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没放送案 第一回放送案  ◆TPKO6O3QOM



 暗闇の中に焚かれた篝火がぼうと辺りを仄かに照らしている。闇の中で複数の影が騒がしく喋っていた。

「イヤー、異世界ッチューノハ 面白イモン ダッペ」
「鉄ガ高速デ走ッタリ 水ヤ宙ニ浮イタリスル ン ダカラナ。オラハ 飛行機ッテノ、操ッテミタイ ン ダナ」
「オラ ハ がんだむ!」
「シカシ、何処ニモ オラ達 ミタイナ モノ ハ 居ルモンダナア」
「苛メラレルノガ、オラ達ミタイナ カ弱イ存在ナノモ同ジダベ。 ぷるぷるシタ 真ッ青ナ団子達ニハ 同情ヲ禁ジ得ナイベ」
「げっとダゼ ダンベ」
「電車ノあなうんす、聴イタカ? 連中モ オラノ美声 ニ 酔イ痴レタ コト ダベ」
「キュウビ様 二 ヤタラ 分厚イ草紙 ヲ 幾百ト押シ付ケラレタ コト モ イイ思イ出ダッチ」
「アレハ キュウビ様 ガ 根ヲ詰メ過ギテ 寝込ンジマッタ ン ダカラ、仕方ナインダナ」
「アレガ 知恵熱 ト イウモン ダッペカ?」
「コ、コラ! 滅多ナ事 ヲ 口ニスル モン ジャネエ。 キュウビ様 ニ 消サレテ シマウベ」
「ばりあじゃけっとッチューノヲ 着テミタイ デシ。ソシテ……イッシシシシ!」
「ン? 放送機器ノ担当、オマエラ ジャ ナカッタッペカ?」
「……ア! 忘レテイタデシヨ!」
「叱ラレルー怒ラレルー消サレルー!」

 騒いでいるのはキュウビに仕える低級妖怪“天邪鬼”の面々である。面に張られた紗が炎に照らされて闇に浮かび上がって見える。先ほどの天邪鬼たちであろう、幾つかの足音が闇の中に消えて行った。

「キュウビ様 ガ 作ッテ下サッタ 遊戯場 ニモ 正直飽キテキタ 所ダシ、コンナ 面白イ物 ヲ 教エテクレタ アイツラ ニ 感謝ベシヨ」
「ダケンドモ、オラ ハ アイツラ 嫌イナンダナ」
「嫌イト言エバ、新入リノ犬ッコロ モ 腹ガ立ツッチョ。 キュウビ様 ニ 対シテ 媚ビ諂ッテ 本当ニ馴レ馴レシインダッチ」
「卑猥ナ下半身ノ癖シテ、図々シインダギャ! ……ベ、別ニ羨マシクナンゾ、ナインダギャ!」

 ぱちぱちと弾ける炎が会話の間隙を埋める。天邪鬼の夜語りはまだまだ続くようであった。



◆ ◆ ◆ ◆ 


 テレビカメラに白い衣装に身を包んだ、可愛らしい美少女が映っていた。二つに結われた栗色の髪が小さく揺れる。知る者が見れば、高町なのはその人と断ずるであろう。
 そして、首を傾げる筈だ。彼女の愛くるしい右目は前髪で完全に覆われていて見えない。
 その脇に控えるは、上半身を鎧に包んだ異様のものだ。犬頭人身までならそう珍しくはないが、その下半身は蹄を持つ犬一頭そのものなのである。魔界軍王の一角にして、超獣王の称号を持つ魔族なのだが、その瞳には卑屈な色がある。
 少女の愛らしい口唇が動いた。

「おはようございます。最初の夜を見事生き抜いた方々、一先ずおめでとうと言わせていただきます。でも、どうしてなのかな? ちゃんと殺し合ってくれなきゃ、意味ないじゃない」

 虚ろな左目が宙を見つめる。

「だから、一時ごとに一つずつ増やす予定だった禁止区域を、三つ一度に発現することにしました。心配しないで……電車に乗って禁止区域を通過する分には首枷は爆発しないから。だから……少し、頭冷やそうか?」

