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「ひとつ火の粉の雨の中」(2013/06/15 (土) 21:28:39) の最新版変更点
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*ひとつ火の粉の雨の中 ◆TPKO6O3QOM
もう、体は地面すれすれを飛行していた。仲間の一人が持っていた、浮遊して移動する板――それと大体同じ高度だろうか。
それを操っていた、愛らしい黄色い仲間はもういない。その板にぶら下がっていた愉快で剛毅な仲間も、もういない。
一人ぼっちだ。虚ろな穴が心に穿たれ、感情がそこから砂のように零れ落ちていく。そのとどまることの無い喪失感は、降り注ぐ雨よりも冷たく体を貫いた。
この苦しみを、あの娘に与えてしまっていたのか。二重の苦しみが胸を締め付ける。
横風に、大きく体が煽られた。
「――てっめえはぁー! 最初に我輩のジムを奪おうとした不届き者その一ィィィィィィィッ!」
怒号が雨音を突き破った。緑色の物体がオカリナの嘴の先を掠めていく。
それは泥水を跳ね飛ばしながら急停止すると、跳ねるようにしてオカリナに向き直った。
緑色の表皮。不恰好な赤ん坊のような体系。黄色い帽子――電波塔で出会った、あの緑色の獣人だ。
疲労のためか、雨風による騒音と視界の悪さのためか。オカリナは彼の接近に気づけなかった。
楽俊との対話の中で、彼との軋轢は誤解であるのではないかとオカリナは考えていた。話せば分かり合える。その可能性は十分あるようにも思えた。
しかし、この雨風では如何なる言葉も彼の耳まで届くまい。そこまで声を張り上げる体力そのものがない。また、彼自体、正気を失っているようだ。全身から怒りと殺気が湯気のように昇りたっている。
時期が悪いのであれば、また出直せばいいだけだ。ただ、そのためには逃げなくてはならない。問題は、それが一番の無理難題であるということだ。
既に翼は鉛の塊のように重い。自分の意思では自由に操ることなど、もう不可能に近いだろう。初撃こそ運よく避けられた形となったが、次からはそうもいくまい。例え凌げたとしても、近い内に必ず捉まる。
捉まれば、そこで終わりだ。
それでも、ここから離れなければ――。
だが、想いとは裏腹に羽ばたきは力を失い、オカリナの小さな体は泥の中に落下した。
緑色の獣人は歓喜とも絶叫とも取れる声を上げた。と、それとは別に微かな振動をオカリナは感じた。
朧気な視界の中で、旋風のごとく疾走してくる影が映る。獣人とオカリナの間に滑り込んだ陰は影は、不安定な足場にも関わらず力強く踏み込むと流れるように脇に構えた棒を振りぬいた。
すぱぁんと小気味良い音を立てて、獣人が打ち倒された。半ばから折れた棒切れが宙を舞う。
「ケロロさーん」
のんびりとした声とワンと言う吼え声が聞こえた。
(二)
大雨の音は、ガッコウの中に入ると余計に大きく感じられた。
カエルさんは、さっきケロロさんとケンカしていた白いカラスさんとお話している。白いカラスさんはオカリナさんというらしい。
オカリナさんはすごく疲れているようで、オオカミさんの額の上にちょこんと蹲ったまま、ほとんど身動きしない。息もどこか苦しそうで、ぼのぼのは不安になる。
カエルさんとオカリナさんはとても難しい話を、難しい顔をして話していた。
「――アマテラスさんの言葉は、最初のときから通じていなかった?」
「そうぼのぼのは言っていたな。楽俊の言う翻訳装置なんてものがあるにしても、少なくともこいつには作用していなかったことになる。始めからな」
「……そうしますと、異世界間で言葉が通じないという事態も可能性は低くなりそうですね」
「そいつは分からんよ。まあ、さっきも言ったが、まず"異世界"という部分が疑問なんだが」
「頑固ですね」
「前にも言われたよ」
「でも、なぜ言葉が通じないんでしょう? 翻訳装置がなかったとしたら」
「こいつが"神"だから……かな。人と獣の言葉が通じないんだ。神なんて更に次元が違うだろう?」
「……魔族と人は言葉が通じますよ」
「それは多分、お互いが思っている程には大きな違いはないんじゃないか? 俺はそう思えるようになってきたよ」
