※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

それは不幸な出会いなの? ◆w2G/OW/em6




満月の下、夜空に舞う小さな影が一つ。


(おおおおお落ち着けッ! 落ち着くんだ俺~~~ッ!)


支給されたバイオリンに乗って空を舞って、ひとしきり騒いだ後。
パニックだったチョッパーの心には、ようやく状況確認をする余裕が出来ていた。

(こ、こういう時は……えーと……そうだ、ウソップが前言ってたぞ! KOOLになるんだ!
 KOOLに……KOOLになるんだ! チョッパー!)

仲間が言っていた(ちょっとうさんくさい)言葉を思い出し、未だ飛び跳ねる心臓を無理矢理落ち着かせる。

(このバイオリン……空島の貝みたいなのが入ってるんじゃないのか?
 きっと袋から出した時にスイッチか何かを触っちゃったに違いない。もう一度スイッチを探せば……
 よし大丈夫! なんとか地上に戻れそうだ!)

心の中で適当に考察をして、地上へ降りる方法を考える。
―――彼とて数々の戦いをくぐり抜けてきた麦わらの一味の一員である。
元々臆病な性格ではあるが、落ち着くことさえ出来れば場への順応の速さはそれなりのものだ。

少しだけ希望を見出したチョッパーは、着地場所を見つけるべく眼下を見下ろす。


黒々とした夜の海が広がっていた。



「…………。」



数秒後、自分の置かれた新たな状況を理解して。

満月の下、絶叫を上げながら夜空に舞う小さな影が一つ。








薄暗い室内に、一瞬だけ眩い光が満ちる。

「……む?」

光が収まり、部屋の中で怪訝な声を上げた人物の姿が露わになる。
違和感に顔をしかめたのは、筋骨隆々とした体型と、それに微妙に不釣り合いな獣耳と尾を持つ男性……人間の姿に変身したザフィーラ。

シエラとの戦闘にて痛手を負った彼は、怪我の手当をする為にE-2南の保健所へと来ていた。
保健所には僅かながら医療道具があり、応急処置程度なら十分できそうだったのだが……獣の姿のままでは消毒どころか包帯を巻くことすらできない。
その為、魔力の消費を抑える獣形態から人間形態へと変身したのだが……

(魔力の消費が大きい……?)

変身する瞬間に感じた魔力の負荷、それが普段変身する時と比べると異常なまでに大きいものであった。
同時に感じた強い違和感……魔力の流れを感じるに、原因は枷として嵌められた首輪か。

(恐らく獣に戻る時の負荷も同じ様なものだろう。
 この分だと、魔力を回復しなければ3、4回が限度……あまり頻繁には姿を変えられんな)

キュウビの元へ至る手段よりも、まずは首輪を解除する方が先決と考え直す。

その為にはまず別の首輪を手に入れ、構造を調べる必要がある。
死体から手に入れるか、もしくは殺し合いに乗った者から奪うか……後者の方法は出来れば取りたくはない。
いかに殺し合いの場であれど、相手が他者への殺意を持っていたのであれど。
彼の主がそれを良しとする事はないのだから。

「まあいい、とりあえずは怪我の手当てを……」

わざわざ人間の姿に変身した理由を思い出し、あらかじめ収集していた医療品を手に取る。
集めたそれは薬だけでもいくつもの種類があり、薬とは縁の無いザフィーラにはどれが何の薬だかさっぱり見当がつかない。
まずは傷の消毒だろうか、治療などはシャマルの領分だからよく分からん……と慣れない事に考えを巡らせていた矢先。



―――ぎゃあああああああああああああああああ………



確かに聞こえた悲鳴に、耳がぴくりと動く。

(……近いな)

欲を言えば左前足(変身した今は左腕だ)の手当てだけでもしておきたかったが、見過ごす訳にもいくまい。
包帯を雑に巻いて血止めだけし、窓から外へと飛び出す。
警戒しつつ辺りを見回す。悲鳴が聞こえた方角には………海。

(空を飛べるのか、それとも海を泳いでいるのか……)

泳ぎの最中であんな大声が出せるとはあまり思えない。おそらく翼を持つ鳥の類か、自分の様に魔法を使う者だろう。
再び戦いになることも考慮しつつ、ザフィーラは地を蹴る。

満月の下、夜空を駆ける影が一つ。








(だっ、だから落ち着くんだ俺ーーーっ! また慌ててどうするんだ!
 KOOLに! KOOLになんなくちゃ!)

海上に出てしまったことについてもひとしきり騒いだ後。
再びチョッパーは、なんとか状況確認ができる程度の落ち着きを取り戻していた。

(今進んでる方角は、多分北か東かのどっちかだ。
 地図ではどっちの方角にも陸はあった……つまり無理に方向転換せず、このまま直進していれば陸に辿り着ける!
 な、なんだ……そんなに慌てることもないじゃないか……あはは……)

少しだけ安堵して前を見る。
前方には、彼が予想していた通り陸地が見えていた。


そして、その陸地からこちらに飛んでくる立派な体格の男も見えていた。


(え……えーーーーーっ!?!?)


