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勝手にしやがれ


 「いやー、なんか半年ぶりだっていうのにキツイ気がして。」
 「いやいや、まだお前なんかいいほうだよ。整備主任なんか見ろよ、去年より確実に3センチは腹が前に出てんな。」
 「それより、俺なんか黄ばみがひどくってさー。」
 「あー、そりゃひでぇや。今年あたり被服更新してもらえよ。」
 「補給係の奴なまけてやがってさー。」
 と、朝礼前の飛行隊では隊員が集まって口々にそんな会話がかわされていた。今日は6月1日、全国一斉に衣替えの日である。
 朝イチのフライトにあたっている隊員がやむおえず飛行服や整備服でいるのを覗けば、服装点検があるため隊員はほとんど夏制服で朝礼場に並んでいた。
 当然、西川と水沢の姿もそこにある。
 二人は飛行服姿だ。けれども出勤時は当然夏制服で、お互いに体型が崩れていっているのを嘆きあっている。
 「飛行服に着替えてほっとしましたよ、僕。」
 「俺も。どうにも下から2、3番目のボタンが張ってる感じでね。」
 「最初に貰ったときは、ピシっと見せるために脇で折って着てたくらいなんですけどねぇ。」
 「言うな、言うな。虚しくなるだけだ。」
 と、そこへ。
 バタバタと朝礼場を横切って飛行隊の玄関に駆け込む姿がった。
 神田だ。
 その姿に気づいた二人はある事実に気づく。
 「なぁ、水沢。今の神田さんだよな?」
 「えぇ。・・・冬服でしたよね。僕の見間違いでなければ。」
 「あぁ。紺色だったな・・・。しかし、どうして・・・。」
 「まさか今日が6月だって知らないわけじゃないですよね。」
 「・・・栗原さんがついてるもんな。あの人に限って・・・。」
 と、そんな会話の中栗原も登場する。
 栗原は神田と対照的にゆっくりと歩いて朝礼場にやってきて、そしてそのままその列に加わった。
 もちろん栗原の方はちゃんと夏服を着ている。
 「おはようございます。」
 と声をかける西川に、
 「あぁ、おはよーさん。」
 と栗原は一見穏やかだ。
 それに安心したのか、水沢が先刻の疑問を栗原にぶつける。
 「神田さん、夏服どうしたんですか?」
 だが、その問いかけを聞くや否や、水沢の方を振り向く栗原の目が異様な光を放ち始めた。
 「・・・なんで俺に聞くんだ・・・?」
 いつもより低い声のトーンでそうすごまれて、
 「あ、いえ・・・。」
 と水沢は言葉を濁した。
 そう、その朝栗原はものすごく機嫌が悪かったのだ。




 話はその前日の夜にさかのぼる。
 「明日から6月かぁ。」
 「そうだな。戦競ももうすぐだな。」
 「今年は雨少ないといいんだけどなぁ。」
 強い雨が続くと、予定している訓練が消化できなくなる。そしてパイロットや整備員達のイライラが募るのだ。それが飛行隊全体に及ぶので梅雨の時期をみんな嫌う。
 「もう1本飲むか。栗は?要るか?」
 と神田が飲み終えた缶ビールを手に立ち上がると、
 「あ、俺はいいよ。ちょっと明日の準備があるから。後で自分で出すよ。」
 栗原はそう言って押入れのある奥の部屋へと消えてしまった。
 奥の部屋からは、数回押入れを開け閉めする音が聞こえてきて、何かバタバタとやっていたが、しばらくすると栗原は戻ってきた。
 「準備完了。ついでに布団も敷いておいた。」
 「お、さすが栗ちゃん。気が利くねぇ。」
 よいしょ、と神田の横に腰を下ろす栗原に、神田は、目の前のグラスにビールをそそぐ。
 「まぁ、梅雨時になってもカリカリしねぇで、楽しくやろうぜ。」
 「お互いにな。」
 と、カチンとグラスを合わせて互いにそう言葉を交わした。
 「で、今夜も楽しくやんねぇ?」
 「それは考えさせて貰う。」
 と、神田の場合には余計な言葉がおまけについてきたのだったが・・・。
 ここまではいつもの二人の生活風景で、その間に亀裂が入ったのは朝になってからで。
 いつものごとく、栗原は神田より先に起きて二人分の朝食を作っていた。
 そして神田が起きてきたのは、いつものごとく朝食がすべて並べられて、あとは箸を持つだけ、というタイミングだった。
 神田の朝は遅いが、それでもパジャマ姿で食卓につくのだけは栗原が許さなかったので、平日には一応は制服を着てそこに現れるのが常だ。
 だが、今日はその神田の制服姿に栗原の怒号が飛んだ。
 「神さんっ!」
 そこにあぐらをかいて座ろうとしていた神田は、栗原のその剣幕に驚いて、そのまま尻餅をついてへたりこんでしまう。
 「栗・・・なっ、何??」
