You are my destiny.
それから結局丸一日は事後処理やら始末書の続きやらで、寝るヒマもないほどに忙しくて、それから栗原を見舞ってやれたのは二日後の事だった。
病室に入ると、栗原はベッドの上で上半身を起こして本を読んでいるところで、俺を見つけると軽く腕を上げて招く仕草をする。
「起きてて大丈夫なのかよ。」
また無茶をしてんじゃないか、と少し心配になりながら近づくと、
「傷のくっつきがいいからって、起きてる分にはいいんだってさ。多少腹筋に力いれてるほうがリハビリにもなるって言うし。」
と栗原は得意げにそんな事を言う。
「無理すんなよ。」
言いながら俺は周囲から預かった見舞い品を渡した。そして、
「何か居るものあるか?午後休み取ったから、何かあったら買ってくるし。」
とそう言ってやると、栗原は顔だけで笑いながら
「あー、別にいいや。どうせもうちょっとしたら自宅療養になるから。」
としれっとそんな事を言う。
「へ?そうなの?」
予想以上の回復に俺は呆気に取られた。つい一昨日までベッドで点滴につながれてぐったりしていた人間の言葉とも思えない。
「うん、傷口さえくっついちゃえばね。あとはガーゼ換えるくらいで入院してる意味もないからって。」
「じゃあ、思ったより早く復帰できそうなんだな?よかったぜ。」
それでも栗原の回復にほっとさせられたのも確かだった。
「まぁ、それは先生の判断次第だけどね。もう今度は無茶しねぇし。おとなしくしてるさ。」
栗原の方も今度は完全に治るまでは無茶をするつもりはないらしい。そんな態度にもほっとさせられたのだが、
「ったりめぇだ。」
とちょっと怒ったようにそう言って、俺は栗原の頭を小突いてやった。
栗原は、そこでくくくっと笑おうとしてしかめ面になった。どうやらまだ笑ったりして腹筋を動かすと痛いらしい。
別に俺が居たところで特にしてやれそうな事もないようだったけれど、栗原が戦競の最終結果だとか飛行隊の近況とかを聞きたがるので、それを話してやったりしていて午後の面会時間一杯ぐらいの時間が過ぎていく。
夕方になって面会時間も過ぎて、じゃあまた来るから、と俺が帰ろうとすると、
「あのさ、悪ぃんだけど、退院決まったら連絡するから迎えに来て基地まで送ってくれねぇか?」
と、最後にそう聞いてくるので、
「あん?お安いご用。夕方以降ならいつでもいいぜ、今週はアラートもねぇし。」
と、そう約束を交わした。
「ん、じゃあ決まったら電話するから。」
と最後に手を振ってくれるので、それに手を振り返して俺は病室を後にする。
迎えに来てくれるか?と尋ねられて何となく嬉しい俺が居た。そうやって栗原が自分を頼って来てくれるようになった事が嬉しいのだと思う。
栗原を、完璧すぎて鼻持ちならない奴だと思ってた事も嘘のようだ。
だからそうやって栗原が少なくとも病人で居る間は、何となく自分が傍に居てやらないといけないような気がして、そして俺はあるいい事を思いついて、ウキウキと部屋に戻った。もちろんその計画を密かに練るためだ。
病室に入ると、栗原はベッドの上で上半身を起こして本を読んでいるところで、俺を見つけると軽く腕を上げて招く仕草をする。
「起きてて大丈夫なのかよ。」
また無茶をしてんじゃないか、と少し心配になりながら近づくと、
「傷のくっつきがいいからって、起きてる分にはいいんだってさ。多少腹筋に力いれてるほうがリハビリにもなるって言うし。」
と栗原は得意げにそんな事を言う。
「無理すんなよ。」
言いながら俺は周囲から預かった見舞い品を渡した。そして、
「何か居るものあるか?午後休み取ったから、何かあったら買ってくるし。」
とそう言ってやると、栗原は顔だけで笑いながら
「あー、別にいいや。どうせもうちょっとしたら自宅療養になるから。」
としれっとそんな事を言う。
「へ?そうなの?」
予想以上の回復に俺は呆気に取られた。つい一昨日までベッドで点滴につながれてぐったりしていた人間の言葉とも思えない。
