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狡兎三窟 ◆TPKO6O3QOM




 (一)

 月に照らされた白磁のような道に、ぼのぼのは感嘆の息を漏らした。
 このような夜更けまで、ぼのぼのは起きていたことがない。初めての夜の散策に、ぼのぼのの心は昂ぶっていた。きょろきょろと忙しなく辺りを観察する。心なしか、路に伸びるぼのぼのの影も踊っているように見える。
 一方、ぼのぼのの横を歩くてゐは、さして珍しくもないのか、欠伸を噛み殺していた。
 大人だなあ。と、ぼのぼのは思う。
 てゐの言葉によると、この道を辿って行けばマチというところに行けるらしい。
 マチというのはニンゲンの住処がたくさんあるところなのだそうだ。ニンゲンというのはサルに似た生き物だが、毛がないらしい。また、マチには色々なものが集まり、引いては他の動物たちも来る可能性が高いという。
 それはつまり――。
(アライグマくんたちに会えるってことだよね)
 ぼのぼのの気の昂りは、その期待による所が大きいかもしれない。

 しばらくして、てゐの歩みが止まった。もっとも、そのことにぼのぼのが気付いたのはしばらく先を歩いてからだったが。
 てゐは遠くの何かを凝視しているようだ。警戒するように、彼女の長い耳がぴくぴくと動く。
 ぼのぼのは、てゐが見つめる先に目を凝らした。ここからかなり離れた所に、ぼんやりとだが大きな獣の影が見える。獣は道の傍の草むらに蹲っているようだ。ここからではどんな獣なのか、生きているのかどうかすら分からない。

 ぼのぼのは好奇心に任せて獣へと近づいて行った。後ろからてゐの声が聞こえたような気がした。おそらく、ぼのぼのが先行することへと警告だろう。
(てゐさんは心配性だなあ)
 哀しいことが終わったのだから、もう楽しいことしか起こらないのに。
 とてとてという足音が辺りの静寂に吸い込まれてく。
 やがて、蹲っている獣の姿がはっきりしてきた。
 どうやらクマのようだ。満月に照らされた蒼い毛皮。そして幾つもの傷が刻まれた険しい顔――。

「あ~~~~~~っ!」

 ぼのぼのはそう叫び――クマの前を通り過ぎた。方向転換を誤って盛大に転んでから、いそいそとクマの元へと戻る。
「あ~~~~~~っ!」
 獣の前に立ち、ぼのぼのはもう一度叫んだ。そのクマに見覚えがあったのだ。うるさそうに、クマの表情が歪む。
「コヒグマくんのおとうさん!」
 スナドリネコの言葉は本当のことだったのだと、ぼのぼのは嬉しくなった。
「……たしか、ボーの――」
 向こうもぼのぼのと気づいたのか、コヒグマくんのおとうさんは億劫そうな声を上げた。どうやら元気がないようだ。見れば、その身体は粘っこい液体で濡れている。
「コヒグマくんのおとうさん、大丈夫!? ケガしたの!?」
 ぼのぼのはコヒグマくんのおとうさんに駆け寄った。むっとするような臭気がぼのぼのの鼻を突く。その臭いは、ぼのぼのに嫌な記憶を蘇らせた。目の前で弾け飛んだシマリスから毀れたものと同じ臭いだったからだ。

「てゐさん!てゐさーん!」
 ようやく動き出したてゐに、ぼのぼのは慌てて手を振った。
「大した傷じゃない。だから、騒ぐんじゃねえぜよ」
 コヒグマくんのおとうさんは口ではそう言うものの、ぼのぼのには何処も“大丈夫”には見えなかった。コヒグマくんのおとうさんは死んでしまうのかもしれない。その恐怖がぼのぼのの心にからみつく。生き返ると分かっているのに、何故かとても怖いのだ。

 飛び跳ねるような足取りで、やっとてゐがぼのぼのに追いついた。
 ぼのぼのから説明を受けたてゐは、すぐにコヒグマくんのおとうさんの身体を調べ始める。時折上がる苦痛の声が、ぼのぼのの不安を大きくする。
 やがて、てゐは手を止めてぼのぼのに顔を向けた。そこには笑顔が浮かんでいる。
「ぼのぼのくん、心配しないで。もう、血は止まりかけてるし。貧血なだけよ」
 てゐの言葉に、ぼのぼのは安堵の息を吐いた。てゐまでが言うのだから、本当に心配ないのだろう。
「ねえ、ヒグマさん。疲れているところ悪いけれど、色々と教えてほしいことがあるの」
 胸をなでおろすぼのぼのの横で、てゐとコヒグマくんのお父さんの会話が始まった。


 (二)

