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白兎は秘かに笑う ◆TPKO6O3QOM



 東方は赤く燃えていた。顔を出した陽光にギロロは目を細める。
「少し長居しすぎたかもしれませんね」
 肩の上のユーノが告げる。それには答えず、ギロロは草叢にさっと身を伏せた。うわっというユーノの悲鳴も聞こえたが無視する。 葉の上の朝露が散り、朝日の中できらめいた。
「……どうしたんですか?」
「前方を注視しろ。何かいるぞ」
 ギロロたちの前方、数十メートル先に影が見える。朝靄に隠れてはいて正確には分からないが、大型の獣のようだ。
 少しずつ慎重に、ガトリングガンを構えながら近づく。既に影は射程に入っている。
「動きませんね」
「こちらが岩か何かと見間違えることを期待しているのかもな。獣らしい浅はかさだ」
「でも、少し変に思いませんか? 息を殺しているにしても動きがなさすぎるような」
 たしかに影は微動だにしない。筋肉の収縮や呼吸によって多少動いてもよさそうなものだが。
 いや、そもそも意識して動かないということは、向こうはこちらに気付いているということだ。
 じっとしている意味は何だ。自分の居場所を知らせないためだ。だが、影はそれと分かる見通しのよい場所に鎮座している。
(岩に偽装? 自分で言っておいて何だが、やるのはケロロぐらいのものだ)
 ギロロは鼻を鳴らした。

「……もう少し接近してみよう」
 更に接近する。やはり動かない。朝靄だけが生き物のように少しずつ変化していく。
「よし、あと少しだけ接近してみよう」
「え? いや、でも……」
「心配するな。少しだけ、少しだけだ」
 草をかき分ける掠れた音が微風にさらわれていく。

(もう少し……もう少し……もう少――)

 草叢が途切れた。薄靄の帳は消え、目の鼻の先に影の正体が蹲っていた。大型の熊だが、ぴくりとも動かない。生命活動を停止している。
 殺し合いに乗った者がいるという証だ。それもこんな大熊を斃すような者がだ。
「……ふ、少し近づきすぎたようだ」
「いや、いいんですけど別に。ただ、これは――」
「あのぉ……」
 ユーノの言葉を第三者の声が遮った。声は熊の死体から聞こえてくる。熊は死体の――はずだ。
 自身の身体がぴしりと音を立てて強張ったのが分かる。冷や汗が頬を伝い落ちて行った。
 ギロロは震えそうになる歯の根を必死に押さえつけた。

(死体は死体であるからして動くことは元より言葉を発するようなことはないはずだ聞き間違い聞き間違いだ馬鹿になったものだな俺の聴覚はユーノには聞こえていないはずだそうだろうそうだろうさあユーノ話の続きを――)

「死体が……喋った?」

「のぉぉぉぉぉおおおおぁぁああー!」

 絶叫した拍子に引き金を引いてしまったのだろう。ガトリングガンの銃声が轟き、東の岩壁に弾痕を刻む。銃弾は熊の死体にも容赦なく牙を剥いた。肉が弾け、その巨体が大きく揺れる。ユーノが何事か叫んでいるが、ギロロには聞こえない。

「ちょ、ちょっとー!」

 轟音の中、その少女のような声を聞きとれたのは奇跡と言ってもいいだろう。銃撃を一旦中断し、ギロロは叫んだ。

「まだ言葉を発するか化け物!」
「誰が化け物なのよ!?」
「ふん、巨大な荒々しい熊の化け物のくせして可愛らしい女の声色を真似るとは小賢しい。まさしく魑魅魍魎の所業。すなわち貴様は人の闇に巣食う大魔王のような存在――」
「ごめんなさい。ギロロさんの言っていることの意味が何一つ分からないんですけど。とりあえず、あなた、姿を見せて貰っていいですか?」
「……撃ったりしないでしょうね?」

 少女のような声音の魑魅魍魎が如き策を弄する大魔王的な熊の化け物(仮)が警戒した声色で問う。
「大丈夫ですよ。……撃たないでくださいね?」
 耳元でユーノが念を押してくる。引き金から指を外すも、銃口は逸らすわけにはいかない。それについてユーノは何も言わなかった。
 熊の死体の陰から出てきたのは桃色のドレスに身を包んだ普通の少女だった。頭に生えた兎のような耳を除けばだが。

「う、うさみみ……!?」
「え?」
 胡乱げに聞き返した少女にギロロは慌てて両手を振った。
「いや何でもない。夏美にうさみみはさぞ似合うだろうなんてことはこれっぽっちも考えてはいないぞ」
 上擦った声音で否定するも、冷たい二つの視線を注がれてギロロはひとつ咳払いをした。

