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没OP ロケット団案


そこにあるのは、真の闇。
どこからも洩れる光はなく、全てが闇に閉ざされた空間。
その場所は獣臭で満たされていた。押し殺したような唸り声が方々から聞こえる。
姿は見えなくとも、反響し一層不気味に聞こえるその声と籠もった匂いから悟るのは容易い。
ここは屋内の、ホールのような広く天井の高い場所であること。
そして、この空間には様々な種類の、多数の獣が詰め込まれているということを。
しかし自分がなぜこんな場所にいるのか、ここに来る前に何が起こったのかは思い出せなかった。

突然、ライトが点いた。光に一瞬では目が慣れない獣達だろうか、何匹かの驚きの声が聞こえる。
明度の変化に順応しやすいニャースの目は、すぐに光に慣れた。
見回して、天井にある光源のライトを、警戒の様子を隠せない周囲の獣達を、そして数人の人間を見る。
人間達はスポットライトを浴びて、壁際に設えられた舞台に立っている。
顔には見覚えはなかったが、その姿にニャースは安堵した。
見慣れたRの文字入りの服、ロケット団の制服を彼らは身に着けている。
辺りの獣には見たこともないどころかポケモンかどうかも怪しい生き物も混じっているが、ロケット団が集めたのなら心配はない。
これはロケット団の作戦の一環で、自分にはこれから任務が言い渡されるのだ。
ムサシとコジロウの姿がないのが気になるが、きっと違う任務を命じられているのだろう。
チームとは言え、人間である二人とポケモンであるニャースの持つ能力は違う。
この大量の獣達が関わっているのであろう新しい任務は、喋るポケモンのニャースにしか果たせないものに違いない。
ボスはニャースの忠誠と働きに応えて、特別な任務を用意してくれたのだ。

「ご機嫌よう諸君。……なあ、こんなこと話してもコイツらに通じるのか?」
「知るかよ。取り敢えず首輪があれば言葉は通じるって言われたけどな」
スポットライトを浴びた一人の男が朗々と呼びかけてから、後ろの男とこそこそ話す。
首輪という言葉に気付いて首元を触ってみると、冷たく硬いものが前脚に触れる。
再び見回してみると、周囲の獣の首には皆、同じデザインの首輪がはめられていた。
ボスに仕えてはいるものの所持されるポケモンではなく団員のつもりのニャースとしては、飼い猫のように首輪をされるのはあまり面白くない。
ちょっと嫌な顔をしつつも、再び話し始めた人間達に目をやった。


「辺りを見回してみたまえ。壮観だろう、ここには数多くの動物やモンスターが集められている。
君達にとっても見たことのない生き物が大勢いるだろう?
我々も君達を前にして、生命の神秘を感じざるを得ない。これは未だ嘗てない、壮大な実験なのだ」
壇上の男は満足げに獣達を見下ろす。その言葉通りそれは実験動物を見るような目で、嫌な感じがした。
同じものを感じた者は獣達の中にもいたようで、周囲から敵意の籠もった唸り声が幾つも上がる。
そんな中、壇上にいた人間達の内、後ろに控えていた数人が進み出る。
その手にした物を見てニャースは息を飲む。黒光りする、恐らく本物の、銃だった。
銃を知っているのであろう獣達は怯えたように唸るのを止め、それ以外の者達も場の雰囲気の異様さに黙り込む。
「諸君は物分かりがいい。変な気を起こさないでくれたまえよ、人間様をなめると痛い目に遭うからな」
得意げに言う中央の男に、反感よりも寧ろ恐怖をニャースは覚える。
ロケット団は悪の組織だ。その仕事が自分達のするような泥棒や詐欺だけではないことは知っている。
銃を持っていても、ポケモンや人間を殺傷することがあっても不思議ではない。
そう知ってはいても、今まで触れたことのないロケット団の暗部にニャースは戦慄した。
この壇上の人間達は、同じロケット団員でもムサシやコジロウとは違う。決定的に違う。
そしてこれから行われる作戦も、今までニャースが関わってきた悪事とは違う。

「さて……あまり難しい言い回しをしても諸君には理解できないかも知れないな。だから手短に、簡単な言葉で言おう」
中央の男が言う。その周囲の人間達は、威嚇するように舞台の下に銃口を向けている。
演説を妨げようものなら、彼らは発砲を躊躇わないだろう。
場が沈黙に包まれた中、男は高らかに宣言する。悪夢のゲームの始まりを。

「これから諸君には、殺し合いをしてもらう」

殺し合い――予想だにしていなかった言葉に、ニャースは口をぽかんと開けたまま固まる。
この場にいる皆、大型のものもいれば小さなものも、人間に近い姿のものもいる獣達は、殺し合うために集められたというのか?
ロケット団が、何のためにそんなことを?
団員の一人、もとい一匹であるニャースにも、その殺し合いに加われというのか?
「では、ルールを説明……」
「ま……待つのニャ!」
壇上の男が喋り出すのを遮って、ニャースは声を上げる。
状況が全く理解できない。殺し合わせてどうするつもりか、何故自分まで巻き込まれたのか、これはボスの意向なのか。
聞きたいことが沢山あった。いくらロケット団の作戦でも、何の説明もないまま殺し合えと言われて従えるはずはなかった。
だが。
壇上の人間が持つ銃を一斉に向けられ、言葉が出てこなくなる。
口をぱくぱくさせるニャースを一瞥し、中央の男は冷然と言い放つ。
「何か勘違いしているようだが、君はこのプログラムの被験体の一匹なのだよ。説明は静かに聞いてもらおうか」
まだどこかで持っていた希望を、完全に打ち砕く一言だった。
ニャースがここに連れてこられたのは、作戦を実行する側としてではなく実験動物としてに過ぎない。
ロケット団の一員だからといって、一切の特別扱いなどはされないだろう。そう思わせるに十分な宣告だった。