「そのオオカミさんは悪いオオカミさんなんだね」

 ヒグマの大将がこれまでの経緯を説明し終えると、彼の息子の友達であるラッコの子供の第一声がそれであった。
 てゐと言うらしいウサギは――どうみてもサルの子供にしか見えないのだが――彼の袋の中身を確認している。
「……そう思うのは何故ぜよ?」
 彼は訊いた。ギンがキツネを倒すための仲間集めをしていることは説明に含めてある。それでも、目の前のラッコの子供はギンを悪と断定したのだ。
 ラッコの子供は顎に手を当てて、うーんと首を傾げながら答える。
「だって、コヒグマくんのおとうさんにこんな酷いことをしたんでしょ。やっぱり殺し合いに乗ってる悪いオオカミさんだよ」
「……ギンは殺し合いには乗ってない。さっき、言ったぜよ」
 ぼんやりする頭を振って、麻痺しそうな思考に鞭を打つ。

 ラッコの子供は、また首を傾げて、うーんと唸った。
「それは嘘を吐いてるんじゃないかなあ。悪い奴はそういう嘘を吐くって、てゐさんが言ってたもの」
 じろりとウサギを睨むと、彼女は本当のことでしょ。と言わんばかりに肩を竦めた。確かにそういうこともあるだろう。しかし、この場ではややこしくなるだけだ。
 余計な事をしてくれたと、彼は深くため息をついた。ここで言葉を尽くしても、ラッコの子供を納得させるのは難しいだろう。縦しんば出来たとしても、その成果に対し、時間と体力の消費が割に合わない。
 彼はもう一度、深くため息を吐く。
「……なら、ギンに会ってみればいいぜよ」
「え?」
 きょとんとしたラッコの子供の目を、彼はじっと見つめた。

「何が本当なのか、それを見極めるのは結局のところ自分ぜよ。他の誰でもない、己で導いた答えならばそれが真実ぜよ。ただ、それは自分の目で見たことでなきゃダメぜよ。誰の言葉にも頼っちゃならねえ」
 一語一語噛み砕くように伝える。

「……う~ん、よくわかんない」
 ラッコの子供は困ったように呟いた。
 再度、繰り返そうとしたとき、ウサギの声が割り込んだ。

「ぼのぼのくん、ヒグマさん。その辺にしよ」

 邪魔をするなと声を上げそうになるが、ウサギは静かに頭を振った。それからウサギは、彼からラッコの子供に視線を移動させる。
「ぼのぼのくん、ちょっと見回りに行ってきて。あまり遠くには行かなくていいから」
「うん、行ってくるね」
 ラッコの子供は頷くと、首を傾げたまま、とてとてと音を立てて彼から離れていく。
 彼は思わず口をあんぐりと開けてしまった。ラッコの子供がこういったことに向いていないことを彼は知っている。いや、少しでもあの子供と行動を共にしていれば分かることだ。止めようとしたとき、ウサギがそっと彼に囁いた。

「ここ周辺には誰もいないわ。だから、大丈夫」

 ウサギは自分の長い耳を手で掴んで見せた。既に周りの状況は掴んでいるということらしい。ならば何故と視線で問い掛けると、ウサギは小さく笑った。
「ぼのぼのくんに独りで考える時間をあげようと思って。あの子、混乱してるみたいだから。ま、私のせいだけど」
 私のせいとは、悪い奴は嘘を吐くとラッコの子供に教えたことだろう。ただ、今回の気遣いからも分かるように、ウサギはラッコの子供を本気で心配しているのは確かだろう。だから、それを責める気にはならなかった。

「おまえ、いい奴だぜよ」

 自然と言葉が漏れる。それに対し、ウサギは微笑で応えた。
このウサギは見た目こそ子供だが、どこか老練な印象を彼に与える。今の反応などがそうだ。
「あ、そうそう。あなたの支給品を検めさせてもらったけど、好いものが入っていたの」
 ウサギはぽんと拳で平手を叩くと、袋から小さな包みを取り出した。
「そいつは――?」
「貧血の治療薬。明日葉の芽の粉末よ。気休めぐらいにしかならないだろうけど」
 ウサギは更に同じような包みを四つ取り出し、水の入った透明な管とともに彼に差し出す。飲めということらしい。あまり好い臭いのしない物体に彼の表情が歪む。
 それを目にしたウサギは、ダメよ。と彼に釘を刺した。
「あなたが多少なりとも元気になれば、ぼのぼのくんはとても喜ぶと思うわ」
 そうまで言われては、断るわけにはいかない。彼は渋々受け取ると、それらを水で一気に流し込んだ。


 (三)

「――お、ろ?」

 横に座っていた羆から、驚愕の声が上がる。とはいえ、その声はとても弱弱しい。
 視線を向けると、羆はがくがくと身を震わせながら、苦しそうに両腕を地に付けていた。やがて、それすらも出来なくなったのだろう。どすんという音と共に、うつ伏せで地面に倒れこんだ。
 羆の口は、空気を求めるように大きく喘ぐ。しかし、それもままならないようで、短く浅い呼吸が繰り返されるだけだ。口腔から溢れ出た泡が地面に吸い込まれていく。
 充血した熊の目がてゐを捉えた。てゐは慌てたような表情を作り、怯えた瞳で応える。
 まだぼのぼのの足音は聞こえないが、用心するに越したことはないか。
 あのラッコ程度、言葉でいくらでも誤魔化せそうだが。

