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「でもそれは大きなミステイク」(2010/09/01 (水) 20:43:12) の最新版変更点
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*でもそれは大きなミステイク ◆EwVLYtcCbD23
「ねえ、誰かい――きゃ、きゃあああああああああ!?」
「ぎぃいいいいやぁああああああああああ!!」
てゐが足を踏み入れたと同時に、男は大声を上げながら豪快にすっ転んだ。
そのシルエットはまさしく、先ほどまで一緒にいたギロロと同じ姿。
「いぃやぁああああああ!! 神様仏様ミジャグジ様マーラ様ぁあああ!! 我輩が悪かったでありますよぉおおお!!」
「ちょ、ちょっと待ってよ。何も獲って食べやしないって」
てゐの姿を目視すると同時にギロロと同じ姿のカエル男が暴れだす。
突然の事態にてゐの反応も僅かに遅れ、後手に回る形になってしまった。
「いーーやーー!! まだ死にたくないでありますぅ! 完成させてないガンプラとかー!! 冷蔵庫のおやつとかあるしーー!!」
「だからさ、ちょっとはこっちの話も聞いてくれてもよくない?」
ともかく、会話を成立させるためにカエル男を落ち着かせるのが最優先である。
歩み寄って会話を試みたが、カエル男はすごい勢いで飛び退きながら分けの分からないことを口にしている。
「うーーのーー!! そりゃ一番になるって言ったけどぉおおおおお!! ホットブロットファイバーでぇええええええ?!」
「いい加減にしろッ!」
一発。
ついにてゐの拳がカエル男の頭上に振り落とされた。
鈍い音を立て、同時にカエル男の頭が地へと沈む。
「……ッ痛うう」
「ちょっとは落ち着いた? ったく、そんなんじゃあこの先いくつ命があっても足りないわよ?」
頭を抱えながら、カエル男はゆっくりと起き上がってくる。
そしててゐを睨みながら、素早く人差し指を突きつけて訴える。
「何するでありますか! いきなり殴るなんて! ひどい! 人でなし!」
「何よ! あんたが勝手に一人で狂ってたのが悪いんでしょ?!」
それに、私は元々人じゃないけど?」
「へあ? いや、でも、どう見てもウサ耳をつけたコスプレの……」
分けの分からないことを言っているカエル男を適当にあしらいながら、てゐは心の中で微笑む。
思ったとおりの小心者だ、こちらが握っている情報がなくても簡単に転がせそうなタイプである。
こいつにどんな情報を仕込み、そしてどのように使ってやろうか?
「ってぇ?! 無視ィ?!」
未だに激昂しているカエル男の叫びにより、てゐの思考は中断される。
「お、おのれー! ムキィーッ!! このガマ星雲第58番惑星 宇宙侵攻軍特殊先行工作部隊隊長ことケロロ軍曹を無視するとはいい度胸でありますな!」
カエル男……ケロロの気は晴れないらしく、怒りの感情をてゐへとぶつけ続けている。
「大体ィ! 挨拶もなしにいきなり入ってきたと思えばいきなり我輩を殴りつけるしィ! 一体全体どういう神経のぉ!? チョーあり得ないって言うかー?!」
「あらそう? 人殺しに神経がおかしいだなんて言われたくないけどね」
氷柱の様に冷たく尖ったてゐの一言を受け、ケロロの表情が瞬間的に青ざめていくのが分かる。
当たりの感覚を確かめ、てゐは心の中で笑う。
「入り口で男の人が倒れてるのを見たわ。どうせあなたがやったんでしょ?」
「ち、違うであります! た、ただ我輩は彼にその……」
予想通りの反応だ。
頭の中で構築していたシミュレーション通りのシナリオが今、目の前で描かれている。
「あら、違うの? ひょっとして果たすべき責任とやらのことかしら?」
どうしてそれを知っている。ケロロの顔はそう言わんばかりの表情で固められていた。
主導権を完全に我が物にしたてゐは、自分が描いたシナリオ通りに駒を進める。
「ま、それはともかく男に布がかぶせてあったところを見ると、彼が死んでいることをごまかそうとしたのかしら?