カエルさんは穏やかに言った。今のカエルさんは、一緒にいて安心する。
だけど――と、ぼのぼのはオオカミさんの背に体を預けながら髭をしゅんと垂らした。
カエルさんは、かつてぼのぼのがてゐさんに教えてもらった方法と似たやり方で二人のケンカを止めた。
手早く袋から木の棒を取り出してからのカエルさんの動きは、迅速で無駄がなく、見蕩れてしまうほどだった。
だけど、のびてしまったケロロさんを見下ろすカエルさんは、何故かとても怖かった。
そのカエルさんを止めたのは、オオカミさんの声だった。何を言っているかは分からないけれど、何を言いたいかは分かる。そんな吼え声だった。
今、ケロロさんは、カエルさんの持っていた細長い紐を何本も束ねた物で一本棒みたいに縛られている。
「確かに、人も魔族も変わらないでありますなー。いたいけな我が輩をムチで縛り上げるなどというマニアック――いや、暴虐非道な仕打ちをするし。というか、そんな我が輩を放置して何を気だるい午後的な雰囲気を醸し出しているでありますか!? そんなわけで教育委員会に訴えられたくなければ、この縄を解いてくれなさい」
「どんなわけにしても、殺しにかかってきたものに自由を与えるわけにもいかんだろ」
「その誤解は解けたはずであります!」
「それとは別に、因幡てゐの殺害の疑いも完全に晴れたわけじゃない」
「それは……我が輩自身も確信を持って否定できない痛い所を……」
ケロロさんとオカリナさんのケンカの理由は、オカリナさんの友達の言葉が分からなかったことらしい。それに加えて、オカリナさんの友達の一人はとても怖い顔をしていたんだそうだ。
気絶したケロロさんをオカリナさんが庇った事で、カエルさんも納得した。
だけど、その後ガッコウまで戻ったとき、ぼのぼのは変わり果てたてゐさんと再会した。てゐさんにはコヒグマくんのおとうさんと同じような穴が頭や胴に開いていた。
死んでしまったてゐさんを見て、カエルさんは又怖いカエルさんに戻ってしまった。気絶していたケロロさんを叩き起こし、真偽を問い質した。
目を覚ましたケロロさんは戸惑っていて、てゐさんの死体を確認すると、もごもごと口ごもってしまった。そんなケロロさんに、カエルさんはより怖いカエルさんになった。
ケンカになってしまうのかとぼのぼのは心配したが、ケロロさんが口にした猫と言う言葉にオカリナさんが反応した。ケットシーさんという、危ないネコさんがいると聞いていたらしい。
ケロロさんが口にした特徴は、カエルさんの持っているショウサイメイボにあるケットシーさんのものと一致した。スナドリネコさんをもっと軽薄にした雰囲気のネコさんだ。
ぼのぼのと出会った時にケロロさんがジュウを持っていなかったことと、ケットシーさんがラクシュンさんをジュウで殺したらしいことを知って、カエルさんは少し怖くないカエルさんに戻った。
ガッコウに入り、ニンゲンさんの居た部屋にケロロさんの案内で戻った。ニンゲンさんは死んでしまっていた。今度は穴が開いていなかった。
ニンゲンさんが誰なのか、カエルさんもオカリナさんも知らなかったし、何も分からなかった。ニンゲンさんの死体は、すぐ隣の部屋にまだある。
カエルさんは、雨が止んだら埋めてやろうと言っていた。
「まあまあ。ケロロさんの言い分を信じてあげましょうよ。私は信じてもいいと思ってますよ」
「おお。さすがオカリナ殿。こんな素敵なカラス殿に襲い掛かるなど、後一歩のところでギロロに続いて我が輩まで犯罪行為に手を染めてしまうところでありました!」
「こんな風に縛っておけば一先ず何も出来ませんし」
「………………」
と、ズシンズシンとガッコウが揺れた。地震かとぼのぼのは思った。揺れは段々と大きくなっていく。
ただ、ずっと下から突き上げてくるような揺れではなかった。何か近づいてきたとカエルさんが言った。森を大きなウシさんが通ったときのことを、ぼのぼのは思い出した。
カエルさんと、引きずられたケロロさんが部屋を出て行った。オカリナさんが不安そうに目をしばたたかせた。
「まさか! あれは……ザクⅠ――!?」
ケロロさんの何処か嬉しそうな叫びの直後、周囲が大きな音を立てて崩れた――。
顔に叩きつけられる雨で、ぼのぼのは目を覚ました。