思いがけない事態にバイオリンの上で手足をわたわたと動かす。
バランスを崩しかけ、慌ててしっかりとバイオリンに掴まりなおす。
ここは海の上……落ちたら最後、悪魔の実の能力者である自分は溺れ死ぬしかないのだ。
いやそれよりも、目の前の光景をどう説明しよう。

(あ、あいつ空飛んでる……悪魔の実の能力者か?
 でも犬っぽい動物の耳生えてるけど、イヌイヌの実じゃあ空なんか飛べないぞ!?
 二つ以上の能力者はいないし……じゃあどうして……?)

「……さっきの悲鳴はお前か?」

自分にかけられたらしき声にハッとする。
いつのまにか、獣耳の男がすぐ近くまでやって来ていた。
……方法は分からないが、バイオリンに乗ってけっこうな速度で飛んでいる自分と平行するように飛んでいる。


「ぎゃああああああああああああ!?!?」


思わず絶叫。
突如上げられた大声に空中で男が飛び退き驚いた顔でこちらを見た。
その間バイオリンは飛び続け、距離はすぐ開いていく……が、チョッパーからすればそんなこと気にしている場合ではない。

(お、落ち着け! ただの動物系の能力者の人間なだけかもしれないじゃないか! 動物と間違えられて連れてこられただけで……
 飛んでるのは、空島の神官みたいに足の裏になんか付けてるんじゃないか? うん、きっとそうだ……そうに違いない!)

「おい……! 待て……!」

首を巡らせて後ろを見れば、獣耳男がこちらへと飛んできている。
わざわざ声をかけてきているという事は……

(殺し合いには……乗ってないかもしれない? うん、きっとそうだ! そうに違いない!)

もしかしたら仲間になってくれるかも……と、淡い期待を抱きながらバイオリンを掴みなおし。
―――蹄の形をした手がバイオリンの弦に触れ、小さく音が鳴る。



バイオリンから出ていたジェット噴射が、ピタリと止まった。



「………え?」


直後―――バイオリンはチョッパーを乗せたまま重力のままに落下し始めた。


「ぎ……ぎゃあああああああああああーーーーーっ!?!?」
「………おいっ!」

絶叫を上げ落ちていくチョッパーに、追って来ていた獣耳男が助けようと手を伸ばす。
しかし……その声も、その光景も、『海に落ちる』という危機に、パニックが頂点に達しているチョッパーには届いていなかった。

(な……何でだ?何でいきなり止まっちゃったんだ!?
 は、早く!早くまた飛ばないと!海に、海に―――――ッ!)

手当たり次第にバイオリンのあちこちをいじる、早く早くと急かす声ばかりが頭の中に響く。


―――――♪


めちゃくちゃに触った弦が、小さく音をたてた。

(ん?)

音楽に精通している者が聞けば、奏でられた音が『レ』であったと分かっただろう。
しかし、音が何の音だか分からずとも……オリンの作ったバイオリンは、魔器としての性能を発揮する。

『ジ』はジェットのジ、『ミ』はミサイルのミ、『ド』はドリルのド、そして『レ』は……



「……バイオリンが、光っ――――?」



バイオリンから突如放たれたレーザー……その閃光が獣耳男を直撃した。

小さな爆発が起こり、その姿が爆煙にかき消される。


(な……何なんだ今の……? バイオリンから……ビーム?)


連続して起こる突然の出来事。

だが、思考はぼんやりと目の前で起きた出来事を考察していた。


(俺がバイオリンを触って……そしたら、ビームが出て……あれ?
 ってことは……俺が……あいつを……撃っ……?)




思考が結論に辿り着く寸前。
ドシンと背中に強い衝撃が走った。










「な、なんだここ……」

自分が落ちたのは、海の上にせり出した細い鉄橋の上だった。
両脇に鉄の線が引かれ、木の板が一定間隔に並んでいる……つまり。


「線路?」


口に出してから思い出す。
最初に自分がいた離れ小島のような部分と、本島とでも言うべき大きな陸地の間には電車が通っている……そう地図に記されていたはずだ。
もといた場所からは北に進んでいたらしい……それよりも。

「あ、危なかった……海に落ちたら俺、終わりだもんな……」

改めて自分は運が良かったと思い、胸をなで下ろす。

とはいえ、ここでじっとしている訳にもいかない。いずれ電車が来たら、轢き殺されるか海に落とされるだけだ。
早いとこ陸に向かおう、バイオリンを持ち直し……



ごとり、と。
大事なことに気づいてバイオリンを取り落とした。



(あ、あいつ……あの空飛んでた獣耳男ッ!あいつは、あいつはどこにいったんだッ!?)


慌てて周囲を見回す……自分のように、線路の上にはいない。
空を見上げる……ただ月と星があるばかり。

(じゃあ……海に? あいつ、海に落ちたのか!?)

そっと線路から身を乗り出して暗い海を覗きこむ。
分からない……月明かりでは、海などただの闇にしか見えなかった。

(あいつはきっと動物系の悪魔の実の能力者。海に落ちて無事でいられるはずがない。
 溺れてるなら、水の音ぐらい聞こえそうだけど……まさか、もう沈んで……!?)

