網迫の電子テキスト乞校正@Wiki

佐藤春夫訳「徒然草」二百三十五

最終更新:

amizako

- view
だれでも歓迎! 編集
 持主のある家へは、用のない人聞などが気ままに入って来ることはないが、主のいない家へは、通りがかりの人でも無闇に入りこんで来る。狐や梟《ふくろう》のようなものでも主のない家は人気に妨げられないから、得意然と入りこんで住み、木魂《こだま》などという怪異などまで現われるものである。また鏡には色や形がないから、種々の物の影も映る。もし鏡に定住のものともいうべき色や形があったなら、外物の影は映らないのであろう。空虚なところへはよく物が入りこむ。雑多な慾念が勝手に思い浮かんで来るのも、本心というものがないからであろう。心に一定の主体さえあったなら、胸中かように雑多なことが入っては来ないのであろう。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
目安箱バナー