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運命の予感


 「てめっ、この野郎優しくしてりゃいい気になりやがってっ。」
 「・・・分不相応な期待はするもんじゃないって事だな。そっちこそいい気になるんじゃないよ。」
 「なんだと・・・。」
 と、誰も居ない筈のブリーフィングルームからそんな声が聞こえてきて、それから激しく何か重量のあるものが床に叩きつけられる音がした。
 「ってぇな・・・。上等じゃねぇか・・・。」
 それは多分、人間の身体が叩きつけられた音で、でもそれからすぐに、何かアルミのパイプの様なものが、いくつも音を立てて散乱する音が聞こえた。どうやら、パイプ椅子がいくつも倒れたらしい。
 「ちっくしょうっ。」
 と、そんな声がしたかと思うと・・・、
 ブリーフィングルームの扉が開いて、1期上のパイロットが左腕を押さえながらそこから出てくる。顔をしかめているのを見るとどうやらそこに怪我でもしているらしい、顔もどことなく興奮気味だ。
 「どけっ。」
 そいつは出てきたかと思うと、俺をおしのけるようにロッカー室の方へと歩いていった。
 俺はどちらかといつもの通り横柄な態度でそいつに道を譲った。1期上とは言っても、それは幹候の話で、フライトコースでは2期下の奴になる。まだまだアラート待機にもつけない稚拙な腕前のクセに態度だけはご立派な防大出の嫌な奴だ。
 誰を相手に言い争っていたのだろう、とブリーフィングルームを覗いてみると、そこには栗原がいた。
 「・・・なんだ、神田か・・・。」
 俺の存在に気づいて、栗原はそう言った。
 言いながら、床の上に転がっているサングラスを拾い上げて、顔にかけなおしている。その一瞬見えた素顔は、右目のわずかに斜め上のあたりが赤くはれ上がっていて、頬にも打たれた様な跡や、首も締め上げられた跡が残っている。
 あきらかに、喧嘩の名残を残したその顔に、
 「また喧嘩か?いい加減ここに馴染めよ。そうそう飛行隊を転々とは出来んだろう。」
 とそう言ってやると、
 「したくてしてるわけじゃないのよ。ただ分からず屋のバカが多くってね。」
 と、悪びれずにそう言う。
 そのシニカルな表情は、前に見た食堂脇にいる猫達に見せていた表情とはまた違っていて、けれども、他の不特定多数に見せているような、取り澄ました無表情も違っていて、俺を困惑させた。
 俺が栗原という人間をつかめずに居るのは、こんな表情のせいなのかもしれない。
 「・・・そんな痣つくってちゃ、男前の顔が台無しだろう。」
 と、そう言ってやると、栗原は、
 「俺のこの顔がなけりゃ、喧嘩の回数なんざ半分以下になってるだろうよ。」
 と、吐き捨てるようにそう言うのだ。
 俺は、その意味をわかりかねて、?の表情をして栗原を見ると、
 「まぁ、顔で苦労した事のねぇ、ゴリラにはわかんねぇよな。」
 とそんな風に言って、にやりと笑うのだった。
 「なんだよ、ゴリラっていうなよ、ひでぇ奴だな。」
 その時はそんな事を言って、なんとなく他愛のない会話になって終わったのだけれど、それからまた数日して、たまたま隊員浴場に行った時の事だった。




