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人間の履歴を知るには、履歴書を見るのが一番早い。しかし履歴書にあらわれているのは、決してその人の本当の履歴ではない。少なくも私の場合などは、大学の物理科を出ていることになっていて、それは事実ではあるが、今から考えてみると、全く偶然の機会の重なり合いが、自分を物理学者としたようなものである。私の歩んだ道は、履歴書の上ではきわめて平凡であるが、その内容はきわめて浮動の多いものであった。ただ全体を通じて、今までのところは、非常に運のよい道を通って来たものと、自分では思っている。ちょいちょい困ったこともあったが、あとから考えてみると、その苦境が却って幸運への橋渡しになったことが多い。
一番感謝していることは、生まれた家が、非常に貧乏でもなく、また決して金持ちでもなかった点である。あまり貧乏で中学へも出せないようでは、もちろん困るが、家が金持ちであることは、決して子供のために仕合わせだとは限らない。無理をすれば、ようやく大学まで何とかやれるというくらいの家庭が、一番幸福な家庭であり、私の家はまさにその階級に属していた。
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