起き上がると、辺りは一変していた。周りには大小様々な瓦礫が転がっている。ガッコウは両端だけ建っていて、真ん中が無くなっていた。
そのガレキの中で、真っ黒い巨人の周りを白い影が躍る様に動き回っていた。火花が雨の中で散る。
オオカミさんだ。オオカミさんの尻尾が振るわれた。巨人の左腕が肘の辺りから斬り飛ばされ、噴き出した血が雨を赤に変える。
絶叫が周囲の空気を振るわせた。
その声には聞き覚えがあった。アライグマくんのお父さんの声だ。姿が全然違ってしまっているが、あの巨人はアライグマくんのお父さんなのだ。
今度は、オオカミさんとアライグマくんのお父さんがケンカをしているのだ。ぼのぼのは周囲を見渡した。ケロロさんもカエルさんもオカリナさんも誰も居ない。ケンカを止められるのは、自分しかいない。
ぼのぼのは傍に落ちていた袋から、変わった石を取り出した。これを刺せば、ケンカを止められるとてゐさんが言っていたのだ。
ぼのぼのはオオカミさんたちに歩き出した。瓦礫の間を通り抜けながら、ぼのぼのは一歩一歩近づいていく。
ぼのぼのに気づいたオオカミさんが駆け寄ってきた。そのすぐ後ろではアライグマくんのお父さんが苦しそうにのたうち回っていた。
オオカミさんは、ぼのぼのを守るようにパッとアライグマくんのお父さんに向き直った。
そのオオカミさんの背中に、ぼのぼのは石を突き立てた。
甲高い声が雨音を切り裂いた。オオカミさんはばたりと倒れて痙攣すると、すぐに動かなくなった。その肢体は見る間にねずみ色に変わり、石のように変わっていく。
「……オオカミさん――?」
ぼのぼのは戸惑いの声を上げた。ふいに周囲が暗くなったようにぼのぼのは感じた。
空を見上げたぼのぼのを、アライグマくんのお父さんの右腕が押しつぶした。
(三)
瓦礫を押しのけて、カエルは立ち上がった。体の節々に痛みが走るが、これでも幸運だったと言うべきだろう。
廊下の窓から見えたのは、こちらに向けて大刀を構えた黒い巨人だった。あんな姿の参加者は載っていなかった為、おそらくはあれが支給品の一つなのだろう。
とっさに身を投げ出した直後に、光芒が校舎を両断した。
立ち上がったカエルは、よろめきながら離れていく巨人の後姿だった。巨人には左腕がない。追い討ちを掛ける好機だが、それをなせるだけの準備も余力もカエルには残っていなかった。
まずは他の四匹の安否の確認だ。一匹はすぐに見つかった。
自分に似た緑色の足が投げ出されている。その上半身には大きな瓦礫がめり込み、周囲に大きな血だまりを作っていた。確認するまでもない。死んでいる。
赤いダルマとはやはり知り合いだったらしいが、結局彼がどういった人物なのか、ほとんど知ることは出来なかった。ただ、少なくとも、手当たり次第に襲い掛かるような愚か者ではないらしいが。
拘束したままであったことが、彼の命を縮めたのかもしれない。対処に後悔はないが、哀れには思う。
やがて、血にまみれた毛皮と肉の塊を見つけた。青い毛皮の一部がかろうじて見て取れる。ぼのぼのだ。奥歯をかみ締める。ぼのぼのの遺体の傍には、粉々砕かれた石のような物が散らばっていた。
追悼の祈りを後回しにし、カエルはオカリナとアマテラスの名を呼んだ。
しばしして、瓦礫の上に丁寧に横たえられたオカリナを見つけた。そっと抱き上げると、しっかりと呼吸しているのが見て取れた。自然と安堵の吐息が漏れる。
ふと、カエルは周囲が今まで以上に暗いことに気づいた。太陽の姿が見えないのは相変わらずだが、それにしても暗すぎる。まだ昼過ぎだというのに、黄昏時のような按配だ。
カエルはオカリナを抱きかかえると、アマテラスを探して移動を開始した。
&color(red){【ケロロ軍曹@ケロロ軍曹 死亡】}
&color(red){【アマテラス@大神 死亡】}
&color(red){【ぼのぼの@ぼのぼの 死亡】}
&color(red){【残り 16匹】}
【C-4/一日目/午後】
【オカリナ@ハーメルンのバイオリン弾き】
【状態】魔力消費(中~大)、疲労(大)、気絶中
【装備】なし
【道具】支給品一式、ミニ八卦炉@東方project、世界の民話、治療用の薬各種、不明支給品0~2個(治療道具ではない)
【思考】
基本:ゲームには載らない。キュウビを倒す……だけどもし――。
1:????????????