「アンケートに答えてくれ。質問一。その熊を殺したのはおまえか?」

 視線を鋭くして問う。少女は困ったような顔をした。
「違うわよ。大体、私が熊に勝てるような女の子に見える?」
「武器と戦術によっては十分に可能だ。木の棒一本でもな。おまえのデイバッグをこちらに渡してもらおうか」
 銃口をポイントしたまま、恫喝する様な口調で要求する。
「ギロロさん、それはどう見ても悪党の……」
「用心するに越したことはない。妙な動きをしたらすぐに知らせろ」
 ユーノを地面に下ろし、ギロロは左手で少女のデイバッグを弄った。眼に見えて武器となりそうなものは出てこない。
 薬包紙に包まれたものを取り出し、少女に問う。

「これは何だ?」
「さあ。たぶん、薬か何かだと思うけど」

 歯切れ悪く少女が答える。ユーノにも見せてみたが分からなかったようだ。
「説明書みたいなものはありませんか?」
「それ、この熊さんのものなのよ。私が持ち出したときにはそんなもの入っていなかったわ」
 死者から支給品を奪うとは中々強かな女のようだ。
 手の中の包みに目を落とす。
 毒薬の可能性もあるが、それを確かめる術が今のところない。少女に飲ませてみる手もあるが、仮に毒薬だったとしても、少女の証言の真偽の確認にはならない。それにユーノが反対するだろう。

「もういいかしら?」
 うんざりとした口調の少女に、ギロロは首を横に振った。
「いや、まだだ。悪いが着衣を脱いでもらおうか」
「はぁ!?」
「ぎ、ギロロさん!?」
「衣類の下に武器を隠している場合がある。必要な処置だ」
 冷静に告げるが、ユーノは同意し兼ねるといった眼差しでギロロを見上げている。少女も従うつもりはないらしく、こちらを睨んでいる。
「……分かった。ならば、ユーノ。おまえが調べろ。俺が調べるよりは角も立たない」
「いや、それは……」
「そこのおまえ。このユーノがおまえを調べる。それでどうだ?」
「……それでいいわよ」
 少女は渋々了承した。視線で渋るユーノを促す。同性の方が少女も安心するだろう。それを視線に込める。ユーノは困惑の色を瞳に浮かべたが、諦めたようだ。
 ガトリングガンは少女の胸をポイントしている。少女がユーノを人質に取るなど動きに出てもすぐに対処できる。膝を撃ち抜いてもいい。
 少女の肩に登ったユーノは躊躇していたが、意を決したように少女の身体を上から下に這い回った。少女はくすぐったそうに頬を赤らめる。
 戻ってきたユーノは何もなかったとぶっきら棒に告げた。眼には非難がある。同性でも恥ずかしいものらしい。

「これで終わり? 私の支給品、返してほしいんだけど」
「ああ。用心に用心を重ねるのは軍人の性みたいなものでな。許せ」
 銃口を下げ、詫びながらデイバッグを少女に返す。ギロロの肩に戻っていたユーノが小さく咳払いした。
「まず、自己紹介しましょう。僕はユーノ・スクライア、彼はギロロさん。あなたは?」
「てゐよ。因幡てゐ」
 少女――てゐはどこか値踏みするような視線でこちらを見ている。あれだけのことをされては信用もしにくいだろう。女性にとっては恥辱といっていい扱いだったのは理解している。
「てゐさんが来た時には、あの“熊”は死亡していたんですか?」
「いいえ。少しの間だけど生きていたわ。銀っていう狼にやられたみたい」
 話すてゐの横を通り過ぎ、ギロロは熊の死体を調べた。弾痕が邪魔だが、所々に咬み千切られたらしき傷跡が見て取れる。しかし、どれも深くはない。体格から考えれば、重傷とは考えにくい。
「失血死にしては妙だな。傷は多いが、致命傷とまでの大きなものはない」
 なんともなしに呟く。それに、熊の苦悶の表情にも違和感がある。
「咥内に棲んでいるバクテリアによる感染症で死んだのかもしれません。普通は考えられませんが、次元世界によっては体質に合わずにショック死する場合も考えられます」
 熊の死体に下りていたユーノが思案するように少し沈黙してから告げてきた。

「なるほどな」

 死んでも魔法は解けないのかと口の中で呟いているユーノから視線を外し、てゐの方を振り向いた。少し表情が先ほどよりも固いように感じられたが、気にするほどのものではないだろう。
「……まだ私が犯人って思ってるわけ?」
「いや、そうじゃない。銀、か。そいつの特徴などは聞き出せたか?」
「虎毛で小ぶりな狼らしいけど……ねえ、あなたたち、町に行くの?」
「そのつもりだ。正確にはB-4駅だがな」
「途中まで私も一緒に行っていいかしら? はぐれた仲間が町にくるかもしれないの。ただ、あの熊さん、北の方で襲われたって言ってたし……」
 言い淀み、てゐは小さく身体を震わせた。自分たちに頼ってくるとは、見た目に反して余程精神が参っているのか。ギロロ自身は、てゐに対しどこかふてぶてしさのようなものを感じているのだが。
「……いいだろう。ちなみに、その仲間の名前は?」
「ぼのぼの」
 聞き覚えのない名前に小さく溜め息を吐く。運よくケロロの名前が出るとは期待していなかったが。
「……行きましょうか」
 熊に向かって黙祷していたユーノが二人に告げた。




