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そこにあった運命


 「なぁ、一緒に住んでくれないか?」
 と、そんなセリフで誘ったのは俺の方だった・・・。




 出会いのきっかけはなんてことない。
 奴は、あちこちの飛行隊で持て余されて、とうとうこの陸の孤島と揶揄される百里基地に転属してきたナビゲーターだった。
 そして、俺は「ナビ潰し」と仇名されていて、気に食わない、能力もないくせに俺にあれこれ指図してくるばかりのナビゲーター共が気に食わなくて、何人も病院送りにしてきた問題児だった。
 一緒に組ませれば、どっちかでも大人しくなるだろう、なんていう司令のちょっとした思い付きで俺は奴と組まされて、戦闘機を駆る事になったんだ。
 それにしても無茶苦茶な奴で、いきなり目隠しで三沢まで操縦させられたりして、無茶苦茶な所が妙に馬があって、結局俺は奴とコンビを組む事に落ち着いた。
 けれど・・・、
 変わった奴だとしか最初は思わなかった。
 一緒にショップにいても、昼休みでも空き時間でも、とにかく人と関わろうとしない奴で、みんながバカ話で盛り上がっている時でも、一人隅っこのデスクで本を読んでいるか、フライトプランを見直しているか、とにかく寡黙で暗い奴だった。
 普段からずっとサングラスを外そうともしなくて、その頃は素顔さえほとんど知らなかったのかもしれない。
 初めて奴と会話らしい会話をしたのは、出会ってから3日後の事だった。




 「栗原2尉、荷物が届いてますよー。」
 飛行隊本部付の若い士長がそう声をかけてきて、奴・・・栗原は、
 「わかった、すぐ取りにいくからおいといてくれ。」
 とそう返している。
 丁度、課業の終了直前で、俺と明日のフライトについての打ち合わせをしている所だった。ここで綿密に計画を立てておかないと、明日のブリーフィングでケチョンケチョンにされるのだ。
 「引越しの荷物か?」
 栗原にそう尋ねると、
 「あぁ、引越し先がなかなか決まらなくて。とりあえず部隊に運んで貰った。」
 「え?今どこ住んでるんだ?お前。」
 「外来だよ。BOQは一杯だっていうからさ。外にアパートでも探すつもりでいるんだが、なかなか思うような物件がなくてさ。」
 「アパートねぇ・・・。」
 と俺がどうでも良さそうに答えると、栗原はパタンと手にしていたファイルを閉じて、
 「神田、悪いんだけど俺荷物運ばなきゃならんから、先に抜けるわ。」
 とそう言うから、
 「あ、じゃあ手伝ってやるよ。」
 と俺はそう答えた。
 だけど、
 「いや、大した荷物はないから。」
 と拒まれる。
 拒否されると、なんとなく意地になってしまうものだ。
 「ない、って言ってもダンボールの一つ二つじゃ済まんだろう。いいから、俺にまかせろって、力だけならお前には負けんさ。」
 腕に力こぶまで作って見せてそう言ってやると、
 「・・・じゃあ手伝ってもらうかな。」
 と仕方なさそうに栗原はそう言って立ち上がった。
 「ホントに荷物なんてほとんどないんだけどな・・・。」
 とそう呟きながら。
 そして、実際に二人して飛行隊が使っている建物の玄関に行ってみると、そこにはやや大きめのダンボールが4つ置いてあるだけだった。
 「え?これだけ?」
 さすがに予想外の少ない荷物に俺が思わずそう言うと。
 「こんなもんだろ?装備品とか官給品は手で運んできたし。」
 「そうかぁ?初めてみたぜ、俺。こんな荷物少ない奴。」
 「・・・出来る男は無駄な物は持たんのさ。」
 そんな事を言いながら、栗原はダンボールのうちの二つを俺の方に押して寄越してきた。見れば、几帳面な文字で「書籍」だとか、「服」だとか書き込まれている。
 「いっぺんに運んじまうか?」
 と俺が尋ねると、
 「あぁ、神田のおかげで助かった。一回で済みそうだ。重いのと軽いのにしたからそっち二つ頼むな。」
 と、栗原は残った二つの方をひょいと一緒に抱えて見せた。細い体してて意外とタフなようだ。手伝ってやるまでもなかったかな、とかそんな事を思いながら、俺も寄越された二つを一緒に抱えて栗原の後ろをついて行く。
 外来隊舎に行くのは初めてだった。
 栗原が使っている部屋に入ると、中は外来らしくガランとしていた。ここに赴任してくる時に使ったものらしいスーツケースが一つベッドの下に置かれている。殺風景に感じるのはそこがやたらと片付いているからだと気付く。
 ベッドサイドにも作りつけの机の上にも物というものが置かれていなくて、まるで教育隊の新兵が使っている部屋のように整っているからだ。
 ベッドでさえも、きちんと毛布もシーツもはがされて、枕元に神経質なくらいキチンと折りたたまれて置かれている。
 俺はと言えば、航空学生以来そんな片付けなんてしたこともなくて。今居るアパートなんてもう、無茶苦茶だ。どこに何があるかなんてわかりゃしないし、掃除だってどうしようもなくなった時にするくらいだ。布団だって万年床、今更基地の中の生活に戻っても、とても栗原のように暮らす事なんて不可能だろう。
 「あ、そこに置いといてくれるか?」
 先にベッドの脇にダンボールを降ろした栗原がそう言う。俺は言われてその横にダンボールを下ろした。
 「何か手伝う事あるか?」
 一応そうたずねると、
 「いや・・・、私服出すくらいだから。ありがと、助かったよ。」
 それはおそらく、もう出て行けという事なのだろう。無味乾燥な男だ、と俺はその時栗原についてそう思っていた。
 ナビゲーターとしては超一流だ、それは間違いない。俺の反応速度に匹敵する計算速度で必要な情報をシミュレートして的確な指示を俺に出してくる。なかなか居ない人材だとは思う。
 ただ、人と人として付き合っていけるかの自信は、俺にはその時、まったく持てなかった。例えば、一緒にメシを食いに行ったり、飲んだり、バカ騒ぎしてふざけ合うような、そんな存在にはなり得ないだろうと。
 けれど、俺が栗原についてそんな認識を改めたのは、それから何日もしないある日の昼休みの事だった。




