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Take a Look at Me Now


 その日の朝早く、千歳基地を後にした栗原は、午前中の早い時間帯に百里に帰り着いていた。
 ターミナルからそのまま飛行隊に顔を出して、その日の課業を坦々とこなしていく。
 栗原は、神田の居ないこの3日間の間に、溜まっていた仕事を片付けたり、職場や家の整理整頓をしようとしていた。神田が居ると、その相手をするのに追われてなかなか自分のやりたい事ができないからだ。
 けれど、千歳行きという多少のハプニングはあったものの、そんな安息の日もとうとう終りに近づいていて、明日には神田が帰ってきてしまう。
 結局その日、栗原が仕事を全部終えたのはもう夜も遅くなってからで、着替えてショップの出勤札を反しに来た時には当直しか残っていない。
 そんな時、丁度栗原の近くで電話が鳴った。
 時間外の電話を取るのは当直の仕事だったが、栗原がその方向を振り返ると、当直の隊員は丁度別の電話の対応の最中で、目があった栗原に、電話に出てくれないかと視線で訴えている。
 別に帰りを急ぐわけでもなかったので、栗原がその電話に出ると、相手は千歳に居る神田だった。
 「なんだ、神さんか。」
 『なんだとは、なんだよ。何で栗がそこに居んの?』
 「ん、ちょっと遅くなったから。んで、電話の近くに居たからさ。たまたま。神さんこそどうしたのさ、こんな時間に。」
 ショップの時計は夜の8時を指していた。ナイトフライがある日なら、まだ丁度この時間帯は訓練を終えて着陸してくる航空機とその整備員、デブリに入るパイロット達でごった返しているのだが、今日は閑散としている。
 対して、栗原が手にしている受話器から、ザワザワとした喧騒が漏れ聞こえてくるのは、千歳の方では丁度訓練が終わった所なのだろう。
 『いや、司令がさ。明日の着隊時刻報告しとけって言うからさ。』
 「なんだ、神さんちゃんと仕事してんだ。」
 この数日、いつ電話をしても暇そうにしていた神田の様子を思い出して、栗原はそう揶揄するように言った。
 『今日はちゃんと仕事したぞ。司令も午前中ヒマでフライトしたいって言うから、年飛に付き合ってさ。』
 「よその基地でよくやるよ、司令も。」
 『んで、昼から丁度曇ってきたから、雪上飛ばせて貰った。結構難しいな、あれ。』
 受話器の向こうの神田の声はウキウキとしていた。曇りの日に雪原を飛ぶのは天地を錯覚しやすくて、スピンの後の立て直しには慣れが必要になる。
 その練習をしたいと前々から神田は言っていたのだが、百里が持っている訓練空域にはなかなか雪は積もらない。
 「まぁ、慣れるまではね。雪国で勤務しないとなかなか。でも、じゃあ次からは雪上戦闘支援も出来そうだな。」
 『そうそう、んでもうヘトヘト。今日はもう寝るよ。明日朝イチだしな。』
 「あ、で明日いつこっちに着くんだ?それ言いに電話したんだろ?」
 『あー、そうだった。こっち0750に上がるから、何もなきゃ40分後くらいには降りられるじゃないかな。フライトプラン朝イチで上がると思うから詳しい所はそれ見て、降りる時間逆算してくれ。』
 「了解。アバウトだねぇ。とりあえず当直と朝当番に伝えとくよ。」
 『ん、よろしく。じゃな、栗、おやすみ。また明日な。』
 「はいはい。じゃあおやすみ、神さん。」
 電話の神田の声は心底眠そうで、フライトプランについてもっとちゃんと報告しろ、と窘めたかった栗原だったが、どうせ明日になればわかる事だから、とついそれを大目に見てしまう。それよりも疲れているのなら早く寝させてやった方がいい、と。
 受話器を置いて栗原は当直の居るデスクを振り返ったが、まだ電話中だったので、手元にあったメモに必要事項だけを書き付けて、そして当直の元まで行ってその机の上にそれを置いた。
 当直の隊員がそれに目を通して、指でオーケーサインを送ってきたので、栗原も頷いて、そして飛行隊を後にして家へと向かった。