2:できるならミニ八卦炉は使いたくない
※参戦時期は死亡後です。
※自分の制限について勘付きました。
※人間と関係ない参加者もいるのではと思っています。
※ケットシーを危険な獣と判断しました。
※治療用の薬の内訳は後の書き手にお任せします。
※オカリナの考察
無意味に思えるアイテムを混ぜて、誰かが参加者に何かを知らせようとしているのではないか。
キュウビ一味は一枚岩ではない。
縁者を人質にとり、殺し合いを強制してくるのではないか。全員ではないにしても、部外者が拘束されている。
※プックルの反論
呪法=殺し合いとは限らない
殺し合いは目くらましかも
※カエル、ケロロとある程度情報交換しました。
※それぞれが違う世界から呼ばれたと気付きました。
※ディアルガ、パルキア、セレビィ等のポケモンや、妖精等の次元や時空を操る存在がキュウビによって捕らえられているかもしれないと考えています。
※この会場にいる獣達は全員人間とかかわりをもつ者だと勘違いしています。
※その間違えた前提を元にキュウビの呪法が人間に対してつかわれるものだと推測しています。
※『世界の民話』に書かれている物語が異世界で実際に起きた出来事なのではと疑っています。ハクオロ@うたわれるもの、ラヴォス@クロノトリガー、野原一家@クレヨンしんちゃん、主人公@ドラゴンクエスト5について書かれていたようです。
【カエル@クロノトリガー】
【状態】:複数の擦り傷・打撲、疲労(小)、魔力消費(小~中)、びしょ濡れ
【装備】:なんでも切れる剣@サイボーグクロちゃん、マントなし
【所持品】:支給品一式(食料:パンと蛙の腿肉料理)、モンスターボール@ポケットモンスター、しらたま@ポケットモンスター 、銀の不明支給品(0~2、確認済)、石火矢の弾丸と火薬の予備×9@もののけ姫 、マハラギストーン×3@真・女神転生if、風雲再起の不明支給品(0~2、確認済)、参加者詳細名簿、ペット・ショップの不明支給品(1~3、確認済)、スピーダー@ポケットモンスター×6、ユーノのメモ
【思考】
基本:キュウビに対抗し、殺し合いと呪法を阻止する
1:アマテラスを探す。
2:ニャースの捜索。
3:ギロロにあったら話をつけて誤解を解く。
4:余裕があれば鍾乳洞内を調べる。
※オカリナ、ケロロとある程度情報交換しました。
※異世界から参加者は集められたという説を知りました。
※参加者は同一世界の違う時間軸から集められたと考えています。
※天容の笛@忍ペンまん丸、しらたま@ポケットモンスターとパルキア@ポケットモンスターの存在を知りました。
※ペット・ショップ、ミュウツー、クロコダイン、クロ、チョッパー、ケットシー、因幡てゐ、ラルク、ムックルを危険ないし要警戒と認識しました。
※ログハウスの下にある鍾乳洞は抜け道のようなものと推測しています。
※死者の読み上げが、死亡した順番であることに気付きました。
※アマテラスがオープニングの時点で意思疎通が出来なかったことを知っています。
※制限に気が付きました。
※回復魔法の効果の発現が遅くなっています。しかし、本人は回復魔法の効果がなくなっているかもと思っています。
※アマテラスが死んだことに気づいていません。
【アライグマの父@ぼのぼの】
【状態】:頭部に怪我、尻尾に切創(止血)、疲労(中)、軽度の貧血、激痛による錯乱、アヴ・カムゥ内
【装備】:アヴ・カムゥ@うたわれるもの、アヴ・カムゥ専用の長刀@うたわれるもの、デイバッグ
【所持品】:地図、空飛ぶ靴@DQ5、魔除けの札@大神
【思考】
基本:全員を始末して、仇を取る。
1:??????????