彼を治療するつもりが治療を間違えたか、もしくは既に死んでいたか。
あたりに散らばっている薬品からすると、そのどちらともとれるわね」
「そ、そうであります! 我輩は、彼を治療しようと思って……」
弁明を始めるケロロをよそに、てゐは一本のビンを拾い上げる。
「治療? ハナから殺すつもりだったんじゃないの?」
「な、何を!」
拾い上げた一本のビンをケロロへと突きつけ、てゐは冷たく言い放つ。
「この、毒薬を使ってね」
「そ、そんな。そんなハズがないであります! だって、このビンは以前夏実殿に……」
「ビンだけで判断したの?」
頷くケロロを相手に、小さく溜息をつく。
「これは毒薬よ」
勿論、ハッタリだ。
月の頭脳を持つ訳でもない彼女が、薬学などに精通しているわけもない。
傷薬と毒薬を見分ける術等持っているはずもないのだ。
だが、それでいい。今の状況はそれでいいのだ。
今は、とにかくケロロを揺さぶることが目的。
「傷薬と同じビンに入れておけばバレないとでも思った? このタイプの毒薬は無色透明だけど、僅かに臭いがするのよ。
それを傷だらけの人間にかければ、それこそひとたまりもないわよ」
ケロロは動かない。
ただ、自分がしていたことが正しかったのか、間違いだったのか。
それが分からず、口を閉じては開き、目を見開いていた。
「あなた、ビンの中身が毒だって知ってたんじゃないの?」
少し畳み掛けすぎたか、ケロロにはてゐの言葉は届かないようだ。
ケロロの今までの言動、そして今の状況からてゐはケロロの有用性を推測する。
まず、ギロロとは違い戦闘面では期待できそうには無い。
もし超絶な戦闘力を持っていたとしても、この様子では正面切って戦うということもしないだろう。
自分を守ってくれることも、誰かを潰してくれることも無いだろう。
ここで有用性の大半が失われる。
簡単に殺せそうなカエルのためにわざわざ労力を割く事も無い。
引き出せそうな情報を引き出し、貢がせるだけ貢がせてその場を去る。
そしてケロロという人物の悪評を撒き散らし、誰かに殺してもらう。
それが最善の手であると考え、てゐは次のカードを切る。
「ともかく、貴方は信用できない。そして貴方が人殺しである可能性も捨てきれない。
だから、ここは逃げることにするわ。貴方がどんな武器を隠し持っているのかも分からないし。
あの男みたいに死にたくもないしね」
「ま、待つであります!」
ここで引き止められるのもてゐの計画通り。
相手は「自分が殺人者であることを広められたくない」のである。
誤解を抱いたまま自分が居なくなれば、それを広められるのは確実。
相手としては、それだけは食い止めたいはずだ。
「違う、違うであります。我輩は、我輩は人殺しなんて、やってないであります!!」
「じゃあ、どんな手段を使ってもいいから私を信用させてみてよ」
カードは切った。
もしケロロが何か有用な情報を持っていれば持っているほど、払い出しは大きい。
何も持っていなかったとしても、彼女の損失は少ない。
どちらにせよ、悪評をばら撒くことを止める気など毛頭ないのだから。
「そうね、まずはあなたの支給品が一体なんなのか見せてもらえる? 今持ってるものを含めて、全部、全部よ」
「そ……それは」
「出来ないの? 殺人の証拠でも入ってるのかしら?」
デイパックを貸すことを渋るケロロだったが、てゐの誤解を解くためにデイパックを差し出さざるを得なかった。
レア物のガンプラを取られてしまうかもしれない、そう考えただけでもケロロはゾッとする。
そして、てゐは差し出された道具とデイパックの中身を確認する。
一つ、思わず大きな溜息をこぼす。
ケロロが持っていた支給品は思っていたより遥かに下の内容だった。
価値の分かるものにとっては生唾物の物体だったとしても。
てゐにとってはただのガラクタの塊でしかなかった。
そして、てゐはガンプラの箱を。
叩きつけるように勢い良く投げ捨てた。
「あなた、ふざけてるの?
もうちょっとマシなものがあるでしょ? 隠し持ってるんじゃないの? ねえ?」
てゐは勢い良くケロロへと詰め寄る。
罵倒の言葉を浴びせ続けるが、ケロロは微動だにしない。
「ねえ、聞いてる? 返事ぐらいしたらどうなのよ!!」
「……せえ」
ついにてゐはケロロの異変に気がつく。
体から発せられる気迫、肌を焼くような威圧感、影を帯びた顔。
先ほどのケロロに存在しなかったものが瞬時に現れた。
しかし、その存在に気がついたときには既に遅く。
「うるせえバッキャロォォォオオオオオオオ!!」
想像もつかないほどの速度で振り抜かれたケロロの拳が、てゐを給食室の入り口まで吹き飛ばす。
突然の事態にてゐは受身を取ることすら間に合わず、コンクリートへと叩きつけられる。
「ぶっ飛ばす、テメーだけはぜってーにぶっ飛ばす!! っていうか許さん! 許さんぜよ!!
ジムを、いやガンプラを粗末に扱いやがってよォォォォ! 覚悟は出来てんだろうなァ?!」
起き上がったてゐの目に映ったのは、悪魔。
憎悪、嫌悪、恨み、ありとあらゆる負の感情の濃い部分を掬っては混ぜ、掬っては混ぜ。
それを繰り返したカタマリが、目の前にいた。
声を上げることすら叶わず、逃げようにも体が言うことを利かず。
ただ、じっとするしか出来なかった。
「ワシのガンプラ壊してェ! タダですむと思ってたらあかんぜェ!? エェ?!」
防御体勢をとるよりも早く、ケロロの拳がてゐの腹部へとめり込む。
無防備な腹部に叩き込まれたその一撃は、瞬く間にてゐの内臓の内容物を逆流させる。
だがそれを吐き出すことすら叶わず、追撃の拳が横に振りぬかれる。
再び大きく吹き飛んだてゐは、叩きつけられた先で口に溜まった物を吐き出す。
給食室では出来るだけ見たくない吐瀉物が、地面にぶちまけられる。
耐え難い激痛がてゐの腹部に残り、彼女を苦しめる。
だが、ケロロはそんなことを歯牙にもかけずにてゐへと近づく。
痛みに悶えている時間は、ない。
激痛を引きずりながら、彼女の至高ははある場所へとたどり着く。
そう、この場所から脱出する手段が彼女にはあるのだ。
彼女が手を伸ばしたのは、大空を駆ける使い捨ての翼。
こんなに短い期間でもう一枚使うとは思ってはいなかったが、背に腹は変えられない。
この翼一枚で命が助かるのならば、使わない理由は無い。
てゐは勢い良く、翼を宙へと放り投げた。
早まった。
と、後悔するのに数秒と掛からなかった。
本来、キメラの翼は室内で使うものではない。
普段の彼女ならそこまで頭が回ったはずなのだが、恐怖が目の前に居る状況にそこまで思考するのは流石に無理だった。
急激に持ち上げられた彼女は、その速度を殺すことなく天井へと頭を打ちつけてしまう。
そしてそのまま、キメラの翼を握り締めたままもう一度地へと落ちていく。
腹部と頭、そして着地による全身へのダメージを抱えながらゆっくりと起き上がろうとする。
が、その時既にケロロは彼女に肉薄していた。
その小さな体からは考えられない力で、ケロロはてゐの襟元を掴む。
そして、そのまま彼女の体を軽々と持ち上げ。
「いっぺん頭冷やして来いやゴルァアアアアアアアアア!!」
そのまま、勢い良く窓の方へと放り投げた。
「こうなったらもう何もかもを許さんッ……!!