「うん、傷口さえくっついちゃえばね。あとはガーゼ換えるくらいで入院してる意味もないからって。」
「じゃあ、思ったより早く復帰できそうなんだな?よかったぜ。」
それでも栗原の回復にほっとさせられたのも確かだった。
「まぁ、それは先生の判断次第だけどね。もう今度は無茶しねぇし。おとなしくしてるさ。」
栗原の方も今度は完全に治るまでは無茶をするつもりはないらしい。そんな態度にもほっとさせられたのだが、
「ったりめぇだ。」
とちょっと怒ったようにそう言って、俺は栗原の頭を小突いてやった。
栗原は、そこでくくくっと笑おうとしてしかめ面になった。どうやらまだ笑ったりして腹筋を動かすと痛いらしい。
別に俺が居たところで特にしてやれそうな事もないようだったけれど、栗原が戦競の最終結果だとか飛行隊の近況とかを聞きたがるので、それを話してやったりしていて午後の面会時間一杯ぐらいの時間が過ぎていく。
夕方になって面会時間も過ぎて、じゃあまた来るから、と俺が帰ろうとすると、
「あのさ、悪ぃんだけど、退院決まったら連絡するから迎えに来て基地まで送ってくれねぇか?」
と、最後にそう聞いてくるので、
「あん?お安いご用。夕方以降ならいつでもいいぜ、今週はアラートもねぇし。」
と、そう約束を交わした。
「ん、じゃあ決まったら電話するから。」
と最後に手を振ってくれるので、それに手を振り返して俺は病室を後にする。
迎えに来てくれるか?と尋ねられて何となく嬉しい俺が居た。そうやって栗原が自分を頼って来てくれるようになった事が嬉しいのだと思う。
栗原を、完璧すぎて鼻持ちならない奴だと思ってた事も嘘のようだ。
だからそうやって栗原が少なくとも病人で居る間は、何となく自分が傍に居てやらないといけないような気がして、そして俺はあるいい事を思いついて、ウキウキと部屋に戻った。もちろんその計画を密かに練るためだ。
そしてその日がやってきた。
栗原からは昼過ぎに電話が入った。今日退院が決まったから、と。
そして俺は5時のラッパが鳴るとすぐに、車にある物を積み込んで栗原の居る病院へと向かった。
駐車場に車をとめて、病院に入ると、もう栗原は荷物をまとめてロビーに座っていた。
めずらしくジャージ姿なのは、まだ体の動きが本調子ではないからだろう。荷物は最初の入院からあわせると結構長期になっていた為か意外に多くなっていて、大きめのボストンバッグが一つと紙袋が二つだ。ロビーまでは病院の職員の人に手伝って貰って運んだ、という。
「いいよ、俺が持つよ。」
さすがに傷の癒えない病人に荷物を持たせるわけにもいかずに俺はその荷物を全部持って駐車場に向かった。
普段ならそういう事をされるのが嫌いな栗原も自分で荷物を持つのはまだ辛いのか、大人しく俺がしたいようにさせていた。
後部座席の扉をあけてその荷物を押し込んでいると、後から来た栗原が、その後部座席にあらかじめ積まれていたある物を見て怪訝そうな顔をした。
「神田、なんだこれ?」
乗せてきたのは結構大きな包だったので、後部座席の半分近くを占拠している。俺はそれには応えないで助手席の扉を開けて、早く乗れとばかりに栗原を急かしてそこに座らせた。
そして、車を発進させてから俺は言った。
「布団だよ、お前の分の。」
「布団っ?何でっ??」
めずらしく驚いたらしい。驚いた顔を俺の方に向けて、栗原はそう聞き返した。
「だって自宅療養だろ?俺んちで療養でも悪くねぇだろ?」
そんな反応も、
「何だよそれっ、勝手に決めるな。何で俺がお前の家なんかで。」
と抵抗されるのも想定の範囲内だったので、俺のほうは余裕だ。
しれっとして、
「だってよ、一人にしとくのは不安だし、俺でも居たほうがいい事もあるかもしれねぇじゃん?ちょっとくらいは役に立つぜ?」
と用意しておいた返事をする。
「だから、何でそういう事勝手に決めるんだよ、お前はっ。」
