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再会 ~A Hundred Miles~


 「俺がここに来たのは、二つやらなきゃならん事があるからだ。」
 神田を前にして栗原がそう切り出す。
 そんな台詞が出るのははもう何度目かだ。大抵、神田が馬鹿なことをやらかした時に栗原はそれを言うことが多い。
 「一つはこの基地を日本一精強にする事。もう一つは何だと思う?神田2佐」
 「・・・わからん・・・いや、思いつきません、司令。」
 そう訊ねられた時、神田は必ずそうごまかすようにしていた。
 テーブルを挟んだソファに腰かけたまま神田を見つめる栗原の目が鋭く光った。
 「それはな・・・、お前をまっとうな社会人に教育しなおす事だ。」




 それは栗原が基地への初登庁の途中だった。
 いや、正確には「基地司令」として赴任して、最初の出勤の日の事である。
 その栗原を乗せたVIP用の官用車、所謂その黒塗りをゲートの直前のカーブから猛スピードで追い越ししていった一台の車があったのだ。
 「な・・・なんという事を。」
 あまりの出来事に司令の隣にいた副官が思わずそう声を漏らした。
 車を操縦していた人間はその服装から明らかに隊員とわかる。それが黒塗りをぶっちぎって行く事などまず有り得ないからだ。
 「あれは・・・誰だ?」
 と、何気なく栗原はそう訊ねてみる。誰であれ今日から自分の隷下となる人物には違いない。その人となりが気にならないわけではない。
 黒塗りをぶっちぎって行った車は真紅のロードスターだった。それが白のカローラとかならともかく、狭い社会なので目立つ車の所有者は大抵特定されている。
 「あの車は・・・飛行隊長のですな、おそらく。」
 副官は半分冷や汗状態でそう回答する。飛行隊長と言えばVIP扱いにならないまでもそれなりの地位の人間だ。きっぱりと司令に報告するのが適切かどうか彼には判断がつきにくかった。しかし、あれだけ目立つ車なのだ、ここで嘘をつく事は後々自分のためにならないと彼は判断した。
 「ふぅん。こういう事をする人間なのか?」
 「あー、えぇと。後で調べて報告いたします。」
 司令からの詰問に、副官は逃げの手を打った。
 「いや、報告はいい。経歴と人事書類だけデスクに投げておいてくれ。」
 「・・・了解。」
 そうこうしているうちに黒塗りはゲートに辿り着いた。
 官舎から基地までの風景を、懐かしいなと思いながら彼は見ていた。
 彼にとってこの基地での勤務は2度目になる。前にここに居たのは遠い昔の事。かれこれ20年、いや25年は過ぎただろうか。風景は何も変わらない。道途中にコンビニができたくらいだ。畑と民家が続く県道を、官舎から基地まで車で15分。
 変わったのは自分の立場だけか、と心の中で苦笑しながら栗原は警備隊が立ち並ぶゲートを通り過ぎていった。




 一方・・・。
 「あーーー、やべぇ。俺またやっちまったよー。」
 と、飛行隊のオフィスにはそんな叫びが響き渡っていた。
 「隊長、うるさい。」
 そう叫んだ人物の人間性を知り抜いているのか、そこに詰める隊員はすでに飛行隊長の行動を驚きもしなければ、軽くあしらう事を覚えた者も居る。
 「何やったんスか。」
 「忘れ物っスか?」
 「そうだ、忘れ物っていやぁ、こないだ貸した白手早く返して下さいよ、隊長。」
 と、あちこちからそんな声があがる。
 いささか情けない話だが、それだけ彼が「人」として慕われている現われだろう。
 「るせぇ、お前らには関係ねぇよ。」
 とそう言って、彼は頭を抱え込んだ。
 「やべー、超やべー。」
 と一人ぶつぶつ呟きながら。
 と、そんな時。
 「隊長、副官室からお電話です。このまま回します。」
 と、一番端のデスクにいる隊員から声がかかった。
 「げっ・・・。」
 来たか・・・、と彼はおそるおそる受話器をとった。
 「・・・了解。今から行く。」
 と言って、電話を切りざま立ち上がった彼に、また隊員からの野次が飛んでいた。
 「あー、隊長、また何か悪い事したんでしょー。」
 「うるさい、うるさい。お前らとっととブリーフィングでも始めてろ。」
 と彼が歩き始めると、一人の隊員がこんな事を口走った。
 「でも、そう言えば基地司令って今日から変わるんでしたよね?」
 その言葉に、彼は足をとめた。
 「え・・・、今日からだっけか?」
 「確か。」
 「げっ、初日からやっちまったぜ、俺・・・。今度こそおとなしくしてようと思ったのに・・・。」
 前の司令とはそこそこ上手くやっていたものの、彼の「飛行隊長」としての評判はあまり芳しくなかった。飛行隊長というのは操縦の腕前だけ立派であれば勤まるってものでもないだろう、と前の司令からはよく諭されていたものだ。定年間際のじいさんで、彼から見ればフライトコースは何期か上にあたる。なかなか寛大な所もあって、彼の無茶苦茶な部分を上手くカバーしてくれていたのだった。その前司令にも言われていたのだ。今度は空幕から若いのが来るからお前とは衝突するかもしれん、と。
 だから、なるべく印象をよくしておこうと思っていた矢先だった。
 彼自身、上層部との衝突はとりたてて気にしないタイプの人間なのだが、やはり部下の事を考えると、隊長という立場上そうそうバカな事もやってられないのだ。
 「あー、どんな人なんだろう・・・。やべ、すっげ怒られてキレちゃったらどうしよう俺・・・。」
 「隊長、そんなにヤバイことしちゃったんですか?」
 と、そんな彼の様子に部下の声もだんだん不安をはらんだものになってくる。
 それに向かって、
 「いや、お前らが心配するような事じゃねぇよ。とにかく、行ってくる。」
 と、飛行隊オフィスを後にしたのだった。