片っ端からシバキ倒したらァァァ!!」
彼が持っているのは、ただ一つ。
ガンプラを破壊された恨み、ただそれだけ。
それだけのことなのだが、彼にとっては何よりも大きい理由。
今までに様々な出来事が起こったが、それを優に上書きするほどのショックだった。
ある種の修羅と化した彼は、ゆっくりと学校の中を彷徨い続ける。
恨みを晴らす手段を探すべく、彼は彷徨い続ける。
「野郎共! ガンプラの恨みを思い知れェェイ!! ウルァァァァ!!」
獣が、蠢く。
【C-4/学校内/1日目/正午】
【ケロロ軍曹@ケロロ軍曹】
【状態】ガンプラ破壊によるマジギレモード
【装備】なし
【道具】なし
【思考】
0:こんな世界、焦土にしてやらぁ……!!
※キレて暴れている所為で、いろいろなことを失念しています。
※ピカチュウ、キラーパンサー、オカリナをゲームに乗ったと誤解しています(名前は知らない)
※ピカチュウ、キラーパンサーの言葉は通じないようです。他は不明。
※キュウビに宇宙人の協力者がいるか、キュウビ自身が宇宙人であると考えています。
※会場の施設は、全て人間が以前使用していた物と考えています。
※ぼのぼのと情報交換をしました。
※給食室に、加藤清澄@バキの死体があります。
※給食室の加藤清澄を重要人物と考えています。
「さーて、死に損ないクンのグッド根性に答えてあげるタメにオイラは早く行かなくっちゃア」
楽俊から生体マグネタイトを抜き去り、颯爽と部屋を立ち去ったケットシーは次の目的地へと向かう。
傷ついた死にかけの男がいると言われた、学校を目指して歩いている。
生体マグネタイトを得られるのがほぼ確定的な状況が迫っていることを考え、思わず足取りが軽くなる。
「そういえば、オイラ学校って聞いたことあるゼー!」
そう、学校という施設の話はケットシー自身の目でも見たことがある。
魔神皇ハザマが魔界へと飲み込んだ施設、それが学校。
嘗ての主人はそこで「ベンキョウ」ということをしていたらしい。
他にも「ブカツドウ」だとか、「ウンドウカイ」とかいうこともやっていたらしい。
しかし、ケットシーの主人は「キタクブ」だったから「ブカツドウ」はやったことがなかったらしい。
そんな話を友達のジャックフロストがしているのを隣で聞いていたのをふと思い出す。
「ま、今そんなことやってるシュガーなやつなんてイナイだろうけどさ」
学校のことを喋る主人は、あまり楽しそうではなかった。
自分は主人と交渉する前も、それなりにイキイキした生活を過ごしていた。
特に不自由も無かったし、時々襲われることはあってもそこまでの不満は無かった。
しかし、主人は違った。
「学校」のことを話すときは、操られた人形のような目をしていたのだ。
口を開いても殆ど不満、愚痴、嫉妬ばかり。
ケットシーはその時に疑問に思っていたのだ。
なぜ、そこまで不満を抱えながらも「学校」という場所に行き続けたのか?
彼はどんな気持ちで、「学校」という場所で生きていたのか?
不満があるなら抜け出せばいい、欲しいものは奪えばいい。
それが当然だったケットシーには、主人の行動と気持ちが理解できずにいた。
結局、その答えを知ることは叶わなかったのだが。
「たった一度の人生、もっとハッピーにいかなきゃソンだぜー?
タダでさえシケてるんだから。ちょっとでも楽しい方が特に決まってるよーっ」
そうだ、形はどうあれ折角助かった命なのだ。
もう一度ぐらい一生を謳歌しても、誰にも文句を言われる筋合いなど無い。
自分のやりたいようにやり、楽しく過ごす。
ケットシーが考えているのは、たったそれだけのことだ。
「オイラのガラでもないねー。独り言なんて、さ」
激痛。
彼女の体と精神を苦しめ続けるたった一つの要因。
ケロロの怒りの拳が叩き込まれた腹部。
窓を突き破るときに出来た全身の裂傷。
そして、着地に失敗した際に砕けた足の骨。
その全てが彼女を苦しめ続ける。
両腕に突き刺さったガラス片を、手で抜ける範囲一個ずつ抜いていく。
ガラス片が抜けるたびに、激痛と奇妙な感覚が彼女を襲う。
しかし、刺さったままではろくに動かすことも出来ない。
痛みを堪えながら、抜かざるを得ないのだ。
ガラス片一個にとても時間をかけながら、彼女は一個ずつ抜いていく。
平常心。
それを保つことで手一杯だった。
事を見誤れば死に直結するこの場だからこそ、平常心が重要である。
ガラス片を抜き終わった後に、傷口へと傷薬を塗っていく。
傷薬が染み渡る感覚にもう一度悶えそうになるが、必死で耐え抜く。
汗をたらしながら、傷薬を全身へと塗っていく。
少しずつ、痛みが引いていくのが分かる。
ガラス片が刺さっていたところから感じていた焼けるような感覚は次第に弱まっていく。
だが、折れた骨は戻らない。
腕、腰、足。失敗した着地が招いた骨折はほぼ全身に及んでいた。
これでは走るどころか歩くことすらままならない。
だが歩くことが出来なくとも、今の彼女には逃げる手段がある。
そう、キメラの翼だ。
先ほどは室内で使ったため、頭を打ちつけるだけで終わってしまった。
が、ケロロが態々室外まで投げ飛ばしてくれたお陰で使うことが出来る。
これでもう一度どこか適当な場所に逃げ、その先で助けを求めればいい。
チャンスはまだ二回ある。次使ってダメならもう一度使えばいい。
骨が治るまでは、どこかのお人よしに匿って貰うとしよう。
ここで、ぼうっとしていれば。またケロロに襲われるかもしれないのだから。
そうして、キメラの翼を取り出そうとしたとき。
彼女の耳に一つの声が入りこむ。
「うっひょー! アンタ! そう、そこのアンタ!」
声のする方角を向くと、靴を履いた小さな猫が立っていた。
見る限り危害はなさそうに思えるが、最大限の警戒を怠らずに行う。
「あれ、そういえば男って聞いてたけど……ま、いっか。じゃあ、早速頂いちゃうぜ~?」
頂く? 何を?