【備考】
※札は少し湿っています。
※アイテムの説明は読んでいません。
※イギーと情報交換をしました。
※空飛ぶ靴は遊園地の入り口前が指定されていました。
※B-1からA-2の遊園地入り口までの間にアライグマの父の支給品が落ちている可能性があります。
※空を飛んだ時、月が地上よりも大きく見える気がしました。
※ボニーの考察は獣の卍参照。
※デイバッグは、コクピット内のアライグマの父が背負っています。
※第二回放送の内容を、アライグマが死んだこと以外聞いていません。
※アヴ・カムゥの左腕がなくなっています。
※太陽の光が著しく弱まりました。
*時系列順で読む
Back:[[空が別れを告げている]] Next:[[未完成の自画像]]
*投下順で読む
Back:[[空が別れを告げている]] Next:[[未完成の自画像]]
|097:[[雨の降る昼、いったいどうする]]|ぼのぼの|&color(red){死亡}|
|097:[[雨の降る昼、いったいどうする]]|アマテラス|&color(red){死亡}|
|097:[[雨の降る昼、いったいどうする]]|カエル||
|099:[[蛙人乱れし修羅となりて]]|ケロロ軍曹|&color(red){死亡}|
|101:[[空が別れを告げている]]|オカリナ||
|101:[[空が別れを告げている]]|アライグマの父||
*ひとつ火の粉の雨の中 ◆TPKO6O3QOM
もう、体は地面すれすれを飛行していた。仲間の一人が持っていた、浮遊して移動する板――それと大体同じ高度だろうか。
それを操っていた、愛らしい黄色い仲間はもういない。その板にぶら下がっていた愉快で剛毅な仲間も、もういない。
一人ぼっちだ。虚ろな穴が心に穿たれ、感情がそこから砂のように零れ落ちていく。そのとどまることの無い喪失感は、降り注ぐ雨よりも冷たく体を貫いた。
この苦しみを、あの娘に与えてしまっていたのか。二重の苦しみが胸を締め付ける。
横風に、大きく体が煽られた。
「――てっめえはぁー! 最初に我輩のジムを奪おうとした不届き者その一ィィィィィィィッ!」
怒号が雨音を突き破った。緑色の物体がオカリナの嘴の先を掠めていく。
それは泥水を跳ね飛ばしながら急停止すると、跳ねるようにしてオカリナに向き直った。
緑色の表皮。不恰好な赤ん坊のような体系。黄色い帽子――電波塔で出会った、あの緑色の獣人だ。
疲労のためか、雨風による騒音と視界の悪さのためか。オカリナは彼の接近に気づけなかった。
楽俊との対話の中で、彼との軋轢は誤解であるのではないかとオカリナは考えていた。話せば分かり合える。その可能性は十分あるようにも思えた。
しかし、この雨風では如何なる言葉も彼の耳まで届くまい。そこまで声を張り上げる体力そのものがない。また、彼自体、正気を失っているようだ。全身から怒りと殺気が湯気のように昇りたっている。
時期が悪いのであれば、また出直せばいいだけだ。ただ、そのためには逃げなくてはならない。問題は、それが一番の無理難題であるということだ。
既に翼は鉛の塊のように重い。自分の意思では自由に操ることなど、もう不可能に近いだろう。初撃こそ運よく避けられた形となったが、次からはそうもいくまい。例え凌げたとしても、近い内に必ず捉まる。
捉まれば、そこで終わりだ。
それでも、ここから離れなければ――。
だが、想いとは裏腹に羽ばたきは力を失い、オカリナの小さな体は泥の中に落下した。
緑色の獣人は歓喜とも絶叫とも取れる声を上げた。と、それとは別に微かな振動をオカリナは感じた。
朧気な視界の中で、旋風のごとく疾走してくる影が映る。獣人とオカリナの間に滑り込んだ陰は影は、不安定な足場にも関わらず力強く踏み込むと流れるように脇に構えた棒を振りぬいた。
すぱぁんと小気味良い音を立てて、獣人が打ち倒された。半ばから折れた棒切れが宙を舞う。
「ケロロさーん」
のんびりとした声とワンと言う吼え声が聞こえた。
(二)
大雨の音は、ガッコウの中に入ると余計に大きく感じられた。
カエルさんは、さっきケロロさんとケンカしていた白いカラスさんとお話している。白いカラスさんはオカリナさんというらしい。
オカリナさんはすごく疲れているようで、オオカミさんの額の上にちょこんと蹲ったまま、ほとんど身動きしない。息もどこか苦しそうで、ぼのぼのは不安になる。
カエルさんとオカリナさんはとても難しい話を、難しい顔をして話していた。
「――アマテラスさんの言葉は、最初のときから通じていなかった?」
「そうぼのぼのは言っていたな。楽俊の言う翻訳装置なんてものがあるにしても、少なくともこいつには作用していなかったことになる。始めからな」