 その日は丁度借りていたアパートが断水で、いつもはいかない隊員浴場で風呂だけでも入って帰ろうと、そこに出かけたのだった。
 普通は営内居住が義務付けられている若い下っ端の隊員しか居ないのだが、丁度入っていくといつも俺の機の整備をしてくれている士長が居て、俺に声をかけてきてくれた。
 「神田2尉、めずらしいですね。」
 「おぅ、部屋の風呂が断水でさ。でもたまにはいいな、ココ。広いしさ、サウナ付きでさ。」
 「幹部浴場のほうがゆっくり出来るんじゃないですか?」
 「いやー、ホラだってあそこ、狭いし汚いし、たまに司令とか入ってるし。」
 と、そんな事を言ってると、
 「神田じゃねぇか。」
 と、後ろの方でそう呼ぶ声がして振り返ると、
 「おぅ、お前も居たのか?」
 声をかけてきたのは偵察飛行隊に配属になっている航空学生時代の同期だった。
 「なんでぇ、BOQ組もこっちに入りに来てんのかよ。」
 とそう言うと、
 「・・・だってよ、BOQはシャワーしかねぇし、幹部浴場ってどうも性に合わなくってな。」
 と、俺と似たような事を言っていて、とりあえず湯船の中で雑談が始まった。
 そっからまた整備班の営内者がもう一人加わって、飛行班長の悪口や、食堂のメニューの美味い不味いの話、BXのクリーニング店に若い女の子が入っただとかそんなショップに居る時と変らない話をしていて、それからふと思い出したように整備班の若いのが俺に向かって訊いてきた。
 「そういや神田2尉って、栗原2尉と組む事で落ち着いたんですよね?」
 「・・・あぁ。」
 と、俺がそう答えようとすると、
 「えぇぇっ、お前アイツと組んでるのかよ?イノチ知らずなやっちゃな。」
 と偵空の同期がそんな事を言う。そこにすかさず、整備の士長が
 「そうですよ、神田2尉には感心します。」
 周囲の言ってる意味が俺にはわからなかった。
 「お前、あんな美人を独り占めにしてると、周囲がうるさくって仕方ないだろう?」
 と同期にそう言われて、
 「・・・美人・・・?」
 と、意外な発言に戸惑ってそう聞き返すと、
 「あ、ここに鈍感な人が一人・・・。」
 と、ため息をつかれてしまう。
 「神田2尉、失礼ですけど、視力は・・・?」
 おそるおそる訊いてくる士長に、
 「両目とも2.0、1等星なら昼間でも見える!」
 といばって言うと、目の前で思いっきりため息をつかれてしまった。
 「まぁ、神田2尉ですからね・・・。」
 「そうだな、訊いた俺がばかだった。」
 「うーん・・・。」
 言われて悩む俺。
 必死で栗原の顔を思い返そうとするけれど、もちろんその顔は思い出せるけれど、でもここに居る人間の言ってる意味がよくわからなかった。確かに整った顔だとは思うが・・・。
 「いや、神田気にするな。そんなお前だからあの男の相棒が務まるんだろう。」
 そこまで話していても、俺は同期が言いたかった事に気がつかずにいたのだが、その次の言葉に初めてそれに気づいたのだった。
 「俺みたいに、BOQの隣の部屋でいつコトが始まるのか気が気じゃない状況を送ってると、ついつい気になってさ。」
 笑い事のようにそう言われて・・・、そして俺はその時になって初めて、栗原がどうして喧嘩が絶えないのかその理由がわかったような気がした。
 「どした?神田、黙り込んで。」
 何度か目にした栗原の乱闘騒ぎも、そうやって考えれば腑に落ちる事がたくさんある、それの一つ一つを思い出そうとしていて、ついつい無口になってしまった俺に、そんな声が掛けられる。
 「あー、わりぃ、ちょっとのぼせたみたい。先に出るわ。」
 そう言って俺は湯船を出た。




 次の日になって、俺は当然ながらショップで栗原と顔を合わせたのだったが・・・。
 フライトプランの確認をしながら、俺は気づかれないように栗原の顔を検分していた。確かにキレイな顔だとは思う。
 けれどそれは、例えば雑誌のグラビアの中のモデルがキレイなように、ただカタチだけの事で、俺にとって何の感慨も得られないものだった。多分栗原が女でも同じ事だと思う。俺が好きになれるのは、きっとそんな感情を抱くのは、こんな取り澄ましたような整ったキレイさじゃなくて、もっと現実味があって暖かい・・・。
 微笑一つ、ふとした表情もちゃんと感情のこもった、そんな顔。
 例えば、いつの日だったか栗原が食堂脇で猫に見せていたような・・・。
 その表情を思い出そうとしていて、
 「おい、神田、聞いてるのか??」
 栗原の険しい口調に現実に呼び戻された。
 「あ、あぁ。」
 曖昧にそう答えると、
 「いいか、ここは旋回のタイミングがずれると接触事故にもなりかねないポイントなんだ。俺や僚機もタイミングは知ってるが、万が一無線の故障なんて事になるといけないから、ここだけはちゃんと覚えてろよ。」
 少しムっとした表情で眉根が寄せられていて、めずらしく感情が表に出されている、そんな顔。
 こういう顔なら好きだな、と俺はそう思った。




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