一瞬の思考が命取りであった。
即座に猫は、笑顔で筒状の物をてゐへと突きつける。
それに反応するようにてゐはキメラの翼を取り出し、空へと放り投げようとする。
だが、間に合わない。
猫が突きつけた筒状の物が兎には大きすぎる音を立てたかと思うと、激痛の後に自分の体が一切言う事を聞かなくなったからだ。
小指一本として、ピクリとも動かない。
筒だ、筒から何か弾が発せられた。
てゐがそれを見抜いた頃には、もう一発の音が筒から発せられていた。
てゐの敗因は、選択ミスだった。
相手の弱点を握ったことを生かし、自分が有利に立とうと思うが故に道を踏み外した。
彼女自身は間違った行動をしたつもりはなかったのだが、結果としてそれは最悪の一手であった。
最初にてゐが名乗っていればこうはならなかった。
ケロロを脅すのではなく、最初から友好的に話しかけて自己紹介を済ませていれば。
安全、かつ確実に操れたというのに。
それを知ることも無く。
脳天に大きな穴を空け。
彼女は、因幡てゐは。
死んだ。
&color(red){【因幡てゐ@東方project 死亡確認】}
&color(red){【残り 24匹】}
「うーん、ラッキーラッキー。オイラはヒジョーに運がいい! すなわちグッドラック!」
たった今、ケットシーが銃殺したのは「妖怪」だ。
ただの動物であるシロや、楽俊とは違い、存在的には「悪魔」に近い。
向こう半日、長くて一日は過ごせそうなほどの大量の生体マグネタイトが、てゐの体から吸い取ることが出来た。
そしててゐが持っていたデイパックには大量の道具が詰められていた。
シロ、楽俊とハズレを引いてきたケットシーだったが。今回の収穫は十分過ぎた。
「ワザワザ歩いてきて、本当正解だったぜー。サンキューサンキュー」
そして、てゐの持っているアイテムの説明書を読み漁る。
「空が飛べる……翼?」
ケットシーが目をつけたのは、オキュペテーやケライノーの物のような一枚の翼。
それを空に放り投げるだけで、どこかへ飛ぶことが出来るらしい。
「ヤッホーゥ! これって超グッドなアイテムじゃん?! オイラってホントに運がいい!」
もし風雲再起のような参加者にまた襲われたとしても、これを使えば逃げられる。
ある程度の無茶を行っても、確実に逃げられる手段という彼にとって大きな保険が出来た。
てゐから得たマグネタイトで最後まで生き残るのは厳しいだろう。
更にマグネタイトを集めに行くのも良い、ここらで何か別のことをしてみるのもいい。
ケットシーは次の一手をどうするか、思考し始めた。
折角のもう一度貰った命だ。
もっと楽しんで行こうじゃないか。
自由に行こうぜ? 自由に。
「ヒーホーッ!! オイラ、サイッコーにハッピーッ!!」
【C-4/学校舎前/1日目/正午】
【ケットシー@真女神転生if...】
【状態】:疲労(小) 、帽子なし
【装備】:まぼろしのてぶくろ@MOTHER3 、デザートイーグル@真女神転生if...(コロナショット@真女神転生if...(12発))
【所持品】:支給品一式、和道一文字@ワンピース、雷の石@ポケットモンスター、拡声器、折れたシャムシール@真女神転生if...、
巨大キノコ@スーパーマリオシリーズ、グリードアイランドカード(追跡)@HUNTER×HUNTER 、
ケットシーの帽子@真女神転生if...、フィジカルミラー@ペルソナ3、カマンベールチーズ@現実
ヒョウヘンダケ×3@ぼのぼの、キメラのつばさ*2@DQ5、伝説の剣のルビー@ハーメルンのバイオリン弾き
エルルゥの毒薬@うたわれるもの(テクヌプイの香煙×5、ネコンの香煙×5、紅皇バチの蜜蝋×5、ケスパゥの香煙×5)
【思考】
基本:生き残る。ゲームに乗るかキュウビに逆らうかは他の参加者をよく確かめてからにする
1:とりあえず、適当にうろつく。
2:余裕があれば首輪の解除をする。
【備考】
※雷の石をマハジオストーン@真女神転生if...と勘違いしています
※まぼろしのてぶくろを防具と勘違いしています。拡声器を攻撃アイテムと勘違いしています。
※魔法の制限の可能性に気づきました
※グリードアイランドカードの使用法を聞きました
※オカリナ、ヒグマの大将、グレッグル、ミュウツーの情報を聞きました
※帽子をかぶった猫のことを自分のこととは思っていません。