 そんな神田に覆いかぶさるようにして栗原は神田が着ている制服の上着に手をかけた。
 「・・・うるせぇっ、脱げっ。」
 有無を言わせず襲ってくる栗原に、神田はなかなか状況を読み込むことができずにいた。
 昨夜の事で欲求不満にでもなっているのかとあらぬ事さえ考えてしまう。
 「な・・・何を、栗原さん。朝っぱらから大胆な・・・。」
 驚きながらも、たまにはそんなのもいいな、とそこまで考えて、受けてたつつもりで神田はそう返したのだったが、栗原の行動の真相は神田の邪な妄想とはまったく異なっていて、
 「うるせぇ、そうじゃねぇ。お前、何で冬服なんか着てるんだよ。ちゃんと夏制服出しておいただろうがよっ!!」
 と、一団と凄い剣幕でそう言われて、神田はようやく今日が6月1日だったことを思い出した。
 「あ・・・あ、そっか。すまん。」
 「ちゃんと起きてすぐ見える場所に置いておいたのに。」
 「・・・す、すまん・・・。すぐ着替える・・・。」
 と、そのまま朝食はおあずけになってしまった神田が、再び奥の部屋へと消える。
 夏制服を着るのは大した手間でもない。すぐに出てくるだろう、と先に朝食に箸をつけはじめた栗原だったが、予想に反して、神田はいつまでたっても出てこようとはしなかった。
 「あ・・・あれ??」
 と、そんな間抜けな神田の声にとうとう業を煮やして、栗原は箸を置いて、奥の部屋の襖をあけた。
 「あん、どしたい?」
 と、神田の姿を見ると、ズボンには足を通しているものの、水色のその夏制服を手にあちこちの引き出しをあけて右往左往している。
 そして栗原の方を振り返って、情けない声でこう言うのだった。
 「階級章が・・・ない・・・。」
 「なんだとー、てめぇ、そんなもん亡くすな。
 栗原が用意したのはクリーニングから引き取ってきていた、きっちりとシワの伸びた状態の制服で、タグだけを外してビニールに入ったままの状態だ。当然そこに飾りつける階級章だとか部隊章だとかウィングマークなんてものは神田がちゃんと自分で仕舞ってあるものだと思い込んでいた。
 神田は必死に探しているが、それはなかなか出てこない。
 神田が探しているのは、夏服用の布地に銀糸の刺繍のはいった階級章である。部隊章やその他諸々は冬制服から付け替えれば済むだけの事だったが、この階級章だけはないとどうにもならない。
 「あれ、確かこの引き出しに・・・。えー、栗ちゃんと用意しといてくれよ。」
 その言葉に栗原はキレそうになったが、なんとか自分の気持ちを静める。朝から無駄な事にエネルギーを使いたくはない、と彼はそう考えた。
 「知らん。何で俺がそこまでお前の面倒を見てやらなきゃならんのだ。」
 と一応は冷たくそう突き放してみたものの、探した中にモレはないかどうか、神田が探し終わった後の小物入れや、引き出しをもう一度チェックする。
 けれど、結局それは見つからなかった。
 神田は諦めた声で、
 「・・・本当にない・・・。やっぱ冬服で行って後で買うよ。」
 と、栗原にそう提案する。
 まるで一人衣替えに気づかなかったかのようで、非常に体裁の悪い行動だったが、もうこうするより仕方がなかった。
 言いながら、がっくりと肩を落とす神田だったが、その肩を後ろから栗原に叩かれて、振り返ると、
 「んなカッコ悪い事させられるかっ!しょうがねぇ、俺の予備貸してやっから、今度は亡くすんじゃねぇぞ?」
 と、言いながら不敵に微笑む栗原の姿があった。
 差し出すその手には、多少刺繍の光沢が落ちているものの、まだ十分に使える夏用の階級章が乗っている。
 神田は素直の感謝してそれを受け取ったのだった。
 そして、階級章諸々を付け終わった夏制服に袖を通しながら、しみじみと、
 「いやー、さすがだね。」
 とつぶやく。
 その言葉に洗い物をしていた栗原が神田のほうを振り向いた。
 「何が?」
 「いや、階級章の予備まで持ってるところが栗原らしーな、と思ってさ。」
 感心して言う神田に、栗原は洗い終えた最後の湯のみを布きんでぬぐいながら事もなげに、
 「あぁ、あれね。伊達が辞める時にくれたやつだよ。2つ3つあっても邪魔にはならねぇだろうってね。買うと結構高いもんね。」
 と、栗原は何気なくそう言ったのだったが、そこに出てきた「伊達」という言葉に神田は途端に不機嫌になってしまう。
 「伊達ぇ?」
 数日前の週末のことだ。神田と栗原とそして伊達と3人で飲み明かしていて、気がつくと神田は先につぶれて奥の部屋に寝かされていた。眠っていたのはほんの30分くらいで、すぐに回復してまた飲みの場に復帰した神田だったが、襖を開けた瞬間に目に飛び込んでいた栗原と伊達の仲良さそうにふざけあっている様子に激しい嫉妬を覚えたのだ。
