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二度あることは三度ある  ◆TPKO6O3QOM




 うーん、誰もいない。

 幾許かの期待を裏切られ、ボクは項垂れた。
 ボクはまだA-2にいる。塔に行く前に一応遊園地の周りに誰かいないか確かめることにしたんだけど、結果はこの通り。僅かだけど、誰かの臭いは流れては来てる。ただ、追跡するには足りなすぎるんだ。どうやら、ここよりもずっと遠くにいるみたい。
 いやまあ、誰か居たら居たで困ったんだけど。

 あーあ……じゃあ、塔に行こうか。
 なんか無性に心細くなって、ボクは空を見上げた。ため息が出るほどに見事な満天の星空が広がっている。隣にリュカたちがいれば文句ないのに。
 あ、流れ星。消えるまでに願い事をすれば叶うんだって聞いたことがある。
 ええと願い事願い事……って間に、もう消えてるんだよね。

 ……あれ? まだ消えていないや。
 流れ星って、あんなに長くいるものだっけ?

 月に照らされた何かが夜空を滑りながら、遊園地の入り口の方に落ちていく。



 気がつくと、アライグマの父の目の前に大きな満月があった。
 綺麗だなあ。と夢うつつに思ったのも束の間だ。体毛をかき回す強風と身体を下へ下へと強く引っ張られる腹立たしい感触に身体の制御を失う。そしてどんどん近付いてくる地面――。

 いつか――10年ほど前に同じような経験をしたと首を捻ったとき、ようやく彼の脳は現状を理解した。

 地面がない。そして満月が近くに見える。ということは、彼は今空を飛んでいるということだ。10年前に空を飛んだ時は、月は地上から見るのと特に変わらなかった気がするがおそらく記憶違いだろう。
 また、彼は鳥ではない。鳥でないものが空を飛べば最終的にどうなるか?
 答えは簡単。地上へ向かって落ちるしかない。

「――――!」

 悲鳴を上げようにも風が強くて呼吸すらままならない。みっともなく鼻水と涙と涎が大量に毀れ、糸を引きながら上方へと流れていくがどうしようもなかった。
 地上には赤や緑の灯りに包まれた巨大な建造物が見えるが、それに気を向ける余裕が彼にはない。
 重力と強風に翻弄されるがまま、アライグマの父は地面に激突した。顔を強かに打ちつけ、その場に転がりまわる。鼻腔に血の匂いが広がった。

 ようやく痛みが治まって、彼は履いていた靴を地面に叩きつけた。更に、酷く人間的な動作で靴を蹴り付ける。上空から落ちて悶絶する程度で済んだのはその靴のお蔭なのだが、そんなことを彼が知る訳もない。
 そうやって憂さを晴らしていたため、彼は接近者に気が付かなかった。

「あの……大丈夫ですか?」

 背後から突然聞こえた声に彼は全身の毛を逆立てて警戒の姿勢を取った。
 声をかけてきたのは、柔らかそうな茶色い毛皮に覆われた一風変わったオオカミであった。頭には「M」という記号の付いた赤い帽子を被っている。

 またオオカミかと、アライグマの父はうんざりとした表情を浮かべた。そもそも、ここに来てからの不幸には全てオオカミが関わっている。元々ロクな連中ではないが、ここまで厄病神然とした存在であるとは知らなかった。
 ただ、目の前のオオカミもこちらに襲いかかる気はないらしい。
 アライグマの父はオオカミの存在を無視することにしてデイバッグを漁った。何かの拍子に留め具が外れたのだろう、中身は殆どなくなっていた。残ったのは地図と細長い紙切れの束だけだ。
 芋までなくなっていたのは痛い。いずれ何処かで調達するか、獣を捕えなければならなくなってしまった。問題は彼が勝てる相手がいるかどうかだ。小鳥などがいれば丁度よいのだが。

 貧乏性の性で、酷い目に遭わされた筈の靴もデイバッグに仕舞っていると、ぺしぺしと背中を叩くものがある。どうやら、オオカミが耐えかねたらしい。また無視すると、あろうことかオオカミはしつこく何度も何度も背中を叩き続ける。
 ぺしぺし、ぺしぺしと――。