※カマンベールチーズは楽俊に支給された食料です。
※ニンジン×20がてゐの死体のデイパックに入っています。
*時系列順で読む
Back:[[Raccoon Over The Castle]] Next:[[風は悽愴]]
*投下順で読む
Back:[[SPIRITs away]] Next:[[驟り雨]]
|088:[[白い兎は歌う]]|因幡てゐ|&color(red){死亡}|
|088:[[白い兎は歌う]]|ケロロ軍曹||
|084:[[Four Piece of History]]|ケットシー||
*でもそれは大きなミステイク ◆EwVLYtcCbD23
「ねえ、誰かい――きゃ、きゃあああああああああ!?」
「ぎぃいいいいやぁああああああああああ!!」
てゐが足を踏み入れたと同時に、男は大声を上げながら豪快にすっ転んだ。
そのシルエットはまさしく、先ほどまで一緒にいたギロロと同じ姿。
「いぃやぁああああああ!! 神様仏様ミジャグジ様マーラ様ぁあああ!! 我輩が悪かったでありますよぉおおお!!」
「ちょ、ちょっと待ってよ。何も獲って食べやしないって」
てゐの姿を目視すると同時にギロロと同じ姿のカエル男が暴れだす。
突然の事態にてゐの反応も僅かに遅れ、後手に回る形になってしまった。
「いーーやーー!! まだ死にたくないでありますぅ! 完成させてないガンプラとかー!! 冷蔵庫のおやつとかあるしーー!!」
「だからさ、ちょっとはこっちの話も聞いてくれてもよくない?」
ともかく、会話を成立させるためにカエル男を落ち着かせるのが最優先である。
歩み寄って会話を試みたが、カエル男はすごい勢いで飛び退きながら分けの分からないことを口にしている。
「うーーのーー!! そりゃ一番になるって言ったけどぉおおおおお!! ホットブロットファイバーでぇええええええ?!」
「いい加減にしろッ!」
一発。
ついにてゐの拳がカエル男の頭上に振り落とされた。
鈍い音を立て、同時にカエル男の頭が地へと沈む。
「……ッ痛うう」
「ちょっとは落ち着いた? ったく、そんなんじゃあこの先いくつ命があっても足りないわよ?」
頭を抱えながら、カエル男はゆっくりと起き上がってくる。
そしててゐを睨みながら、素早く人差し指を突きつけて訴える。
「何するでありますか! いきなり殴るなんて! ひどい! 人でなし!」
「何よ! あんたが勝手に一人で狂ってたのが悪いんでしょ?!」
それに、私は元々人じゃないけど?」
「へあ? いや、でも、どう見てもウサ耳をつけたコスプレの……」
分けの分からないことを言っているカエル男を適当にあしらいながら、てゐは心の中で微笑む。
思ったとおりの小心者だ、こちらが握っている情報がなくても簡単に転がせそうなタイプである。
こいつにどんな情報を仕込み、そしてどのように使ってやろうか?
「ってぇ?! 無視ィ?!」
未だに激昂しているカエル男の叫びにより、てゐの思考は中断される。
「お、おのれー! ムキィーッ!! このガマ星雲第58番惑星 宇宙侵攻軍特殊先行工作部隊隊長ことケロロ軍曹を無視するとはいい度胸でありますな!」
カエル男……ケロロの気は晴れないらしく、怒りの感情をてゐへとぶつけ続けている。
「大体ィ! 挨拶もなしにいきなり入ってきたと思えばいきなり我輩を殴りつけるしィ! 一体全体どういう神経のぉ!? チョーあり得ないって言うかー?!」
「あらそう? 人殺しに神経がおかしいだなんて言われたくないけどね」
氷柱の様に冷たく尖ったてゐの一言を受け、ケロロの表情が瞬間的に青ざめていくのが分かる。
当たりの感覚を確かめ、てゐは心の中で笑う。
「入り口で男の人が倒れてるのを見たわ。どうせあなたがやったんでしょ?」
「ち、違うであります! た、ただ我輩は彼にその……」
予想通りの反応だ。
頭の中で構築していたシミュレーション通りのシナリオが今、目の前で描かれている。
「あら、違うの? ひょっとして果たすべき責任とやらのことかしら?」
どうしてそれを知っている。ケロロの顔はそう言わんばかりの表情で固められていた。
主導権を完全に我が物にしたてゐは、自分が描いたシナリオ通りに駒を進める。
「ま、それはともかく男に布がかぶせてあったところを見ると、彼が死んでいることをごまかそうとしたのかしら?
