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運命と呼ぶには


 不覚だ・・・。
 と、朝布団の中でそう後悔してももう遅い。
 頭がガンガンと割れるように痛く、体は気だるさで動くこともできない。
 何よりも寒くてガタガタ震えが来て、布団から出ることもできなかった。
 昨日の帰りだ。
 「神田、顔色悪いぞ?大丈夫か?」
 と、俺の顔を覗き込んでそう言う飛行隊の先輩。
 「いや、大丈夫っすよ。ちょっと今日の訓練でヤられたもんで。」
 と適当に返して、そして俺はそのままアパートまで10キロの道のりを走って帰ったんだった。
 ・・・小雨の降る中をだ。
 気持ちよく汗をかいて、それで寝たはいいけど、どうやら思い切り風邪を引いたらしい。
 せっかくの週末に、この分じゃ寝込んで過ごすことになりそうだ・・・。
 とりあえず、布団をかぶりながらなんとか起き上がって、電話口まで這っていく。
 飛行隊に電話をかけて、今日は休ませてくれ、と連絡をいれた。
 昨日、せっかく栗原に睨まれながらたてた訓練計画だったが、もう今日は這って出勤したところで飛べる体調じゃない。
 電話を切って、また這うように布団にもどり、そのまま目を閉じた。
 それから目を覚ますと、日がもう随分高く上っていて、時計を見ると昼過ぎだった。
 頭痛と、熱からくる気分の悪さで食欲なんかはなかったが、それでも早く治すのには何か食わなきゃ、と思ってヨロヨロと台所に向かう。
 けれど、そこに俺が食べられそうなものは何もなかった。
 米くらいはあるが、とてもそれを磨いで焚こうという気力はおこらない。買い置きのカップ麺も切らしているし、とてもじゃないが外に食べに出ようなんて気もおこらなくて。
 唯一の救いが冷蔵庫の扉の隅に残っていた栄養ドリンクで、俺はそれを2本とって、1本をその場で飲み干して、もう1本を持ってまた布団に這い戻った。
 最悪だ。
 一日寝て居れば治るだろうと、たかをくくっていたのに、そんな気配はまったくなくて、朝よりも一層体は熱っぽかったし、割れるような頭痛は治まりつつあったものの、倦怠感は余計に酷くなっている。
 結局寝ている事しかできなくて、目を閉じて眠ろうとする。
 日ごろの疲れがたまっていたのか、朝から寝続けていた割にはすぐに睡魔がおそってくる。
 今頃飛行隊は何をやっているのかな、とかそんな事をぼんやりと考える。
 そうだ、栗原はどうしているだろう。
 別のヤツと組んで、ソツなく今日の訓練を終わらせただろうか。
 それとも、ふてくされながら地上勤務でもしているだろうか。



 それからどれくらい眠っていたのか、目覚めた時にはもう辺りは暗くなっていて、俺は相変わらず和室に引いた布団で独り眠っていた。
 ・・・筈だった。
 薄暗いままの部屋で、けれど部屋を仕切る襖の隙間から明かりが漏れている。
 あっちの部屋、明かりを点けたままだったか?とか考えていると、その襖がすっと開いて、俺はかなり驚いた。
 「神田?寝てるのか?」
 同時にそんな声が聞こえる。
 それが栗原の声だと認識するのと、襖が完全に開いて奴が顔を出すのとが同時だった。
 「・・・なっ、なんでお前ここにいるんだ??」
 「別に・・・、隊長が様子見て来いって言うから。」
 と栗原は素っ気無い返事をして俺の布団の近くに膝をついた。
 「鍵は大家さんに借りてね。調子はどうだ?」
 そう訊いてきて、つと冷たい指先が俺の額に触れた。
 「まだ熱があるな。」
 とそう言うので、
 「いや、朝よりは下がったと思う・・・。」
 と返す。
