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飴と機知 ◆1eZNmJGbgM




「う……む……」

うめき声を一つ上げ、ケルベロスと呼ばれた魔物は意識を取り戻す。
あたりを見回せば、既に明けの明星どころか太陽が顔を覗かせ、夜が明け朝が来ている。
どうやらあの飴玉を舐めながら休息を取るつもりが寝てしまったらしい。
意識だけは保とうとしていたが何たる不覚。運が悪ければ先ほどの様な魔物に殺されていたかもしれないと自省する。

「……そういえば主人も悪運は強かったな。そもそも一目会えただけでもマシ、か」

あの地獄の様な世界でも、主人の顔は、笑顔は全くと言っていいほど不変だった。
彼がハスキー犬であった時でも、ケルベロスになってからでも、変わらず。
そしてそんな主人に再び会いたいと彼は願う。
そのためには何としてでもこの殺し合いで生き残り、主人の傍へ戻る。それが唯一の願い。
ただ現状ではこの傷ついた体躯で勝ち進む事は至難の業。
あの飴玉の効力と、幸か不幸か睡眠を取ったため出血は止まったものの、失った血と体力を取り戻したとまでは言い難い。
体に残る痛みは短時間の間ならば我慢できるが、戦闘が長時間になれば再び傷口が開く可能性も高いだろう。
つまり今の彼は応急処置を施しただけで、人間ならば絶対安静レベルの重症であることに変わりはない。
ではどうするか。そんな彼でも先ほどの様な強敵と渡り合うために必要な戦術は。

「待ち伏せだな」

そう。自分が動けないなら相手に来てもらえばよい。幸運にもここは駅前であるため、電車を利用しようと
するなら必ずここに立ち寄る。乗車でも下車でもどちらでも構わない。それなりに知恵の高い魔物なら
大抵は周囲の安全を確認しようとするはずだ。逆にいえば視線を様々な方向に向けざるを得ない。
ならば、自分なら、一瞬でも敵が視線を外した瞬間に喉笛を切り裂き、胴体を押し潰し、頭蓋を噛み砕く事も不可能ではない。
なによりこの方法なら動き回る必要もなく、短期決戦で決着をつけられる。消去法ながら今の自分にとれる最善の方法だ。

「そう、今のうちだけだ。体力さえ回復すれば、こちらから撃って出る事も可能だ」

目安は……およそ六時間。太陽が上空高く昇る頃まで残った飴を舐め続ければ体力も回復するだろう。
それまで獲物が来れば殺し、この飴の様な回復アイテムがあればそれでよし、無ければソイツを喰らい血を取り戻すもよし。
来なければこのまま体力を回復し続け、万全になった状態で電車に乗り込めばそれでよし。
どちらに転んでもさほどマイナスにはならない。この点で飴をくれた黒猫とはまた違った猫に礼は言うべきだろう。

「まあこちらの装備との交換だからな…………まて、どういうことだ?」


彼は思い出す。あの猫との交渉の場面を。

―あの時、自分は瀕死の重傷で、
―そんな時にあの猫がやって来て、
―自分のアイテムと、この飴玉らを交換して、
―そのまま月明かりの影と共に消えていく猫を見送り―

「おかしい。なぜ、『満月で』あの猫と交渉ができたのだ?」

彼らの様な一般的にNEUTRALと分類される魔物は、戦闘以外にも交渉をすることができる。
その結果次第ではアイテムやマッカ(金額の単位)を授けてくれたり、仲魔になって共に戦ってくれる。
しかし、これには例外もある。その理由は様々だが、最も代表的なのは満月の時には交渉できないのである。
理由は月の魔力によって精神が高揚するとか血が騒ぎ好戦的になるとか色々あろうが、とにかくハナシにならない。

ではなぜ彼とあの猫は会話が成立したのだろう。考えられる理由は二つ。

「あの時は満月にはまだ月齢が不十分だった。次の晩に満月になるのか、あるいは既に十六夜だったか」

そしてもう一つの理由は、彼には信じがたいものであろう。
月を冠する魔物や神はいたとしてもその様な事ができるなど聞いたこともない。

「あの時の月は偽物だった……。俄かには信じがたいが、もしそうだとすればどのような願いも叶えると言うのも嘘とは思えんな」


まあ、どうでも、いいのだけれど。


どのみちこの首輪が嵌められている時点で反逆は不可能。
彼の行く道に影響を及ぼすものでもない。
そして彼は駅の構内へと歩を進める。
その名に相応しく、地獄の番犬、門番としての役目を果たす為に。



【F-5駅前/一日目/早朝】
【パスカル(ケルベロス)@真女神転生】
【状態】:内臓負傷、疲労
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式、まんまるドロップ@聖剣伝説Legend of Mana(二個)、ラスタキャンディ@真女神転生if...(一個)
【思考】
基本:ゲームに乗る
1:駅の構内で参加者を待ち伏せ、殺す。
2:誰も来なければ体力の回復を図る。
【備考】
※まんまるドロップ@聖剣伝説Legend of Mana(三個)を服用しました。誰か来るまで食べ続けるようです。
※深夜に見た満月を疑っています。




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