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ファントム無頼サイト(一部女性向)


   …ジャンル替:Idd.(三国志大戦)

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LAST FLIGHT


 「とうとうこれで最後だな。」
 おそらくは飛行服に袖を通すのもGスーツに体をしめつけられるのも、そして、戦闘機の操縦桿を握るのも今日が最後になる。
 明日が彼の定年退官の日。
 そして今日はその彼が人生最後のフライトを行う日なのだ。
 「隊長、準備が整いました。ハンガーの方に移動願います。」
 そう言って、まだ若いパイロットが彼を向かえに来る。
 「あぁ、すぐ行く。」
 (30年か・・・。長いようで短かったな。)
 パイロットとして一人前になってからの年月を彼は振り返る。何度も死線を潜り抜け、時に褒められ、時には上官からこっぴどく怒られ。
 いつからか編隊長として部下を従えて飛ぶようになり、一時は戦闘航空団を離れて、テストパイロットとして何種類もの航空機に搭乗したりもした。操縦課程や機種転換課程の指導教官もやった。
 そして、再び思い出深いこの基地に帰ってきた時、彼は飛行隊長という役職を任されることになったのだ。
 管制塔も格納庫も飛行隊もランウェイも昔と変わらない懐かしい景色。ただ、そんな景色の中でそこにはもうファントムは存在してはいなかった。隣の偵空隊のRF-4Jを除いては。
 もうここは最新鋭機F-15Jの居場所になったのだ。
 ファントムがこの地を去ったのはもう随分昔のこと。
 (やっぱ那覇あたりで定年向かえりゃよかったな・・・。)
 ラストフライトは、彼にとって一番思い出深い機体であるファントムで行いたい、というのが彼の最後の希望だったのだが、さすがに出来ることと出来ないことがある。
 彼も昔のように無茶ばかりする子供ではなかったので、もうそこにはこだわるまいとしてF-15Jでのラストフライトを承諾したのだった。
 「DJか?」
 隊長に同行しようと一度下がってからフライトプランをたずさえて、さっきの若いパイロットが彼を隊長室の前で出迎える。
 そのパイロットに彼はそう尋ねた。
 ラストフライトを単座で飛ばさせてくれることはまずない。かならずその時の一番腕のいいパイロットが前席か後席についてくれる。もちろん技量の落ちた古株の隊長クラスが一人で飛ぶのが非常に危険だからだ。
 そうそう腕は鈍ってねぇぞ、と彼は思いながらもおそらく用意されているのは複座のDJだろうとふんでいた。
 「えー・・・えぇ、そうですね。」
 だが、答える隊員の言葉は今一つハッキリしない。DJである事を告げるのが嫌で言いにくいのだろう、と彼は勝手にそう解釈した。
 「司令来るってか?」
 そして、話の矛先を変える。
 大抵、隊長クラスの定年前フライトには基地司令以下、そうそうたる顔ぶれと、基地の隊員の手の空いているものがエプロンで着陸を待っていてくれるものだ。そしてラストフライトのセレモニーがある。
 だが、最近基地司令は忙しいらしく、滅多に顔を見せない。司令部庁舎にいることもほとんどないようで、どこかに出張に行っていることが多いのだ。
 司令が出てくるのと来ないのとではセレモニーの規模に格段の差が出てくる。
 できれば華やかに最後を飾りたい。
 「・・・もうお見えです。」
 「何ぃ?」
 「えぇ、最後だから離陸からちゃんと見届けてやるとおっしゃいまして。」
 「・・・ヒマなのか・・・?」
 「え?」
 「いや、なんでもない。で、俺はどれに乗りゃいいんだ?」
 そんな会話をかわしながら、ハンガーに入っていくと、そこにそれらしい機体はなかった。
 その時
 「外に出てるよ。」
 と後ろから彼に声がかかる。
 「えっ?」
 と振り向いたらそこにいたのは基地司令だった。
 「し・・・司令っ・・・おつかれさまですっ。」
 副官の先導もなしにフラリと現れたのに驚いた若いパイロットの方は、大慌てで挙手の敬礼をする。
 「いや、楽にしてていいよ。」
 その姿に司令は苦笑して言う。そして、
 「ちょっと下がっててくれるか?」
 と続けて若いパイロットをハンガーの外へ追い出した。
 「やれやれ、最近はどうも動きにくくってよくないやね。定年おめでと、神田2佐」
 「司令になっても相変わらずだな、栗。いや、栗原将補殿。」
 「栗でいい。お前にそんな呼ばれ方するとむずがゆくって仕方ねぇ。」
 そこに居たのはかつての神栗コンビ。百里のファントム無頼と呼ばれた彼らだった。
 長い月日を経ても、お互い立場が変わっても、何ら変わることのない空気。
 お互いが違う未来へと向けて百里を去ってから、もうどれくらい時が過ぎたのか。
 そして不思議なめぐり合わせで、また二人ともここに帰って来た。
 「で、なんで基地司令ともあろう人が飛行服なんか着てんですか?」
 現れた栗原は、真新しそうなグリーンの飛行服を着ていた。ご丁寧に将補の階級章とふち飾りのついたネームを付けている。通常基地司令がこういうセレモニーに現れるなら制服制帽に通常礼装でもして花束の一つも持ってくるものだろう。
 「なーに言ってんだよ、俺を置いていく気か?」
 ニヤリと笑って栗原は言う。俺を後ろに乗せろ、とそう言っているのだ。
 神田はそれをすぐに理解した。
 「・・・あのなぁ。俺一人だって単座で出してくれるかどうかアヤシイんだぞ?それを司令乗っけてDJで出ろってか?無茶言わんでくれ。」
 「あーらら。神さんもオトナになっちゃって。昔はさんざ無茶してたクセに。」
 「・・・く・・・栗。お前・・・、司令なんだろ・・・?」
 「そうそう、ここのトップは俺なわけよ。俺がGOって行ったら、GOなの。」
 と、そんな言葉を聞いて、神田はこの目の前にいる将補の階級をつけた人物が間違いなくかつての自分の相棒であった事を再認識したのだった・・・。
 「そうだったな・・・、俺の無茶はお前がとめてくれるが、お前の無茶は俺にゃ止められんかったよ、昔からな。」
 「そうそう、諦めなさいって。せっかくラストフライト用にいいもの用意したんだからさ。」
 とそう言って栗原は神田の飛行服の袖を引っ張ってハンガーの外へ連れ出そうとした。神田はそのまま引きずられるように外に出る。
 駐機地区側に出ると、そこには巨大な白い布で包まれた航空機と思しきものが鎮座していた。
 「な・・・何、コレ?」
 「いいから、布めくってみな。」
 言われるままに神田はその布の手をかける。後ろからその布を剥いでいくと、巨大な一枚の垂直尾翼が現れる、そして双発のエンジン。艦載機特有のコンパクトな翼、太い足廻り・・・すべて見る必要もない、まぎれもなくそれはF4-EJ、ファントムだったのだ。
 「うわー、すげぇ。ファントムだよー。」
 「どう?気に入ったか?俺からの定年祝いは。」
 「ど・・・どうやってこれ・・・。」
 「新田原から今日一日だけ貸してもらったんだよ。もちろん正規の手続きを経てな。その為に俺は何回職印を押したことか・・・、ん?何やってんだ?」
 と、神田のほうは全部布をめくり終えてノウズの辺りをしげしげと見ている。
 「いや・・・900番台から書き換えた形跡がないかと・・・。」
 「あほぅ、誰がRFを塗り替えるなんて手間のかかる事をすると思うんだ。本物だよ。F4-EJ改、さすがに680は手に入らんかったが。」
 「栗、やっぱお前いい!最高だ!心から感謝する!!」




