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Cross over the Line 1


 「おぅ、ちょっと栗の印鑑借りるぜ。」
 と、めずらしく飛行隊の事務室の方に現れた神田は、事務処理用に飛行隊全員分の印鑑が集められて収められているケースの中から栗原の印鑑を取り出した。
 「あー、ちょっ、ダメですよ神田2尉。」
 「るせーな、ちょっと栗の代わりにハンコ押すだけだからよ。」
 「そんな勝手に・・・、また怒られても知らないっすよ?」
 「るせぇ、借りてくぞ。すぐ返すからよ。」
 と、強引に自分のと栗原のと2つの印鑑を手に入れて、神田はそこを立ち去る。
 そして、ものの10分もたたないうちにまたそこに戻って来て、
 「ほら、返すぞ。」
 と言いながら、再び印鑑ケースのフタを開ける。
 「神田2尉、ちゃんと元あった場所に戻して下さいね。後で整理すんの大変なんすから。」
 「わーってらい。あ、俺が栗の印鑑借りてった事は、栗には内緒な?」
 「はぁ?まぁいいですけど。何に使ったんすか?」
 「それは秘密だ。」
 本当はやってはいけない事をやっておきながら、悪びれずにそう押し切る神田に、そこの係の隊員は苦笑しながら神田から取り上げた印鑑ケースの中を点検する。神田がちゃんと同じ場所に戻しているか確かめるのと、ついでにたまには五十音順に全部きっちり並べ直しておこうと思ったからだ。
 「まさか、婚姻届とかじゃないっすよね?」
 そして、ふと思いついたかのように口に出されたその隊員の言葉に、、
 「あー、そっか。それいいじゃん。お前なんで先にそれ教えてくんねぇんだよ。もっかい貸してくれっ。」
 と、神田はもう一度印鑑ケースをその隊員から奪おうとしたが、
 「・・・ダメです。そんな目的ではお貸ししませんから。」
 とキッパリハッキリ断られるのだった。
 「ケチな奴だな、お前。」
 「栗原2尉に言いつけますよ?」
 「そっ、それは困る。くそっ、じゃあまたな。」
 そして、神田が密かにそんな事をしていたのが、1週間ほど前の事で・・・。




 「栗っ、ハワイ行こうぜ、ハワイ。今週末から。」
 と、飛行隊の中にある休憩室の扉を勢いよく開けた神田は、栗原の姿を見つけるなりそう切り出した。そしてその手にはいくつかの茶封筒と紙束を抱えている。
 そんな神田に、栗原はテーブルに広げた新聞に向けていた顔を僅かにあげる。
 「は?今はゴールデンウィークでも盆暮れ正月でもないんだぞ?」
 何をバカな事を言ってるんだ、とでも言いたげに、素っ気無くそれだけ言って栗原はまた視線を新聞の上に落とした。
 だが、神田の方もそれで引くわけでもなく、近寄ってきて栗原の向かいに腰を下ろすと、そのテーブルの上に持っていた書類をドサドサと並べた。
 「こら、人が新聞読む邪魔すんな。・・・って、何だよ、これ。」
 神田を窘めようとして、けれど栗原は神田が持ってきた紙束を見て、それを途中でやめてしまう。そこにあったのは、二人分の休暇届だとかそんな事務書類ばかりだったのだ。そして茶封筒が一つと。
 「アラートん時の代休使っちまおうぜ。金曜最終便で出りゃ丁度3日分代休使って4泊6日だ。」
 と、得意げに休暇をとって旅行しようぜ、の計画を語る神田を前に栗原の口からはため息がもれた。
 「あのねぇ、代休たって、今から申請あげて間に合うわけないでしょうが。それも海外なんてとても・・・。」
 「ところが、それが大丈夫なんだな。」
 ため息ついでにそうゆっくりと諭そうとする口調の栗原に、神田は得意げに机の上から数枚の紙を持ち上げて、ヒラヒラと栗原の眼前にかざして見せた。
 「何だ?休暇申請書・・・って、既に決済降りてんじゃねぇかよ。」
 「その通りっ。ほれほれ、見ての通り、休暇も海外渡航申請ももう取ってあるんだなー。後は栗がオーケーするだけなのよ。」
 「・・・たく、人の印鑑勝手に使いやがって・・・。チケットは?」
 「ふふふ、もちろん手配済みだ。」
 だんだんと調子に乗ってきて得意満面に神田に対して、栗原の表情は明らかに翳りはじめていた。ここしばらく神田が自分に隠れて何かコソコソとしている事には気づいていた栗原だったが、まさかここまで完璧に欺かれているとまでは思っていなかったのだ。
 神田の突っ走った行動に付き合わされる事実に対してもため息が出るが、そんな神田をそうなる前に制御しきれなかった自分の愚かさに、ますますため息の深くなる栗原だった。
 しかし、結局最後には負けを認める。
 「・・・しょうがない、付き合うか。・・・二人で行くのか?」
 栗原が一応そう確かめると、
 「当たり前だろー。」
 と、神田は栗原が承諾した事も受けて、更に満面の笑みで当然のようにそう答える。
 そして、栗原はまた深いため息をつくのだった。
 「・・・また周りに何言われるか・・・。」
 「そこは婚前旅行だって、開き直るんだ。」
 「アホか。悪ノリされてシャレで済まなくなったらどうすんだ。」
 近頃では二人の仲の良さは飛行隊に知れ渡っていて、何かにつけ揶揄されてしまう。別にそれはそれで非難されるわけでも、二人がそれを気にするわけでもないのだが、できれば穏便に済ませたり、そっとしておいて貰いたいというのが本音でもある。
 二人で行くなら、それはそれで何か旅行の目的をでっち上げないとマズイかな、と栗原が色々思考を始めたところで、神田が少し改まって、栗原に話を切り出した。
 「・・・っていうのは冗談でさ。実は招待状が来てたんだよ。エアチケット付きで。」
 と、一番下にあった茶封筒から、チケットの綴りと、綺麗な装飾と飾り文字のついた白い洋封筒を取り出す。
 「誰から?」
 神田から、見てみろと差し出されたその洋封筒を開きながら栗原はそう尋ねる。
 「伊達。読めばわかるけどさ。なんかやっぱり結婚式をやりたいみたいで、ハワイで内輪だけでやるんだとさ。で、その招待状。」
 ふぅん、と栗原は手にした招待状をながめた。
 「へぇ、今更って感じもするけど・・・、チケット付きっていうのが気が利くねぇ。」
 伊達夫妻も長女が生まれてからもう3年近くになる。最近になってようやく四六時中娘の傍に付いていなくてもよくなった、と言っていた事を栗原は思い出した。やっと余裕が出てきた、というところなのだろう。
 「じゃあ、行くしかないみてぇだな。」
 二つに折られた招待カードな内容を一通りチェックして、そして栗原はそう言いながらカードを再び封筒にしまった。
 そして、
 「神さんが俺を騙して黙ってた事は、この煩わしい手続き書類一式俺の代わりに書いてくれたって事で勘弁してあげよう。」
 と、神田の方に顔を向け、唇だけで薄く笑って栗原はそう続けた。
 「・・・ごっ、ごめんなさいっ。黙ってた事は俺が悪かった。謝るから許して。」
 と、神田は今更ながらに、栗原を謀っていた事の重大さに気づく。
 酷く叱られるかも、と危惧してとりあえず平伏する神田だったが、それに対して栗原は、
 「いいけど。・・・神さん、ちゃんと自分の荷物は自分で用意するんだよ?俺手伝わないからね。」
 と、今度はもう少しだけ穏やかにそう告げるだけだった。




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