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ファントム無頼サイト(一部女性向)


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空の王様


 「成績が良くないな・・・。」
 「あ?何が?」
 ぼそっと栗原がそう言うのに、神田は出されたお茶をすすりながらそう聞き返す。
 ここは某基地の基地司令室。その隅っこの革張りのソファの上で神田は勝手知ったるとばかりにくつろいでいる。
 「戦競だ、戦競。お前ちゃんと訓練させてんのか?」
 めずらしく栗原の機嫌がよろしくない。
 来週に本番を控えた航空団対抗の戦技競技会に向けた予行演習での結果が芳しくないのだ。飛行隊を2つにわけた紅白戦でそれぞれ撃墜に要する時間とそれに至るまでの機動飛行の腕前を競うのだが、司令である栗原のもとに届けられた資料を見る限り、とてもトップに立てるとは思えないのだ。
 「なんだよー、栗。お前そんな事言うのに俺を呼んだのかよ。」
 「ったり前だ!俺が茶飲み友達を探すのに、わざわざお前を呼ぶとでも思ってるのか?」
 「いつもはそうじゃん・・・。」
 「何か言ったか?」
 「いや・・・別に。でも成績は悪くないと思うぜ?」
 神田がそう異論を唱えると、栗原は憮然として昨年と一昨年の記録を机の上に投げた。
 「去年と一昨年は優勝してるんじゃないのか?常勝飛行隊の筈だよな?昔からうちは。」
 「そりゃそうだが、今年は分が悪い。新米4人抱えてる上に中堅どころも転属してきたばかりだ。ここはじっくりと育てて来年以降に・・・。」
 「そんなの待ってられるか、急速練成しろ。」
 神田の言う事のほうが正論に違いないが、栗原にはプライドがかかっている。
 「このままでも上位には食い込める筈だぜ?」
 「あほ、。俺がここに転任した途端、戦競で負けましたなんて恰好悪い事耐えられると思うか?」
 「気持ちはわからんでもない。俺も負けるのは嫌だが。」
 「お前程負けるのが嫌いな男は居なかった筈だろう?何とかしろ、神田。」
 「あのなぁ、昔と一緒にすんな。俺だって一応一飛行隊分の部下を抱える身なんだぜ?あいつらにそんな無茶はさせられん。」
 めずらしく、神田の目が真剣だった。かつてこの基地での通り名として「ファントム無頼」と呼ばれていた頃の彼から、確かに20数年の年月を経た結果なのだろう。
 だが、栗原はそんな神田の目をまっすぐに見てこう言ったのだった。
 「俺だって伊達や酔狂でお前にこんな無茶苦茶を言ってるわけじゃないんだ。俺のプライドはこの基地全体のプライドでもあるんだ。「強い」こと意外にこの基地に残されてる物が存在するか?戦ってるのは飛行隊だけじゃないんだ。でも飛行隊が勝ち続ける事はこの基地に大きな意味を与えるんだ。俺はそれを言いたい。」
 栗原の言う事も決して間違ってはいない。基地の「顔」として普段から風を切って歩いている飛行隊なら、基地のために勝って見せろと言っているのだ。
 「栗原、お前の言いたい事はわかる。けどこれ以上訓練時間もソーティの数も増やすわけにはいかん。整備にだって迷惑がかかる。
 「わかった、もういいよ。神さんがそう言うんじゃしょうがないんだろ。」
 そんな言い争いに近い会話を栗原が打ち切ろうとした時、丁度デスクの上の電話がなって次の来客者を告げたので、本当にそれっきりその会話はそこで打ち切られた。
 「また来る。」
 そのまま出て行っては、本当に気まずくなると考えたのか、神田はそう言ってからその部屋を後にした。