栗原のほうも簡単にそれに応じるわけはなくて、そうあくまで抵抗してくる栗原に俺は更に用意していた奥の手を出した。
「だって司令もそうしろって言ったぜ?放っておくと栗原、無茶するからって。」
そう、もうこれは許可を取り付けた後なのだ。司令は本当は俺じゃなくてもっとマトモな生活ができる人間を指名したかったんだろうけど、そこは俺が強引にゴリ押しした。
さすがに司令の名前が効いたのか、
「く・・・。」
と悔しそうに、そのまま栗原は押し黙ってしまう。それでも、それ以上言い返さなかったり、抵抗して暴れないって事はそれを受け入れたって事なのだろう。
俺は栗原に、とりあえずの勝利宣言をした。
「残念でした。ちうことで、とりあえず腹も減ったし、弁当でも買って帰ろうぜ。」
で、栗原はと言えば、諦めておとなしくついてきたものの、やっぱり部屋が汚いの、病み上がりに買い弁当で食事を済まさせる気か、だのと再三嫌味を言われたのだったが・・・。
それでもメシを食い終わって、一緒にテレビを見始める頃にはそれなりに打ち解け始めていて、自然な雰囲気になってくる。
そして、新しい布団を敷き終えて、そろそろ寝ようかという頃になって、
「なぁ、神田。ガーゼ替えるの手伝ってくれるか?」
栗原がそう言ってきた。
どうやら包帯を巻きなおすのは一人では難しいらしい。
栗原は無雑作に、教えられたらしい手順どうりに消毒してガーゼを重ねていく。俺が危惧していたのと違って、栗原自身は傷に対してそれ程感慨は持っていないようだった。けれどやっぱり俺のほうとしてはなかなか罪悪感無しに見られるようはなれなくて。
それもまた俺の自己満足というか勝手な言い分なのかもしれなかったけれど、無言でそれを手伝っているのが、ひどく居心地が悪いような気がして、
「なんかひでぇ傷になっちまったな。」
としみじみ俺がそう言うと、栗原が、
「あぁ、ハクがついてかっこいいだろ?」
と、ニヤっと笑っていうので、俺は随分と救われたような安心した気分になった。と同時に抱きしめたい気分に襲われる。
いい相棒を持ったと、その時改めて思ったわけだ。
けれどそれを悟られるのも嫌で、俺は無愛想に包帯を巻き直すのを手伝ってやりながら、
「お前、明日一日ちゃんと寝てろよ。ウロウロすんじゃねぇぞ。」
とそんな言葉でごまかした。
栗原はそんな俺の心の動きには気づかなかったらしく、
「あぁ。あ、で明日さ、買い物リスト渡すから帰りに忘れず買って来いよ?メシくらいは作らせろ。」
そんなコトを俺に言っただけだった。
「へぇへぇ。」
俺はそんな気のないフリの返事を返しながら、もう寝ようぜ、と部屋の電気を消す。暗闇の中布団に戻ろうとして、俺はゴミの詰まったスーパーの買い物袋をふんづけてコケそうになって、その音を聞きつけた栗原に、
「それとお前、ゴミは明日の朝ちゃんと捨てて来い。ゴミだらけの部屋に病人寝かせんじゃないよ、馬鹿。」
と、一日目にして職場と同じく主導権を栗原に奪われながら、仮の同居生活がスタートすることになったのだけれども・・・。
そんなふとした会話や雰囲気や、何よりも栗原がそこに居ることが俺にとってはなんとなく居心地がよくて。
ずっとそんな雰囲気の中で暮らしたいとそう願ってしまった。
栗原からは昼過ぎに電話が入った。今日退院が決まったから、と。
そして俺は5時のラッパが鳴るとすぐに、車にある物を積み込んで栗原の居る病院へと向かった。
駐車場に車をとめて、病院に入ると、もう栗原は荷物をまとめてロビーに座っていた。
めずらしくジャージ姿なのは、まだ体の動きが本調子ではないからだろう。荷物は最初の入院からあわせると結構長期になっていた為か意外に多くなっていて、大きめのボストンバッグが一つと紙袋が二つだ。ロビーまでは病院の職員の人に手伝って貰って運んだ、という。
「いいよ、俺が持つよ。」
さすがに傷の癒えない病人に荷物を持たせるわけにもいかずに俺はその荷物を全部持って駐車場に向かった。