 基地司令の執務室には、エライ人の部屋が大抵そうであるように絨毯がしかれ、大きな執務用のデスクがあって、そしてその傍らに応接セットがある。
 栗原はその執務用デスクの方にはいなくて、ソファに腰かけていた。
 その前の机にはファイルされた人事書類が一冊開かれた状態でおかれていた。
 コンコンと、ノックの音が聞こえて司令は視線を落としていたその人事書類をパタンと閉じる。
 「失礼します。」
 副官がそこに入ってきて、来訪者があることを告げた。
 「来たか。いいよ、通して。」
 その返事に副官は一礼して後ろに下がる。入れ替わりに飛行隊長が室内に足を踏み入れた。
 「失礼します。」
 と、神田が礼儀正しく入って来たのに向かって、
 「お前、朝ちゃんと間に合うように余裕を持って起きれんのか。」
 と、開口一番、基地司令の口調はきつい。
 だが、その声にもイントネーションにも、ましてその口調にはひどく聞き覚えがあった。懐かしいとさえ思えるような。
 「あっ!」
 その人物に思い当たって、神田は思わずそう叫んだ。
 「あっ、じゃないよ。朝俺の車をぶっちぎって行ったのは、あんただろ。神さん。」
 ニヤっと笑いながらに司令は顔を上げる。それもまた見覚えのある懐かしい顔だ。
 「栗原・・・。」
 「久しぶりだな、神田。ここで再会するとは思わんかったぜ。」




 「なんだ、出世しちゃったのね、栗原さんてば。」
 「お陰様で。なんとか人並みにだな。」
 しばらく懐かしさもあって、お互いにあの時代から後の経歴の自慢をしあった。そのほとんどは聞けば呆れるような武勇伝だったのだが、それを突っ込みあうのもまた久しぶりの会話だ。
 「ところで神さん。」
 「あん?」
 「この基地は何時に始まるかわかってるか?」
 と、栗原は不意に今朝のことを蒸し返した。
 今の栗原から見れば神田とて大事な部下の一人だ。毎朝あんなバカな事をさせるわけにはいかない。
 「・・・一応・・・。いや、でもホラちゃんと間に合ってるんだし。」
 「あほぅ。昔と違うだろ、昔と。間に合えばいいってもんじゃない。お前だって立場ってモンがあるだろうが。」
 かつては二人して遅刻スレスレにゲートを通過したこともあった。その原因のほとんどは神田にあったのだが・・・。そして今のように黒塗りを追い抜いてかつての司令に呼び出されてどやされた事も度々ある。
 「そろそろ、大人になんなさいよ。もう定年前なんだから。」
 ため息まじりに栗原がそう言う。
 「やーだね。何が定年前だよ。まだあと1年以上もあるわ。」
 「ふーん、一年ね。じゃあ、せっかく俺がここに来たんだ。ちゃんと定年の日まで監督してやるから、覚悟してな。」
 「は・・・はははは・・・。」
 と、引きつり顔で乾いた笑いで、けれど神田はおそらくその時に新しい冒険の始まりを感じていたのかもしれなかった。
 それは栗原も同じ事で。
 たとえ立場が変わってしまったとは言え、二人の距離は変わっていなくて、また出逢ってそれを確信したから。
 「笑ってごまかすな。まぁ、またよろしくな、神さん。色々迷惑かけると思うけど。」
 「こちらこそ。」
 差し出された栗原の手を神田は握り返す。
 「とりあえず、明日から7時半には出勤しなよ?」
 「えー、じゃあ朝起こしてくれる?」
 「あほか、一人で起きろ。」
 後にはまた、昔と変わらない二人の会話が続いていた。




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