 愛らしい声なのだろう。しかし、魂の抜けたような声音は墓場に吹き荒ぶ寒風のようだ。
 その横手から合いの手を入れつつ、異様のものの声が割り込んだ。

「さてさて、“なのは”様にお叱りのお言葉を頂いたところで、禁止エリアを発表いたしましょうかねぇ。おっと、申し遅れましたが、私、補佐を担当するギータというものでございます。どうか、お見知り置きを。
 話を戻しましょうか。禁止エリアでしたねぇ。誰もいらっしゃらない所だといいですねぇ。んー、でも、そうはいかないかもしれませんねぇ。
 それでは発表します。メモなんて取っているといいかもしれませんねぇ。いいですか? いきますよ?

 A-7
 B-1
 F-4

 これより二時間後の午前八時に、以上の三か所が禁止エリアとなります。八時以降に足を踏み入れたら、首輪が爆発しちゃいますからねぇ。気を付けてくださいねぇ。
 ちゃんと聴きとれましたかぁ? え? 聴き逃した? 再読してあげたいところですが、ここは私も心を鬼にしましょう。涙をこらえつつ……ねえ。
 万が一、聞き逃してしまったお間抜けさんはお近くの誰かに訊いてみてください。声を掛けたが最後、殺されてしまうかもしれませんがねぇ」

 耳に障る笑い声が響く。異様のものは芝居がかった動作でマントを翻した。

「では次に行きましょうか。みなさんお待ちかねのことでしょうねぇ。健闘むなしく脱落してしまった方々のお名前を発表いたします。メモの準備はしましたか? 
 あ、手がない方は元々無理でしたか。これは失礼。非文化的な世界に棲んでいると苦労しますねぇ。
 おっと。また、脱線してしまいました。では読み上げますよ。

 ヒグマの大将さん
 タヌ太郎さん
 アルフさん
 メレオロンさん
 夜叉猿さん
 ヨッシーさん
 シロさん
 コロマルさん
 ボニーさん

 以上、9名。いやー、頑張っていたようですが残念でした。縁故のある方々、ご愁傷様ですねぇ。しかし、“なのは”様も苦言を呈しておられましたが、意外と少ないですねえ。
 皆さんの奮起に期待といったところでしょうか? “なのは”様」

 異様のものに問いかけられ、少女は小さく頷いた。何処か不満そうである。



「そうだね。ギータちゃん。

 ところで、皆。そろそろお腹が空いてこないかな?
 こんな事態だといつもより疲れるもんね。こんなときこそ、食事はとっても大事なんだよ。

 渡された食料は少ないけど、心配ないよ。ほら、君たちのすぐ近くに沢山転がっているでしょ。まだ、生きているけど。
 実はね、すでに実践した子もいるんだよ。これが野性なんだね。

 それじゃ、またお昼に会おうね。どれぐらいの子たちと再会できるかは分からないけど」

 その言葉を最後に二つの影はカメラから消えた。


◆ ◆ ◆ ◆ 


「……悉く台詞を取られて、我が目立っていない気がするのだが」
「いやー、そんなことありませんよぉ。キュウビ様はただ座して居られるだけで強烈な存在感を放っておられるんですから。キュウビ様から発せられるオーラに連中は中てられていること、必至です。さすが妖魔王様!」

 少女が小さく鼻を鳴らした。前髪がゆれ、右目を両断する醜い傷痕が垣間見える。
 この少女は無論、“高町なのは”などではない。キュウビが妖術で化けた姿である。
 キュウビは一声鳴いて、術を解いた。少女の幻影が抜け落ち現れたのは、あのツヅラオという尼僧の姿である。先と違い、その顔に狐面を被っているが。
 胡麻をするギータを一瞥し、キュウビは闇の中に溶けて行った。澱みのような闇にギータ一人だけが残される。
 その中でギータは小さく嗤った。梟雄の光を瞳に宿して――。




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