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携帯電話


 「神さん、ごはんできたよ~。」 栗原がエプロン姿のままで配膳しながら、奥の部屋に向かってそう叫ぶ。
 しかし応えはない。
 「神さ~~~んっ。」
 奥の部屋からは不自然な電子音が響いている。
 「・・・野郎、またゲームしてやがんな。」
 この所、神田はPS2のエースコンバットに夢中であった。仕事から帰ってくると、食事と風呂に入る以外はずっとテレビの画面に向かってピコピコやっている。それがどれくらい夢中なのかというと、ゲームにより臨場感を持たせるためにプラズマテレビを買おうなんて言い出す始末だ。
 そしてそれはたいてい夜中まで続くのである。
 それを栗原が容認しているのは、夜中までゲームに夢中になってくれていた方が彼にとっては都合のいい事もあるからだ。
 ここ1週間程の栗原のご機嫌はそれほど悪くない。たまには神田の相手をせずに一人で眠ることは、多少の欲求不満はあるものの、身体的疲労がなくなる事と、寝不足の解消になるからなのだが・・・。
 「神さんっ、ゲームばかりやってると目が悪くな・・・、・・・何やってんのっ?」
 と、栗原が言葉に詰まるのもムリはなく。
 神田が今夢中になってピコピコやっているのは、1年前の忘年会でのかくし芸大会の景品で手に入れたプレステ2ではなく、手の中にすっぽり収まるほどのサイズの携帯電話なのである。
 「あ~、栗っ、話かけるな。今いいところなんだからっ。」
 神田が見入っている小さな画面にはどこかで見たような景色が広がっている。
 紫色の毒の沼地に囲まれた城が見えた。
 「神さん・・・?何コレ?」
 「ドラクエで~~~~すっ。」
 能天気に答える神田の手元のその景色の前に黒い小さい四角があって、そこにドラゴンのようなものが描かれていた。おそらく、強敵のドラゴンと戦っているところなのだろう。
 「・・・ドラクエはわかった。俺が言いたいのは、その携帯はどうしたんだって事だ。昨日と違うようだが?」
 昨日まで神田が持っていたのは何の変哲もない普通の携帯だった。それがどうだ、今手にしているコレは、二つ折で画面も大きくて、カメラがついていて、おまけにドラクエときてる・・・。
 「え・・・えーと、その。アラート待機のときヒマかなって・・・。」
 「お前・・・いくらしたんだ、それ・・・。」
 「えーっと・・・、に・・・にまんよんせんごひゃくえん・・・・。」
 「信じられん・・・。」
 「・・・・・・ボーナス一括で・・・。」
 「まぁいい、買ってしまったものは仕方がないとして。いい加減に切り上げろ。メシが冷めてまずくなるだろうが。」
 「・・・こ、コイツ倒したらすぐ行くから・・・。」