彼を治療するつもりが治療を間違えたか、もしくは既に死んでいたか。
あたりに散らばっている薬品からすると、そのどちらともとれるわね」
「そ、そうであります! 我輩は、彼を治療しようと思って……」
弁明を始めるケロロをよそに、てゐは一本のビンを拾い上げる。
「治療? ハナから殺すつもりだったんじゃないの?」
「な、何を!」
拾い上げた一本のビンをケロロへと突きつけ、てゐは冷たく言い放つ。
「この、毒薬を使ってね」
「そ、そんな。そんなハズがないであります! だって、このビンは以前夏実殿に……」
「ビンだけで判断したの?」
頷くケロロを相手に、小さく溜息をつく。
「これは毒薬よ」
勿論、ハッタリだ。
月の頭脳を持つ訳でもない彼女が、薬学などに精通しているわけもない。
傷薬と毒薬を見分ける術等持っているはずもないのだ。
だが、それでいい。今の状況はそれでいいのだ。
今は、とにかくケロロを揺さぶることが目的。
「傷薬と同じビンに入れておけばバレないとでも思った? このタイプの毒薬は無色透明だけど、僅かに臭いがするのよ。
それを傷だらけの人間にかければ、それこそひとたまりもないわよ」
ケロロは動かない。
ただ、自分がしていたことが正しかったのか、間違いだったのか。
それが分からず、口を閉じては開き、目を見開いていた。
「あなた、ビンの中身が毒だって知ってたんじゃないの?」
少し畳み掛けすぎたか、ケロロにはてゐの言葉は届かないようだ。
ケロロの今までの言動、そして今の状況からてゐはケロロの有用性を推測する。
まず、ギロロとは違い戦闘面では期待できそうには無い。
もし超絶な戦闘力を持っていたとしても、この様子では正面切って戦うということもしないだろう。
自分を守ってくれることも、誰かを潰してくれることも無いだろう。
ここで有用性の大半が失われる。
簡単に殺せそうなカエルのためにわざわざ労力を割く事も無い。
引き出せそうな情報を引き出し、貢がせるだけ貢がせてその場を去る。
そしてケロロという人物の悪評を撒き散らし、誰かに殺してもらう。
それが最善の手であると考え、てゐは次のカードを切る。
「ともかく、貴方は信用できない。そして貴方が人殺しである可能性も捨てきれない。
だから、ここは逃げることにするわ。貴方がどんな武器を隠し持っているのかも分からないし。
あの男みたいに死にたくもないしね」
「ま、待つであります!」
ここで引き止められるのもてゐの計画通り。
相手は「自分が殺人者であることを広められたくない」のである。
誤解を抱いたまま自分が居なくなれば、それを広められるのは確実。
相手としては、それだけは食い止めたいはずだ。
「違う、違うであります。我輩は、我輩は人殺しなんて、やってないであります!!」
「じゃあ、どんな手段を使ってもいいから私を信用させてみてよ」
カードは切った。
もしケロロが何か有用な情報を持っていれば持っているほど、払い出しは大きい。
何も持っていなかったとしても、彼女の損失は少ない。
どちらにせよ、悪評をばら撒くことを止める気など毛頭ないのだから。
「そうね、まずはあなたの支給品が一体なんなのか見せてもらえる? 今持ってるものを含めて、全部、全部よ」
「そ……それは」
「出来ないの? 殺人の証拠でも入ってるのかしら?」
デイパックを貸すことを渋るケロロだったが、てゐの誤解を解くためにデイパックを差し出さざるを得なかった。
レア物のガンプラを取られてしまうかもしれない、そう考えただけでもケロロはゾッとする。
そして、てゐは差し出された道具とデイパックの中身を確認する。
一つ、思わず大きな溜息をこぼす。
ケロロが持っていた支給品は思っていたより遥かに下の内容だった。
価値の分かるものにとっては生唾物の物体だったとしても。
てゐにとってはただのガラクタの塊でしかなかった。
そして、てゐはガンプラの箱を。
叩きつけるように勢い良く投げ捨てた。
「あなた、ふざけてるの?
もうちょっとマシなものがあるでしょ? 隠し持ってるんじゃないの? ねえ?」
てゐは勢い良くケロロへと詰め寄る。
罵倒の言葉を浴びせ続けるが、ケロロは微動だにしない。
「ねえ、聞いてる? 返事ぐらいしたらどうなのよ!!」
「……せえ」
ついにてゐはケロロの異変に気がつく。
体から発せられる気迫、肌を焼くような威圧感、影を帯びた顔。
先ほどのケロロに存在しなかったものが瞬時に現れた。
しかし、その存在に気がついたときには既に遅く。
「うるせえバッキャロォォォオオオオオオオ!!」
想像もつかないほどの速度で振り抜かれたケロロの拳が、てゐを給食室の入り口まで吹き飛ばす。
突然の事態にてゐは受身を取ることすら間に合わず、コンクリートへと叩きつけられる。
「ぶっ飛ばす、テメーだけはぜってーにぶっ飛ばす!! っていうか許さん! 許さんぜよ!!
ジムを、いやガンプラを粗末に扱いやがってよォォォォ! 覚悟は出来てんだろうなァ?!」
起き上がったてゐの目に映ったのは、悪魔。
憎悪、嫌悪、恨み、ありとあらゆる負の感情の濃い部分を掬っては混ぜ、掬っては混ぜ。
それを繰り返したカタマリが、目の前にいた。
声を上げることすら叶わず、逃げようにも体が言うことを利かず。
ただ、じっとするしか出来なかった。
「ワシのガンプラ壊してェ! タダですむと思ってたらあかんぜェ!? エェ?!」
防御体勢をとるよりも早く、ケロロの拳がてゐの腹部へとめり込む。
無防備な腹部に叩き込まれたその一撃は、瞬く間にてゐの内臓の内容物を逆流させる。
だがそれを吐き出すことすら叶わず、追撃の拳が横に振りぬかれる。
再び大きく吹き飛んだてゐは、叩きつけられた先で口に溜まった物を吐き出す。
給食室では出来るだけ見たくない吐瀉物が、地面にぶちまけられる。
耐え難い激痛がてゐの腹部に残り、彼女を苦しめる。
だが、ケロロはそんなことを歯牙にもかけずにてゐへと近づく。
痛みに悶えている時間は、ない。
激痛を引きずりながら、彼女の至高ははある場所へとたどり着く。
そう、この場所から脱出する手段が彼女にはあるのだ。
彼女が手を伸ばしたのは、大空を駆ける使い捨ての翼。
こんなに短い期間でもう一枚使うとは思ってはいなかったが、背に腹は変えられない。
この翼一枚で命が助かるのならば、使わない理由は無い。
てゐは勢い良く、翼を宙へと放り投げた。
早まった。
と、後悔するのに数秒と掛からなかった。
本来、キメラの翼は室内で使うものではない。
普段の彼女ならそこまで頭が回ったはずなのだが、恐怖が目の前に居る状況にそこまで思考するのは流石に無理だった。
急激に持ち上げられた彼女は、その速度を殺すことなく天井へと頭を打ちつけてしまう。
そしてそのまま、キメラの翼を握り締めたままもう一度地へと落ちていく。
腹部と頭、そして着地による全身へのダメージを抱えながらゆっくりと起き上がろうとする。
が、その時既にケロロは彼女に肉薄していた。
その小さな体からは考えられない力で、ケロロはてゐの襟元を掴む。
そして、そのまま彼女の体を軽々と持ち上げ。
「いっぺん頭冷やして来いやゴルァアアアアアアアアア!!」
そのまま、勢い良く窓の方へと放り投げた。
「こうなったらもう何もかもを許さんッ……!!