部屋のどこかから、低い唸り声が上がった。
それに気付いたのか、銃を持った男の一人がその声の方向を見る。
その瞬間、その男は壇上へ跳び上がってきた獣に飛び付かれ、床へと押し倒されていた。
「うわあっ! やめろ!」
男が悲鳴を上げる。飛び掛かったのは、白黒のぶちの大型犬だった。
押し倒した男を踏み付け、噛み付き、唸り声で威嚇する。
「どうやらそちらにも、無作法な被験体がいるようだ――」
「おい! 話してないで助けてくれ……う、ぐあっ」
犬に襲われている男が助けを求めるのも、中央の男は気に留める様子はない。
鋭い牙に噛み砕かれた腕から鮮血が噴き出し、辺りには血の匂いが充満する。
「いい機会だ。諸君の立場というものを教えて差し上げよう」
中央の男が言うと、手元で小さなリモコンのような機械を弄る。
それと共に、首輪が振動を始めた。ピ、ピ、ピ……と不安を煽るような電子音が鳴り出す。
この場の獣達全員の首輪から、同じ音がしているようだった。
「この首輪がある限り、諸君は我々に逆らうことはできない。何故なら」
男が再び機械を操作すると、首輪の振動は止まった。しかし電子音はまだ聞こえている。
が、その音は自分の首にある首輪から聞こえているのではないことにニャースは気付いた。
今や音を発している首輪はただ一つ。男を押し倒し、噛み付いている犬の首輪だけが鳴っていた。
最初はゆっくりだった音と音の間隔が、少しずつ小さくなる。
ピ、ピ、ピ……ピピ、ピピ……ピピピピピ……急かすように、危険を告げるように響く電子音。
「うわ、おい、まさか……やめろ、俺まで! 嘘だろ!」
犬に押し倒されている男が恐怖に満ちた叫びを上げた。その異様な反応に気付き、犬は男の首筋に噛み付こうとしていた顔を上げようとする。

その瞬間、爆音が轟いた。
次の瞬間には黒煙と火薬の匂いと共に、ぶち犬の首が床に落ちる。
それは舞台の上を少し転がって、ぼとりと下へ転げ落ちる。
焼け焦げた首の断面が、ニャースの位置からもはっきり見えた。
舞台の上には平然としている人間達と、首のない犬の死体と、その下で動かなくなっている人間の体。
爆風を間近で受けて、こちらも首が胴体と離れかけ、顔は無残にも黒焦げになっている。

「……警告の意味は理解したかな?
この警告はプログラムの進行を妨害した時に加え、時間経過と共に定められる禁止エリアに立ち入った時にも発せられる。
そうなったら速やかに禁止エリアを出なければ――どうなるかは、ご覧の通り」
最早、言葉も出てこなかった。全身の毛が逆立って、震えが止まらない。
その場にいる他の獣達も、声もなく舞台上の惨劇と語り続ける男を見上げていた。
「しかし喜びたまえ、首輪は決して諸君を虐げるためだけのものではない。
この首輪の効力で、諸君は人間の用いる言語を理解可能になっている。
動物である諸君が言語という文化的な概念を手に入れたのだ、素晴らしいことだとは思わんかね?」
どこまでも見下した口振りの男の態度が気に障る。しかし言い返してやる気力は既になかった。
この人間達は獣はもとより、同じ人間の、同僚のことさえ平気で巻き添えにして殺せる連中なのだ。
「最後の一匹になるまで殺し合うことだ。勝ち残った者にはご褒美がなくもない。
……言っておくが、みんなで団結して殺し合いをやめようなどとは考えない方がいい。
二十四時間に渡って一匹の死者も出なかった場合、全員の首輪が爆破されることになっている」
淡々と述べられる、あまりに理不尽で不条理なルール。
しかし獣達には、ただそれを聞いていることしかできない。逆らった者の末路は明らかなのだ。
「諸君に使いこなせるかどうかは知らないが、プログラムの円滑な進行のために若干の道具も支給しよう。
これから諸君は支給品と共に会場の各所へランダムに転送される。
六時間ごとにそれまでに出た死者の名前と、禁止エリアになる場所を放送する。聞き逃しのないよう、気を付けることだ」
男が説明を終えると共に、体が浮くような感覚に包まれる。
「それでは――」
視界が光に包まれ、真っ白になる。遠くで、楽しげな男の声が聞こえた。
「グッド・ラック、実験動物の諸君。野性の力を、存分に見せてくれたまえ!」

◇    ◇    ◇

スポットライトの下で、人間達は溜息混じりに話す。
「ふぅ、やれやれ。今度は会場のモニター作業か……」
「その前に死体の片付けだ。ったく、任務とは言え気が滅入るぜ」
「それにしても何だってこんな酔狂な実験を、ねぇ。大体、殺し合わせてどうなるってんだ?」
「さあね。小耳に挟んだ話じゃ、新しく人工のポケモンを作るんで素体が必要だとか」
「俺が聞いた話だと、極限状態への適応のしかたを観察して進化のトリガーを……何だっけ」
「まあ何でもいいや。無駄話してると、俺達もコイツみたいになりかねん」
「どうせ下っ端の俺らにゃ、上の方の話は入ってこないんだ。余計なことは考えずに働きますかね」

がやがやと話す声が遠ざかり、スポットライトが消える。
そこに残るのはただ、真の闇。


【ダニー@ジョジョの奇妙な冒険 死亡】
【残り 47匹】




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