 と、狂喜乱舞の神田とその反応に満足な栗原だったが一方・・・。
 「は?何ですと??」
 飛行隊長神田2佐の後席を基地司令栗原将補が務める、という報告を受けて、一部大混乱が生じていた。
 特に驚いたのは司令の副官だ。これも若い2尉で、司令がウィングをつけている事は知っているが、かつての神田・栗原の百里時代を知らない世代である。
 「し・・・司令が!!そんな馬鹿な・・・。」
 そんな混乱は管制塔でも生じていて、みんなもう定年前の人間が前席に乗るという異常事態を通り越して、司令がそこに同乗するという事実にてんやわんやの大騒ぎになっていた。
 だが・・・、
 「はぁ・・・、そうくると思ったんですよね・・・。」
 「まさかファントム持ち込んでくるとは・・・。」
 「それ、運ばされたの俺だぜ?それも隊長に見つからないようにってさ。」
 「ほんと、司令も神田さんにだけは甘いんだから。」
 と飛行隊の隅では整備員も含めてそろそろ定年になろうかという古株が顔を突き合わせてそんな事を言っていた。
 それはかつての神・栗コンビを知っている世代だ。
 「でも、たまにゃあこんなスリルもねぇとな。」
 「ちがいねぇ、昔は良かったさ。毎日いろんな事があって。」
 「それも今日で終わりだ。定年にゃ勝てねぇやな。」
 「でも、あの二人が飛んで、何もなかった事なんてあったか?」
 「はははぁ~、んじゃ、今日も何か起こるにちげぇねぇ。」
 と、話に花をさかせつつ、昔を懐かしんでいる。
 そして、そんな事を言いながらも今回のこのラストフライトに賛同していることは間違いなかった。
 そして、フライトの時刻になった。