 何かを解放する清々しい音が彼の頭の中に響いた。一言でいえば、プツンという音が。
 すくっとアライグマの父は立ち上がった。

「……俺はなあ――」
 言いながら、ゆっくりとオオカミへと向き直る。
「でっかいお月さんも嫌ぇなら、弱え奴も嫌ぇだし、オオカミはもっと嫌ぇなんだよぉ……」
 オオカミの顔には息子が彼に向けて浮かべるような恐怖の色が張り付いている。アライグマの父は震えながら口元に笑みを刻んだ。
「だがなぁ、何が一番嫌ぇかっていうとな――」
 血走った目で拳をゆっくりと振り上げ――そして気づく。オオカミの視線は彼自身に向けられていない。視線は彼を通り過ぎ、その後ろへと注がれている。
 ぞくりと彼の身体を悪寒が走った。何かからの熱く淀んだ眼差しが彼へと向けられている。
 ぎこちない動作でアライグマの父は後ろを振り向いた。

「なるほど、じゃあてめえは強えんだな」
 真後ろに仁王立ちしていたそれはにやりと嗤った。



「違うの違うの~! あたし、強くなんかないのーっ! もっと強い奴は他にいるのー!」
 胸倉を掴み上げられながら全身でいやいやをする狸に、夜叉猿は困ったように頬を掻いた。
 狸は鼻血と鼻水と涙と涎を盛大に振り撒きながら叫んでいる。泡を吹いているようにも見えるが気にしないことにした。

 向かうつもりであった城の方角に流れ星のようなものが落ちたので来てみれば、居たのは狸と犬だけだ。犬は言うに及ばず、狸も見た目通りの弱者だ。
 城の外壁から漏れる灯りが空々しく夜を照らす。城の入り口には≪キュービーランド≫と極彩色の小さな電球に彩られた文字が刻まれた看板が掲げられていた。

「……そのてめえより強い奴ってぇのはどんな奴だ?」
「え? ええと……強い、強い奴は……」
 鼻先を狸に押し付けると、狸はだらだらと脂汗を流し始めた。しばらく唸った後、狸は息も絶え絶えに強い獣のことを語り出した。

 それは二匹の狼で、何もない空間から獣のようなものを呼び出してくるらしい。そして、この狸はその二匹の狼に酷い目に遭わされたらしい。
 後者の情報はどうでもいいとして、その二匹の狼は面白い。今一どのようなものなのか解らないが、何やら凄そうだと夜叉猿は興奮の吐息を吐いた。

 ぽいと狸を放り捨て、夜叉猿は月に向かって一声吼えて気の高ぶりを幾分か散らす。
 それから、解放されて咳き込む狸に夜叉猿は幾つか問い質した。整理すると、狸は空を飛べる靴――現物を見てもよく分からなかったが――を履いた途端、一気にこの城の前まで飛ばされてきたようだ。飛ぶ前に居た場所が温泉ということだから、B-1にその二匹の狼はいるのだろう。いや、すでに居“た”なのかもしれないが。
 急がねば、折角の強者の情報も無為となってしまう。夜叉猿は徐に立ち上がると、犬と狸に視線を投げた。

「さあ、立て。温泉に急ぐぞ」
「ああ? なんで俺まで行かなきゃなんねえのよ!?」
 犬の方は素直に従ったが、狸はそうではないらしい。狸は続ける。
「ははあん。もしかしておめえ、一人であのオオカミどもを相手にするのが怖えんだろう?うんうん。サルがオオカミに勝てるわけがねえわなあ。仕方ねえよなあ。助っ人が欲しいのかあ?」
 焚きつけるつもりなのか、それとも本気でそう思っているのか。どちらにしろ、とても滑稽だと夜叉猿は失笑した。
「勘違いをしているみてえだが、てめえらはオレの連れでもなんでもねえ。食いものよ。腹が減ったときのな。逃げようなどと思うなよ。その場で引き裂くからな」
 この言葉に犬がポカンと口を開けた。犬の方がそう言う勘違いをしていたらしい。狸は舌打ちしただけだ。
 説明するのも面倒なので、そのまま二匹を追い立てる。