 「気合が足らん。」
 神田の次に来客がようやく帰って、また一人になった途端に栗原はそう一人呟いた。
 それからもう一度神田を呼び出そうとして受話器をとりかけて、けれど時計を見て食事の時間が近づいているのに気づいてそれをやめる。
 基地司令ともなると食事一つをとっても自分の自由にはならない。
 予定通りなら、今日は偵察航空隊司令との会食が用意されている筈だ。普段から余り仲がいいとは言いにくい偵空隊だが、それでも同じ基地に所在している以上ある程度は意思の疎通ははかっておかなくてはならない。そこで月に一度だけ各部隊の長が一同に会して昼食会をすることになっているのだが、今日は他の部隊長がことごとく都合を悪くしたため、基地司令と偵空隊司令との一騎打ちになったのだった。
 昼食会と言っても、基地内の幹部食堂の一角を区切って、そこで昼のメニューを一緒に食べるたけなのだが。
 それで、その昼食会が始まったのだが、そこで栗原が基地司令として初めて気がついたのが、偵空隊司令がそれ程イヤなヤツではないということだった。
 偵空隊司令は栗原よりもかなり年下だ。防衛大学校出のエリートパイロットで、若くしてそこまで上り詰めて、いずれはそこそこの地位までが約束されているのだろう。普段から面と向かって反抗はしてこないが、何かにつけて基地司令に対抗しようという態度がミエミエなのだ。そこが気に入らないところだった。
 なので普段の昼食会ではなるべく違う人間と話すようにしていたのだったが、さすがに一対一となるとそういうわけにはいかない。
 会話がしばらくはずんで、不意に偵空隊司令はこんな事を言い出した。
 「基地司令は、確か20年程前にこの基地の所属だった事がありましたよね?」
 そう訊ねられて、
 「あぁ、そうです。ここでF4-EJに乗ってましたよ。偶然にも今の飛行隊長と一緒にですね。昔の話です。でもどうして?」
 「いや、私はその頃防大の学生でしたが、噂だけは聞いております。で、うちの部下の偵空隊長がその頃司令と一緒の飛行隊に居たと聞いたので、興味を持ったので。」
 「偵空隊長?」
 「いや、かなり狡猾というか面白い男で。西川2佐というのですが、覚えておられますかな?」
 そこで栗原は神田以外に久しぶりに懐かしい名前を聞いたのだった。
 西川、確かにかつてこの基地で一緒に飛んでいた人間である。腕のいいパイロットで、栗原と同じくイーグルへの機種転換をする事なくF-4にこだわり続けた男だ。
 「あぁ、覚えてますよ。そうですか、西川が居ますか。あれはいい男ですよ。偵空隊司令もいい部下をお持ちだ。」
 そうか、西川が居るじゃないか!と栗原は密かにほくそ笑んだ。しかし、目の前の偵空隊司令には当たり障りのない返事をしておくことを忘れない。
 その時、栗原の頭の中にはある事が思い浮かんでいた。
 そして、昼食会が終わると同時に栗原は自室に引き返し、そして自ら内線電話の受話器を掴んでいた。
 もちろん、先刻聞いたばかりの偵察航空隊の西川2佐のもとに電話をする為である。




 「えー、なんですって。そりゃ無理です栗原さん、いや司令っ。」
 と、それから数十分後、もちろんそこに呼び出された西川は直立不動のまま栗原にそう答えた。相変わらず、その普段の渋い言動の割りには動作が堅苦しい男だ。
 「・・・俺には余ってるように見えるんだが。」
 「余ってるったって、ありゃ、RFですよ。そんな目的に使える機じゃないですよ。」
 と、そこまで答えてから・・・
 「あっ、そうか・・・。」
 と何かに気づいたように西川は一人納得する。
 「そうそう。そゆこと。さすが西川、どっかの誰かと違って察しが早い。」
 「いや、でも栗原さんっ。20年前じゃないんですから、そうやすやすとは・・・。」
 「いやぁ、西川ちゃんならこの俺のために一肌脱いでくれるって期待してたのになぁ。」
 栗原が言っているのは、RF-4EJを一機貸してくれということだ。
 「だって、目的が目的でしょ?そりゃ、訓練飛行命令ぐらいなら俺の名前で切ってもいいですけど、それが成功しなかったらどうすんですか?恰好悪い。」
 「馬鹿、俺が失敗するわけないだろ?借りたいのはRF-4EJ一機と腕のいいパイロット一名だ。離陸開始時刻はF-15の飛行隊の訓練飛行に合わせてだ。頼めるか?西川。」
 その時点で西川はもう栗原が何をしようとしているかの大体の察しはついていた。
 それを知りつつ、あえてその依頼を受ける。
 相変わらず、悪ふざけが好きというか、見かけによらず豪胆というか、どうせもう出世はしないからと状況を楽しんでいるようにも思える。
 だからこそ、
 「兵装はどうすんです?」
 などという台詞が飛びだしてくるのだった。
 それに対して、
 「フルで。決まってんじゃん。あ、実弾はナシね。」
 と栗原も軽くそう依頼する。
 そう、RF-4EJは兵装することができる。もともとF4-EJを偵察任務様に改装した機体なのだ。改装後もバルカン砲と、サイドワインダーの搭載機能が残っているのだ。つまり、実戦を行う事が可能である。
 もちろんその能力はF-15や改修されたF4-EJ改には及ばないとはされているのだが・・・。
 「了解、模擬弾で準備しておきます・・・ってあれ?パイロット1名っていいました?もう一人はどうすんです?」
 と、嫌な予感を薄々感じながら、西川はそう尋ねた。
 もちろん栗原の答えは、
 「ん?もう一人は俺だ。決まってるだろ、RF乗りだけにまかせられっかよ。」
 と当然のようにそう言う。
 「やっぱり・・・。あ、いえ、了解です。じゃあ、準備できたら連絡します。」
 「よろしく。いいねぇ、出来る男は話が早いよ。どっかの誰かと違って。」
 「で、ついでに一つ、いいですか?」
 「何?」
 「栗原さんが乗る機の前席、俺でいいですかね?」