「……そうしますと、異世界間で言葉が通じないという事態も可能性は低くなりそうですね」
「そいつは分からんよ。まあ、さっきも言ったが、まず"異世界"という部分が疑問なんだが」
「頑固ですね」
「前にも言われたよ」
「でも、なぜ言葉が通じないんでしょう? 翻訳装置がなかったとしたら」
「こいつが"神"だから……かな。人と獣の言葉が通じないんだ。神なんて更に次元が違うだろう?」
「……魔族と人は言葉が通じますよ」
「それは多分、お互いが思っている程には大きな違いはないんじゃないか? 俺はそう思えるようになってきたよ」
カエルさんは穏やかに言った。今のカエルさんは、一緒にいて安心する。
だけど――と、ぼのぼのはオオカミさんの背に体を預けながら髭をしゅんと垂らした。
カエルさんは、かつてぼのぼのがてゐさんに教えてもらった方法と似たやり方で二人のケンカを止めた。
手早く袋から木の棒を取り出してからのカエルさんの動きは、迅速で無駄がなく、見蕩れてしまうほどだった。
だけど、のびてしまったケロロさんを見下ろすカエルさんは、何故かとても怖かった。
そのカエルさんを止めたのは、オオカミさんの声だった。何を言っているかは分からないけれど、何を言いたいかは分かる。そんな吼え声だった。
今、ケロロさんは、カエルさんの持っていた細長い紐を何本も束ねた物で一本棒みたいに縛られている。
「確かに、人も魔族も変わらないでありますなー。いたいけな我が輩をムチで縛り上げるなどというマニアック――いや、暴虐非道な仕打ちをするし。というか、そんな我が輩を放置して何を気だるい午後的な雰囲気を醸し出しているでありますか!? そんなわけで教育委員会に訴えられたくなければ、この縄を解いてくれなさい」
「どんなわけにしても、殺しにかかってきたものに自由を与えるわけにもいかんだろ」
「その誤解は解けたはずであります!」
「それとは別に、因幡てゐの殺害の疑いも完全に晴れたわけじゃない」
「それは……我が輩自身も確信を持って否定できない痛い所を……」
ケロロさんとオカリナさんのケンカの理由は、オカリナさんの友達の言葉が分からなかったことらしい。それに加えて、オカリナさんの友達の一人はとても怖い顔をしていたんだそうだ。
気絶したケロロさんをオカリナさんが庇った事で、カエルさんも納得した。
だけど、その後ガッコウまで戻ったとき、ぼのぼのは変わり果てたてゐさんと再会した。てゐさんにはコヒグマくんのおとうさんと同じような穴が頭や胴に開いていた。
死んでしまったてゐさんを見て、カエルさんは又怖いカエルさんに戻ってしまった。気絶していたケロロさんを叩き起こし、真偽を問い質した。
目を覚ましたケロロさんは戸惑っていて、てゐさんの死体を確認すると、もごもごと口ごもってしまった。そんなケロロさんに、カエルさんはより怖いカエルさんになった。
ケンカになってしまうのかとぼのぼのは心配したが、ケロロさんが口にした猫と言う言葉にオカリナさんが反応した。ケットシーさんという、危ないネコさんがいると聞いていたらしい。
ケロロさんが口にした特徴は、カエルさんの持っているショウサイメイボにあるケットシーさんのものと一致した。スナドリネコさんをもっと軽薄にした雰囲気のネコさんだ。
ぼのぼのと出会った時にケロロさんがジュウを持っていなかったことと、ケットシーさんがラクシュンさんをジュウで殺したらしいことを知って、カエルさんは少し怖くないカエルさんに戻った。
ガッコウに入り、ニンゲンさんの居た部屋にケロロさんの案内で戻った。ニンゲンさんは死んでしまっていた。今度は穴が開いていなかった。
ニンゲンさんが誰なのか、カエルさんもオカリナさんも知らなかったし、何も分からなかった。ニンゲンさんの死体は、すぐ隣の部屋にまだある。
カエルさんは、雨が止んだら埋めてやろうと言っていた。
「まあまあ。ケロロさんの言い分を信じてあげましょうよ。私は信じてもいいと思ってますよ」
「おお。さすがオカリナ殿。こんな素敵なカラス殿に襲い掛かるなど、後一歩のところでギロロに続いて我が輩まで犯罪行為に手を染めてしまうところでありました!」
「こんな風に縛っておけば一先ず何も出来ませんし」
「………………」
と、ズシンズシンとガッコウが揺れた。地震かとぼのぼのは思った。揺れは段々と大きくなっていく。
ただ、ずっと下から突き上げてくるような揺れではなかった。何か近づいてきたとカエルさんが言った。森を大きなウシさんが通ったときのことを、ぼのぼのは思い出した。
