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先送りの決断  ◆TPKO6O3QOM




 黒猫の得物に開いた穴はぴたりとラルクを捕捉していた。そこから火が噴かれることをラルクは知っている。放たれてから反応することは不可能だが、軌道が直線的であることから予測は難しくはない。
 弓や弩のような装填の手間もなく容易に連発の出来る厄介な武器のようだが、一発撃つごとに僅かに得物自体が上方へと逸れることを先のパックントカゲへの攻撃で見抜くことが出来た。精密な狙いを求めるには、的を再度捕捉し直す必要が出てくる。
 それを避けたければ、射手は獲物が必中の間合いに入るまで待たなくてはならない。
 闇雲に使わない所を見ると、黒猫はこの未知の武器にある程度以上は精通しているらしい。
 それは相手が攻撃へと移るタイミングを憶測する材料になる。問題は間合いが如何程かということだが。もうすでに入っているのかもしれない。

 一発目さえ避けられれば――いや、致命傷さえ避けられれば、そこに付け入る隙が出来る。一発目を誘発させられれば勝機は高まる。

 そこまでをラルクは無意識の内に判断していた。意図して直線的な動きで接近し、呼吸を計って足を踏み変える。ラルクの身体は右方へ流れた。一歩にも満たないような動きの変化であるが、効果はあったようだ。

 破裂音と共に、熱を帯びた何かがラルクの左腕を掠って行く。焼け付くような痛みが走るも、左腕の感覚はしっかりとある。今はそれで十分だ。
 黒猫の表情が変わった。その拍子にバランスを崩したか、濡れた地面に足を取られて上体が揺れるのを見て取る。
 ラルクは右足で踏みとどまり、そこから地面を蹴った。しゃりと雪が音を奏で、冷えた大気に粒が舞う。黒猫に照準を定める隙を与えてはならない。
 身を低くし、ラルクは半ば滑るようにして黒猫の懐へと入った。黒猫の足の位置で間合いを再確認する。ナイフを手の中で逆手に持ち替え、首筋を狙って振り抜いた。

 響いたのは甲高い金属音。

(仕損じたか!?)

 舌打ちしたい気持ちを抑え込み、ラルクは目だけで音の原因を探る。
 それはすぐ目の前にあった。ナイフは狂いなく黒猫の首筋を引き裂いていた。しかし、斬り裂かれた表皮の下に見えるのは血の通う肉ではなく、鈍い光を返す金属の肌。

(こいつ、ゴーレムの類か……!)

 戸惑いに追撃の動きが遅れた。黒猫の右手の影が目に映る。勘で左の肘を突き上げた。手応えと共に、炸裂音が耳元で響く。

「ぐ……っが……」

 脳を直接叩かれたような衝撃と吐き気を催すような痺れに苦鳴が漏れる。自分の位置が把握できない。
 数瞬か、それとも一瞬か。ラルクの足はしっかりと地面を掴んでいた。そして――まだ生きていた。
 思考よりも先に身体が動いた。黒猫の右手に左腕を叩きつけ、黒猫の手から鉄塊を弾き飛ばす。
 手を離れた鉄塊は数メートル先に落ち、雪の中に埋まる。黒猫の舌打ちを確かに聴く。ラルクの右手が閃き、ナイフの切っ先を叩きつけようと風を切る。されど、先の衝撃で思考と行動に誤差が生まれていた。

 右腕の筋肉の収縮は黒猫のそれよりも遅く、結果ナイフは空を突いた。

 ラルクの懐から離脱した黒猫は鉄塊の元へと走っていく。ラルクは揺れる両足に鞭を打った。よろめきならがらも後を追う。
 ふと、橋からの来訪者のことが頭をよぎる。もう渡り切っている頃合いだ。それとも、戦いに気付いて逃げたか。

(逃げた臆病ものは……やはり殺しておくべきだろうな。姉さんの邪魔になる)

 どちらにせよ確認する余裕はないが、来訪者のことは思考の隅に常に意識しておかねばならないだろう。背後にも気を配る。少なくとも、気配はない。
 転がるようにして鉄塊を拾い上げた黒猫の背を蹴り飛ばす。受け身を取ってすぐに立ち上がった黒猫の顔に更に回転を付けた回し蹴りを叩きつけた。硬質の響きと共に鈍い痛みが足に走る。
 小さな体が鞠のように大きく転がり、雪を巻き上げた。突っ伏した黒猫の毛皮に雪玉が纏わりつき、さながら小さな雪だるまのようだ。
 衝撃で得物取り落としてくれることを期待したが、そう上手くはいかないらしい。黒猫は鉄塊をしっかりと握って離さなかった。
 だが、黒猫の頭はラルクの位置とは逆の方向を向いている。ここから照準を定め、射るまでには数瞬を要するだろう。仕留める絶好の状態だ。
 ラルクは地を蹴り、跳躍した。その音は雪に吸い込まれる。刃を下向きにし、黒猫の背に狙いを定め――。