 と、二人がそんな悪巧みをしている頃。
 神田は飛行隊で明日の訓練のためのブリーフィングに参加していた。
 皆、一様に真剣だ。
 栗原が指摘した通り、今年はトップの成績は残せないかもしれないが、腕も悪くなく、飲み込みも早いパイロット達で、来年への期待は十分に持てる。今日の訓練でもそれなりの結果を残している。
 「じゃあ、最後に隊長、一言お願いします。」
 隊長が出席する場合、最後の締めの言葉は隊長の役目になる。
 「訓練成果もだいぶ出てきたと思う。戦競に向けての訓練は明日が最後になるけど、各自ベストの成績が残せるように頑張って貰いたい。」
 と神田は月並みな台詞でそこをしめくくった。
 それから課業終了を告げるラッパが鳴って、隊員はそれぞれ帰途についたのだが、神田だけは何故かオフィスに残って、訓練計画の見直しをおこなっていた。
 「あれ、隊長、帰らないんですか?」
 普段デスクワークの嫌いな神田がそうしているのを見て、隊員が心配そうにそう尋ねてくる。
 「あぁ。なんか嫌な予感がするんでな。明日の計画部分変更しようかと。」
 明日の計画では計6機のF-15が戦闘行動をとる事になっている。2機編隊が3組だ。そのうちの一組の編隊長として自分の名前を入れようとしているのだった。
 その計画を覗き込んだ部下が言う。
 「あれ、隊長参加されるんすか?」
 「なんだよ、出ちゃ悪いかよ。」
 「いや、だって、年が年ですし。」
 「言ったな。まだまだ若い奴らに負けっかよ。・・・いや、気になる事があってさ。下で見ててもいいんだが、一応戦競の前に近い所で全員の動きをチェックしておこうと思ってさ。」
 神田にも確かめておきたいことがあった。技量の未熟さは仕方ないこととしても、「勝とう」というモチベーションが若いパイロットから感じられないのも事実だ。それが実戦にどう影響するのか隊長としてそれを実際に目で確認しておかなければならない。 結局、自分が乗る機体をDJに変更して、本来の編隊長をその後席になるように調整する。
 そして、訓練プログラム自体にも多少手直しを加えた。
 嫌な予感が的中するもので。それからしばらくして、神田に電話があり、基地司令が明日の訓練飛行を秘密裏に視察する、ということが伝えられたのだった。