カエルさんと、引きずられたケロロさんが部屋を出て行った。オカリナさんが不安そうに目をしばたたかせた。
「まさか! あれは……ザクⅠ――!?」
ケロロさんの何処か嬉しそうな叫びの直後、周囲が大きな音を立てて崩れた――。
顔に叩きつけられる雨で、ぼのぼのは目を覚ました。
起き上がると、辺りは一変していた。周りには大小様々な瓦礫が転がっている。ガッコウは両端だけ建っていて、真ん中が無くなっていた。
そのガレキの中で、真っ黒い巨人の周りを白い影が躍る様に動き回っていた。火花が雨の中で散る。
オオカミさんだ。オオカミさんの尻尾が振るわれた。巨人の左腕が肘の辺りから斬り飛ばされ、噴き出した血が雨を赤に変える。
絶叫が周囲の空気を振るわせた。
その声には聞き覚えがあった。アライグマくんのお父さんの声だ。姿が全然違ってしまっているが、あの巨人はアライグマくんのお父さんなのだ。
今度は、オオカミさんとアライグマくんのお父さんがケンカをしているのだ。ぼのぼのは周囲を見渡した。ケロロさんもカエルさんもオカリナさんも誰も居ない。ケンカを止められるのは、自分しかいない。
ぼのぼのは傍に落ちていた袋から、変わった石を取り出した。これを刺せば、ケンカを止められるとてゐさんが言っていたのだ。
ぼのぼのはオオカミさんたちに歩き出した。瓦礫の間を通り抜けながら、ぼのぼのは一歩一歩近づいていく。
ぼのぼのに気づいたオオカミさんが駆け寄ってきた。そのすぐ後ろではアライグマくんのお父さんが苦しそうにのたうち回っていた。
オオカミさんは、ぼのぼのを守るようにパッとアライグマくんのお父さんに向き直った。
そのオオカミさんの背中に、ぼのぼのは石を突き立てた。
甲高い声が雨音を切り裂いた。オオカミさんはばたりと倒れて痙攣すると、すぐに動かなくなった。その肢体は見る間にねずみ色に変わり、石のように変わっていく。
「……オオカミさん――?」
ぼのぼのは戸惑いの声を上げた。ふいに周囲が暗くなったようにぼのぼのは感じた。
空を見上げたぼのぼのを、アライグマくんのお父さんの右腕が押しつぶした。
(三)
瓦礫を押しのけて、カエルは立ち上がった。体の節々に痛みが走るが、これでも幸運だったと言うべきだろう。
廊下の窓から見えたのは、こちらに向けて大刀を構えた黒い巨人だった。あんな姿の参加者は載っていなかった為、おそらくはあれが支給品の一つなのだろう。
とっさに身を投げ出した直後に、光芒が校舎を両断した。
立ち上がったカエルは、よろめきながら離れていく巨人の後姿だった。巨人には左腕がない。追い討ちを掛ける好機だが、それをなせるだけの準備も余力もカエルには残っていなかった。
まずは他の四匹の安否の確認だ。一匹はすぐに見つかった。
自分に似た緑色の足が投げ出されている。その上半身には大きな瓦礫がめり込み、周囲に大きな血だまりを作っていた。確認するまでもない。死んでいる。
赤いダルマとはやはり知り合いだったらしいが、結局彼がどういった人物なのか、ほとんど知ることは出来なかった。ただ、少なくとも、手当たり次第に襲い掛かるような愚か者ではないらしいが。
拘束したままであったことが、彼の命を縮めたのかもしれない。対処に後悔はないが、哀れには思う。
やがて、血にまみれた毛皮と肉の塊を見つけた。青い毛皮の一部がかろうじて見て取れる。ぼのぼのだ。奥歯をかみ締める。ぼのぼのの遺体の傍には、粉々砕かれた石のような物が散らばっていた。
追悼の祈りを後回しにし、カエルはオカリナとアマテラスの名を呼んだ。
しばしして、瓦礫の上に丁寧に横たえられたオカリナを見つけた。そっと抱き上げると、しっかりと呼吸しているのが見て取れた。自然と安堵の吐息が漏れる。
ふと、カエルは周囲が今まで以上に暗いことに気づいた。太陽の姿が見えないのは相変わらずだが、それにしても暗すぎる。まだ昼過ぎだというのに、黄昏時のような按配だ。
カエルはオカリナを抱きかかえると、アマテラスを探して移動を開始した。
&color(red){【ケロロ軍曹@ケロロ軍曹 死亡】}
&color(red){【アマテラス@大神 死亡】}
&color(red){【ぼのぼの@ぼのぼの 死亡】}
&color(red){【残り 16匹】}
【C-4/一日目/午後】
【オカリナ@ハーメルンのバイオリン弾き】
【状態】魔力消費(中~大)、疲労(大)、気絶中
【装備】なし
【道具】支給品一式、ミニ八卦炉@東方project、世界の民話、治療用の薬各種、不明支給品0~2個(治療道具ではない)
【思考】
基本:ゲームには載らない。キュウビを倒す……だけどもし――。
1:????????????