片っ端からシバキ倒したらァァァ!!」
彼が持っているのは、ただ一つ。
ガンプラを破壊された恨み、ただそれだけ。
それだけのことなのだが、彼にとっては何よりも大きい理由。
今までに様々な出来事が起こったが、それを優に上書きするほどのショックだった。
ある種の修羅と化した彼は、ゆっくりと学校の中を彷徨い続ける。
恨みを晴らす手段を探すべく、彼は彷徨い続ける。
「野郎共! ガンプラの恨みを思い知れェェイ!! ウルァァァァ!!」
獣が、蠢く。
【C-4/学校内/1日目/正午】
【ケロロ軍曹@ケロロ軍曹】
【状態】ガンプラ破壊によるマジギレモード
【装備】なし
【道具】なし
【思考】
0:こんな世界、焦土にしてやらぁ……!!
※キレて暴れている所為で、いろいろなことを失念しています。
※ピカチュウ、キラーパンサー、オカリナをゲームに乗ったと誤解しています(名前は知らない)
※ピカチュウ、キラーパンサーの言葉は通じないようです。他は不明。
※キュウビに宇宙人の協力者がいるか、キュウビ自身が宇宙人であると考えています。
※会場の施設は、全て人間が以前使用していた物と考えています。
※ぼのぼのと情報交換をしました。
※給食室に、加藤清澄@バキの死体があります。
※給食室の加藤清澄を重要人物と考えています。
「さーて、死に損ないクンのグッド根性に答えてあげるタメにオイラは早く行かなくっちゃア」
楽俊から生体マグネタイトを抜き去り、颯爽と部屋を立ち去ったケットシーは次の目的地へと向かう。
傷ついた死にかけの男がいると言われた、学校を目指して歩いている。
生体マグネタイトを得られるのがほぼ確定的な状況が迫っていることを考え、思わず足取りが軽くなる。
「そういえば、オイラ学校って聞いたことあるゼー!」
そう、学校という施設の話はケットシー自身の目でも見たことがある。
魔神皇ハザマが魔界へと飲み込んだ施設、それが学校。
嘗ての主人はそこで「ベンキョウ」ということをしていたらしい。
他にも「ブカツドウ」だとか、「ウンドウカイ」とかいうこともやっていたらしい。
しかし、ケットシーの主人は「キタクブ」だったから「ブカツドウ」はやったことがなかったらしい。
そんな話を友達のジャックフロストがしているのを隣で聞いていたのをふと思い出す。
「ま、今そんなことやってるシュガーなやつなんてイナイだろうけどさ」
学校のことを喋る主人は、あまり楽しそうではなかった。
自分は主人と交渉する前も、それなりにイキイキした生活を過ごしていた。
特に不自由も無かったし、時々襲われることはあってもそこまでの不満は無かった。
しかし、主人は違った。
「学校」のことを話すときは、操られた人形のような目をしていたのだ。
口を開いても殆ど不満、愚痴、嫉妬ばかり。
ケットシーはその時に疑問に思っていたのだ。
なぜ、そこまで不満を抱えながらも「学校」という場所に行き続けたのか?
彼はどんな気持ちで、「学校」という場所で生きていたのか?
不満があるなら抜け出せばいい、欲しいものは奪えばいい。
それが当然だったケットシーには、主人の行動と気持ちが理解できずにいた。
結局、その答えを知ることは叶わなかったのだが。
「たった一度の人生、もっとハッピーにいかなきゃソンだぜー?
タダでさえシケてるんだから。ちょっとでも楽しい方が特に決まってるよーっ」
そうだ、形はどうあれ折角助かった命なのだ。
もう一度ぐらい一生を謳歌しても、誰にも文句を言われる筋合いなど無い。
自分のやりたいようにやり、楽しく過ごす。
ケットシーが考えているのは、たったそれだけのことだ。
「オイラのガラでもないねー。独り言なんて、さ」
激痛。
彼女の体と精神を苦しめ続けるたった一つの要因。
ケロロの怒りの拳が叩き込まれた腹部。
窓を突き破るときに出来た全身の裂傷。
そして、着地に失敗した際に砕けた足の骨。
その全てが彼女を苦しめ続ける。
両腕に突き刺さったガラス片を、手で抜ける範囲一個ずつ抜いていく。
ガラス片が抜けるたびに、激痛と奇妙な感覚が彼女を襲う。
しかし、刺さったままではろくに動かすことも出来ない。
痛みを堪えながら、抜かざるを得ないのだ。
ガラス片一個にとても時間をかけながら、彼女は一個ずつ抜いていく。
平常心。
それを保つことで手一杯だった。
事を見誤れば死に直結するこの場だからこそ、平常心が重要である。
ガラス片を抜き終わった後に、傷口へと傷薬を塗っていく。
傷薬が染み渡る感覚にもう一度悶えそうになるが、必死で耐え抜く。
汗をたらしながら、傷薬を全身へと塗っていく。
少しずつ、痛みが引いていくのが分かる。
ガラス片が刺さっていたところから感じていた焼けるような感覚は次第に弱まっていく。
だが、折れた骨は戻らない。
腕、腰、足。失敗した着地が招いた骨折はほぼ全身に及んでいた。
これでは走るどころか歩くことすらままならない。
だが歩くことが出来なくとも、今の彼女には逃げる手段がある。
そう、キメラの翼だ。
先ほどは室内で使ったため、頭を打ちつけるだけで終わってしまった。
が、ケロロが態々室外まで投げ飛ばしてくれたお陰で使うことが出来る。
これでもう一度どこか適当な場所に逃げ、その先で助けを求めればいい。
チャンスはまだ二回ある。次使ってダメならもう一度使えばいい。
骨が治るまでは、どこかのお人よしに匿って貰うとしよう。
ここで、ぼうっとしていれば。またケロロに襲われるかもしれないのだから。
そうして、キメラの翼を取り出そうとしたとき。
彼女の耳に一つの声が入りこむ。
「うっひょー! アンタ! そう、そこのアンタ!」
声のする方角を向くと、靴を履いた小さな猫が立っていた。
見る限り危害はなさそうに思えるが、最大限の警戒を怠らずに行う。
「あれ、そういえば男って聞いてたけど……ま、いっか。じゃあ、早速頂いちゃうぜ~?」
頂く? 何を?