普段ならそういう事をされるのが嫌いな栗原も自分で荷物を持つのはまだ辛いのか、大人しく俺がしたいようにさせていた。
後部座席の扉をあけてその荷物を押し込んでいると、後から来た栗原が、その後部座席にあらかじめ積まれていたある物を見て怪訝そうな顔をした。
「神田、なんだこれ?」
乗せてきたのは結構大きな包だったので、後部座席の半分近くを占拠している。俺はそれには応えないで助手席の扉を開けて、早く乗れとばかりに栗原を急かしてそこに座らせた。
そして、車を発進させてから俺は言った。
「布団だよ、お前の分の。」
「布団っ?何でっ??」
めずらしく驚いたらしい。驚いた顔を俺の方に向けて、栗原はそう聞き返した。
「だって自宅療養だろ?俺んちで療養でも悪くねぇだろ?」
そんな反応も、
「何だよそれっ、勝手に決めるな。何で俺がお前の家なんかで。」
と抵抗されるのも想定の範囲内だったので、俺のほうは余裕だ。
しれっとして、
「だってよ、一人にしとくのは不安だし、俺でも居たほうがいい事もあるかもしれねぇじゃん?ちょっとくらいは役に立つぜ?」
と用意しておいた返事をする。
「だから、何でそういう事勝手に決めるんだよ、お前はっ。」
栗原のほうも簡単にそれに応じるわけはなくて、そうあくまで抵抗してくる栗原に俺は更に用意していた奥の手を出した。
「だって司令もそうしろって言ったぜ?放っておくと栗原、無茶するからって。」
そう、もうこれは許可を取り付けた後なのだ。司令は本当は俺じゃなくてもっとマトモな生活ができる人間を指名したかったんだろうけど、そこは俺が強引にゴリ押しした。
さすがに司令の名前が効いたのか、
「く・・・。」
と悔しそうに、そのまま栗原は押し黙ってしまう。それでも、それ以上言い返さなかったり、抵抗して暴れないって事はそれを受け入れたって事なのだろう。
俺は栗原に、とりあえずの勝利宣言をした。
「残念でした。ちうことで、とりあえず腹も減ったし、弁当でも買って帰ろうぜ。」
で、栗原はと言えば、諦めておとなしくついてきたものの、やっぱり部屋が汚いの、病み上がりに買い弁当で食事を済まさせる気か、だのと再三嫌味を言われたのだったが・・・。
それでもメシを食い終わって、一緒にテレビを見始める頃にはそれなりに打ち解け始めていて、自然な雰囲気になってくる。
そして、新しい布団を敷き終えて、そろそろ寝ようかという頃になって、
「なぁ、神田。ガーゼ替えるの手伝ってくれるか?」
栗原がそう言ってきた。
どうやら包帯を巻きなおすのは一人では難しいらしい。
栗原は無雑作に、教えられたらしい手順どうりに消毒してガーゼを重ねていく。俺が危惧していたのと違って、栗原自身は傷に対してそれ程感慨は持っていないようだった。けれどやっぱり俺のほうとしてはなかなか罪悪感無しに見られるようはなれなくて。
それもまた俺の自己満足というか勝手な言い分なのかもしれなかったけれど、無言でそれを手伝っているのが、ひどく居心地が悪いような気がして、
「なんかひでぇ傷になっちまったな。」
としみじみ俺がそう言うと、栗原が、
「あぁ、ハクがついてかっこいいだろ?」
と、ニヤっと笑っていうので、俺は随分と救われたような安心した気分になった。と同時に抱きしめたい気分に襲われる。
いい相棒を持ったと、その時改めて思ったわけだ。
けれどそれを悟られるのも嫌で、俺は無愛想に包帯を巻き直すのを手伝ってやりながら、
「お前、明日一日ちゃんと寝てろよ。ウロウロすんじゃねぇぞ。」
とそんな言葉でごまかした。
栗原はそんな俺の心の動きには気づかなかったらしく、
「あぁ。あ、で明日さ、買い物リスト渡すから帰りに忘れず買って来いよ?メシくらいは作らせろ。」
そんなコトを俺に言っただけだった。
「へぇへぇ。」
俺はそんな気のないフリの返事を返しながら、もう寝ようぜ、と部屋の電気を消す。暗闇の中布団に戻ろうとして、俺はゴミの詰まったスーパーの買い物袋をふんづけてコケそうになって、その音を聞きつけた栗原に、