 「あはは、なんだお前ら、こんな所にいたのか?」
 めずらしく、セカンドもサードもフライトがなくて、デブリも終わってのんびり出来る午後、いつもより遅い昼食を済ませて、更にBXで週刊誌の立ち読みでもしようかと、食堂のわきを通り抜けようとしていた時だった。
 幹部食堂と隊員食堂の間にある細い路地からそんな声がして、俺は思わず立ち止まった。どこかで聞いた事のある声だ。
 けれど、その路地をこっそりと覗き込むまで、俺はそれが誰の声であるか気付かなかった。
 そこに居たのは栗原だった。
 「わかった、わかったから、ちょっと大人しく待ってろよ、お前ら。」
 栗原の周囲には数匹の猫がじゃれついていて、そして栗原は小さい紙袋の中身を少しずつその猫達に与えているところだった。
 その紙袋はパイロット用の加給食に配られているもので、6Pチーズだとか、コンビーフ缶だとか週ごとにまとめて手渡される。
 そうやって猫とじゃれ合っている栗原の表情は、驚くくらい自然な笑顔だった。
 そして、いつも顔を隠しているサングラスを外している。猫を怖がらせないようにする為だろう。
 俺は、その顔を見て、ハッと驚かされた。
 笑顔のせいもあるのだろう。サングラスを外した栗原の顔が驚くくらい可憐だったからだ。綺麗でもあり、可愛らしくもある。
 そして、餌を与えながら猫に向ける表情も、その話しかける口調も、いつもの栗原とは全然違っていて、
 初めてまともに見た栗原の素顔よりも、むしろそっちに俺は驚かされていた。
 もしかしたら、栗原という男は俺が思っていたのと全然違う人間なのかもしれない、とその時初めてそう思ったのだった・・・。




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