れているに決まっていると。負けているとすれば基礎体力と操縦センスかもしれないが、それを伊達は自分では認めたくはなかった。
 けれども、見れば見る程、知れば知る程、栗原とは100%何から何まで違っているこの男を、伊達は不思議と気に入っていた。栗原に対してとは違う意味で惹かれているのも確かだった。
 そしてまた、こんな男だからこそ栗原には合っているのかもしれないな、と思う。
 (まぁ、いいさ。)
 栗原が幸せならそれでいい、と自分は納得した筈ではなかったのか?と伊達は一人苦笑した。 そして伊達もまた、基地全体が動き出す前にそこを去らなければいけない身だった。なるべく人目にはつかないように民航側のターミナルに回りこまなければいけない。
 眠っている神田を起こさないように静かに着替えて荷物をまとめる。
 それから、ふと思いついたように胸ポケットの手帳のメモを一枚破ると、そこにペンで数行、メッセージを書き付けて、それを神田が起きてから着替える時に必ず目に触れるであろうロッカーの扉に手近に転がっていたマグネットで留めた。
 そして伊達ももた、神田を残して部屋を出た。
 千歳に来た目的は、神田との話し合いで一応果たせた。栗原が現れたのが計算外だったけれど、あのまま夜の街を自分が連れまわしていた事を後になってから知られてあらぬ疑いをかけられるよりは、今になって思えば良かったと言える。
 神田と栗原の二人に対して、なんとか自分の尻拭いは自分で終わらせることができたのではないかと伊達は思う。後は二人の問題だろうと。
 民航のターミナルに足早に向かいながら、
 「結局はガキなんだよな、あいつらまだまだ。」
 と、伊達はつぶやいた。
 お互いに相手を一番に思いながらも、互いの過去やささいな態度にこだわって、振り回されて自身が持てなくて、小さなすれ違いを繰り返している。
 けれど今回のことで、多分それも乗り越えて深い絆になって行くのだろうと伊達は思う。
 (そしたらまた、突っついてからかってやるか。)
 次に会うのが楽しみだ、と。その日の事を考え、密かにほくそ笑みながら伊達は千歳の地を後にした。




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