 もちろん今更その二人の中を変に勘ぐったりだとか、そういった事ではなくて、ひどく大人気ないことを神田は自分でも自覚してはいたのだが、
 それ以来神田は伊達という単語に敏感になっていて、けれど栗原のほうも神田がそうやって敏感になっていることに気づいていて、つまらない事に嫉妬して突っかかってくる神田にイライラし始めているのも事実だった。
 「何かいけない事でも?ないよりマシだろう?」
 顔色を変えた神田に、また、つまらない事を、と栗原のほうも不機嫌になる。
 「何でお前、伊達の物なんか後生大事に持ってんだよ?」
 そう突っかかってくる神田に、
 「うるさいな。そんな事言ってる場合じゃないだろ?準備出来たんなら、行くぞ。帰りにクリーニング出すから冬服も忘れんじゃないよ。」
 と、これ以上は喧嘩になりそうなので、取り合おうとせずに出かける準備を終えた栗原は、神田を促して先に部屋を出ようとしていた。
 その栗原に神田は、
 「着替える。」
 「はぁ?何言ってんのよ??」
 「伊達のなんか、俺は使わねぇ。それくらいなら冬服で行く。」
 キッパリそう言って着替えに戻った神田に、
 「・・・もう勝手にしろっ!!」
 と、栗原はそう叫んで先に車の方へと向かった。
 しばらくして助手席側に乗り込んできた神田はむっつりとしたままで冬制服を着ていて、それから二人お互い会話も交わさないまま、栗原は車を発進させて基地へと向かったのだった。




 「あー、まいったね。」
 それ以来、訓練に関する事意外口をきこうともしない神田に栗原も困り初めていた。どう考えたって、神田の我侭だし、そのうち神田のほうから詫びを入れてくる筈だ、と高をくくっていたのである。
 けれど、昼時になっても神田の機嫌は直らないらしく、今も訓練から上がった直後、栗原を誘おうともしないで自分一人でさっさと食堂へ向かってしまった。
 追いかける気もさらさらないので、栗原は飛行服から着替えがてら、この機会にロッカーの整頓でもしようかと一人ロッカー室に篭っていた。
 もともと整理整頓の好きな性分だったので、整頓といってもロッカー自体は整然としていて、非の打ち所がない。けれど、やはりその中には厚手の靴下や飛行服の下に着るタートルネックのシャツなど、冬場にしか使わないものも含まれていて、栗原はそれを普段は使わないほうのロッカー室に移すつもりで選別して取り出していった。
 だが、しばらくそうやってロッカーの中を探っていて、栗原はある物に気がついて思わず、
 「あー、俺だ。ごめん神さん・・・。」
 そう言った栗原の手には一組の夏用の階級章が握られていた。
 昨年の夏の終わりに、どうせ神田が持っていると亡くすだろうから、とクリーニングに出す前に栗原がはずして預かっていたものだった。
 そりゃ、確かに家中探したってないわな、と栗原は苦笑する。
 けれど、今更それを神田に渡して謝るのもなんとなくバツが悪くて、栗原は仕方なく財布を手に、厚生売店へと出かけていった。
 そして、栗原が飛行隊に帰ってくると、丁度食事を終えた神田も帰ってきていて、そして隅のソファで行儀悪く漫画週刊誌を広げて読みふけっているところだった。
 栗原はそこに近づいていって、そして無言で小さい紙袋にはいった、まだビニールに包まれてままの新品の階級章を神田に差し出す。
 「ん?」
 と、不審そうに栗原を見上げる神田だったが、差し出されたものを素直に受け取って、紙袋から取り出した。
 そのタイミングで栗原は、
 「神さん、朝はごめん。新しいの買ったから、それ使って。」
 とそう切り出した。
 神田のほうも、朝の事は自分が悪いと思っていたらしく、そしてめずらしく下手に出てきた栗原に悪い気がするわけもなく、
 「・・・えーと。いや、俺のほうが悪かった。ごめんな。」
 と仲直りの為に手を差し出してくる。
 そうやって握手を交わして仲直りした二人だったのだが・・・、
 「あー、でもさ。実は俺・・・。」
 「ん?何?」
 「いや、ロッカー探したらさ、先輩に貰ったのやらなんやらで階級章3組くらい余分に持ってたわ。でも、ボロかったから新しいのくれて超嬉しい。ありがとな、栗。」
 「・・・なんだとー、持ってるんなら、返せっ!!高かったんだぞ、それ。」
 「えー、くれるって言ったじゃんー。」
 と、些細で犬も食わない言い争いは昼休みが終わるまで続き・・・。
 百里基地は今日も平和なのでした。




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