 結局神田が食卓に登場したのはそれから20分近くも後のことだった。
 神田が見たのは、怒りを通りこして無表情になっている栗原だった。
 「く・・・栗、悪いっ、ごめんったらごめん!!」
 「神田・・・お前は俺とゲームとどっちが大事なんだ?」
 「・・・それは・・・、えーっと・・・、お前に決まってる・・・。」
 えーっと、の部分に多少の引っかかりを感じる。
 「なら、もう少し俺に気を使うとかできないわけ?別に神さんが夜中までゲームしてたって俺はどうだっていいけど、メシの時間くらい合わせなさいよ。」
 反省の色もない神田に栗原のご機嫌は久しぶりにすこぶる悪くなった。その表情に神田は・・・、
 「あー、わかった栗。お前最近俺が相手してやってないから、機嫌悪いんだろ??しゃーねぇな、今夜は一緒に寝るか?ん??」
 と、とどめの一発を放ってしまう。
 多少の図星をさされて頬に血が上ってくるのを隠そうと、栗原は多少乱暴な態度と口調になった。
 「知らん!!勝手にしろ!!朝までドラクエでもなんでもしてるがいい!!」
 ばしっと箸をおいて、食事が終わるのもそこそこに栗原は席を立った。そしてさっきまで神田がいた奥の部屋に行くと、押入れをガラっと乱暴にあけて、布団を取り出す。
 ばさばさっと布団を広げると、
 「俺はもう寝る。じゃますんなよ!」
 と言い捨てて、襖をぴしっと閉めてしまった。
 「栗ぃ~~~、何怒ってんだよぅ・・・。」
 しかし、これくらいの栗原の態度の急変で懲りる神田ではなかった。
 しばらく閉ざされた襖を見つめていた神田だったが、それが開く気配がないことを悟ると、再びポケットから携帯を取り出し、アプリを立ち上げる。そしてドラクエを始めた。舞台は竜王の城だ。もうすぐ竜王との決戦、ローラ姫の救出も目前だ。
 ピコピコピコ・・・。
 「よしっ、やったぞっ!!」
 それから2時間近くもたったころだろうか、ガッツポーズをとった神田はローラ姫の救出に成功したところだった。
 そのままゲームを続けようとしていた神田の携帯に着信があった。
 聞きなれたメロディ。電話帳のグループ分けをこまめにしてあるので、この着信音が鳴るのはこの世の中で一人しかいない。
 『栗?』
 通話キーを押して電話に出る。
 『神さん?』
 間違いなくその声は奥の部屋に居るはずの栗原のものだった。
 『な・・・・なんだよ、栗ぃ。』
 『ゲームは終わったか?』
 『う、今姫さま助けた所・・・。」
 『計算どおりだな。・・・もう十分だろう?ローラ姫連れて宿屋にとまったりしてないで、すぐに俺のところへ来い。』
 『えー、でも、せっかくここまで・・・。』
 『俺とどっちがいいんだ・・・?』
 『それは・・・、お前・・・かな。』
 『なら、さっさと来い!』
 電話はそのまま栗原のほうから切れてしまう。切れた電話の待ち受け画面に表示される時計を見て、神田は、もう何時間もゲームに没頭してしまっていた事に今更ながら気づいた。そして、今日だけでなく、もう1週間近くまともに栗原に触れていないことに気づいた。
 (あー、こりゃ、怒ってもしょうがないな・・・。)
神田がそっと奥の部屋の襖をあけると、半ば薄暗い部屋に一組、布団が敷いてあった。律儀にあけられている人一人分のスペースに神田はそのままもぐりこむ。
 後ろから肩ごしに栗原を抱きしめてしまうと、神田はその耳元で囁いた。
 「ごめん、栗・・・。」
 「・・・。」
 反応のない栗原の耳尻に唇を寄せて、そのまま軽く挟む。耳の形にそって舌を這わせると、ぴくっとその体が震えた。
 「そんな拗ねるなよ・・・。ちゃんと来ただろ?」
 「あたりまえ・・・だ。最近、愛が足りなさすぎる。」
 「栗が・・・、一番好きだ・・・。」
 少しだけ、抱きしめる腕に力をこめて、神田はそのまま顔の位置をずらすと、栗原の唇を自分のそれで捕らえた。
 「愛してる・・・。」 キスの合間にそう囁き合う。そんな二人の夜は長かった・・・。




 それからしばらくして・・・。
 「神さん・・・、何してんの・・・?」
 夜中に何故か目がさめて、栗原はさっきまで確かに自分の傍らにいた筈の神田の姿を探す。それはすぐに発見することができた。
 なぜなら、少し離れて自分に背を向けるように寝ている神田の顔の辺りがぼんやりと明るく光っているからだ。
 (・・・・・・。)
 上体を起こして覗き込むと、案の定、神田はさっき中断したドラクエを夢中になってやっているところだった。
 当然、栗原がかけた声には気づいてもいない。
 (・・・まぁ、いい。明日にするか・・・。)
 何か言ってやりたい衝動は、気だるさが生む心地よい睡魔に打ち消されて、栗原は再び深い眠りに落ちていく。
 再び目覚めた時。
 それはもう朝の明るさになっていて、そして神田はといえば、今度はちゃんと栗原の傍らで寝息をたてている。いつのまにそうしたのか、しっかりと栗原の体を抱きしめたまま。
 そんなぬくもりにもう少しまどろんでいたかったが、もう起きなければいけない時間が近づいていた。ついでに神田も起こさなければいけない。
 「神さん、起きて。朝だよ?」
 そのままの姿勢で腕だけを上げて、神田の頬を軽くたたく。
 「ん?んん~~、あと10分・・・。」
 いつもの通り、そうそう簡単に起きるわけもなく栗原は先に布団から出た。
 そのまま顔を洗いに行こうとして、ふと思いついて、栗原は神田の寝ている近くに転がったままの携帯を手にとった。
 「・・・たく。しばらくこいつはおあずけだな。いや、それよりも・・・。」
 そうつぶやくと、携帯のメモリーの中のアプリをすべて消去していく。
 全部を消去し終わった後で、今度はカメラを作動させた。カメラを「自分撮り」モードにすると、栗原は、自分の写真を一枚撮影して、それをそのまま待ち受けに設定する。
 「これでよし、と。」
 そうしておいて、携帯をもとあった位置に転がしておく。
 そのまま、何事もなかったかのようにいつもの日常がはじまって・・・、神田がそんな栗原のいたずらに気がつくのはもう少し時間がたってからのことである・・・。




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