(思ったより早かったわねー)
 てゐは内心でほくそ笑んだ。服用して二十分も立っていないだろう。
 羆に渡したのは勿論、貧血の薬などではない。いや、薬ですらない。
 てゐは包に同梱されていた説明書を思い返す。
 彼に飲ませたのはワブアブという虫の乾燥粉末だった。服用すると全身の筋肉が弛緩し、やがては呼吸困難に陥って死ぬ。河豚の毒と同じようなものか。致死量が分からないので全部飲ませてしまったが、十分すぎたようだ。
 羆は意識を失ったのか、白目をむき、沈黙した。時折身体を痙攣させるが、それも段々弱くなってきている。

 この羆は危険だった。羆が言った、「己自身で真実を見極める」ということ。これこそが彼女の計画を突き崩す。現に、ぼのぼのがギンという狼に抱いていた不審を揺らがせてしまった。
 しかし、そのことが問題ではない。第一、ぼのぼのには何も期待していない。どうせ、短い付き合いだ。
 だが、この羆のような考えを持つ獣は集団の中において個々を繋ぎ止める楔となる。それは彼女が為そうとする、疑心暗鬼の連鎖には致命的だ。その獣が他者の信頼を集めるような傑物であればあるほど、逆に彼女の立場が危うくなるのだ。

 羆が自分の支給品を確認していないことは僥倖であった。こうして、問題なく彼女の計画から退場させることができたのだから。
 しかも、彼は別の参加者の情報をもたらしてくれた。この羆こそ“いい奴”と言えるだろう。自分の傷が元で羆が死んだと伝えたら、その狼はどんな表情を見せるだろうか。さぞ、動揺し、まともな判断は出来なくなることだろう。
 ピクリとも動かなくなった羆を見下ろし、てゐは無邪気に微笑んだ。

 さて、どんな顔でぼのぼのを迎えようか。


【B-4/???/1日目/黎明】
【ぼのぼの@ぼのぼの】
[状態]健康、大きな安心感
[装備]:なし。
[道具]:支給品一式、ベンズナイフ@HUNTER×HUNTER、貝割り用の石@ぼのぼの、貝×10、
[思考]
基本:殺し合いはしない。
0:悪いオオカミさんは悪いオオカミさんじゃないのかなー?
1:てゐについていきシマリスが生き返る者の所まで案内してもらう
2:殺し合いに乗っている者がいたら、このナイフを使ってとめる
3:これからもっと楽しいことがおこるんだろうなー♪
[備考]
※アニメ最終話48話後からの参戦です
※支給品の説明書は読んでいません。
※てゐの「周辺に誰もいない」は嘘です。ですので、誰かが近くにいる可能性があります。
※銀に不信感を持ちましたが悩んでいます。

【B-4/路上/1日目/黎明】
【因幡てゐ@東方project】
[状態]健康。
[装備]:なし。
[道具]:支給品一式、きずぐすり×3@ポケットモンスター、ヒョウヘンダケ×3@ぼのぼの、キメラのつばさ×3@DQ5、エルルゥの毒薬@うたわれるもの(テクヌプイの香煙×5、ネコンの香煙×5、紅皇バチの蜜蝋×5、ケスパゥの香煙×5)、不明支給品0~2個(本人確認済)、ニンジン×20
[思考]
基本:参加者の情報を集めて、それを利用して同士討ちさせる。殺し合いに乗っている参加者に対しては協力してもらうか、協力してもらえず、自分より実力が上なら逃げる
0:ぼのぼのを待つ。
1:とりあえず放送までぼのぼのと行動する、B-4の町に向かう
2:銀に会えれば、羆が銀のせいで死んだと伝える
3:放送の後、ぼのぼのにヒョウヘンダケを渡し、キメラのつばさでC-4の小学校に戻る
4:その後町とは反対の方向に行って、情報を集める
【備考】
※銀の情報を得ました。

※ヒグマの大将の死体の傍に、大将のデイバッグと支給品一式が放置されています。

【エルルゥの毒薬@うたわれるもの】
エルルゥが戦で用いる毒薬。各種5袋ずつ。
  • ワブアブの粉末:ワブアブという虫を乾燥させ粉末にしたもの。筋力を低下させる効果がある。
  • テクヌプイの香煙:本来は心を落ち着かせる薬で、筋肉を弛め、防御力を低下させる
  • ネコンの香煙:その刺激臭のする煙をかいだ者は、激しい嘔吐感と気怠さに襲われる
  • 紅皇バチの蜜蝋:燃やすと微かに甘い香りを放つ蜜蝋。激しい幻覚作用を持つ。
  • ケスパゥの香煙:外科医術に使われる揮発性の高い液体で吸った者の意識を一瞬にして奪う。

【ヒグマの大将@ぼのぼの 死亡】
【残り 44匹】




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004:悲しいことや辛いことが終わるために… ぼのぼの 055:新しい朝が来た、疑問の朝だ
004:悲しいことや辛いことが終わるために… 因幡てゐ 051:白兎は秘かに笑う
021:命を懸ける熊犬と懸けない羆 ヒグマの大将 死亡




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