 「チェックオッケー、オールクリアー。さ、いつでもどうぞ。」
 ランウェイの端に二人は居た。長いブランクを感じさせない動きだ。
 搭乗する時からそう、すべての手順が体にしみついているかのように二人の動きは衰えを感じさせない。
 アラートで夜中にたたき起こされて上がっていったパイロットが、上空に出るまで寝ぼけていて記憶はないが、手順は何も間違っていないかったという話をよく聞くが、それほどに体が覚えているということなのだろう。
 「よーし、いくぜ。タワー、いいか?」
 と離陸のためにスロットルをひこうとしたその刹那、
 「司令、神田2佐!アラート発進があります。すぐに誘導路に退避して下さい!!」 と、管制塔からの無線が入る。
 「何ぃ?アラートだぁ?」
 「めっずらしい・・・。ここんとこずっとなかったのに。」
 「じゃあ、空けてやっか。」
 とノロノロとタキシングで誘導路へと鼻先を向ける。
 だが、しばらく待ってもアラート機の来る気配がなかった。
 「・・・何をトロトロしてやがんだ、アラートのヤツらは。」
 と、ものの数十秒もしないのに神田がそう言い始めた。アラート発進といったところでそうそう電光石火のごとく出ていけるものではない。
 「行くぞ、栗。」
 そして、業を煮やした神田はきっぱりと言う。
 「は?ちょ・・・ちょっと待て、神田!誘導路に行くんじゃないのか??」
 「アラートだろ?俺的には2分であがらねぇと意味がねぇ。あいつらがもたついてんなら、俺が出る。」
 「出るって・・・待て、こら、神田!!」
 と、栗原がとめるのも聞かず、ランウェイに戻ったファントムはエンジン全開、アフターバーナーをたき始めた。
 「アラート用に空路は空いてるはずだ。一気に1万まで上がるから、そしたら場所の確認だ。」
 といいつつ、ファントムは何の躊躇もなく離陸を始めた。
 そして予告通り、1万フィートまで一気に上昇する。
 「やれやれ・・・。おい、タワー、聞こえるか?未確認機の場所を知らされたい。」
 と、栗原が交信するのに対して、レーダーサイトから連絡が入る。
 「エリア、エコー・ジュリエット、一機のUNKNOWNが4時方向に向けて航行中。時速500ノット!」
 交信しているのがまさか百里の基地司令とは知らず、サイトからはごく普通に交信してくる声が聞こえた。それもまた昔に還ったようで二人には懐かしい。
 だが、そう懐かしんでばかりもいられない状況で。
 「・・・とりあえず、エコージュリエットに向けて飛ぶか。方向修正・・・・。」
 栗原がコースの修正を告げる。
 そして神田がそれにあわせて操縦する。
 「お、あれだぜ。」
 「・・・レーダーより先に目視しちまうのが神さんのすごいところだよな。」
 「ったりめーだ、まだ目は衰えてねぇよ。栗こそあんまりレーダースコープ覗いてばっかだと、もたねぇぞ?」
 「るさいよ。見えたんならいいや。そっちに向かって飛びな。」
 「おうよ。」
 近づいていくと、それは敵味方識別信号を出していない米軍機だった。
 無線交信で理由を確認してそこを離れる。
 そしてサイトとタワーに連絡を入れて、アラートの任務は終了だった。
 と言っても、二人にとってはそれが任務ではなかったのだが。
 「帰るか・・・。」
 自分がしでかした事ながら、とんでもないラストフライトになったと、半ば苦笑しながら神田は言う。
 「あぁ・・・、どうせだから燃料ギリギリまで飛んでったらどうだ?出迎えに集まってる奴らが怒り出さない程度にさ。」
 「怒ってるだろうなー、飛行隊の奴らとか、管制の奴らとか。」
 「まぁ、俺と神さんが組んで上がったんだ。古狸どもは半ば諦めついてるだろうよ。・・・さ、外との無線は切ったよ。好きに喋りな。」
 「サンキュ。・・・このままどっか行きてぇな。」
 「どこによ?」
 「わかんねぇけど。このまま帰ったら・・・、もうファントムに乗る事もなくなるだろうしよ。それだったらこのまま飛び続けて・・・。」
 「あほぅ、燃料はどうするんだよ。」
 「ずっと空に居てぇ・・・。」
 「・・・いいぜ。神さんが行きたいところに着いていってやるよ。最後までちゃんと誘導してやるさ。」
 「一人で空に上がってたら・・・こんな事は考えなかっただろうよ。ただ上空から百里の景色見て・・・、色んな事思い出してさ。けど・・・。」
 「けど?」
 「栗と一緒だからかな。まだなんか自分が若いような気がしてきてさ。そしたら、明日定年になるなんて考えたくもなくなった。」
 「わからんでもない・・・。で、どうするんだ?このまま俺と心中するか?」
 もともとアラートで上がる予定などなかった機体だ。増槽していない状態なので、燃料がそう持つわけではない。百里に無事着陸するにはそろそろ引き返さなければならない時間だ。
 「それも悪くねぇけど・・・、帰ってシャンペン飲まねぇとな。」
 不意に、ふっきれたように神田は言った。
 「お、どしたい?めずらしくマトモな事言っちゃって。」
 「ちゃかすなよ栗・・・。おれぁどうでもいいけど、お前がちゃんと戻らねぇと具合悪いだろ?無線のスイッチいれてくれ。話の続きはまた地上でな。」
 「りょーかい。タワー呼んで侵入ルート聞くから、高度下げてな。」