2:できるならミニ八卦炉は使いたくない
※参戦時期は死亡後です。
※自分の制限について勘付きました。
※人間と関係ない参加者もいるのではと思っています。
※ケットシーを危険な獣と判断しました。
※治療用の薬の内訳は後の書き手にお任せします。
※オカリナの考察
無意味に思えるアイテムを混ぜて、誰かが参加者に何かを知らせようとしているのではないか。
キュウビ一味は一枚岩ではない。
縁者を人質にとり、殺し合いを強制してくるのではないか。全員ではないにしても、部外者が拘束されている。
※プックルの反論
呪法=殺し合いとは限らない
殺し合いは目くらましかも
※カエル、ケロロとある程度情報交換しました。
※それぞれが違う世界から呼ばれたと気付きました。
※ディアルガ、パルキア、セレビィ等のポケモンや、妖精等の次元や時空を操る存在がキュウビによって捕らえられているかもしれないと考えています。
※この会場にいる獣達は全員人間とかかわりをもつ者だと勘違いしています。
※その間違えた前提を元にキュウビの呪法が人間に対してつかわれるものだと推測しています。
※『世界の民話』に書かれている物語が異世界で実際に起きた出来事なのではと疑っています。ハクオロ@うたわれるもの、ラヴォス@クロノトリガー、野原一家@クレヨンしんちゃん、主人公@ドラゴンクエスト5について書かれていたようです。
【カエル@クロノトリガー】
【状態】:複数の擦り傷・打撲、疲労(小)、魔力消費(小~中)、びしょ濡れ
【装備】:なんでも切れる剣@サイボーグクロちゃん、マントなし
【所持品】:支給品一式(食料:パンと蛙の腿肉料理)、モンスターボール@ポケットモンスター、しらたま@ポケットモンスター 、銀の不明支給品(0~2、確認済)、石火矢の弾丸と火薬の予備×9@もののけ姫 、マハラギストーン×3@真・女神転生if、風雲再起の不明支給品(0~2、確認済)、参加者詳細名簿、ペット・ショップの不明支給品(1~3、確認済)、スピーダー@ポケットモンスター×6、ユーノのメモ
【思考】
基本:キュウビに対抗し、殺し合いと呪法を阻止する
1:アマテラスを探す。
2:ニャースの捜索。
3:ギロロにあったら話をつけて誤解を解く。
4:余裕があれば鍾乳洞内を調べる。
※オカリナ、ケロロとある程度情報交換しました。
※異世界から参加者は集められたという説を知りました。
※参加者は同一世界の違う時間軸から集められたと考えています。
※天容の笛@忍ペンまん丸、しらたま@ポケットモンスターとパルキア@ポケットモンスターの存在を知りました。
※ペット・ショップ、ミュウツー、クロコダイン、クロ、チョッパー、ケットシー、因幡てゐ、ラルク、ムックルを危険ないし要警戒と認識しました。
※ログハウスの下にある鍾乳洞は抜け道のようなものと推測しています。
※死者の読み上げが、死亡した順番であることに気付きました。
※アマテラスがオープニングの時点で意思疎通が出来なかったことを知っています。
※制限に気が付きました。
※回復魔法の効果の発現が遅くなっています。しかし、本人は回復魔法の効果がなくなっているかもと思っています。
※アマテラスが死んだことに気づいていません。
【アライグマの父@ぼのぼの】
【状態】:頭部に怪我、尻尾に切創(止血)、疲労(中)、軽度の貧血、激痛による錯乱、アヴ・カムゥ内
【装備】:アヴ・カムゥ@うたわれるもの、アヴ・カムゥ専用の長刀@うたわれるもの、デイバッグ
【所持品】:地図、空飛ぶ靴@DQ5、魔除けの札@大神
【思考】
基本:全員を始末して、仇を取る。
1:??????????
【備考】
※札は少し湿っています。
※アイテムの説明は読んでいません。
※イギーと情報交換をしました。
※空飛ぶ靴は遊園地の入り口前が指定されていました。
※B-1からA-2の遊園地入り口までの間にアライグマの父の支給品が落ちている可能性があります。
※空を飛んだ時、月が地上よりも大きく見える気がしました。
※ボニーの考察は獣の卍参照。
※デイバッグは、コクピット内のアライグマの父が背負っています。
※第二回放送の内容を、アライグマが死んだこと以外聞いていません。
※アヴ・カムゥの左腕がなくなっています。
※太陽の光が著しく弱まりました。
*時系列順で読む
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*投下順で読む
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|097:[[雨の降る昼、いったいどうする]]|ぼのぼの|&color(red){死亡}|
|097:[[雨の降る昼、いったいどうする]]|アマテラス|&color(red){死亡}|
|097:[[雨の降る昼、いったいどうする]]|カエル||
|099:[[蛙人乱れし修羅となりて]]|ケロロ軍曹|&color(red){死亡}|
|101:[[空が別れを告げている]]|オカリナ||
|101:[[空が別れを告げている]]|アライグマの父||
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