 先行するギロロとユーノの背を見つめながら、てゐは思案していた。
 ギロロにしろ、ユーノにしろ、中々用心深い者たちのようだが、どこか抜けている。そこにつけ込めば、ある程度思い通りに動かすことができるだろう。
 実際、銀を要警戒対象として刻みつけることが出来た。銀の弁解が鍵だが、攻撃を仕掛けたという事実がある以上、自身も否定しにくいだろう。茫然自失とする可能性も高い。
 戦闘まで漕ぎ着ければしめたものだ。どさくさに紛れ、キメラのつばさで小学校に移動してしまえばいい。あとは勝手に殺し合ってくださいというわけだ。
 出来ればギロロには無惨に死んで欲しいところだが、彼の得物を見る限り銀の負けが濃厚か。それが少し残念だ。
 ギロロたちの悪評を考えておく必要があるだろう。凌辱されたとでもしておくか。まるっきりの嘘というわけでもない。単に解釈の違いに過ぎないのだから。
 ぼのぼのことはもう切り捨てる。いつまでも戻ってこない子供を構っている余裕はない。二匹にああは言ったものの、ぼのぼのが町まで来ることはまずないだろう。あれは万が一の保険だ。あのラッコを言いくるめるのは造作もない。
 しかし、毒薬の説明書を処分しておいて良かったと、てゐは小さく安堵した。肝を冷やす場面も何度かあったが、やはり運は自分に味方しているらしい。
 二匹に気付かれないよう、てゐは小さく嗤った。




【B-4/路上/一日目/早朝】

【ユーノ・スクライア@リリカルなのはシリーズ】
【状態】健康
【装備】:なし
【道具】:支給品一式、手榴弾(11/12)@ケロロ軍曹、消化器数本
【思考】
基本:打倒主催。
1:B-4の駅へ向かう。
2:対主催のメンバーを集める。
3:ケロロ、アルフ、ザフィーラとの合流。
【備考】
※参加者を使い魔か変身魔法を用いた人間だと思っています。
※会場はミッドチルダではないが、そこよりそう遠くない世界だと思っています。
※首輪について
 人間化は魔力を流し込むことによって、
 結界魔法などは魔力を吸収することによって妨害されています。
※銀を危険な獣と認識しました。


【ギロロ伍長@ケロロ軍曹】
【状態】健康
【装備】:ガトリングガン@サイボーグクロちゃん(残り90%)、ベルト@ケロロ軍曹
【道具】:支給品一式、バターナイフ、テーブル、キュービル博物館公式ガイドブック・世界編
【思考】
基本:死ぬ気はさらさらないが、襲ってくるものには容赦しない。
1:B-4の駅へ向かう。
2:ケロロ、アルフ、ザフィーラとの合流。
3:てゐに少し違和感
【備考】
※銀を危険な動物と認識しました。
※ユーノを女と思っています。


【因幡てゐ@東方project】
[状態]健康
[装備]:なし。
[道具]:支給品一式、きずぐすり×3@ポケットモンスター、ヒョウヘンダケ×3@ぼのぼの、キメラのつばさ×3@DQ5、
エルルゥの毒薬@うたわれるもの(テクヌプイの香煙×5、ネコンの香煙×5、紅皇バチの蜜蝋×5、ケスパゥの香煙×5)、不明支給品0〜2個(ギロロ、本人確認済)、ニンジン×20
[思考]
基本:参加者の情報を集めて、それを利用して同士討ちさせる。殺し合いに乗っている参加者に対しては協力してもらうか、協力してもらえず、自分より実力が上なら逃げる
1:B-4の町に向かい、銀とギロロたちを殺し合わせる。
2:銀に会えたら、羆が銀のせいで死んだと伝える
3:その後、キメラのつばさでC-4の小学校に戻る
4:町とは反対の方向に行って、情報を集める
5:ぼのぼのと遭遇したらヒョウヘンダケを渡す
【備考】
※銀の情報を得ました。



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035:Gallery Fake ユーノ 069:罪穢れの澱みを着せて
035:Gallery Fake ギロロ伍長 069:罪穢れの澱みを着せて
030:狡兎三窟 因幡てゐ 069:罪穢れの澱みを着せて




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