 そして、その次の日
 「隊長っ!!やられました!!」
 という交信を最後にさっきまで神田の左後方を飛んでいた筈の4番機が着陸態勢に入る。
 「何ぃっ!」
 と答えた神田の機の警戒レーダーが赤く点滅する。
 回避行動をとるが、まるでそれを予測するようにまわりこまれて息をつくヒマもない。
 そうこうしているうちに、右側3番、5番と打ち落とされ、もう編隊も組めなくなり、各自が離散してしまう。
 「くそっ、2番機、6番機で編隊を組めっ。敵を確認したらなんとか回りこんで応戦しろ、俺が援護するっ。」
 と、体勢の立て直しを指示しながら、隊長機の一番機は敵機からの追随を逃れるために急上昇の体勢に入った。
 その頃
 「お、あっちもやるねぇ。やっと半分か。」
 とレーダースコープを覗き込みながら悠長に言っているのは栗原だった。言う迄もなく、神田率いる編隊を攻撃しているのは栗原と西川で駆るRF-4EJだった。
 「あれ、あの隊長機、神田さんじゃないですか?」
 「やっぱ西川もそう思う?んじゃあれは後回しだ。あいつの動きは俺が確実にモニターしてるから、先にあのちょろちょろ逃げ回ってる前の2機をやるか。」
 一方、
 「敵は何だっ、どこの飛行隊だっ。」
 いくら戦競前とは言え、突然空中戦をしくんでくるとはどこの馬鹿だ、と神田は考えをめぐらせた。実戦ではない筈だ。指揮所もタワーも何も言って来ない。
 「隊長っ、RFです。偵空のRFが攻撃してきてますっ。」
 「なんだとぉっ。」
 「あ、追いつかれ・・・だめですっ、着弾信号っ!6番機、おりますっ。」
 「2番機、やられましたっ!!おります。隊長グッドラック!」
 「な・・・なんだとっ。どこのどいつだっ。アホなマネしやがって。」
 いいざま神田は操縦桿を倒して右斜め下にむけて旋回する。この際、どうしてRFが攻撃をしかけてきてるんだ?などという事は考えない。何故?などという無駄な思考をしている余裕はないのだ。ただ攻撃をしかけてくるのならそれは敵。そして目の前の敵を叩くことが全てになる。
 その名の通り獲物を求める鷲の如く、神田の駆るイーグルはレーダー上の機影をめがけて一気に5000フィートを駆け下りていった。
 そして・・・、
 「西川っ、来るぞ、上だ。」
 「一気にやられますかね。」
 「いや、俺の計算じゃ後ろに着ける。というか誘ってくる筈だ。誘われたら射程ギリギリで後ろに着け。」
 「了解。」
 その計算通りに、神田機はRFの前方視認ギリギリの位置に躍り出てきた。
 「お、栗原さん、来ましたよ。思いっきり誘われてますよ。」
 「よし、西川、速度維持。そのままくっついてろ。って・・・あんま魅力的じゃねぇな。15のケツは。」
 二人がそんな事を言い合ってる時、
 「・・・撃ってこねぇか。しょーがねぇ。最後の手段だ。」
 手ごわいヤツが居る・・・と判断したのか神田は通常ではとらない戦闘行動をとった。スロットルを戻してエンジンを切り、機首を思いっきり上と向けた。
 丁度一瞬、後ろのRFに対して背中を向けた恰好になって、そして次の瞬間目の前から機体が消える。所謂「木の葉落とし」という奴だが、普通F-15で可能な技ではない筈だ。自重が重い分だけパイロットにはとてつもない負荷がかかる。おそらく神田にしかできない技だ。
 が、それを受ける側も百選練磨だ。
 栗原の方が反応が早かった。
 「西川っ、耐G動作っ!」
 そう命じて、同時に後席側でRFの操縦桿を思いっきり引く。RF側は神田の15とは逆に、急速上昇から背面になり円弧を描くようにして機首を下に向けて一気にその下方にいる筈の15に突進する。
 RF側のレンジに15が入るのと、15の警戒レーダーが赤色を点すのとが同時だった。結果は・・・。
 「撃墜っ!」
 とRFのコックピット内で西川が満足そうな声を出す。
 「よし、じゃあ帰るぞ。」
 「凱旋ですねー。」
 「そうそう、今頃悔しがってるだろうねぇ、神さん。」




 二人を乗せたRFがランウェイに降りたのは、その飛行訓練時間帯の最後で、駐機地区まで行くと、もうほとんどの航空機が戻っていて、整備に入っているところだった。
 当然、さっきRFで次々と撃墜した6機のF-15もその中に含まれていた。
 定められた駐機場所まで行くと、そこに飛行服の集団が待ち構えているのが見えた。
 「なんか一杯居ますよ、栗原さん。怒ってんじゃないですか?あの集団。」
 「負けて怒る奴があるかよ。負けるのが嫌なら強くなればいいんだ、それだけだ。」
 「はぁ、まぁそーですけどね。」
 キャノピーを開くと、整備員からはしごが用意される。
 降りていくと神田が近寄ってきた。そして開口一番。
 「・・・やっぱりお前らか。」
 「なんだ、気づかれてたみたいよ、西川ちゃん。」
 「結構鋭いですね、神田さんも。」
 「あほぅ。お前らの外にどこの世界にRFであんなマネする奴が居るってんだ。」
 神田の口調は強かったが、
 「でも、気合入ったろ?」
 と、栗原に笑いながらそう訊ねられてその場で一気に力が抜けていった。
 「わかった、俺が悪かった。もう妥協も手抜きもせん。飛行隊は俺の手で世界一強くする。戦競も勝つ。」
 「お、神さん、ようやくやる気になったか。」
 「だからさ、」
 「だから何?」
 「司令は司令らしく庁舎で大人しくしててくれ・・・。」
 もうこれ以上現場を引っ掻き回さないでくれ、と神田は懇願する。
 けれどそれに対する栗原の答えは・・・
 「ヤなこった。」
 の一言で。
 その答えに神田は、再び力が抜けてその場に崩れそうになった。この先もこんな基地司令に引きずり回される日々が続くのかと思うと本当にその場で倒れてしまいたい気分だったのだ。
 そして、このまま戦競で負けたら、今度こそ司令にどんな目に遭わされるかわからないから、と必ず勝つという決意を新たにする神田飛行隊長だった。




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