 視界が大きくぶれた。地鳴りが耳朶に響き、その反響に目が廻る。受け身も取れず、ラルクは雪原に転がった。視界が赤く、頭が重い。
 攻撃を受けたのは頭部か。
 殺気すら察知できなかった。近づかれたはずはない。考えられるのは来訪者も黒猫と同じ武器を所持していたということか。
 攻撃を放ったと思われる方向に目をやる。

「な……っ!?」

 驚きに声が漏れる。朦朧とする視界に見えたのは、殺した筈のぱっくんトカゲの姿だった。死者の復活に考えを巡らせる暇もなく、ラルクは意識を失った。




 オオカミ型のキメラアントが気を失ったらしいのを見て、イカルゴは安堵の吐息を吐いた。蚤弾(フリーダム)の精製がギリギリ間に合ったのは、まさに運だった。少しでも遅ければ、クロは殺されていただろう。
 橋を渡る途中でクロとオオカミが戦っていることは気付いていた。そして、彼らから少し離れた所に大トカゲが死んでいることも。
 “絶”でオーラを断ち、クロを手助けする機会を窺っていたのだ。
 クロが頭を振りながら立ち上がった。無事なようだ。突っ伏したオオカミを見、そしてイカルゴに顔を向けた。

「無事みたいだな」
「ンだよ、死んだふりか!? まあ、いいや。始めようぜ。オイラとよ」

 言葉をかけたイカルゴに対し、クロは銃口を向け、獰猛な笑みを刻んだ。その笑みにイカルゴの背筋が凍る。

「ま、待てよ! クロ、俺さ」
 慌てて蚤蓑を払いのけ、イカルゴは顔を外気に晒した。クロは訝しげに眉を潜める。
「……? ああ、イカ――タコか」
「歩みかけて遠くに行くなぁああ!」

 突っ込みつつ、イカルゴは身体の緊張を解いた。クロがイカルゴと分からなかったのも無理はない。彼は殺されていた大トカゲに寄生していたからだ。死体を操る。これこそ彼の念能力だった。
 このトカゲ、カメレオンのような舌を持っているものの、他に目立った特徴はない。強いて挙げれば跳躍力くらいか。傷から見て、殺したのはオオカミの方だろうと推測する。
 合流し、クロに“死体と遊ぶな子供達(リビングデッドドールズ)”のことを簡単に説明した。
 クロは不機嫌になった。死体を辱めるというのは、たしかに聞こえの良い能力ではない。ただ、それはイカルゴの能力とは無関係なもののようにも思われる。
 彼の不機嫌はイカルゴと分かってから始まっていたような気がするのだ。
 クロはイカルゴから目を逸らすと、オオカミに近づいて行った。そして、彼のデイバッグを漁り始める。イカルゴはオオカミの挙動に集中した。

「お、いいもの持ってるじゃねえか」

 しばしして、クロが打って変って上機嫌な声を上げた。彼の手には一振りの剣が握られている。仰々しい装飾の施された、勘違いした勇者気取りが持っていそうな剣である。
 それをデイバッグに納めると、クロは満足げな顔で戻ってきた。ラルクに止めも刺さずにだ。
「じゃ、さっきの豪邸に戻るか」
「え? いや、でもあいつの……」
「支給品か? 武器はなかったぜ。あのチンケなナイフぐらい、残してやってもいいだろ」
「いや、そうじゃなくて」
 見当違いのことを宣うクロに、イカルゴは戸惑った。
「とどめ、刺さないのかって……」
「やりたきゃ、自分でやれよ。あいつはもうオイラの相手じゃねーし。……思い出したら、また腹立ってきたぜ。お前にまで横取りされるとはなー」
 不機嫌そうにクロは吐き捨てた。

(俺が、あいつを……殺す?)

 イカルゴは息が詰まるような、不快な圧迫感を覚えた。それが殺害への忌避感だとすぐに気付く。
 今まで止めは部下に任せきりだったため、イカルゴ自身が手を汚したことはない。だが、ここに部下はなく、クロもその気はない。とどめという自分の言葉に身がすくむ。
 イカルゴは言葉に窮した。と、クロの首輪の上辺りに刃物で切られた痕があることに気付く。

「――クロ! 怪我したのか!?」

 言われ、クロはきょとんとした。そして、首筋に触れる。
「これか? 装甲が削られただけで、中にゃ届いてねえ。まったくスーツが台無しだぜ」
「装甲? スーツ?」
「言ってなかったっけか。オイラ、サイボーグ猫なんだよ。いかれた自称天才科学者――ようするにアホなんだが、そいつに勝手に改造されちまってな」
 クロは不愉快そうに鼻を鳴らした。


(サイボーグだって?)