 結局、ラストフライト終了時刻は予定よりも20分押しとなった。理由は一般隊員には告げられていない。
 「うおっ、居るぜ、居るぜ。すげぇ人だ。」
 侵入ルートに入るために最後の旋回をしたところで、駐機地区にとんでもない黒山の人だかりを見つけたのだった。
 「・・・それだけじゃないぜ。消防車まで4台・・・。とんでもない目に遭うぞ?神さん。」
 「お・・・おこってんのかなぁ、みんな。」
 「いや、愛されてんじゃないか?いい最後だったな。」
 「あぁ、帰ってきて良かった・・・。」
 「ほれ、進入ルートに入るぜ。着陸んときケツ擦るんじゃないよ。」
 「あほ、そんなヘマすっかよ。俺は生粋のファントム乗りだぜ。」
 ランウェイに降りて、駐機地区までタキシングしてきて、キャノピーを開けた瞬間に大きな拍手が聞こえた。
 すぐにハシゴがかけられて、二人は順に地上に降り立つ。
 写真撮影、乾杯とたくさんと人に囲まれながら。
 そして、
 「あ、まて栗っ、一人逃げるんじゃねぇっ!!」
 「なんでー、神さんのラストフライトじゃん。ほらあそこ行って放水されてきな。せっかく4台もかけつけてくれたんだ。」
 さんざんバケツで水を浴びせられ後、ひそかな迫力で消防車が迫ってきたのに気づいて栗原がそこからそそくさと立ち去ろうとしたのだ。神田だけでなく栗原ももうずぶ濡れになっている。ここぞとばかりに司令に日ごろの鬱憤をはらそうとした隊員が居たのだろう。
 「えー、最後まで一緒だって言ったくせによ。」
 「しょーがねぇなぁ。」
 そう言いながら二人連れ立って4台の消防車が囲む真ん中に立つ。
 放水が始まって、そこだけスコールのようになって下着までずぶ濡れになって、そしてしばらくして霧雨のように細かい水滴が二人に降りかかった。
 小さな虹ができて二人を包む。
 「神さん、定年おめでと。」
 「なんだよ、もーちょっと気の利いた言葉はねぇのかよ。」
 「あほぅ、今言ったら明日の朝礼で言う台詞がなくなっちまうだろうが。」
 「そーいうんじゃなくてさ。」
 笑いあいながら迎えられる日でよかったと、二人は互いに感じていた。
 と同時にそれは、一つの時代の終わりでもあった・・・。




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