 「測ったのか?何度だ?」
 と訊かれるけど、うちには薬箱なんてものはなくて。
 「いや、体温計とかないから。」
 正直にそう答えると、暗がりだが栗原の表情が少し険しくなるのがわかる。
 「体調管理は基本中の基本だろう。それくらい置いておけよ。メシはどうしてたんだ?何を食った?」
 さっきから痛いところを付かれてばかりだ。これも仕方なく正直に、
 「・・・食べるモノ、何もなくてさ・・・。」
 とそう言うと、栗原の表情は怒りを通り越して呆れ顔になる。
 「バカか、お前は。しょうがねぇ、何か作ってやるからとりあえずこれでも飲んでろ。」
 と、そう言って栗原がくれたのはスポーツ飲料だった。それを渡されて初めて、熱で汗をかきまくったせいか、すごく喉が渇いていたことに気がつく。
 「あ・・・、すまん。」
 栗原は俺にそれを渡すと、すぐに立って台所のほうに行ってしまった。ピシャリと襖の閉まる音がひびく。
 それからしばらく水を使う音が聞こえていたが、また襖が開いて、今度はそれと同時に部屋の電気が煌々と灯された。眩しさに一瞬目を閉じてしまったが、その目をあけると、栗原は洗面器とタオルを手にしていて、
 「お前、汗掻いてるだろ?これで体拭いて着替えろよ。そのままだと治らんぞ。」
 と、お湯を張った洗面器を布団の傍に置いて、それにタオルをつけて固くしぼる。
 そのままそのタオルを寄越してくれるのかと思いきや、栗原はいきなり俺が着ていたパジャマのボタンに手をかけた。
 まだ熱が高いせいか、俺は頭がまわらない。
 ぼやっとしていると、いつのまにか手際よくボタンが外されて、そして汗ばんだ体をそのタオルでゴシゴシと拭かれていた。
 「熱くないか?」
 と、心配そうに尋ねるその顔が、不自然なくらい俺の近くにあって、目が合った瞬間に俺はドキっとさせられる。
 フワリとした前髪が俺の肩にかかりそうに揺れていて、甘い髪の匂いがした。
 どうしてそんな感覚を覚えてしまったのか、自分ではわからずに、俺はタオルを持った栗原の手を自分の手で押さえてその動きを止めた。
 「えっと・・・、その、自分で出来るから・・・。」
 なかなか言葉が出てこなくて、ようやくそう言った俺に、
 「じゃあ着替えとってくるよ、どこにある?」
 とそう言いいながら栗原は、タオルをお湯につけて濯いだあと、また固くしぼって俺に手渡してくれる。
 「押入れの中に、一応・・・。」
 押入れの中なんてぐちゃぐちゃだ。また栗原になんて言われるかわからない、と思いながらそう答えた。
 けれど栗原は俺の着替え一式とシーツ類の替えを持ってきて、
 「もっと汚いかと思ったよ。」
 と笑いながら俺の枕元にそれを置いた。
 「じゃあ、大丈夫そうだったらメシの用意を続けるけど。」
 「あ、あぁ、自分で着替えられるから・・・。」
 そう言うと、栗原はまた笑って言う。
 「シーツは後で俺が替えてやるよ。」
 と。
 職場で見る表情とは全然違う笑顔だった。意外に人の世話を妬くのが好きなんだろうか。
 栗原にはああ言ったけれど、まだ体の調子は全然戻っていなくて、タオルを絞る手にも余り力が入らない状態だった。それでも自分で出来ると言った手前、なんとか体の汗を全部拭い終えて、そして下着とパジャマを着替え終わる。
 脱いだ物は、ほんとはそのままぐちゃぐちゃに洗濯籠につっこんでしまいたかったが、栗原の手前もあったので、見栄えが悪くない程度にたたんで布団の傍らに積み上げた。
 そうこうしているうちに襖が開いて、それからしばらく間を置いてお盆を手にした栗原が現れた。