「それとお前、ゴミは明日の朝ちゃんと捨てて来い。ゴミだらけの部屋に病人寝かせんじゃないよ、馬鹿。」
と、一日目にして職場と同じく主導権を栗原に奪われながら、仮の同居生活がスタートすることになったのだけれども・・・。
そんなふとした会話や雰囲気や、何よりも栗原がそこに居ることが俺にとってはなんとなく居心地がよくて。
ずっとそんな雰囲気の中で暮らしたいとそう願ってしまった。
だから、結局栗原の傷も完全に癒えて、仕事に復帰しても大丈夫という時になって、俺は栗原にこう言ったのだった。
「なぁ、お前このままここに住まねぇか?」
「どうして?」
案の定栗原はそう聞き返してくる。まぁ当然と言えば当然なんだろうけど。
「え、ホラだってここのが外来よりは広いし、スーパーも近いし、消灯時間とかもねぇし、雨の中風呂まで歩かなくていいし・・・。ちょっとボロいけどな。」
と、俺の主張に
「別に魅力は感じんがね。」
と栗原は取り付く島もない。まぁ全部が全部俺の勝手な言い分で、完全に復調した栗原にとっちゃ、家事全般まともに出来ない俺のほうがお荷物みたいなもんだろう。
けれど、結局俺が栗原と一緒に居たいと思ったことに理由なんてないわけで。
俺は正攻法に出てみることにした。
「・・・えっと・・・、じゃあ、単純に俺と一緒に住んでくれねぇか?」
そう言って頭を下げると、
「プロポーズみてぇ。」
と栗原に揶揄される。もう踏んだり蹴ったりだ。俺は顔が真っ赤になるのを感じながら、それでも精一杯顔をあげて栗原の方を見た。
栗原は、笑ってはいたが、それほど馬鹿にするような感じでも、嫌悪感を感じているような雰囲気でもなくて。ただちょっと困ったような顔をしていて、俺はなんとなく本能的に落とせそうな予感がしたのだった。
「ばっ・・・馬鹿、違うだろうがよ。なんかさぁ、もっと栗と一緒に居てぇって思ってさ。飛んでる時とかブリーフィングの時とかだけじゃなくてさ。色んな栗原を知りたいっていうか・・・。」
落とそう落とそうとすると余計に言葉が見つからなくて、だんだんしどろもどろになってくるけれど、そんな俺の様子を見て栗原がふと笑って言う。
「・・・変わった奴だな。俺なんかと居て楽しいのかよ。」
と。
「楽しいさ、一人より二人の方が楽しいに決まってる。」
俺はそのまま畳み掛けた。もう一押しだ。
「俺なんかと一緒で、楽しいのかねぇ。」
変わった奴だと言いたげな顔をして栗原は俺を見ていた。
押して、引いて、なんとかイエスの返事を引き出したい。
「それに栗みたいに無茶苦茶する奴を一人にしとけねぇしよ。」
俺の言葉に、栗原はちょっとムっとした表情を見せる。
「何だよ、それ。神田のが無茶苦茶じゃねぇか。色々やらかしてくれるし。その割に何もできねぇし。」
俺の言葉に、色々な表情を見せて、そしてマトモに言い合いをしてくれるのは、やっぱり知り合った頃よりは少しお互いに近づいた証拠なんだろう。
色々な紆余曲折はあったけれど。
色々と、傷ついたり、傷つけたり、そんな事もあったかもしれないけど。
俺は、もう栗原とこの先最高の相棒として生きていく覚悟が出来ていたから。
無理矢理にこの話をすすめてしまいたかった。
だから、俺としてはちょっと強引に。
「よし、んじゃ、決まりだ。いいフライトは相棒の管理からってな。明日にでも外来引き払って荷物運ぼうぜ。」
とそう栗原に告げた。
栗原のほうもまんざらではないようで、
「勝手に決めるなよ、しょうがねぇな。もうお試し期間は過ぎたからな。今更返品はナシだぜ?」
と、俺の目を見て、そう凄んでくる。一緒に居たいのなら、それなりの覚悟はしろよ?とそう言いたげだ。
でももう、栗原の無茶苦茶加減も、強引さも、その怖いところも全部覚悟した俺だったから、
「わーってるよ。」
と、言いながら笑って、そして栗原に右手を差し出した。
すると、栗原もまた、俺につられるように笑って、そして同じように右手を差し出してきた。。