 栗原は車を走らせてそのまま真っ直ぐ家へと向かっていた。途中買い物をして行こうかとも思ったが、もう時間も遅いので、その日は何かあり合わせのもので済ませる事にして、買出しは明日神田が帰ってきてから一緒に行こうとそう決めた。
 だが、栗原が家に帰りつくと、まるでそれを見越していたかのように、電話のベルが鳴り響いた。
 何となく相手の予想がついてしまって、栗原は電話に出るのを躊躇したが、もしかすると職場からの連絡網だったりするかもしれないので、さすがに電話を無視することもできない。
 けれど、受話器を取ってみると、案の定かけてきた相手は、栗原が予想していた人物だった。
 『よぉ。』
 「よぉ、じゃねぇよ。何か用か?」
 『相変わらずつれねぇ物言いしかしねぇのな。折角飲みに誘おうとしてんのにさ。』
 「何が折角だ。別に誘わなくていい。それに帰って来たばかりなんだ、メシも食ってないし。また今度にしてよ。」
 軽くあしらおうとしたが、相手は食い下がって来た。
 『じゃあ、メシも食える店探すからさ。駅のロータリー前で20分後な。ちゃんと来いよ、じゃな!』
 「あ、ちょっと待てって。勝手に決めんなこらっ。」
 電話の相手は言いたい事だけを言って、そして一方的にそれは切れた。
 一瞬放置してやろうかと栗原は考えたが、仕方なく服を着替えて再び玄関を出る。
 栗原が待ち合わせの場所に着くと、相手はもう先に来て待っていた。
 決して利用客の多い駅ではなかったし、人通りの多い駅前でもなかったが、仕立ての良いダブルのスーツに派手な色のシャツを合わせた井出達のその男と、ジーンズにセーターを合わせただけの普段着の栗原との取り合わせは、妙に人目を引く組み合わせだった。
 「早かったな。」
 栗原の姿を捉えるなり、男はそう言った。
 「待つのも待たせるのも好きじゃないからさ。」
 「お前らしいな。とりあえず店に入るか。」
 そして、店に落ち着いて、最初に頼んだ一杯目が運ばれて来る頃になって、栗原はため息まじりに言う。
 「・・・伊達もヒマだねぇ。俺とメシ食っててそんなに楽しい?」
 そんな栗原の言葉に、座敷で向かい合わせに座っている伊達五郎は、
 「お前に惚れてるって男の前で、そんな言い草はねぇだろう。かわいくねぇな、んっとに。」
 と、悪態をついてみるが、顔は半分笑っていた。栗原が誘いに応じた時点で、言うほどは嫌われていない事がわかっているからだ。
 いつもならば、ここに神田が加わっていて、他愛のない馬鹿話に興じているのだが、今回はそんな雰囲気でもなく、かと言って妖しい雰囲気になるでもなく、会話は続いていく。
 しばらく話を続けた後で、栗原はふと疑問に思っていた核心に触れる。
 「なぁ、なんで昨日は千歳に居たんだ?」
 「え?あー、いや、えっと、それはだな。」
 「俺があそこに現れたのは伊達の計算外だったとして・・・、何か企んでたんだろ?さすがに考えナシでフラっと立ち寄る様な場所じゃないんだから。それもわざわざ神田の居る時にさ。」
 伊達が本当のところを話せば、おそらく栗原は怒るか呆れるかするに違いないのだが、伊達はそれをしなかった。
 本当の事は、時期がくれば神田が栗原に告げる事もあるだろうと。
 「いや、確かめたかったのさ。」
 と、結局はぐらかすように伊達はそう答える。
 「何を?」
 「いや、お前らの関係をさ。神田がお前にメロメロに惚れてんのかと思ったら、案外そうでもねぇんだな。」
 「・・・・・・あぁ、そうかもね。」
 伊達にそう言われて、栗原もふと考える。神田の感情はストレートにぶつかってくる。欲望を突きつけてくる時でさえも、驚くほど素直だ。
 けれど、言い換えるならそれは、神田のその感情が他所に向いてしまった時は、もう栗原の方向を向く余地が残されていないという事なのだろう。
 逆に、惚れ込んで泥濘のような妄執に足を捕られているのは栗原の方だったかもしれない。
 「んでさ、何で俺が今更になってお前に手ぇ出したくなったかもわかったのさ。」
 「何で?ガキじゃなくなったから?」
 「いや、神田と居る時のお前が好きなのさ、俺は。表情とか仕草とか、自然でなんとなくエロくってな。」
 「そんな事ない、変わらないと思うけど。」
 「いや、間違いねぇよ。さっきだって神田の話題になると表情が変わるのさ。よっぽど惚れきってんだな、お前。」
 言ってから、伊達は栗原の表情を伺った。いつものポーカーフェイスが僅かに崩れて、困ったように眉根が寄っている。ふと気持ちを落ち着けるかのように、ふぅ、と一度だけ軽く漏らされた吐息が艶かしかったが、栗原はその後で少しだけ表情を綻ばせた。
 「そうだな、否定はしない・・・。」
 そう言って、自分の方へ微笑むような表情を見せている栗原に、伊達も顔を崩した。
 「だから次会う時は神田も一緒の時な。今の俺にとっちゃ、神田をからかうのも最高の楽しみの一つでさ。」
 「ひどい趣味してやがる・・・。神田なら明日には帰ってくるよ?」
 その言葉に伊達は軽く手を振って、その誘いともとれる言葉を辞退する。
 さすがに3日連続の飲みが堪えているのか、と。栗原はかなりセーブして飲んでいた方だったが、伊達の方はいつでもかなりのハイペースだ。
 4日目に入るのは、さすがにキツイかな、とかそんな事を栗原が考えていると、
 「いいって。お前ら此処ん所最低3日間はご無沙汰って事だろ?俺に構ってねぇで、ちゃんとお互い心ゆくまで・・・。」
 「伊達?それ以上言ったら怒るよ?」
 ニヤニヤと意味深な言葉が伊達から発せられたのだが、結局それは冗談抜きで怒り口調の栗原によってさえぎられたのだった。
 「シャイだねぇ。」
 「伊達にデリカシーがなさすぎなんだよっ。」
 結局その日は、その店が終わる時刻まで、二人の間でそんな他愛のない会話が続いていたのだった。




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