 お盆の上には片手鍋と茶碗と箸が載っている。いつも俺が袋ラーメンを作るときの鍋だ。けれどそこには湯気のたつお粥が出来上がっていた。
 「食えそうか?冷蔵庫に何もなくて、玉子粥くらいしか作れなかったけど・・・。」
 言いながら、鍋の中のお粥をよそって俺に手渡してくれた。
 暖かいその匂いを嗅いだとたん、猛烈な空腹感が襲ってくる。
 「い・・・いただきますっ。」
 熱さにハフハフ言いながら食べている俺を栗原は面白そうに見ていたが、ふと姿を消すと、襖の向こうの部屋のちゃぷ台の傍に置きっぱなしだったらしい俺のドテラを手に現れて、
 「味はどう?口に合うといいんだけど。」
 とそう訊いてくるので、
 「いや、上手い、コレ。すげぇな、お前。」
 俺は手放しでそう褒めた。本当においしかった。お粥なんて母親が作ってくれた以来久しぶりで優しい味がする。
 そうすると栗原は、普通だよ、と言いながら照れたような表情をする。
 「食べてるところ悪いけど、コレ着てちょっと布団から出てくれるか?今のうちにシーツとか替えちまうからさ。」
 言われたとおり、布団から降りて、お代わりにとよそって貰ったお粥をかきこんでいると、栗原は手早く敷布団と掛け布団、それと枕のシーツやカバーをてばやく取り替えてくれて、そして汚れたそれをさっき俺が脱いだ下着類と一緒にして、また部屋を出て行く。
 どうやらそれを洗濯籠に入れに行ってくれたらしい。
 そして次にあらわれた時は、水の入ったコップを手にしていた。
 その頃にはもう、小さな片手鍋一杯のお粥は全部俺の胃に納まった後で、
 それを見て栗原は、
 「腹減ってたんだな、もっと作れば良かったな。」
 と言って、そして、俺に水のコップと錠剤を手渡してくれる。
 「風邪薬はイヤがるだろうと思って、ビタミン剤買ってきた。飲んどけよ、治りが違うから。」
 俺は言われるままに、渡された数粒の錠剤を水で流し込んだ。
 俺が風邪薬・・・に限らず、判断力の低下を来たすような薬は絶対に飲まないと、その性格をよく見抜いている。
 俺の世話を妬いてくれているその間中、態度も言葉も素っ気無くて、けれど、時折見せる笑顔が自然で、少し皮肉っぽいけどすごくいい顔をしていると思う。
 相手が病人なら・・・、誰にでもこんなに親切なんだろうか?
 とそんな事をついつい考えて、
 すると栗原は、
 「はやく良くなって、復帰してこいよ。つまんねぇよ、お前が居ないと。」
 とそう言って、俺の方を見て笑う。
 「そだな。」
 そう答えながら、俺はドテラを脱いで、栗原がシーツを替えてくれたばかりの布団に潜り込んだ。
 「今日もさ、別の奴と組んで上がったんだけどさ。反応鈍くて全然ダメで。やっぱ、神田じゃなきゃダメだな、って思ったんだ。」
 と、栗原は笑いながら何気なくそう言ったけれど。
 俺はその言葉にものすごくドキドキさせられた。俺じゃなきゃ、というその言葉に。
 「そりゃ・・・、悪かった。ゆっくり寝て月曜には復帰できるようにするさ。」
 それだけ答えるのが精一杯で。
 「んじゃ、俺、帰るけど・・・。ちゃんと寝てろよ。」
 「あぁ、ありがとな、助かった。美味かったよ。」
 そんな会話を交わす。布団の中から手を振る俺に、栗原は手を振り返す。
 そのまま俺が寝てしまってもいいように、と消灯とか戸締りとか火の始末とか、一通りやってくれている音が聞こえて、そして最後にアパートの扉が閉まる音と鍵を閉める音が聞こえた。
 眠ろうとして目を閉じると、不思議に栗原の顔が脳裏にちらついてなかなか寝付けなかった・・・。




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