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佐藤春夫訳「徒然草」三十二」(2015/02/12 (木) 20:36:59) の最新版変更点

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 九月二十日時分のこと、ある方のお誘いのお供をして、夜のあけるまで、月を見歩いたことがあったが、お思い出しになった家があるというので、案内を受けておはいりになられた。庭の荒れている露の多いところに、とくにというのではなくふだんから焚いているらしい薫香《たきもの》がしっとりと匂うている。世を忍んでただならぬ方.の住んでいるらしい様子が、まことに風雅である。自分の一緒に行った方はいいかげんおられて出て来られたが、自分は之との優美に感心して、ものかげからしばらく見ていたら、家のなかの人は妻戸をすこしおし明けて月を見る様子であった。客を送り出してすぐ奥にひっこんでしまったとしたら、うちこわしであったろう。まだ見ている人がいようなどとは知るはずがあるものではない。これらのことはただ日常の心がけによってなされたものであろう。彼女はその後聞もなく死んだと聞いた。

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