 イカルゴは胸中で疑問の声を上げた。
 その言葉自体は知っている。SFに出てくる、一部もしくは全身を機械化された生物のことだ。だが、それはあくまでフィクション、絵空事の中の存在だったはずだ。広義ではインプラントの類も入るらしいが、クロの傷口はにび色の光を放っている。
 まさしく、全身機械化された猫らしい。

「で、やるのか? やらねえのか?」

 違和感に戸惑っていたイカルゴを、クロが急かした。眼を逸らしていた殺害という言葉に、一気に引き戻される。
 目をオオカミに向ける。まだ動かない。それとも、気絶したふりをしているのか。自身の銃砲が酷く重く感じる。口も酷く乾いた。二つを交互に見やり、溜まった唾液をゆっくりと嚥下した。
 漸く言葉を吐く。

「……いや、やめとく」

 言いながら、嫌悪感に吐き気がした。クロにとどめを示唆しておいて、自分は決断を先送りにした。あまりに卑怯だ。
 先の戦闘から見て、オオカミは玄人なのは間違いない。大トカゲ同様、この殺し合いで最も警戒しなくてはならない存在だ。
 ただ、殺すのが怖い一言いえばいい。己の卑屈さに、このままクロの前から走り去りたい衝動に駆られる。
「ふーん」
 イカルゴの葛藤を知ってか知らずか、クロは興味もなさそうに尻尾を小さく揺らした。
「それなら手間かけさせるんじゃねえよ」
 クロは吐き捨てると、さっさと橋の方へと足を進めた。
「……ああ、悪い」
 小さく返事を返し、イカルゴはクロの後を追う。途中で一度オオカミの方を振りかえった。まだ、オオカミは動かなかった。




【G-6/橋付近/一日目/早朝】
【イカルゴ@HUNTER×HUNTER】
【状態】健康、ヨッシーに寄生中、蚤育成中、嫌悪感
【装備】蚤弾(フリーダム)
【道具】デイバッグ(支給品一式(食糧なし)×2、幸せの四葉@聖剣伝説Legend of Mana、シュバルツの覆面@機動武勇伝Gガンダム、サトルさん@忍ペンまん丸)
【思考】
基本:殺し合いから脱出、可能ならキュウビ打倒
1:クロと豪邸に向かう
2:メレオロンと合流したい。
※原作25巻、宮殿突入直前からの参戦です。
※ヨッシーが殺し合いに乗っていると誤解しています。
※パスカルの情報を得ました。
※ラルクが殺し合いに乗った獣だと思っています。
※クロがサイボーグだと知りました。



【クロ@サイボーグクロちゃん】
【状態】:良好、不機嫌
【装備】:メガブラスター@クロノトリガー
【所持品】:支給品一式、アームターミナル@真女神転生if...、まんまるドロップ@聖剣伝説Legend of Mana(四個)、ラスタキャンディ@真女神転生if...(二個)、伝説の剣@ハーメルン、パスカルの不明支給品(0~1(接近戦用武器ではない))
【思考】
基本:積極的に優勝する気は無いが大暴れする。キュウビも気に入らないからぶっとばす
1:豪邸の探索。他に使えそうな武器の確保。
2:とにかくゲームに乗った相手を捜し、戦う(暴れる為)
3:首輪が気に入らない。いずれ外したい。
※クロの首輪は身体部分に溶接されています。
※首輪が爆発した場合、体が全て吹っ飛ぶと考えています。
※内蔵武器が全て没収されていることに気付いています。
※メレオロンの情報を得ました。
※ヨッシーを殺し合いに乗った動物と誤解しています。
※ラルクを殺し合いに乗った動物と誤解しています。



【G-6/水族館付近/一日目/早朝】

【ラルク@聖剣伝説Legend of Mana】
【状態】気絶中、頭部に蚤(出血中)、左腕に銃創(小)
【装備】スティンガー@魔法少女リリカルなのはシリーズ×2
【道具】:支給品一式、不明支給品0~2(確認、武器は無し) 、オーボウの支給品(食料、水を除いた支給品一式、不明支給品0~2(確認、武器は無し))
【思考】
基本:キュウビの打倒に対し、シエラの足手まといになりそうな者を殺す
0:…………
1:シエラが無事であってほしい
2:武器が欲しい。出来れば斧
3:シエラとは戦いたくない。そうなる可能性があるので、会うのも避けたい。
※参戦時期はドラグーン編の「群青の守護神」開始より後、「真紅なる竜帝」より前です。
※ここが自分の世界(ファ・ディール)ではないと気付いていません。
※また、死ねば奈落に落ち、自分は元あった状態に戻るだけだと考えています。
※伝説の剣@ハーメルン が武器として使い物にならないことを知りました
※クロを殺し合いに乗った動物と誤解しています。
※ヨッシーが生き返ったと思っています。



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045:罅ぜるは刹那の夢 イカルゴ 070:朝日と共に去りぬ
045:罅ぜるは刹那の夢 クロ 070:朝日と共に去りぬ
045:罅ぜるは刹那の夢 ラルク 073:雪上断温




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