だとしたら……自分には、もうどうしようも出来ない。
溺れた人に対する処置なら分かる。しかし溺れている人を救う事は、能力者でありカナヅチである自分には出来ないのだ。


(俺の……俺のせい? 俺が、バイオリンでビームを出して……
 そのせいであいつ、海に落ちて……?)


傍らに転がっているバイオリンを見る。
初めて見た時は綺麗で立派な物に思えたそれが、いまは得体の知れないモノに見えた。


「う、わ」


認めたくなかった。
故意ではないとしても、自分のしたことから目を背けたかった。


「うわああああああああああああああああああああ!!!!!」

気がつけば、チョッパーは駈け出していた。
あの得体の知れないバイオリンから、少しでも遠ざかりたかった。


自分のせいで誰かが死んだかもしれないなんて……そんな事、もう『二度と』したくなかった。



【F-2/海上の線路/一日目/黎明】

【トニートニー・チョッパー@ONE PIECE】
【状態】強いパニック、罪悪感
【装備】なし
【所持品】支給品一式、不明支給品0~2(未確認)
【思考】
基本:殺し合いからの脱出、可能ならキュウビの撃破
0:とにかくバイオリンから遠ざかりたい
1:仲間を集める
※参戦時期は少なくともフランキーを仲間にしてからです。
※ザフィーラ(名前は知らない)を動物系悪魔の実の能力者と誤解しています。また、自分のせいで海に落ちてしまったと思っています。




(………行ったか)

頭上を何者かが走る音を確かめ、ザフィーラは『鉄橋の下から』顔を出す。
海の上を走る電車用の鉄橋は、海上とは1mほど上に位置している。
彼は今までその鉄橋の下に潜み、上にいる小さなトナカイ……チョッパーの動向を窺っていたのだった。

飛行魔法を解除し鉄橋の上に降り立つと、そこに置かれたままだったバイオリンを手に取る。

(見たところ魔力の反応はしないが……バイオリンからレーザーとは、どんな仕掛けになっているのやら。
 とっさの障壁で防げる程度の威力だったは助かったがな……)

一応持っていくか、とデイバックへバイオリンをしまう。

(しかし……あの様子を見るに、あの鹿の様な獣は殺し合いには乗っていないのか?)

ザフィーラが鉄橋の下に身を隠していた理由。
それは、チョッパーが殺し合いに乗っているか否かを確かめる為。

脅えた様な動向を見せていたとはいえ、いきなり砲撃を受けた以上……脅えが演技だった可能性も否定はできなかった。
それを確かめるべく、レーザーを防御した時の爆煙に生じ、様子を窺っていたのだが……

(あの様子だと、本当に脅えているだけのようだな。
 ……少し酷な事をしてしまったようだな)

警戒はするに越したことはなかったのだが……やはり、少々罪悪感が浮かぶ。

(追いかけて……落ち着いた頃を見計らって、事情を話すか)

見ると、あの鹿の姿は随分と遠くまで走り去っていた。

(速いな、追いつくのには骨が折れそうだ)


走るよりも飛んだ方が速い……ザフィーラは地を蹴り、再び夜空を駆ける。




彼が用心のために取った行動が、走り去るトナカイの心にどれほどの傷をつけたのか……その事に、気付かぬまま。




【F-2/海上の線路/一日目/黎明】

【ザフィーラ@魔法少女リリカルなのはシリーズ】
【状態】:人間形態、疲労(小)、魔力消費(中)、左前足(左腕)に裂傷(包帯で止血)
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式(不明支給品1~3)、ブロンズハチェット@聖剣伝説Legend of Mana、ハーメルのバイオリン@ハーメルンのバイオリン弾き
【思考】
基本:キュウビの打倒。殺し合いからの脱出
0:チョッパーを追いかける、落ち着いたら事情を説明し謝罪。
1:アルフ、ユーノの捜索
2:殺し合いに乗っていない動物の保護
3:シエラを警戒。可能なら説得する?
※参戦時期はAs本編終了後、エピローグ前です。
※シエラが別の参加者のために殺し合いに乗ったと知りました。
※チョッパー(名前は知らない)は、殺し合いには乗っていないと判断しました。
※変身の際の制限に気付きました。変身する時の魔力消費は休憩しなければ3~4回程度と考えています。

※E-2保健所内の医療品は一室に集められています。
 ただし集めたのがザフィーラなので、医療とは関係ない物が混ざっている可能性もあります。




時系列順で読む


投下順で読む


017:好奇心は身を滅ぼす トニートニー・チョッパー 048:Beyond the Sword
013:終端の宴と異世界の騎士 ザフィーラ 048:Beyond the Sword




| 新しいページ | 編集 | 差分 | 編集履歴 | ページ名変更 | アップロード | 検索 | ページ一覧 | タグ | RSS | ご利用ガイド | 管理者に問合せ |
@wiki - 無料レンタルウィキサービス | プライバシーポリシー