 しばらくして、もうすぐ橋が見えるという所まで進んだ時、前を歩かせていた犬が突然立ち止まると、こちらに向き直った。そして告げてくる。

「あの、戻って遊園地を調べてみませんか?」

 犬はこちらの反応を窺っている。夜叉猿は無言で先を促した。
「アライグマさんの靴は行き先が遊園地に指定されていました。あれはどうも目的地が固定されているようで――」
「だから、あそこにキュウビが見せたい何かがあるんじゃねえか……か?」

 先を急ぎたいため、犬の言葉を遮り先回りをする。犬はきょとんとした後、すぐに続けた。
「そうです。勿論罠の可能性もありますけど……」
「罠は罠でも、殺傷能力のあるものではねえだろうな」
 夜叉猿が断言すると、犬は不思議そうな表情を浮かべる。狸は興味がないのか、大欠伸をしていた。
「あの狐はこの殺し合いを儀式と言っていたろう? 殺し合うことそのものなのか、その過程か、その結果か。あいつの欲しいものは分からねえが、こういった催しを企画した以上、事故死なんてのは避けたいことの筆頭だろ――狸、逃げたら殺すぞ」
 妙な動きを見せようとした狸を牽制する。

「……それをわざわざ誘発するものを設置するはずがない」
「あるとすれば、十中八九殺し合いを助長する何かだろうな」
「そこまで分かっているなら――」
「ああ。勿論、温泉に急ぐぞ」
 目を煌めかせていた犬が口を開けたまま固まる。その口から言葉が漏れる前に、夜叉猿は続けた。
「食いものの割に頭が回るようだが、肝心なところが分かってねえ」
「………………?」
 訝しげに首を傾げる犬を夜叉猿は鼻で嗤った。
「城は逃げて行かねえが狼は逃げる。なにせ、あいつら足があるからな」
「………………」
「行くなら殺り合った後だ。狸の靴はあそこが指定されてるんだろ。いつでも行ける」
 夜叉猿はさっさと進めと手を振った。くだらないことで時間を消費してしまった。もし狼たちに会えなければ、あの犬は喰ってしまおうと心に決める。
 赤犬は美味いのだから。



【B-3/橋の手前/一日目/黎明】

【チーム:猿王と哀れな下僕たち】
【夜叉猿@グラップラー刃牙】
【状態】:健康
【装備】:なし
【所持品】:ディパック(未開封)
【思考】
基本:強い奴に会いにいく!
1:橋を渡って温泉(B-1)に向かう
2:狼たち(イギー、コロマル)に遭遇して闘争を楽しむ
3:気が向いたら遊園地に行く
4:いずれアライグマの父とボニーは食べる
【備考】
※地下闘技場終了時からの参戦です。
※アライグマの父からイギーとコロマルの能力についての知識を得ました。

【アライグマの父@ぼのぼの】
【状態】:頭部に怪我、鼻血(止まりかけ)、罪悪感(微小)
【装備】:ディパック
【所持品】:地図、空飛ぶ靴@DQ5、魔除けの札@大神
【思考】
基本:積極的に誰かを襲うつもりはない。
1:どうにかして夜叉猿から逃げ出したい。
2:遊園地にあるものが少し気になる。
3:食料の調達をする。
【備考】
※札は少し湿っています。
※アイテムの説明は読んでいません。
※イギーと情報交換をしました。
※空飛ぶ靴は遊園地の入り口前が指定されていました。
※B-1からA-2の遊園地入り口までの間にアライグマの父の支給品が落ちている可能性があります。
※空を飛んだ時、月が地上よりも大きく見える気がしました。

【ボニー@MOTHER3】
【状態】健康
【装備】:マリオの帽子@スーパーマリオシリーズ、
【道具】:支給品一式、ビアンカのリボン@DQ5、不明支給品x1(確認済み)
【思考】
基本:ゲームには乗らない。
1:夜叉猿から逃げたい。
2:遊園地が気になる。
3:塔に向かってみる。
[備考]
※8章ラストからの参戦
※遊園地には何かが隠されていると考えています。殺し合いを助長するものかどうかは判断し兼ねていますが、殺傷性のある罠ではないと思われます。


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023:北、玄武の方角ッ!! 夜叉猿 046:獣の卍(前篇)
005:動物アドベンチャー ボニー 046:獣の卍(前篇)
032:現場は木造平屋建て アライグマの父 046:獣の卍(前篇)




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