一瞬の思考が命取りであった。
即座に猫は、笑顔で筒状の物をてゐへと突きつける。
それに反応するようにてゐはキメラの翼を取り出し、空へと放り投げようとする。
だが、間に合わない。
猫が突きつけた筒状の物が兎には大きすぎる音を立てたかと思うと、激痛の後に自分の体が一切言う事を聞かなくなったからだ。
小指一本として、ピクリとも動かない。
筒だ、筒から何か弾が発せられた。
てゐがそれを見抜いた頃には、もう一発の音が筒から発せられていた。
てゐの敗因は、選択ミスだった。
相手の弱点を握ったことを生かし、自分が有利に立とうと思うが故に道を踏み外した。
彼女自身は間違った行動をしたつもりはなかったのだが、結果としてそれは最悪の一手であった。
最初にてゐが名乗っていればこうはならなかった。
ケロロを脅すのではなく、最初から友好的に話しかけて自己紹介を済ませていれば。
安全、かつ確実に操れたというのに。
それを知ることも無く。
脳天に大きな穴を空け。
彼女は、因幡てゐは。
死んだ。
&color(red){【因幡てゐ@東方project 死亡確認】}
&color(red){【残り 24匹】}
「うーん、ラッキーラッキー。オイラはヒジョーに運がいい! すなわちグッドラック!」
たった今、ケットシーが銃殺したのは「妖怪」だ。
ただの動物であるシロや、楽俊とは違い、存在的には「悪魔」に近い。
向こう半日、長くて一日は過ごせそうなほどの大量の生体マグネタイトが、てゐの体から吸い取ることが出来た。
そしててゐが持っていたデイパックには大量の道具が詰められていた。
シロ、楽俊とハズレを引いてきたケットシーだったが。今回の収穫は十分過ぎた。
「ワザワザ歩いてきて、本当正解だったぜー。サンキューサンキュー」
そして、てゐの持っているアイテムの説明書を読み漁る。
「空が飛べる……翼?」
ケットシーが目をつけたのは、オキュペテーやケライノーの物のような一枚の翼。
それを空に放り投げるだけで、どこかへ飛ぶことが出来るらしい。
「ヤッホーゥ! これって超グッドなアイテムじゃん?! オイラってホントに運がいい!」
もし風雲再起のような参加者にまた襲われたとしても、これを使えば逃げられる。
ある程度の無茶を行っても、確実に逃げられる手段という彼にとって大きな保険が出来た。
てゐから得たマグネタイトで最後まで生き残るのは厳しいだろう。
更にマグネタイトを集めに行くのも良い、ここらで何か別のことをしてみるのもいい。
ケットシーは次の一手をどうするか、思考し始めた。
折角のもう一度貰った命だ。
もっと楽しんで行こうじゃないか。
自由に行こうぜ? 自由に。
「ヒーホーッ!! オイラ、サイッコーにハッピーッ!!」
【C-4/学校舎前/1日目/正午】
【ケットシー@真女神転生if...】
【状態】:疲労(小) 、帽子なし
【装備】:まぼろしのてぶくろ@MOTHER3 、デザートイーグル@真女神転生if...(コロナショット@真女神転生if...(12発))
【所持品】:支給品一式、和道一文字@ワンピース、雷の石@ポケットモンスター、拡声器、折れたシャムシール@真女神転生if...、
巨大キノコ@スーパーマリオシリーズ、グリードアイランドカード(追跡)@HUNTER×HUNTER 、
ケットシーの帽子@真女神転生if...、フィジカルミラー@ペルソナ3、カマンベールチーズ@現実
ヒョウヘンダケ×3@ぼのぼの、キメラのつばさ*2@DQ5、伝説の剣のルビー@ハーメルンのバイオリン弾き
エルルゥの毒薬@うたわれるもの(テクヌプイの香煙×5、ネコンの香煙×5、紅皇バチの蜜蝋×5、ケスパゥの香煙×5)
【思考】
基本:生き残る。ゲームに乗るかキュウビに逆らうかは他の参加者をよく確かめてからにする
1:とりあえず、適当にうろつく。
2:余裕があれば首輪の解除をする。
【備考】
※雷の石をマハジオストーン@真女神転生if...と勘違いしています
※まぼろしのてぶくろを防具と勘違いしています。拡声器を攻撃アイテムと勘違いしています。
※魔法の制限の可能性に気づきました
※グリードアイランドカードの使用法を聞きました
※オカリナ、ヒグマの大将、グレッグル、ミュウツーの情報を聞きました
※帽子をかぶった猫のことを自分のこととは思っていません。
※カマンベールチーズは楽俊に支給された食料です。
※ニンジン×20がてゐの死体のデイパックに入っています。
*時系列順で読む
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*投下順で読む
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