「とりあえず、メシ作るのと掃除は俺がやってやる。洗濯とゴミ出しはお前な?」
宣言するように言って、俺の手を握り返してきた。
それが始まりの日で、そしていつしか当たり前のようにお互いの呼吸を隣で感じる日が訪れていて・・・。
「なぁ、お前このままここに住まねぇか?」
「どうして?」
案の定栗原はそう聞き返してくる。まぁ当然と言えば当然なんだろうけど。
「え、ホラだってここのが外来よりは広いし、スーパーも近いし、消灯時間とかもねぇし、雨の中風呂まで歩かなくていいし・・・。ちょっとボロいけどな。」
と、俺の主張に
「別に魅力は感じんがね。」
と栗原は取り付く島もない。まぁ全部が全部俺の勝手な言い分で、完全に復調した栗原にとっちゃ、家事全般まともに出来ない俺のほうがお荷物みたいなもんだろう。
けれど、結局俺が栗原と一緒に居たいと思ったことに理由なんてないわけで。
俺は正攻法に出てみることにした。
「・・・えっと・・・、じゃあ、単純に俺と一緒に住んでくれねぇか?」
そう言って頭を下げると、
「プロポーズみてぇ。」
と栗原に揶揄される。もう踏んだり蹴ったりだ。俺は顔が真っ赤になるのを感じながら、それでも精一杯顔をあげて栗原の方を見た。
栗原は、笑ってはいたが、それほど馬鹿にするような感じでも、嫌悪感を感じているような雰囲気でもなくて。ただちょっと困ったような顔をしていて、俺はなんとなく本能的に落とせそうな予感がしたのだった。
「ばっ・・・馬鹿、違うだろうがよ。なんかさぁ、もっと栗と一緒に居てぇって思ってさ。飛んでる時とかブリーフィングの時とかだけじゃなくてさ。色んな栗原を知りたいっていうか・・・。」
落とそう落とそうとすると余計に言葉が見つからなくて、だんだんしどろもどろになってくるけれど、そんな俺の様子を見て栗原がふと笑って言う。
「・・・変わった奴だな。俺なんかと居て楽しいのかよ。」
と。
「楽しいさ、一人より二人の方が楽しいに決まってる。」
俺はそのまま畳み掛けた。もう一押しだ。
「俺なんかと一緒で、楽しいのかねぇ。」
変わった奴だと言いたげな顔をして栗原は俺を見ていた。
押して、引いて、なんとかイエスの返事を引き出したい。
「それに栗みたいに無茶苦茶する奴を一人にしとけねぇしよ。」
俺の言葉に、栗原はちょっとムっとした表情を見せる。
「何だよ、それ。神田のが無茶苦茶じゃねぇか。色々やらかしてくれるし。その割に何もできねぇし。」
俺の言葉に、色々な表情を見せて、そしてマトモに言い合いをしてくれるのは、やっぱり知り合った頃よりは少しお互いに近づいた証拠なんだろう。
色々な紆余曲折はあったけれど。
色々と、傷ついたり、傷つけたり、そんな事もあったかもしれないけど。
俺は、もう栗原とこの先最高の相棒として生きていく覚悟が出来ていたから。
無理矢理にこの話をすすめてしまいたかった。
だから、俺としてはちょっと強引に。
「よし、んじゃ、決まりだ。いいフライトは相棒の管理からってな。明日にでも外来引き払って荷物運ぼうぜ。」
とそう栗原に告げた。
栗原のほうもまんざらではないようで、
「勝手に決めるなよ、しょうがねぇな。もうお試し期間は過ぎたからな。今更返品はナシだぜ?」
と、俺の目を見て、そう凄んでくる。一緒に居たいのなら、それなりの覚悟はしろよ?とそう言いたげだ。
でももう、栗原の無茶苦茶加減も、強引さも、その怖いところも全部覚悟した俺だったから、
「わーってるよ。」
と、言いながら笑って、そして栗原に右手を差し出した。
すると、栗原もまた、俺につられるように笑って、そして同じように右手を差し出してきた。。
「とりあえず、メシ作るのと掃除は俺がやってやる。洗濯とゴミ出しはお前な?」
宣言するように言って、俺の手を握り返してきた。
それが始まりの日で、そしていつしか当たり前のようにお互いの呼吸を隣で感じる日が訪れていて・・・。
ふと気がつくと、俺の生活は栗原を中心に回り始めていた・・・。