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孤鬼  ◆TPKO6O3QOM



 傾いた月の弱々しい光。その仄明りを受けた草原がさらさらと音を立てている。
 その中をミュウツーは悠然とした足取りで進んでいた。
 その身体は白銀に翡翠のようなもので装飾された鎧に包まれている。それは実戦用の武具というよりも祭礼で使う神器のような繊細さと神々しさを夜気に放っていた。
 だが、彼にとってはかつて人間に付けさせられた拘束具を連想させる品だ。それをあえて身につけたのは治癒能力を高めるという説明と――彼なりの覚悟からだ。そして、実際に装着してみるとこれが悪くはなかった。

 時折耳を澄ますが、彼に踏みしめられた草のか細い抗議の声以外に音はない。虫の声も、闇に潜む獣の吐息も――溢れているはずの生命の音がない。
 かつて夢見ていた世界と酷似しつつ、どこか決定的に違う世界。この音なき大地に吹く風はどこか哀惜のようなものすら帯びているようだ。

 ミュウツーは感覚の戻らない右腕をそっと撫ぜた。
 鬣を持った犬のようなポケモンによって付けられた傷の痛みは鈍くなってきたものの、判断力もまた鈍くなってきていることを彼は自覚していた。
 治癒力が高まるということと、体力の回復はイコールではない。

 不味い。と彼は思う。今このまま戦闘を行えば負けることこそないだろうが、今より体の状態が好転することは決してない。それを重ねていけばどうなるか、考えずとも分かる。

 死だ。

 ミュウツーはかぶりを振った。
 もう後戻りはできない。何の咎もなく、私怨もないポケモンを殺した。だというのに、成すべきことを果たさずに朽ちるようなことがあれば、あのポケモンの死をも踏み躙ることとなる。
 一先ず身体を休めることが先決だ。
 逸る気持ちを抑え、自分に言い聞かせる。
 ミュウツーの目に草原に立つ人工物の影が映る。無機的な光を返すそれは、この地でも酷く不似合いであった。
 先ほどの一戦を行った場所に建っていたものと同種のようだ。近づき、中を覗き込む。
 内部は狭く、古びた蛍光灯に堅そうな長椅子が二つほど置かれている。そこにミュウツーは腰かけた。彼の体重を受け止めて、長椅子が軋みを上げる。
 奥に目をやると、地下へと伸びる階段があった。そこから吹き出る強い風に、ミュウツーは目を細める。轟という風鳴りと金属の軋む音の反響が微かに聞こえてきていた。

 地下鉄というものだろう。あまり見かけないものだ。何しろ地下に何かを作るということはディグダのようなじめんポケモンに破壊される危険が高い。それが作られているということは、そんな存在がいないという証と見える。
 ディグダだけではない。この地には植物以外の息吹が感じられないことも気にかかる。

(全て邪魔とみられ排除されたと見るのが自然……か)

 この催しの主は殺し合いだ。参加者が首輪を付けられたポケモン以外に命を奪われるようなことがあっては何かと不都合なのだろう。
また、食糧の問題もある。首輪の爆薬や時間の制限があるとはいえ、それだけで殺し合いに積極的に乗るポケモンがいるのかというと、答えは否だ。命の奪い合いは、野生の中で生きる物には日常のことでしかないと彼は識っている。
そんなものたちを効果的に潰し合わせるには、食糧を満足に与えないことが大切だ。腹が減れば、本能のまま戦いへと赴くだろう。そのためには食料となりそうな第三者の生物が居ては意味がない。
しかし、疑問は残る。一つは食糧を削ったところで、そこから生じる争いは「正常」なことでしかないということだ。わざわざやる手間を懸けてさせる必要がない。
キュウビの目的は「呪法」らしい。それが何かは見当を付けようがないが、彼――あるいは彼女が「異常」を求めていることは予想できる。その「異常」に含まれるのは、本能ではなく、理性から生まれる争いだろう。たとえばミュウツー――彼のように。
 ただ、そのようなポケモンが世界にどれほどいるというのか。同じ状況を作り出すならば、人間同士でやらせても面倒は然程変わらないだろう。
それをわざわざポケモンだけで殺し合わせる理由が分からない。

そして、もう一つは大掛かりな舞台の準備と管理を一介のポケモンに果たして可能なのかということだ。
 キュウビはキュウコンの亜種である。これはほぼ間違いないだろう。ただ、全てのポケモンを排し、また町をひとつ丸々舞台に組み込むというような真似をキュウコンが一匹で出来るとは到底思えない。必ず協力者がいるはずだ。

加えて、このことを人間が見過ごすはずがない。
 人間たちがこの事態に気付くまで、そう時間はかからないだろう。いや、既に伝わっていると考えるのが自然だ。ならば、近い内に人間は何らかの対応策を講じ、キュウビの牙城を崩しにかかることは容易に予測できる。
 だが、人間たちの認可の元に行われているとすれば話は別だ。そして、キュウビの協力者が人間であったならばすべて説明がつく。
 問題は真に主導権を握っているのがどちらかということだが――。

ミュウツーは小さく溜息を漏らした。

 これまでの考察に確証はない。あくまで想像だ。全て的外れだということもあり得る。むしろ、その可能性の方が高い。そもそも、これまでの数少ない情報の何もかもか嘘であるかもしれない。
 ただ、独りの時間を潰すには丁度いい。独り問答はこれまで幾千、幾万と繰り返してきたことだ。
 野望が叶ってもそれが多分変わることがないことを、彼はなんとなく分かっていた。





【E-4/駅中/一日目/黎明】
【ミュウツー@ポケットモンスター】
【状態】:右腕重傷(回復中。動かす事は不可能)、PP消費(小)、疲労(中)
【装備】:しんぴのよろい@ドラゴンクエスト5
【所持品】:支給品一式、不明支給品(0~2個、確認済)
【思考】
基本:ゲームに乗る
0:休憩する
1:相手が誰だろうと容赦なく殺し、優勝する
2:万が一人間を見掛けた場合、用いる限りの手段を使って惨殺する
【備考】
※自分の力が制限されていることに気がつきました。
※パスカルを殺したと思っています。
※キュウビに協力者がいるのではないかと考えています。
※傷が回復したとしても、右腕が動かせるようになるかは分かりません。

【しんぴのよろい@ドラゴンクエスト5】
物理防御の高い鎧。装備者の治癒力を少し高める効果がある。



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019:LABYRINTH  ~午前二時の迷宮~ ミュウツー 050:神の不在証明




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